怪獣や侵略宇宙人といった人知を越えた存在の前に、地球が脅かされる日々が又も訪れた。
ウルトラマンイレイズ 1 必殺! タイマードレイン
熱線怪獣・ケルミス、潜入宇宙人・グラス星人 登場
怪獣・侵略者処理隊(Bem and Invader's Disposers)=BID(ビッド)の四条竜二郎隊員は、
配下の一般兵士達を率い、宇宙からの侵略者・グラス星人の送り込んだ怪獣兵器・ケルミスを迎撃
していた。が、戦況ははっきり言って思わしくない。防衛軍の戦闘機隊は、怪獣の吐く熱線に
次々墜とされていく。地上部隊の兵士達もバズーカやロケットランチャーで攻めるが、これも
ろくに効果は上げられず、寧ろ、壊されて降り注ぐ瓦礫の中で兵士の犠牲が増える一方。
アジトに陣取るグラス星人は、何かよくわからない、テープを早回しにしたような甲高い声を発して
指示を下す。それに従い、ケルミスは星人達の拠点に転送され、東京都心から消えた。
神出鬼没の怪獣に対し、BIDは一般兵を大人数投入して地道に警戒態勢を敷くしかなかった。
岡島長官と四条隊員はパトロールを兼ねて被害を受けた都心の視察に回る中、戦災地で自警団と共に怪我人の
手当てや瓦礫の撤去などを行う青年・明野暁(あけの・あきら)に出会う。彼は現地を取材している
フリーライターだと言うが、その精力的な献身を見て岡島と四条はちょっとした感慨を抱く。
過去に怪獣の襲来で両親をなくして二人で暮らしている若い女性・榊百合子と、その弟でまだ小学生の
信也。その二人の姉弟の家に暁は収入を入れて下宿し、家族同然の関係となっていた。
怪獣を倒せないBIDを弱いと言って陰口を叩き、両親が死んだのもBIDが弱いからだと怒る信也に、
暁は、怪獣が攻めてきたのはBIDのせいではない、親しい者から犠牲が出て悲しいのは彼らも同じだと諌める。
更に、BIDがあることとは関係なく、今この場で生きているのは自分なのだ、いざというとき本当に自分の身を
守れるのは自分だけなのだとも。
再度現れたケルミスに対し、BIDは既に都民が退避した無人の廃墟に怪獣を陽動し、予め包囲網を張った
大火力の部隊で一気に攻めるという作戦を取る。しかし、怪獣の強い生命力の前にとどめを刺す事ができず、
攻撃に怒ったケルミスは、避難民が移動している地点を狙って熱線を吐こうと大きくあぎとを開いた。
そのとき、脇の廃ビルの壁が砕けて巨大な拳が飛び出し、ケルミスの横面を殴って卒倒させた。
数刻前、暁は単身、戦場となる予定地点の廃ビルの中に侵入していた。
暁に対し、宇宙の彼方にある彼の故郷から、本来行う予定だった地球防衛のための活動開始の許可が漸く
出たからである。
かなり渋りながら辞令を通達した上司達との通信を終えた後、暁は小声で「遅い」と毒づいた。
直ぐ外で怪獣が暴れているビルの中で、暁は脚を踏みしめて左腕をかざし、変身アイテム・バリアブレスを
現出させた。ブレスが光を放ち、暁は本来の姿・ウルトラマンイレイズになり、一気に巨大化して至近距離から
不意打ちを食わせたのである。
ビルが崩れ、粉塵の中から巨人が現れた。かつて地球に訪れて恐ろしい怪獣や侵略者を倒し、平和を守った
伝説の勇者の再来に、BIDや都民達は沸き立ち、グラス星人は震撼した。
ウルトラマンイレイズはまだ怪獣が倒れている隙を逃さず、ウルトラローキックを放ってきた。倒れている
相手に下段蹴りを連続。ケルミスは怒り、長い尻尾で打撃を狙う。イレイズが飛びのいて避けたところで
ケルミスが立ち上がり、正面からの格闘戦になる。
バリアブレスは巨大化した後もイレイズの左腕に装備され、様々な補助武器に変形する。イレイズは、
分銅の付いた鎖・バリアブレスチェーンを伸ばし、振り回してケルミスを打ち据える。ウルトラタワーも引っ張って倒壊
させることが可能という強力な鎖だ。
ウルトラローキックと併用しての痛打の連発にケルミスは怒り心頭となり、イレイズが接近したところで
全身から熱電撃を放射。イレイズは吹っ飛ばされて倒れ、よろよろと片膝を付く。カラータイマーが赤く点滅し始め、
緊張を煽るBGMが流れ出す。
グラス星人の命を受け、ケルミスは狙いを付けて最大出力の熱線を口から発射。眩暈を起こしていたのか、イレイズは
それをまともに胸に受けた。早くも巨人の最期かと、人々が絶望せんとした。
だが、これが、イレイズの狙いだった。
ケルミスの熱線はまだイレイズに向けて吐かれ続けている。止まらない。
止めることが出来ない。
熱線は光に変換され、イレイズのカラータイマーに繋がって吸い取られている。
力を取り戻しつつ、イレイズはゆっくりと立ち上がり、胸を張って仁王立ちになる。
元々ウルトラマンは光を吸収してエネルギーとしている。その能力を高めるため、ウルトラマンイレイズは
引力に捉われかねないぎりぎりまで恒星に接近して熱と光を吸収する修練を何度と無く重ねた。そして
編み出したのがこの技・タイマードレインである。
グラス星人は物質転送でケルミスを呼び戻そうとするが、一度タイマードレインが発動したら、標的はエネルギーを
吐き尽くすまで放出を止めることが出来ない。イレイズは熱線の火線を、縄を手繰り寄せるように両手でしっかり
掴んで離さない。ケルミスの断末魔が、段々弱々しくなっていく・・・
タイマードレインが終わるまで30分かかった。
人々も星人も呆然としている。
ケルミスは全てを搾り取られ、ミイラ化して倒れて息絶えていた。
一度赤くなって点滅したはずのウルトラマンイレイズのタイマーは、眩しく青く輝いている。
戦いを終えたウルトラマンイレイズは、空には飛び去らない。一同に背を向けて歩み去り、ずんずんと地響きを
立てて黙って遠ざかりながら、テレポートで徐々に透明に姿を消失していく。
当然である。彼の役目は地球を守ることだ。空の彼方に飛び去る必要は無い。
骨を埋める覚悟だ。
______________________________________________________
ウルトラマンイレイズ 2 躊躇よさよなら
潜入宇宙人・グラス星人 登場
目玉戦力の怪獣ケルミスをウルトラマンイレイズによって倒されたグラス星人は、作戦を変えた。
等身大の工作員を夜な夜な複数市街に送り込み、民間人やBID指揮下のパトロール兵士を無差別に
通り魔的に襲い、巨大な刃物で斬る、或いは炎で燃やす、冷凍ガスで凍らせる、更に未知の科学で全身の
血を抜くなどで惨殺するという散発テロに切り替え、脅しを掛けてきたのである。
以前と違う形で地味に被害者は増し、パトロール隊を直接指揮する四条は心労を溜める。
だが、その状況に対して上田が冷淡で利己的な反応を示したために両者はいがみ合いとなり、
空気が読めない前原は無駄に明るくフォローにならないフォローをして両方からタコ殴りにされる。
嫌な雰囲気に耐えられない文が必死に仲裁しようとするが、岡島長官は敢えていがみ合いを放置し、
文だけを呼び、ウルトラマンイレイズについての見解を話し合うことにした。
四条の見解も聞くに値するかもしれないが、彼は今頭に血が昇っているので後回しにした。
文は言葉を濁しながらも、過去の事例から、イレイズも又地球を守りに来てくれたウルトラマンで
あろうし、実際怪獣を倒してくれたわけだが、その戦いぶりを傍からビジュアル的に見た場合、
ちょっとどうかという感想を正直に述べた。岡島も同じ意見だった。死体が丸ごと残った怪獣に
ついては、今後のための資料にするという意味では助かるのだが。
イレイズ=暁も、それを意図して死体をそのまま残した。暁の弟分である信也に言ったとおり、
本当は自分の身は自分で守るべきだという彼の信条は変わっておらず、BIDが敵をどんどん分析
して戦力を上げ、ゆくゆくは自分達で地球を守れるようになってほしいという考えがあった。
だが、M78星雲の上司達からは、地球人に与える視覚面からの心理的負担を考えろと注意を受けた。
首だけ縦に動かして適当に流した。
そんな中、暁の下宿先・榊家の百合子と信也の姉弟が、事件に巻き込まれた。星人に追われ、
危うく殺されるかというところで駆け付けた暁と四条指揮のパトロール隊が連携して撃退し、
事なきを得るが、既に榊家の近所からも犠牲は出ており、姉弟の精神的負担は大きくなっていた。
暁は、打って出ることにした。
地道な捜査の結果、星人のアジトが郊外にあることを突き止めた四条隊は強襲に出るが、
地下から予想外に大群で現れた星人の前に危機に陥る。それを救ったのは、予め変身し、2話目にして
等身大で現れたウルトラマンイレイズだった。
イレイズは細い火線の高出力光線・スライスメーザーを額から放ち、星人の軍団をビームで
切り刻んでなぎ払っていく。アジトに踏み込むと、一人残った星人の指揮官は巨大化した。
イレイズも巨大化する。
睨み合いながら、星人は自分達の侵略意図を地球の言語で語った。地球人は文化的にも精神的にも
未熟な癖に自分勝手で傲慢だ、宇宙に進出してくれば害になるという、割と聞き古した内容だった。
「だから、地球人など何千何万、何億人屠殺しようと構わんのだ」
その台詞を聞いて、イレイズの態度は決定した。
巨大グラス星人は、人々を斬り殺した巨大な刃を右腕から伸ばし、振り回して襲い掛かる。
スライスメーザーも刃で弾かれる。避けてばかりではジリ貧になると見たイレイズは前に出て、
星人の刃を左手で直に掴んで押さえた。体内の光エネルギーが眩しく光る血飛沫になって溢れるが、
お構いなしに残った右の拳で星人を殴り捲る。刃が腕と一体化している星人は避けようがない。
グロッキーになったところで離れ、イレイズは隠し技・ウルトラミキサーを放つ。
ウルトラミキサーとは、透明な筒状のバリヤーフィールドを上空から敵に被せて閉じ込め、
その中で無数の光の刃が高速回転し、敵を細切れに切り刻んですり身にする技である。
絶叫しながらも、自分が倒されても又次のグラス星侵略軍が襲来してこの星を滅ぼすと
言い残し、星人はどす黒い色のジュースになって絶命した。見上げる四条隊の前で。
その後、ウルトラマンイレイズは地を蹴り、飛行して大気圏外に向かった。
そして、バリアブレスを又も武器に変形させる。
自分と同じくらいの巨砲を構えたイレイズは、暗黒の宇宙の彼方に向け、
ウルトラ惑星破壊ミサイルを撃ち放った。
又次のグラス星侵略軍が襲来すると星人が言ったので。
宇宙の彼方で、一つの惑星が跡形もなく消滅したことを観測し、BID一同はもう何も
コメントできなかった。
憂いを完全に絶ってすっきりした暁は、左手を何重にも包帯で覆いながら、榊家に帰宅した。
又上司達の査問を受けるだろうが、愛する人々を守るというウルトラマンイレイズの意思は、
そんなことぐらいで揺るぎはしない
______________________________________________________
ウルトラマンイレイズ 3 罠にかかったイレイズ
連装砲獣・ヴォルカノン、奸計宇宙人・ブラン星人 登場
地球侵略を企むブラン星人は、ウルトラマンイレイズとグラス星人侵略軍の戦いを陰から密かに観察し、
イレイズの戦力を分析していた。更に念を押し、地球に送り込む予定の怪獣兵器・ヴォルカノンの試作型を
予めイレイズにぶつけることにした。
テレパシーで挑戦のメッセージを受け、宇宙に呼び出されたイレイズは、全身の連装砲と素早い動きを
武器とするヴォルカノンを相手に少々手間取ったが、まだ持っていた隠し技、必殺光線・イレイズショットで
ヴォルカノンを倒す。スタンダードに両腕を組んで発するイレイズショットの威力は尋常ではなく、
暗い宇宙が真っ白に照らされ、ヴォルカノンは爆発する間もなく蒸発した。ネオマキシマ砲クラスである。
その威力には驚いたブラン星人だったが、考えていたある仮定を確信とし、邪悪に笑った。
BID作戦室では、四条と上田が、命の重さや地球を守る使命の重さがどうの、人としての個人の権利が
こうのという話で又喧嘩し、文が必死に止めていた。それも空しく殴り合いになるかと思われたとき、
割り込んだ前原が両者の拳を同時に食らいながらも、静かに言った。
「そろそろ僕ら、本気出さないとまずいんじゃないですかね・・・こんな流れお約束にしたら、ずっと
ウルトラマンの前座で狂言回し止りですよ」
それを聞いて青くなった四条と上田は、取り合えず拳を収めた。前原はひび割れた眼鏡を正し、
「それに、あのウルトラマンイレイズの剣呑なやり方に毎回任せるのも不安がありますし。見たでしょ、前回の」
イレイズが躊躇無くグラス星人の母星を爆破したのを一同思い出し、ぞっとする。
しかし、現在BIDには怪獣に対して有効な装備も無いのにどうするのかと四条が尋ねると、前原は
眼鏡を押えてにやりと笑った。心なしかブラン星人の流れと似ていた。
データを元に強化されたヴォルカノンが、再度東京に襲来した。自警団として榊姉弟を先に街の外に
避難させた暁は、人目を忍んでイレイズに変身して立ち向かう。普段防衛隊員としてBIDと連動せず、一般人として
過ごしている分登場も早い。
機を見たブラン星人は、トラップを発動した。上空にステルスで隠れて待機した円盤からの操作で、
市街一帯がイレイズと怪獣ごとバリヤーで覆われる。直径500m足らずで狭目に。
怪しんだイレイズだが、取り合えずウルトラミキサーを掛けようと中空にカバー状のバリヤーフィールドを
発生させる。と、発生したエネルギーを周囲のバリヤーが感知し、内壁からエネルギーと同量の稲妻を広範囲に
降らせた。イレイズにとっては耐えられるくらいの威力だが、バリヤー内には、逃げ遅れた市民があちこちに
残っていた。稲妻でビルが崩れて瓦礫が降り、人々を脅かす。幸い死傷者は出なかったが・・・
これが星人の狙いだった。ウルトラマンの代表的必殺技たる光線技をイレイズが地上での戦いで使わないのを
怪しんでいたのだが(スライスメーザーは雑魚の一掃には有効だが、火線が細くてボスクラス相手では威力が弱い)、
使わなかったのではない、威力が大きすぎて地上では被害が拡大するため使えなかったのだ。そこで、
イレイズショットを筆頭に威力の大きい技を使わせないため、閉鎖空間を用意したのである。
「今まで、怪獣を爆破する攻撃を多用せずに死体が残る形で倒していたのは・・・」
BIDベースで事態をモニターしている岡島長官。
ヴォルカノンは実体弾を撃つため、ビームを吸収するタイマードレインは使えない。格闘技で強力な打撃を
放とうにも閉鎖空間で距離が稼げない。しかも閉じ込められた人々全員が人質で、庇いながら戦わなければ
ならない。
弾丸を食らい捲り、消耗したイレイズのカラータイマーが鳴り出す。イレイズの戦闘時間には明確な
タイムリミットは無いが、エネルギーが無尽蔵なわけではない。
ヴォルカノンに捕まってバリヤーの内壁に押し付けられ、電撃にさらされて絶叫するイレイズ!
そのとき。
閉鎖空間内の地上の一角から、大型の機動兵器が飛び出した。
地底装甲車・ジオライザー。前原隊員が自ら設計・開発を行ったBIDの新兵器である。乗り込んでいるのも
前原自身。自ら試乗すると言い張り、実戦にそのまま投入した。
悪化する戦況に上層部が漸く重い腰を上げ、開発予算を割いたのだ。前原の自信の根拠はここにあった。
閉じ込められた人々は、兵士達の誘導で、ジオライザーの開けた穴から外へ逃がされる。
イレイズを押えているヴォルカノンの背後から、ジオライザーはBIDベースの文のナビゲーションで接近し、
怪獣ケルミスの死体の構成物質を分析して調合した強酸による有機物溶解爆弾・アシッドボムを見舞った。
酸によって背面を焦がされ、悶絶するヴォルカノン!
一方、市街を包むバリヤーを発生させている発信源を上田が分析して特定し、四条の乗った高機動
戦闘機・スペースジェットが向かう。地球圏内からそのまま宇宙へも行き来できる優れもので、宇宙基地
時代の機体をチューンナップしたもの。これもジオライザーと同時に配備された。追加予算が割け次第、
随時生産される予定である。
ブラン星人の円盤は直ぐ発見され、銃撃を受けて破損し、姿を現す。同時に、バリヤー発生装置も壊れ、
閉鎖空間が消えた。自由になったイレイズは苦しむヴォルカノンを掴んで真上へと高く投げ、落ちてくる前に、
地上の被害を避けるため仰向けで垂直にイレイズショットを放った。眩しい光に包まれ、ヴォルカノンは消滅した。
グラス星人のように自分で巨大化して戦うことは出来ないブラン星人は、撃墜される前に素直にあっさり
命からがら逃げ去っていった。
事態は解決し、消え去る前に、イレイズは上空を周回するスペースジェットや足元のジオライザーに向かって
頭を深く下げた。
四条「止せって・・・」
勝利に湧く作戦室の後ろで、岡島もうむうむと頷いていた。
尚、調子に乗った前原は、ジオライザーを50機生産して地上の守りを固めるとかいう計画案を提出し、
岡島にくどくど説教された。
暗い宇宙の中の小惑星帯に、沢山の巨大な氷の塊が漂っている。
その一個一個の中に、冷凍睡眠させられている怪獣。
それらの氷塊を、ウルトラマンイレイズと、他の複数のウルトラマンが見つめている。
他のウルトラマンは、宇宙警備隊の同僚である。
______________________________________________________
暗い宇宙の中の小惑星帯に、沢山の巨大な氷の塊が漂っている。
その一個一個の中に、冷凍睡眠させられている怪獣。
それらの氷塊を、ウルトラマンイレイズと、他の複数のウルトラマンが見つめている。
他のウルトラマンは、宇宙警備隊の同僚である。
ウルトラマンイレイズ 4 氷の先送り
冷熱魔人・アッサム星人、繁殖怪獣・ピパラ 他 登場
事前情報。地球でのイレイズの仮の姿=暁の弟分の少年・信也とその友人達が、町外れでこっそり
怪獣を飼っていたのである。最初彼らが見つけたときは、中型の犬ほどの大きさの蛙といった様相だった。
珍しい生き物と思って餌を与えていたのだが、日をおかず巨大な怪獣に成長し、隠し切れなくなってしまった。
BIDが駆け付けて調べた結果、怪獣ピパラは体内に大量の卵を持っており、それらの全てが孵ると更に
爆発的な勢いで増え、地球上の他の生態系(無論人類も含めて)を脅かすほどになってしまう事が判り、
安全のためにも処分しなければならないという結論になった。しかし、信也達はピパラに情が移って
しまっており、殺さないでと嘆願し、両者の対立になってしまった。見かねた暁はイレイズに変身して
介入し、ピパラを手からの冷気・イレイズフリーザーで凍らせて冬眠させ、地球から持ち去ることで
その場をしのいだ。信也達は、イレイズを信じて全てを託した。
慣例なら、ここまででええ話やなあで終わるのだが・・・
ピパラを凍らせて宇宙に連れてきたはいいが、その後どうするのか。生物が住める環境の他の星に
持っていって解凍しても、そこで爆発的に増えて他の生き物を滅ぼしてしまったら結果は同じである。
現在イレイズ達が集まっている小惑星帯には、同じような理由で、これまで地球や他の星からも
宇宙警備隊によって冷凍されて保留処分として連れて来られた怪獣が、山のように溜まっていた。
このままずっと飼い殺しなのか。やむを得ず、宇宙保健所へ持っていくかという意見も出たが、
子供達の信頼を裏切ることは信条に反するため、イレイズが断固として拒否する。
ではどうするのかという話になっていた時、怪獣冷凍保存宙域の一角にすさまじい熱が発生し、怪獣達を
凍らせている氷が解けそうになる。何事かと一同が駆け付けると、冷気と熱を操ることが出来る
巨大宇宙人・アッサム星人が氷塊群を熱で解かそうとしていた。宇宙支配を企む邪悪なアッサム星人は、
怪獣達を蘇らせて操り、怪獣軍団を編成しようとしているのである。イレイズ達は止めろと警告するが、
星人は、どの道このまま放っておいても怪獣達の引き取り先はあるまい、自分に引き渡せば命の保証は
してやると邪悪に笑って語ってきた。無論、宇宙中で好き勝手に暴れ回らせることによってだが。
そんなことをさせるわけにはいかない宇宙警備隊一同は星人に立ち向かうが、アッサム星人は強い。
炎と冷気の同時攻撃で一同は危機に陥る。イレイズも苦戦するが、自分の個人的な欲望を怪獣達の
命の問題にすり返るような理屈を吐いてくる星人に怒りを燃やし、肉弾戦で強引に押し切って
星人にダメージを与え、怯んだところにイレイズショットでとどめを刺した。
敵は倒したが、まだ問題は解決していない。又アッサム星人のように怪獣達を自分の戦力にと狙う
者が現れるかもしれない。一同が途方にくれたとき、M78星雲の使者がやってきた。宇宙警備隊の
救護部隊・銀十字軍からの使者である女のウルトラマン、ディアナである。
怪獣達を住まわせられる、肥沃な自然環境を持つ超大型の惑星が漸く見つかったので、そこへ引き取る
ことになったのだ。一同は喜び、引継作業が行われた。
怪獣達が運ばれていく中、イレイズとディアナのみが、物悲しい雰囲気で顔を合わせていた。
星人との戦いでぼろぼろで、尚も闘気を放っているイレイズを見て、ディアナは、変わっていないのねと言った。
見送られて去っていく彼女は、かつてイレイズの恋人だったが、ウルトラマンとしてどう宇宙の平和を守るかの
意見の食い違いで別れる事になった女性だった。
______________________________________________________
明野暁がウルトラマンイレイズとして地球の公の場で活動を始めるまでには、
暫くの待機期間があったことは1話で説明されたが、今回は、その待機期間、過去の話である。
ウルトラマンイレイズ 5 魔窟の死闘
地底機械兵・ブイトム、マザーブイトム 登場
待機期間、暁は偉大なる先例に倣い、『風来坊』をやっていた。表向きフリーライターとして
日本各地を渡りながら日雇い仕事で食い扶持を繋いでいたのだが、あるとき、ペース配分を間違え、
食事代がなくなって関東某所の山中で行き倒れになった。ヒーローとしてはかなり情けない図である。
そこへ通り掛り、暁を助け、飯を奢ってくれた若い男は、ヘキ・ゼンジロウと名乗った。
彼はある国家的プロジェクトのために各地の遺跡を調査しており、この山にもそのためにやってきたと
語り、十数人の調査団を連れていた。そんなことを部外者にあっさり喋っていいのかと暁が尋ねたら、
言われてヘキは気付き、内緒にしてくれと手を合わせて頼み込んだ。プロジェクトに賭ける熱意で
気が大きくなっていたらしい。隙だらけの人の良さに暁は興味を覚え、行きがかりで調査の作業を
手伝うことになった。
辿り着いた遺跡は、言い伝えによると、太古の昔に邪悪な魔物を封印した場所だと言われていた。
魔物は巨大な体躯で、全身から使い魔の兵士を大勢生み出し、地下深くから地上への侵攻を
企てたために封じられたという。
調査団は人員を分けて少しずつ遺跡の奥に立ち入っていくが、やがて、調査員が次々と
何者かに襲われて殺される。伝説の魔物かとも思われたが、死体は、高出力のレーザーで撃たれたように
胸に穴を開けられて死んでいた。
それでも、調査団が更に入念に調査を続けたため、遺跡に潜んでいた主は業を煮やして姿を見せた。
大勢の、埴輪の兵士のような鎧を着た軍団。やはり太古の魔物かと思ったとき、軍団は、銃のような腕から
細い熱光線を撃って攻めてきた。
暁=イレイズは気付いた。宇宙警備隊のデータに存在した、某侵略宇宙人の惑星侵略用兵器だ。
開発した侵略宇宙人は既に宇宙警備隊によって滅ぼされたが、宇宙各地に放たれた兵器は潜伏したまま
生きていたのだ。機会を伺ってから目覚め、自らプラントとなってロボット兵士を生産しながら。
調査団は危機に陥り、仲間を遺跡の外へ逃がすため、ヘキは地下通路を崩して封じ、自分一人がおとりとなる。
といってむざむざ殺されるつもりはなく、隠し持っていた自作の秘密兵器を次々出して機械兵を迎え撃つが、
次第に追い詰められていく。
ヘキの行為に、暁=イレイズは感嘆した。まさにこれは偉大なる先例が見出した地球人の高潔な魂ゆえの行為、
『仲間を救うために自らザイルを切る』ではないか。
(実際には、ヘキは遺跡の奥で死にたくない死にたくないと逃げ回りながら必死で武器を繰り出しているのだが)
テンションが上がった暁は、脱出する調査団からこっそり離れ、イレイズに変身。壁の薄い場所を見付け出し、
体当たりで破って戦場に突っ込む。
驚くヘキを守り、突然現れた異様な姿の戦士が大勢の機械兵・ブイトムを相手に戦う。
しかし、遺跡が衝撃で崩れるとヘキも生き埋めになるため、巨大化は出来ない。それに、本来ならまだ活動を
始めてはいけない立場である。目立つのもまずい。
等身大で、格闘で軍団を倒していく。漸く軍団を一掃すると、
遺跡の最深部から巨大なボス・マザーブイトムが現れた。ブイトムがそのまま大きくなった姿で、全身から
機械兵が又生産されてこぼれ出してくる。一刻も早く破壊しなければ、地上に侵攻していくだろう。
しかし、大勢の敵を相手にして既にイレイズは消耗し、カラータイマーが鳴り出している。相手は巨大だが、
やはり合わせて巨大化するわけにもいかない。小さなまま立ち回るがあえなくマザーブイトムの手に捕まり、
締め上げられる。
観察していたヘキは、マザーブイトムの胸に勾玉状のランプが点滅していることに気付く。伝説の魔物は
その勾玉が弱点だったという記述が文献にあった。このロボットと同じかは判らないが、ヘキは試しに
胸を狙えとイレイズに叫んだ。イレイズは苦しみながらもスライスメーザーを放ち、マザーブイトムの胸の
ランプを狙い撃った。果たしてヘキの賭けは当たり、マザーブイトムは機能停止して、土のように崩れて
消えていった。コントロールを失った機械兵も同様に。
事後、イレイズも何処かへ姿を消し、暁がおーいと走って戻ってきた。
結局遺跡の正体は調査団の目的とは別のものだったわけだが、ヘキは次があるさと明るく吹っ切った。
ヘキと暁は又いずれ会おうと約束して別れ、暁は、改めてこの星を守る決意を固めた
______________________________________________________
ウルトラマンイレイズが地球人に『ウルトラマン』と呼ばれるのは、これまでからの慣例であるとして。
『イレイズ』という呼称はどのような経緯でついたのか。今回は、平成ウルトラになってから定番となった
名づけエピソードである。6話というのはかなり遅いが。
ウルトラマンイレイズ 6 その名はイレイズ
自律破壊弾・ビッグマリア 登場
ウルトラマンに変身する当人が名付けるような振りをして本名を言って定着させるという定番があるが、
明野暁は防衛隊にいないのでそれは無理。というわけで、他の防衛隊関係者がつけることになる。
で、つけたのは、BIDの隊員でも岡島長官でもない。今回登場の防衛軍幕僚部の幹部、岡島と同期の佐々木参謀。
佐々木はこれ又定番の、タカ派幹部である。地球の平和を乱す怪獣も侵略者も全て死んでしまえという
ポリシーの人である。怪獣を見つけ次第大火力の部隊を送って殲滅。まだ何もしていなくても危険と断定して殲滅。
そんな彼は、怪獣を次々倒してくれるウルトラマンの出現を非常に賞賛し、特に、グラス星人の母星を
躊躇無くウルトラ惑星破壊ミサイルで爆破したときはスキップしてコサックダンスしてブレイクダンスして喜んだ。
年の割りに凄い運動神経である。そして、邪悪な外敵を全て消し去り滅ぼす者として、『イレイズ』の名を送った。
実際名は体を現す現状なので既にBIDにも普及し、3話で前原隊員もその名で呼んだ。
たまたまその呼称が本名と同じだったのも、慣例なので置いておく。
そんな佐々木参謀が、地球の守りを更に強固にするための計画を発動した。宇宙からの侵略者に対して攻めに
回るための超強力な惑星破壊弾道弾・ビッグマリアを建造したのである。これを適当に各天体に打ち込んで圧力を
掛ければ、宇宙人どもはびびっておとなしくなるだろうと佐々木は高笑いであった。
BIDの面々は、懸念していた事態になってしまったと思った。『血を吐きながら続ける悲しいマラソン』から
そういう手段は却って敵を挑発するという警告は何度もなされてきたのに、この物語ではよりによって
ウルトラマン本人が、極めて初期の2話でそれをやってしまい、地球人が後に続く口実を与えて
しまったのである。このままでは地球も含めた宇宙全体の大戦争に発展してしまうだろう。しかし、佐々木は
岡島長官も迂闊に口を出せないほどの上層部の人間であり、止めさせる権限はBIDにはなかった。
佐々木は、かつて怪獣災害によって家族を全て失い、悲しみにくれた。こんな悲しみを他の者には
味わわせるまいと、残りの生涯を懸けて地球の敵は全て皆殺しにすると誓った。彼は、怪獣によって
襲撃を受けた地区の市民への援助活動に対しても積極的だった。
岡島達同様東京の視察に回り、佐々木も、自警団に加わって活動している暁に出会った。懇親会の席で
佐々木が自分の考えについて声を大にして語ると、暁は、その通りだと声を大にして同意した。
二人は大いに盛り上がった。酒が入っているのもあったようだが。
M78星雲の上司達が、何故イレイズの活動開始を長期間渋ったか、判って頂けただろうか?
勿論こんな話が何時までも続くわけは無い。
ビッグマリアの試験発射を間近に控え、意気揚々としながら執務室で書類整理をしていた佐々木だが、
ふと書類の一角の上に手を置いたとき、カチッと音がした。書類を除けて確認。
下には、常に身近に置いていたビッグマリアのリモコン発射スイッチ。
ONになっていた。
カウントダウンが始まり、BIDベースの直ぐ前に設置されていたミサイル発射基地周辺は大変な騒ぎに
なった。しかもここに至って、ビッグマリアの噴射ロケットに欠陥があることが判明。大気圏を越えるほどの
速度が出ず、途中で落ちてくるらしい。起爆すれば、地球はビッグマリアの爆発で自滅する。
首都一帯もパニック。避難しても地球自体が爆発するので意味が無い。
暁はイレイズに大至急変身し、発射を食い止めるため、ガイア44話ばりにミサイル基地にばんばん走ってきた。
しかしビッグマリアには、起爆を妨害する者を排除するセキュリティプログラムが仕込まれており、周辺に
設置された自動砲台が一斉にイレイズを砲撃。BIDベースから前原、上田、文の三人が連携してコントロール回線に
ハッキングを掛けて砲台を停止させたが、イレイズがビッグマリアに手を掛けたとき、もう一つのセキュリティが
作動した。
イレイズと同じほどの巨大弾頭の横から手が出て、直にグーでイレイズを殴って吹っ飛ばした。
内部に格納されていた四肢を伸ばし、ビッグマリアは格闘形態になって走って挑みかかる。その身のこなしは
イレイズに勝るとも劣らない。悪夢のような光景だ。このまま持ち堪えられてしまったら地球は終わりだ。
老体に鞭打って現場に走ってきた佐々木が、息を切らしながら、ビッグマリアの構造の脆い箇所を叫んで
イレイズに伝えた。イレイズは間一髪でビッグマリアの手足の関節部にスライスメーザーを叩き込んで切断し、
担ぎ上げて飛んで地球から離脱。起爆寸前で宇宙空間の安全圏までビッグマリアを蹴り飛ばし、遥か彼方で炸裂させた。
青空に眩しく輝く星を見上げ、岡島は佐々木に、イレイズが本当に消し去るものは、人々の互いの無理解によって
何時までも続く空しい戦いであるべきなのだと語った。佐々木は深く反省した。
イレイズも、宇宙空間でバリアブレスの回路の一角を自ら切断し、ウルトラ惑星破壊ミサイルを封印した。
もっと早くそうしろ。
イレイズデータベース
文
「今日紹介するのは、今回の敵・・・・・・(はぁぁ)、自律破壊弾・ビッグマリアです。その破壊力は、
イレイズのウルトラ惑星破壊ミサイルと同じか、それ以上かも知れないとさえ言われています。こんなもの
作れるんだったら、もう地球人は他の星を侵略できるんじゃないでしょうか。
冷静に考えたら、星を吹っ飛ばせる爆弾を地球の地表で作るってすっごい危ないですよね。
皆さんも気をつけてくださいねー。じゃ」
______________________________________________________
ウルトラマンイレイズ 7 脅威の超人塾
怪獣超人・マキオ 登場
暁が下宿している榊家の長女・百合子は、本職の合間を縫って、近所の子供達の勉強の面倒を
見てやっていた。両親がいない今、内職として薄謝を得て生活の足しにするということもあったが、
怪獣や宇宙人の襲来に人々が怯えている日々、子供達と親身な付き合いをして希望を与えるという
考えがあり、彼女自身子供達と付き合うのが楽しかった。暁や、百合子の弟の信也もそれを
温かく見守っていた。
ところが、練馬駅前の学習塾『超人塾』が急に大々的に客足を伸ばし、百合子の下に来る
生徒が急に減り始めた。超人塾に通うことによって子供達は急激に学力のみならず肉体能力も
大幅に向上し、父兄から大きな支持を得ているという。妙に思った暁は、家族を通わせる予定で
教育内容を見せて欲しいという口実で超人塾を訪ねた。
塾長・長谷川真樹夫は、堂々と暁を招き入れた。彼は科学者でもあり、人間の潜在能力の研究で
名を成している男で、スタイルのいい長身の美青年だが、目付きが微妙におかしかった。
暗い部屋で、真樹夫は子供達への教育方針とか方法とは関係なく、突然、本来人間がどれほど
大きな潜在能力を持っているかという、過去の事例を述べ始めた。
70年代中期、東京港湾で、クレーンだけでオイル超獣を撃退した青年。その青年は当時の
対怪獣攻撃隊に入隊し、何度も怪獣に直接組み付いて格闘戦を挑み、突破口を開き続けた。
同じ時期、同様に怪獣に生身で挑んだ市井の紙芝居屋や寺子屋の先生、バレーボールで怪獣に
勝った老人ホームの手伝いの女性などといった事例も頻出した。
80年代初頭には又別の例が見られ、地方都市に住んでいた人間や山奥から降りてきた少年等が
巨大怪獣に変身し、相撲を百番取ったりマラソンしたりして騒ぎを起こしたという。
こういった能力をものにすれば、人類は怪獣が頻繁に暴れ回るこの時代を不安なく生き延びる
ことが出来る、そのために自分は子供達をそのように育てているのだと真樹夫は語った。
そして、彼が開発したペンライトのようなメカ、『人間超越管』を取り出し、百万ワットの
フラッシュビームを焚いた。
超人塾の屋根が破れ、半人半獣の怪獣超人・マキオが出現した。駅前の人々が恐怖して
逃げ回る中、マキオは、人間は遂に怪獣と同等の力を得たのだ、もう怯えて生きる必要など
ないのだと叫んだ。だが、その叫びは、普通の人間には理解できない獣の叫びだった。
怪獣になってしまったので、言葉が喋れなくなったことにマキオは気付いた。更に、
人間超越管は一度使うとフィラメントが焼き切れてしまう使い捨てで、元に戻る方法を
考えるのもうっかり忘れていた。
マキオは、やけになって街を壊し始める。出動してきたBIDが攻撃するが、殆ど効果がない。
崩れた超人塾の中で暁はイレイズに変身し、マキオを制止するが、マキオは、人類はこれだけの
超人的な力を得た、もうウルトラマンの力は要らないから帰れと叫んだ(イレイズにはマキオの
言葉が理解できる)。
出し抜けに帰れと言われて腹が立ったイレイズはマキオと戦い始めた。マキオの戦闘能力は
イレイズと拮抗しており、勝負が付かない。
そこに、事情を聞いた百合子が現れた。驚いた暁=イレイズは百合子に逃げるように
身振りするが、百合子はマキオに、人間のために超人的な力を得たのなら、人間としての力で
勝負しなさいと説得する。
そして、マキオとイレイズは百合子の審判の下、百人一首、七並べ、すごろく、なぞなぞ
などの知的ゲームで対決し始めた。ゲーム用の巨大なカルタやトランプは、BIDの前原隊員が
勝手に開発して提供した。
頭脳戦でも能力は拮抗し、日が傾いてきた。業を煮やしたマキオは、折角怪獣超人に
なったのに何故こんなせせこましいことをしなければならないのかとブチ切れ、又暴れようとする。
そのとき、今度は信也が駆け付け、マキオが暴れたために周辺の建物が壊れ、信也の友人達が
建物の地下に閉じ込められてしまったと伝える。友人達の名前を聞き、超人塾の生徒だと
気付いたマキオは、イレイズとの勝負を投げ出して助けに向かう。気を遣って少しずつ静かに
瓦礫をどけ、生徒達を助け出したとき、人の心を取り戻したマキオは、何時の間にか
元の人間に戻っていた。
結局今回の戦いは勝負にも何もならなかったが、殺し合いという結果にならずにすんだことで
暁はほっとしていた。その後も真樹夫は普通に学習塾を続け、子供達からも、ちょっと頭がおかしいと
言われつつも慕われ続けている。
(但し、超人塾跡にまだ大量にストックされていた人間超越管は全てBIDに押収・破壊処分された。
ほっといたら生徒達にも使わせるつもりだったらしい。そればかりは洒落にならない)
百合子が暁の下に子供達を連れてきて、暁にも子供達の遊び相手になってやってほしいと言って来た。
自警団のリーダー的存在として子供達も暁を好いているのだが、暁は萎縮してダッシュで逃げ出した。
暁は、子供達の無垢で純粋な期待の視線がプレッシャーで大変苦手だった。
実は、ミラクルの「びっくり!衛くんが100点取った!」に触発され、後期80的な
話をやれないかと自分なりに模索した話です。でも、何故かどう見てもティガの
「影をつぐもの」になっていました。ミラクル作者様、ごめんなさい。
テツオンとイーヴィルティガ、込められたテーマに近いものがあるというのは暴論ですか?
______________________________________________________
ウルトラマンイレイズ 8 嘘つき怪獣の涙
ペテン怪獣・ダマクラー、卑劣怪獣・ドゲス 登場
BIDベースは、太陽系内を移動する数十頭の宇宙怪獣を観測していた。いずれも同じ姿で同種。
過去に同じような例は何度か見られ、一斉に地球を襲撃したというケースは無い。種の維持のために
一定の時期に宇宙を渡っていくのだろうと推測されていた。
ところが、そのうちの一頭が地球に飛来した。翼を持ち、白いむく毛につぶらな目という姿でじっとおとなしく
しており、箱根山中にじっとしていて暴れる様子は無い。懐にそっくりな小さな子供を抱えている。
何らかの事故で群れからはぐれてしまったのだろうと判断したBIDは、時期が来れば地球から飛び立つだろうと
考え、当面面倒を見ることにした。そこには、かつての先達が本来無害な怪獣を一時の憤りや手違いで
殺してしまったケースに対する後ろめたさがあったのかもしれない。
文隊員が怪獣を大層気に入り、飼育係となった。怪獣は親子ともどもとにかく沢山食ったが、文は
自分の給料から天引きまでしてもらい、盛りそばやカロリーメイトでも三食満足に食べられないという
状況になっても怪獣を可愛がりつづけた。
やがて、満足したらしい怪獣は、体調が元に戻りでもしたのか、翼を広げ、宇宙に飛び立っていった。
文は寂しさを覚えながらも、元気でねと見送った。
宇宙に出た怪獣は、狡猾な笑みを浮かべた。
おとなしそうな姿と態度をしていれば、立ち寄った星の善意の人達が優しくしてくれる。そこに付け込み、
たっぷりご馳走になってのんびり休んでから又他の星へたかりに行くというのが、実は高度な知能を持った
このペテン怪獣・ダマクラーの手口だったのだ。姿格好は渡り怪獣そっくりに擬態しているだけで、
抱えていた子供も実はロボットの人形で、中には文のくれた餌が道中の食事としてたっぷり詰まっていた。
笑いが止まらないダマクラーの前に、突然、別の怪獣が立ちはだかった。それを見たダマクラーは、瞬時に
青ざめた。
それは、ダマクラー同様怪獣でありながら知生体で、しかも彼以上に汚い手口で各惑星を荒らし回っている
宇宙の嫌われ者、ドゲスだった。
ドゲスもダマクラーと入れ違いに渡り怪獣そっくりに擬態して地球に降りた。又戻ってきたのかと思った
文は喜んで迎え入れ、ドゲスはダマクラー以上に餌をがっつき、そこら中をうろつき、大いびきで
ごろ寝したり放屁したり深酒して吐いたりしてしたい放題。
ダマクラーは宇宙からその様子を見ながら、納得できずにいた。だが、地球に戻って文句を言いにいけば、
ドゲスにこれまでのことを全部ばらされる。踏み出すことが出来ない。
文への余りの仕打ちを見かねた四条と前原がドゲスを攻撃すると、ドゲスは醜い正体を現して暴れ始めた。
困ったことに、真正面から普通に戦っても強い。蹂躙される街。
ダマクラーは我慢できなくなって地球に降り、文を守ってドゲスに立ち向かう。ドゲスはダマクラーの
これまでの悪行を語りながら容赦なくダマクラーを痛めつけ、お涙頂戴な茶番に安易に騙される地球人も
猿以下だと嘲り笑う。
そして、遂に介入したウルトラマンイレイズに、1話以来の変身直後の不意打ちで思い切り殴り倒された。
一番猿以下なのは貴様だと断じたイレイズは、ドゲスの反撃の格闘攻撃に苦戦しながらも、対怪獣格闘術・
イレイズアーツを行使。拳と蹴りで叩きのめして地に伏させ、二代目ムルチにドラゴリーが行ったそれの
ごとく、顎を片腕だけで毟り取り、五体をばらばらに引き裂いて惨殺した。
(後でアトラクションショーの着ぐるみ担当にスタッフがこっぴどく怒られた)
ダマクラーは宇宙警備隊に連行されることになったが、反省の色が見られることから減刑が考慮されるという。
去り際に泣いて詫びるダマクラーに、文は又地球に遊びに来てねと微笑んで見送った。
宇宙から来るのは善意の存在だけではない。残念なことに。
______________________________________________________
ウルトラマンイレイズ 9 失踪特急
連装砲獣・ヴォルカノン2号、奸計宇宙人・ブラン星人 登場
都心一帯で、深夜に市民が行方不明になる事件が多発する。侵略者に拉致されている可能性を考え、
BIDに厳戒態勢の要請が下った。だが、上田は何時もの調子で勤務時間が終わったらさっさと勝手に帰り、
四条を大いに怒らせた。上田が軍人家系で、世襲によって不本意な形でBIDに入隊させられた件を
知っている文は、四条を宥める。
ちなみに、前回の8話で怪獣ドゲスの文への仕打ちに対して四条と前原は義憤を覚えたが、上田は
ドゲスの言い分にも一理あるとし、何のフォローもしなかった。それでも文は上田をフォローする。
遅い時間帯、上田はぶつぶつ文句を呟きながら終電に乗る。と、ライターの仕事で出版社に向かっていて
これから榊家に帰る暁と出くわした。市民とBIDとの懇親会で顔見知りでもあり、言葉少なくやり取りを交わす。
そのうち二人は、車内の雰囲気の異常さに気付いた。皆仕事帰りで疲れているにしても、異常に生気が無い。
上田も暁も余り明るい性格ではないが、彼らから見ても暗すぎる。
そのとき、終電は通常空間から消え、別次元の世界に突入した。
全ては、3話以来再度の地球侵略を狙うブラン星人の仕業だった。異次元に地球の世界のそれそっくりの
都市を作り、人々をさらって移住させていたのだ。
だが、さらわれた人々はそれでもいいと言い、元の世界に帰ろうとしない。得体の知れない怪獣や
宇宙人が暴れ回る地獄のような世界に戻るくらいなら、ブラン星人に管理されていても一応の安全が保証
されているこっちの世界のほうがいいというのだ。
今の世界に怯えて自立心を失った人々に餌を与え、どんどん異次元に連れ去り、最後は地球から一人も
人間をいなくしてその後征服する、それが星人の狙いだった。
卑劣な計画を知って怒ろうとする暁だが、それより先に、上田が怒った。携帯していたBID装備の銃・
ビッドガンを出し、問答無用で人々を撃つ。ビッドガンは、実体弾・光線以外に麻酔弾も撃てる様に
切り替えられる機能があり、人々は一人残らず眠らされた。結構な射撃の腕である。続けて星人を
実体弾で撃とうとすると、星人は焦ってあっさり逃げた。
上田は運搬用の車両を見つけて人々を乗せ、異次元への出入り機能を持つ失踪特急に移していく。
全員元の世界に連れ帰すつもりだ。彼の意外な行動に暁は感嘆し、作業を手伝う。
上田の真意は、
『この俺が毎日嫌々BIDに通ってやりたくもない仕事を我慢してやってるのに、こいつらだけ楽なほうに
逃げるなんて話が通るか!』
だったのだが、言わないので暁は気付かなかった。隠したわけではなく、上田にとっては暁の存在など
別にどうでもよく、話す必要も感じなかったからだ。
人々を全て乗せて異次元から脱出しようとすると、ブラン星人は又も強化改造した怪獣ヴォルカノンを
放ち、失踪特急の停車駅に追撃を掛ける。暁は上田の目を盗んでイレイズに変身。上田も暁の挙動になど
特に注意しておらず、イレイズが助けに現れたことだけ認識。
ヴォルカノンは機動力が更に強化されており、高速移動で残像を生み出して分身し、虚像でイレイズを
翻弄。上田は、ビッドガンに搭載された高性能スコープのセンサーで実体を見つけてイレイズに教え、
自身も銃撃してヴォルカノンの動きを鈍らせる。動きが止まったヴォルカノンにイレイズはウルトラ
ミキサーをかぶせ、すり身に切り刻んで撃破する。敗北と見たブラン星人は又もあっさり遁走した。
上田と暁まで行方不明になり、懸命に捜していたBIDメンバーと榊姉弟は、二人がさらわれた人々を
連れ帰ってきたので大層喜んだ。上田を一番心配していたのは四条だったようである。
救出された人々だが、へタレ化してしまったのが直ったわけではなく、異次元に戻してくれと
うるさいので隔離病棟に押し込め、上田がリハビリという名目で毎日地球の現状を映像などで無理やり
認識させ、フラストレーションを発散させている。残念ながら、特殊な携帯から出る光線で記憶を
消せるなどという設定は今のところ無い。
ひひひひひと笑いながらリハビリ作業を続ける上田に、前原が、
「上田隊員も異次元で安全に暮らすという選択肢もあったんじゃないですか?」
「・・・・・・・・・」
しかし、失踪特急はBIDによって解体処分され、もう残っていない。
上田は、夜の街に走り出して空に叫んだ。
「連れて行ってくれー!! 俺も連れて行ってくれーーーーー!!!!!」
______________________________________________________
ウルトラマンイレイズ 10 怪奇・超音速老婆
超音速老婆・スカイバーサン 登場
BIDの主力戦闘機・スペースジェットの量産態勢が整い、先行生産機が四条隊員配下の部隊に
回され、四条をリーダーに改めて対怪獣空戦チームが編成されることになった。漸くまともな
装備を部下に与えられることになって四条は喜ぶ。同時に、3話から四条に回されていた
先行機も性能強化され、四条はBIDベースからの管制の下で超高空で試験飛行を行う。
爽快な気分で飛んでいた四条は、コクピットのキャノピーの外にそれを見た。
成層圏の極超低音と真空に近い状況の中で、足場も何も無いのに、スペースジェット(以下、
SJと略)同様の速度で走っている、古びた野良仕事の作業着を着た、白髪の老婆。
四条を見てにたりと笑う。
四条は錯乱するが、BIDベースからのフォローでどうにか正気に戻り、オートコントロールに
切り替えて墜落は免れた。
四条が見たのは幻覚ではないらしく、観測衛星からの映像にも走る老婆が映っている。
その後も同じ老婆を見た各国空軍や民間機のパイロットが事故を起こし、次々BIDに通報が入る。
だが、肉眼では見えるのにレーダーやセンサーには何も捉えられておらず、分析が出来ない。
電波妨害やステルスが行われている様子も無い。
それらのニュースは、信也と一緒に墜落現場の取材に行った暁も認識していた。
四条は何時に無く怯え、前原に早く原因を究明してくれと必死で頼む。四条はお化けや幽霊
などの怪奇現象・・・というか、理屈でつじつまが合わないものが苦手だったのだ。
だが前原は、別に科学は全ての物事の解明に通用するわけではないと言い切る。こうした不思議な
現象には、先達の防衛隊やウルトラマンも何度となく遭遇し、相応の方法で切り抜けてきた。
それは科学的手段ばかりではなく、民間伝承による御祓いや単発ゲストの神秘的人物の祈りという
ケースもあった。中には、解決できず結局投げっぱなしになっているものも少なくない。
大体、理由不明で刹那的にパンダを盗むためだけに地球に来た星人とか、餅を食うためだけに
月から来た手足の生えた巨大な臼とかも人類は受け入れてきた、何故今更空飛ぶ走るばあさんくらいで
騒ぐのか。これから後続の空戦部隊の面倒を見なければならないのに不甲斐ないと、前原は厳しく
四条を突き放す(分析の継続をやめたわけではないが)。
しかし、怖いものは怖い。四条はノイローゼになってしまい、文に看病される有様。
使えない彼に代わり、上田が空戦部隊のリーダーを務めると自己申告して訓練を始めた。
厳しい訓練に耐える上田に周囲は感心するが、単に上田は一々言うことが体育系で暑苦しい四条が
個人的に嫌いなので、役目を奪って屈辱を与えたいだけだった。
苦しむ四条の姿を見かねた配下の空戦部隊の若き女性リーダー・三森真理(みもり・まり)は、
彼の仇を討つため、走るばあさんが頻出している空域に仲間を連れて量産SJ編隊で飛ぶ。果たして
ばあさんは現れ、SJ隊は攻撃を開始するが、ばあさんの空中機動性能はSJ隊以上。逆にSJ隊は
翻弄されて互いに接触を起こし、次々脱出を余儀なくされる。そして、一人残った真理の機に
ばあさんは杖を振りかざして迫る。
そのとき、部下達の危機を知り、恐怖を精神力で押さえ込んだ四条が、自分のカスタムSJで
援護に参上。雄叫びを上げて壮絶なドッグファイトでばあさんを銃撃し、圧倒する。
不利と見たばあさんは怪獣サイズの超音速老婆・スカイバーサンに巨大化。しかしばあさんの姿と速度はそのまま。
窮地に追い込まれた四条機を助けに、暁の変身したウルトラマンイレイズが飛来。杖を振るう
スカイバーサンに対し、バリアブレスから長い刃を出した武器・バリアブレスソードで立ち回り、
絆の巨人とその宿敵の闇の巨人の空中戦張りにCGばりばりで激しい打ち合いを展開。押されたスカイバーサンは
戦法を変え、イレイズの周りを高速で走り回って衝撃波の渦を発生させて苦しめる。その危機を、
四条と真理のSJのコンビネーション攻撃が救い、激しく動き回ったスカイバーサンは腰を痛めて空中停止。
障害物の無い超高空なら遠慮はいらず、イレイズはスカイバーサンの隙を突き、全力でイレイズショットを
撃って消滅させた。
四条は汚名をそそいで大殊勲を上げて凱旋、部下達の賞賛を受ける。上田の訓練は無駄骨になり、
彼は全身筋肉痛で倒れていた。
スカイバーサンの正体も目的も最後まで不明だったが、今回は四条が欠点を克服してステップアップする
ドラマなので、これでいいのである。ばばあのことなんかどうでもいい。
もう大丈夫かと思った文が試しにパーティグッズの作り物のお化けのマスクを被って背後から四条を脅かしたら・・・
四条は気絶した。
尚、四条と共に活躍した真理が、今回よりBIDの新人隊員に昇格。仲間達から祝われた。
キャラ解説3
三森真理(みもり・まり)
初期に前線部隊を率いていた四条の側近的立場の部下だったが、10話での活躍でBID隊員に昇格。
四条と共に空戦担当となる。クールビューティっぽいルックスだが、性格は明るく素直な女性。
______________________________________________________