ウルトラマンイレイズ 11 信也の家出
異次元の老夫婦、戦闘執事・バトラー 登場


 榊家の校区の小学校でいじめ問題が起き、父兄に注意して欲しいという旨の連絡が回った。
百合子だけでなく、既に家族同然の付き合いである暁も眉をひそめるが、数日後、いじめる側のほうに
百合子の弟の信也が加担していたことが判明した。百合子が問い詰めると、いじめられていた子は
裕福な家の息子で、毎日の登下校も家の専用の運転手の車によるお出迎えで、皆とも全然喋らず
付き合いが悪いから、仲間はずれにしてやったんだと信也は何の気なしに言った。
 暁はいきなり信也の頬を一発殴り、きつく叱った。
 信也は状況を精神的に受け入れることが出来ず、その夜こっそり家出した。
 あてども無く、人通りも無い夜の商店街を歩いていた信也は、ショーウインドーに手を付き、ガラスに映る
自分の暗い顔を見ていた。と、突然掌への抵抗が消え、信也はガラスの中に吸い込まれた。
 吸い込まれたところは、一面の明るく美しい草原と森だった。その一角に大きく立派な屋敷があり、
屋敷の主らしい上品な身なりの老夫婦が信也を優しく出迎えた。ご馳走を振舞われ、高価そうな玩具で
楽しく遊び、信也は老夫婦を既にいない両親のように思い、共に夢のような時を過ごす。

 信也がいないことに気付いた百合子と暁は、手分けして必死に町中を捜す。
 今になって暁=イレイズは悔いていた。自分は何時もそうだ。許せないことがあるとまず正義の怒りが全てに優先
されてしまう。相手が人間であればその非を後先考えずに容赦なく責め、怪獣や侵略者であれば必殺技で八つ裂きに
してしまう。そんな自分だから、ディアナも俺から離れていったのだと。

 異次元の屋敷で楽しく過ごしていた信也だが、ふと、姉の百合子と、兄同然の暁は今どうしているのかと気になり
出した。だが、暁に叱られたことが心に引っかかり、帰りたい感情を押し殺し続ける。

 ウルトラマンの超感覚で、僅かな空間の歪みの反応を察知した暁は、物陰に隠れて等身大のイレイズに変身。
真昼間で商店街の人々が驚くのも構わず、ショーウインドーから異次元に飛び込んだ。
 直ぐに屋敷を見つけるが、屋敷の執事である屈強な大男がイレイズを阻む。無理に通ろうとすると、男は
騎士の鎧のような装甲で身を包んだ怪人に変わった。何故イレイズが来たのかと驚いて見守る信也を前に、
両者は凄絶な格闘を展開する。
 長い戦いの後、最早勝敗が決してもまだ縋り付いて離さない怪人執事をずるずる引きずり、イレイズは
ぼろぼろになって信也の前にやってきた。そしてテレパシーで伝える。お姉さんだけでなく、暁も今君を
必死に捜している、しかし見つからないので私が手を貸し、ここに来た。暁は君を殴ったことをまず
謝りたい、頼むから帰ってきてくれと言っていた、と。
 信也が迷っていると、聞いていた老夫婦は、家へ帰るように勧めた。別に悪巧みがあって信也をさらって
幽閉しようとか思っていたわけではなかった。
 別れを惜しんで去る信也を老夫婦は笑顔で見送った。
 そして、信也がいなくなってから号泣した。老夫婦も孫をなくして寂しく暮らしていたのである。
執事も老夫婦の心情を知っていたから、イレイズを阻止すべく死闘を繰り広げたのだ。

 イレイズは何時の間にか何処かに去り、入れ替わって、街に戻った信也を傷だらけの暁が迎えに来た。
信也と対面した百合子が泣いて信也を抱きしめて喜んだ後、暁は、信也に対してきついことを言う自分が家に
いることが我慢できないなら、自分が榊家から去ると言い、既に荷物を纏めていた。間違っていることが
許せないという自分の生き方だけは変えられないらしい。
 それでも、信也は勿論ずっと家にいてくれと叫び、暁にも縋り付いた。

 翌日直ぐ信也はいじめていた子に謝りにいき、雨降って地固まった。
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ウルトラマンイレイズ 12 分裂凶獣の恐怖
分裂凶獣・ガタストロン 登場


 岡島長官と佐々木参謀の各方面への働きかけにより、かつて破壊されたBID宇宙基地の再建計画が立ち上がった。
宇宙に運ばれた資材が組み上げられ、建設が進んでいく様子を見て、ここまで力を取り戻すことが出来たかと
BIDの面々は胸を熱くする。
 だが、その建造中の宇宙基地が、完成前に木端微塵に破壊された。作業員も全員生きて帰らなかった。
現場の記録映像を見たBIDは戦慄する。基地を破壊したのは、一年前にもBID宇宙基地を襲った宇宙大怪獣・
ガタストロンだった。基地を破壊したガタストロンは又も宇宙のいずこかヘ消え去った。
 宿敵の出現にBIDは怒りと闘志を燃やし(例によってやる気がなく、どう面倒を避けるかに腐心している
上田を除く)、ガタストロン退治に乗り出す。前原はガタストロンがどうやって瞬時に姿を消しているのかを
調べ、一方岡島と佐々木は、宇宙基地を建造したら再度怪獣が現れたことから、理由は不明だが狙いは宇宙基地で
あると仮定し、ダミーの基地を作っておびき出す計画を立てる。
 事件は民間にも報道され、ガタストロンの映像を見た榊姉弟は激しい悲しみと怒りに襲われる。一年前に
宇宙基地を襲ったガタストロンはその後ランダムに地上をも襲い、各地に被害を出した。そのとき、榊姉弟の
両親も殺されたのだ。
 怪獣への強い復讐心に捉われる信也に暁は言う。両親を殺された恨みと憎しみは判る、仇を討とうとするのは
いい。だが、その後のこともちゃんと考えておけ、君だけではなく百合子さんがいる、今やたった一人の家族の
姉さんを君が支えていかなければならないのだと。信也は素直に頷いた。
 暁も、内心怒りに燃えていた。マキオの時のように物言わぬ怪獣の感情を察知できる暁=イレイズは、
暴れるガタストロンの姿を見て、何故宇宙基地や地上を襲ったのか察した。この怪獣は、笑っている。
街を壊されて追い回され、無力に殺される人々を見て楽しんでいるのだ。まだ自分が地球防衛の任について
いなかった時とはいえ、一年前に何も出来なかった自分にも怒りを覚え、イレイズは必ずガタストロンを倒すと誓う。

 宇宙に準備されたダミー基地に対し、ガタストロンは三度出現。基地に組み付いて壊そうとするが、
ハリボテで作業員はおらず、しかも、内部には高性能爆弾が仕込まれていた。作戦を仕切る岡島は
リモコンでガタストロンごとダミー基地を爆破するが・・・それでもガタストロンは死なない。
続いて、四条率いるスペースジェット部隊と佐々木指揮下の宇宙戦闘機隊が攻撃を掛けるが、びくともしない。
戦闘機は次々墜とされ、迎撃側は危機に。そこへ、暁の変身したウルトラマンイレイズが現れる。
イレイズは一気に勝負を決めるべく、気合を込めてイレイズショットを撃つ。

 が・・・突然ガタストロンが霧のように掻き消え、イレイズショットは空を切った。
驚くイレイズの背後に、もやのようなものが集結してガタストロンが実体化し、後ろからイレイズを
締め上げて苦しめる。イレイズが反撃しようと、ガタストロンの首を両手で押さえ込んで
投げ離そうと力を入れると、ガタストロンの首があっさりもげた。断面には虫の脚のようなものがわしゃわしゃ
蠢いていて、もげた首があぎとでイレイズの腕に噛み付く。ガタストロンの手足ももげてイレイズの手足を
押さえつけ、胴体が飛び回ってイレイズに何度も体当たり。
 前原はやっと気付いた。ガタストロンは、頭や胴や四肢や尻尾がばらばらになって飛び回り、
更に原子レベルで自由に分解・集結できる、群体生物なのだ。逃げる際に姿を消したように見えたのも、
原子レベルに分解したからだ。これでは、イレイズが得意とする、相手を五体バラバラにする戦法は役に立たない。
締め上げられ、噛み付かれ、体当たりされ、イレイズは苦痛に絶叫する・・・!!
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ウルトラマンイレイズ 13 星からの過去の女(ひと)
分裂凶獣・ガタストロン 登場


 イレイズは気力を振り絞り、持っていた光のエネルギーを一斉に全身から開放。
イレイズを押さえ付けていた怪獣ガタストロンは弾き飛ばされてダメージを受け、原子分解で
姿を消して撤退する。だが、カラータイマーの点滅が頂点に達していたイレイズの力もそこで尽き、
弱まる光と共に透明になって消えてしまった。

 気が付くと、イレイズは、我々の世界ではない光溢れる別空間に漂っていた。
身体のダメージは癒えつつある。彼を回復させていたのは、宇宙警備隊の救護部隊・銀十字軍から
再びやってきた女ウルトラマン・ディアナの肉体回復光線・サイキックケアだった。
 身体が回復すると、イレイズは怪獣を倒すために地球に戻らねばと勇む。だが、今のまま
戻っても又同じことになって怪獣にやられるだけだとディアナは制止する。地球を狙う敵は
日々強くなっている。イレイズもレベルアップしなければならない、自分が来たのは
そのためでもあるとディアナは言う。

 で、ディアナはイレイズを更に又別の異次元『時空教練場』へいざなった。
ウルトラ戦士が訓練してパワーアップを行うために作られた空間で、見回すとなんか
奥多摩の採石場辺りが青や赤のフィルターでエフェクトを掛けられただけの場所にも見えるが、
異次元である。異次元ったら異次元である。マクー空間や銀河大戦に出てくる異星の風景も
異次元なので異次元である。
 時空教練場での時間の経過は地球に比べて極端に遅くなっているので、訓練のための時間は
稼げる。だが、完全に停止しているわけではない。最終的にパワーアップを成し遂げなければ、
どちらにしても地球はガタストロンの攻撃で破滅する。教科訓練の指導には自分が当たると
ディアナは言う。イレイズは、お前の下から去った俺に何故ここまでしてくれるのかと問うが、
ディアナは銀十字軍隊員としての使命だというだけで、後は何も答えなかった。

 イレイズが消えてしまったことで地球の人々はショックを受けていたが、榊姉弟はイレイズが
生きていることを懸命に信じていた。
 BIDとしても、イレイズ不在だからといって地球防衛を放棄するわけには行かない。前原は、
磁場を発生させて原子を固定し、ガタストロンの原子分解を一時的に止める特殊光線砲を開発。
もう一度ガタストロンをおびき寄せて光線を撃ち込み、分裂戦法が使えない隙に今度こそ
大火力で殲滅する作戦が取られることになる。
 宇宙空間でスペースジェット(以下、SJ)隊と佐々木参謀の戦闘機隊はガタストロンと四度目の交戦。
四条のSJが決死の攻撃で光線砲をガタストロンに撃ち込むことに成功、副官の真理率いる量産SJ隊が
先行攻撃開始。
 しかし、分離できないガタストロンは、更に奥の手を出した。口から強力な毒液を噴射し、
SJを次々撃ち落す。次第に劣勢になる中、光線砲の有効時間のタイムリミットが迫る。
そして、真理のSJが怪獣の毒牙に掛かろうとしたとき。
 眩しい光と共に、ウルトラマンイレイズが再度宇宙空間に現れ、怪獣の攻撃を間一髪で阻止した。
 
イレイズは全身泥だらけで見るからに消耗している。しかし、その身体は、気迫による凄まじい
闘気に満ちている。パワーアップは成功したのだ。
 時空教練場での連日、イレイズは休む間もなくディアナの特訓を受けた。先ず、全身に強力な
重力による重圧を掛けられ、動きを制限される。そして次々訓練メニュー。
 ディアナの乗ったウルトラジープで追い回される。止まれば勿論撥ねられる。
 宙吊りにされて紐で駒のように高速回転させられる。
 滝の水を手刀で斬る。
 複数宙に吊られ、振り回されて襲ってくる先の尖った丸太を目隠しして心眼で回避する。
 何本ものマニュピレーターで刃物を振り回してくる変な特訓マシーン(カプセル怪獣らしい)の
攻撃に対応する・・・
 ジープも紐も滝も丸太も特訓マシーンも全部ウルトラマンサイズ。
 1974年に地球防衛についていた偉大なる先人は、これらの特訓で次々新たな必殺技を編み出し、
多くの怪獣や宇宙人を倒して地球を守った。同じウルトラマンならイレイズにも出来るはずだ。
出来ないとは言わせない。出来なかったら死ぬだけだとディアナは言い切った。
 イレイズが彼女よりも地球防衛の使命を選んだことへの恨みではない。ないったらない。

 帰ってきたイレイズに対し、特殊光線の効果が切れたガタストロンは、又分裂攻撃を
仕掛けようとした。だが、出来なかった。
 パワーアップの後で重力の拘束を解かれ、移動速度が遥かに増したイレイズの拳を、
分離するより先に食らったのだ。パンチ力も桁違い。更にイレイズアーツによる連続攻撃。
ガタストロンは容赦なく蹴られ、殴られる。
 初めて命の危機を感じたガタストロンは、何とか不意を突いて、イレイズに毒液を吐きかける。
毒で痺れて動きが鈍った隙に、今度こそ分離攻撃でとどめを刺そうとする。
 そこへ、異次元からディアナが転移してきた。そして、宇宙空間をウルトラジープで疾走し、
思い切りガタストロンを跳ね飛ばして大ダメージを与えた。
 毒で痺れて尚通常レベルの動きのイレイズは、吹っ飛んだガタストロンにイレイズフリーザーを
浴びせて凍らせ、原子分解を封じ、そして、今度こそイレイズショットで欠片も残さず消し飛ばす。


 青い地球を揺さぶる敵を 消して滅ぼす巨大な男
 ままならない涙救えと 不屈の魂 指令を下す

 待ってても 光は来ない 自分で光れ みんなで光れ
 今ここで生きているのは 君なのだから

 痛みと苦しみ背負うのは 勇者の勲章
 戦え! イレイズ! ウルトラマンイレイズ

 地球の人々がイレイズの勝利を喜び、帰ってくるのを待っている。
 しかし、イレイズは戻ろうとして、思わず、ディアナに振り返った。
 ディアナは、黙ってイレイズを蹴り飛ばし、地球へ押し出した。
 戻らない過去よりも、変わって行く未来のために。
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ウルトラマンイレイズ 14 過去の女(ひと)・地球へ
曲刀魔人・ゲパルタン、三位一体怪人・トリプラ星人 登場


 怪獣ガタストロンが倒され、BID宇宙基地建造は再開された。とはいえ、ガタストロンへの迎撃で
予想以上に消耗したため、まだ時間は掛かる。

 イレイズは、地球を急襲した侵略者・トリプラ星人と対峙していた。そっくりな三兄弟の星人で、
連携攻撃を得意とする。
「のこのこ現れおったな、ウルトラマンイレイズ」
「貴様が幾ら強くても、三人がかりではかなうまい」
「今日こそ貴様の最期だ、うわははは」
 ばぢゅん「は?」
 べらべら喋っている間に、スライスメーザーで全員横一文字に切断された。
 ディアナの特訓により大幅にパワーアップしたイレイズ、スライスメーザーも最早必殺技クラスの
威力になっていた。並みの星人程度は瞬殺だった。

 さほど消耗もせず榊家に帰った暁は、信也にせがまれ、百合子も伴って次の休日に一緒に
遊園地へ遊びに行く約束をした。現状の戦況なら大丈夫だろうと判断した。

 だが、それは油断だった。
 トリプラ星人は、まだ隠し球を残していたのだ。倒された三人のうち一人が、上半身のみで
這ってアジトに戻り、地球攻撃用に用意していた怪獣兵器を起動させてから、絶命した。

 東京郊外の遊園地で榊姉弟と共に遊んでいた暁は、晴海のBIDベースを怪獣兵器が襲っているという
ニュースを聞いて驚いた。だが、今日は榊姉弟に付き合う約束だ。楽しみにしていた信也は、始終暁に
くっついて離れない。暁はBID隊員ではなく、普段はその立場を活用して拘束されずに変身していたのだが、
今日この状況では口実を作って現場へ向かって変身して戦うわけにもいかない・・・!

 だが、ピンチのBIDベースに、別のウルトラマンが飛来した。
 女ウルトラマン・ディアナである。
 一番驚いたのは暁。ディアナはイレイズの地球防衛への決意を受け入れて帰ったのではなかったのか?
そんな驚きを尻目に、金色の派手な鎧を着て巨大な曲刀を振りかざす人型の怪獣兵器・ゲパルタンに
対し、ディアナは圧倒的な力を見せる。曲刀の斬撃を身軽に回避し、手からの冷気・ディアナフリーザーで
動きを封じ、格闘攻撃・ディアナアーツで連打し、最後は又も時空教練場からウルトラジープを召喚して
ゲパルタンを撥ね殺した。

 後日、人目のないところで、ディアナは地球人の美女・秋月さやかとなって暁の前に現れた。暁が事情を
問い詰めると、そんなに帰って欲しかったのかと質問返ししてさやかは暁をいびる。本気ではない。
 今回のようなケースもあることを考慮し、暁がイレイズに変身する際に地球人との付き合い上で
スケジュールがバッティングしないように偽装工作の手伝い、及び敵に苦戦したときの援護要員として
彼女も地球に駐在することになったのである。無論、任務で。普段は、フリーライターの暁の
担当編集として出版社に勤務する。寝泊りは社宅で別居だが。
 暁は針むしろの心境だった。

 ディアナ=さやかは、途中退場してしまった南夕子とか、城野エミが代わりに死んだとかで本編での
扱いがいまいち上手く行っていなかった気がするユリアン=星涼子とかを、補完してみたいと言う考えで
出したキャラです。滅茶苦茶厳しいウルトラの母でもありますね。
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ウルトラマンイレイズ 15 タイマードレイン腹八分
光線砲獣・コズモカノン、奸計宇宙人・ブラン星人 登場


 ついこないだパワーアップしたはずなのに、今回のイレイズは冒頭からピンチである。インフレの予感がして不吉だ。
 ブラン星人が新たな怪獣兵器を用意して又攻めてきた。コズモカノンは、胸に装備した大出力の光線砲を主武器に
している怪獣だ。宇宙空間でビームを撃ってきた怪獣に対し、光線相手なら楽勝と、イレイズは久々にタイマードレインを
発動してビームを吸い込み始めた。だが、対ケルミス戦のデータを分析していたブラン星人は、ケルミスの熱線の
エネルギー量を遥かに上回る容量のジェネレーターを別空間に用意し、次元転送装置によるバイパスでコズモカノンの
光線砲とジェネレーターを繋いでいたのだ。その膨大なエネルギーはタイマードレインでも吸収しきれず、
かといって一度技が発動したら止めることも出来ず、イレイズはオーバーフローを起こして爆発しそうになる。
援護に入ったディアナが、ビームの火線の間にウルトラジープを突っ込ませて遮断し(勿論ジープは大破。ディアナは
直前で飛び降りて脱出)、イレイズを救う。ジープの爆発でダメージを受けたコズモカノンは一時撤退。
 こういうのは、何でも吸い込む怪獣が破裂するまでエネルギーを食わされて爆発して倒されるパターンだろう、
ヒーローがそれで危機に陥ってどうするのかとディアナはイレイズを叱責し、対策のため再度時空教練場で特訓を
施すことにする。

 ディアナ=さやかは榊家に直接向かい、イレイズが時空教練場で特訓している間、暁は執筆のための取材旅行で
数日帰ってこないという名目でアリバイ工作をして去っていく。暁の本命は自分の姉と思い込んでいる信也は、
急に美人の第三者が現れたことで勝手にやきもきするが、暁さんは私達の家族だから必ず帰ってくると、
百合子は暁を自然に信頼して家の切り盛りに専念する。

 全身のエネルギーを極限まで増幅し、瞬時に収め、そのタイムラグを徐々に短くすることで、自身の力の
制御能力を高めるという特訓を続け、遂にものにしたイレイズは再戦に臨む。
 再度現れたコズモカノンは、強力な光線で大気圏外から地上を無差別砲撃しようとするが、放たれた光線を、
現れたイレイズが胸で受ける。又タイマードレインかとブラン星人は満を持してビームを撃たせ続けるが、
適度にエネルギーを吸収したイレイズは、タイマードレインの中断に成功、そのエネルギーをイレイズショットに
して撃ち返し、怪獣を撃破した。
 やけになったブラン星人は続いて円盤の大部隊を放ち、一斉攻撃を掛けるが、そこへBIDのスペースジェット
部隊と佐々木参謀の戦闘機隊が参戦。イレイズと見事に連携して円盤軍団を打ち破る。地球人側も保有兵器の
地道なスペック向上とたゆまぬ訓練で日々強くなっていたのだ。指揮円盤のブラン星人は又も逃げ去った。
 清々しく榊家に帰還する暁を、さやかはわだかまりなく見守っていた。
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ウルトラマンイレイズ 16 上田奮戦
触足菌糸・マッシュラーケン 登場


 かつて、11話で『裕福な家の息子で、毎日の登下校も家の専用の運転手の車によるお出迎えで、
皆とも全然喋らず付き合いが悪い』ために信也達にいじめられていた少年がいるという話があった。既に
覚えてもらえているかどうかは怪しいが。
 少年の名は、上田守(うえだ・まもる)。BID隊員・上田厚に連なる家系の者である。
 守は好きで付き合いが悪いわけではなく、家の戒律や方針に長い間色々と縛られ、自閉症気味に
なっていたのである。その境遇に自分と近いものを感じていた上田隊員は、基本的に人付き合いが悪い中で
例外的に守とは仲が良かった。
 その守が、将来進みたい進路を無理やり諦めさせられ、自分同様に防衛隊関係者への道を押し付けられようと
しているという話を聞き、上田隊員は怒って抗議に出た。だが、抗議の仕方がまずかった。
9話でブラン星人の異次元都市で暴れたとき同様、ビッドガンを振りかざして守の親のところに
殴りこんだのである。
 上田隊員はあえなく取り押さえられ、防衛隊に連行された。だが、直ぐ釈放された。
彼の父親にして防衛軍上層部の高官・上田進(うえだ・すすむ)長官が手を回したのだ。上田隊員は
長官の下に向かい、守の件について抗議するが、防衛軍関係者になるのは上田の家の当然のつとめだと言って
長官は耳を貸さない。更に長官は暗い笑みを浮かべ、いい方向に考えろ、防衛軍関係者になれば地球防衛という
名目で国の予算も権限も好きなように行使できる、お前もやりたいようにすればいい、今はBIDの前線隊員だが
そのうち好きなポストにつけてやるとかいうことを言ってきた。

 上田は怒りを覚えた。民主国家の日本でそんなことが何時までもまかり通ると思っているのかと問うと、
長官は更に開き直り、怪獣や宇宙人が好き勝手に世界中を蹂躙しているような情勢で行政機関や司法機関に
何が出来る、簡単に踏み潰されるだけだ、今地球で一番えらいのは防衛軍なのだと言い切った。
 これは、人々を守るための手段として強攻策に出た佐々木参謀とは違う。義は何処にも無い。しかし、
実際、現在の地球の危機的状況下で他の機関は防衛軍に対して及び腰になってしまっている側面があった。
 そのままBIDに戻ってきた上田はずっと沈黙している。隊員達は気遣うばかりだったが、今回のことを
目の当たりにした上田の考えは、別の方向に進みつつあった。

 そんな折、関東の某県境の小都市に怪獣が出現した。これまでとは若干毛色が違う。宇宙から自ら来たのか、
宇宙と地上をこれまで行き来した物体に付着していたのかは不明だが、キノコとかカビの類の生物である。
存在が判明した時には既に都市一帯の地下施設や建物の壁の隙間に菌糸を張り巡らせており、しかもその菌糸は
触手のように自由に動いて人を襲う。更に、現在体組織の中に胞子を蓄えており、放っておけばいずれ胞子を
散らせて地球全体を侵食する。だが、街中に張られた菌糸は住民を人質に取っており、本体が肉眼で見えない
位置に隠れているので迂闊に攻撃も出来ない。
 『マッシュラーケン』と命名されたこの敵に対し、防衛軍上層部は、地球全土に事が及ぶ前に最小限の犠牲を
払うという選択を行った。即ち、ミサイルなりナパームなりの大火力で街ごと菌糸を焼き払うというのである。
住民も一緒に。
 進言をしたのは勿論上田長官である。BID一同は抗議するが、胞子がばらまかれるまでに住民救出で手間を
食っている余裕は無い、問題になっても適当にもみ消すから安心しろと上田長官はモニター越しに言う。
国政的にも然程重要ではない小都市だ、自分に事が及ばなければ他の場所の者は一々文句を言うことも無いと。

 そして、真っ先に立ち上がったのは、上田隊員だった。
 顔見知りでもないよその街の住民で、彼にとっては別に助ける義理も無いのだが、抵抗できない立場の者を
何の感慨も無く切り捨てるという父のやり口が頭にきた。だから、自分で直接現地へ飛ぶ。
上田が乗っているのはスペースジェット(以下、SJ)ではなく、初心者でも早めに乗りこなせる、空力的に安定した
ホバー機・『ジャイフロー』だった。実際救出作業のために街へ乗り込むのに、激しい衝撃波を起こす
ジェット機に乗るわけにもいかない。
 上田の行動に驚いたBID一同だったが、直ぐに追随した。岡島長官は、街が爆撃される予定時間までに
BIDが救出作業を完了すると上田長官に宣言した。上田長官はどうでもいい調子で、好きにすればいい、
予定時間になればBIDごと爆撃するまでだと。それで結構だとBIDは切り返した。

 文は何時も通りBIDベースで分析と指示。四条と真理以下SJ隊、前原乗り込むジオライザーは
別方面から可能な限り街に接近、迎撃してきた巨大菌糸の触手を麻酔光線で攻撃し、麻痺させる。
マッシュラーケンが攻撃に気を取られている間に、上田のジャイフローが住民を外へ運び出す。
 最初は順調に作業が進んでいたかに見えたが、菌糸の侵食範囲は予想以上に広く、次々襲う触手に、
SJ隊もジオライザーも次第に対応できなくなっていく。しかも、触手は電撃光線まで放ってきた。
爆撃のタイムリミットは迫る。

 秋月さやかの手引きにより、封鎖されていた現地に進入した暁がウルトラマンイレイズに変身して介入。
触手がイレイズにも電撃光線を撃つが、イレイズはタイマードレインで光線を捕縛。電撃に耐えながら
光線の軌跡を手づかみし、直にマッシュラーケン本体を力で引きずり出す。前原もそれを察し、対ガタストロン戦で
使った原子固定光線をジオライザーの砲台から街の建物に照射、建物の倒壊を食い止める。
住民全員の救出が完了すると同時にマッシュラーケン本体が引っ張り出され(といっても、小型の核とそこから
無数に伸びた菌糸の根だったが)、タイマードレインで最後までエネルギーを吸い取られて枯れ果てた。
街を爆撃するまでもなく、救助作戦は成功したのである。

 事件終了後、岡島長官は上田を呼び、どうしても不満ならBIDをやめられるよう、佐々木参謀にも持ちかけて
取り計らってもいいと薦めた。だが、上田は断った。
 そして、今まで以上に訓練と研鑽に取り組んでいる。この不愉快な状況を何とかするには、防衛軍内で自ら
昇格して発言権を増し、組織自体の体質改善を行うしかないと判断したのである。
 守も、今いる場所で将来のための独学を続けている。
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ウルトラマンイレイズ 17 ピースウエーブ
平和エージェント・パライソ星人 他 登場


 信也の小学校に、たちの悪い上級生達がいた。遊び場を独占したり、虫の居所が悪いというだけで
下級生に暴力を働いたりカツアゲしたりして、皆から嫌われていた。
 だが、何時ものようにそういう行動を行っていた上級生グループが、いきなり問題行動を中断し、
乱暴されていた下級生に向かって深く謝罪した。泣きながら地面に頭を擦り付けて土下座した。

 ウルトラマンイレイズは地中から出現した地底怪獣と対決していた。既に周辺の小都市を襲い、
人間を食らっていた凶悪な怪獣だった。イレイズは怪獣の東京都心への侵攻を必死に食い止めて
いたのだが・・・
 この怪獣も、突然イレイズへの攻撃をやめ、怯えるように蹲っておとなしくなった。

 同じようなケースが世界各地で起きた。人間を襲う凶悪怪獣や、粗暴だった人間が急に
おとなしくなった、というか、争いを極端に嫌い、拒絶するようになった。それは国家の
指導者や各国軍レベルにも及び、国家間の紛争も沈静化し始めた。
 信也の学校で素行不良の生徒が激減した、というより、いなくなったという話を聞いて
百合子は喜ぶが、暁は腑に落ちないものを感じる。さやかはディアナとして一度宇宙警備隊に
戻り、警備隊の情報網を使って調査してみると言って宇宙に飛んだ。
 おとなしくなってBIDに保護された怪獣の面倒を嬉しそうに見ている文の様子を見て、
前原も考え込んでいた。

 やがて、事の異常さが表面化し始めた。
 おとなしくなった怪獣は、何も食べない。最初人間を襲ったことから間違いなく食肉性だろうと
文は別の生き物の肉や加工した動物性蛋白の餌を与えたのだが、全て拒絶。無理に食べさせても
異常なまでに嫌がって直ぐ吐く。点滴で栄養を与え続けるも事足りず、遂に怪獣は衰弱死。
文は悲しむ。
 おとなしくなった他の者達にも同じ兆候が見え始めた。動物園の動物達は餌を取らなくなって
次々死ぬ。生物学者や理科教師は生き物の解剖が出来なくなり、精肉業者は家畜を殺して加工する
ことができなくなる。過剰なまでに血の気の多かった者が次々、平和主義というより無気力になり、
血を見ることを極度に嫌がる。人と競って自分の評価を上げようということもしなくなる。
 最初は肉や魚などの他の生き物を食べることを拒否していたが、更に、植物・・・野菜や果物
等も、生きているという意味では動物と同じだからといって食べられなくなる。当然、皆衰弱
して次々病院に担ぎ込まれる・・・
 暁の下に、さやかからの報告が入った。宇宙警備隊の調査によると、宇宙各地の惑星で
これまでに同じ事件が起きており、全住民が衰弱死して滅んだ星もあるという。そして、
犯人は現在地球に潜伏している。

 さやかからの情報援助によって、暁は事の首謀者・パライソ星人のアジトを突き止めた。
イレイズになり、等身大でアジトに侵入する。妨害は一切なかった。
 アジトの中で、星人達は泰然としてイレイズを迎えた。姿は地球人とさほど変わらない。
彼らはこれまで、宇宙中の文明間で起きている争いを止め、宇宙を平和にするための活動を
地道に続けてきた。だが、彼らの言に耳を貸さない乱暴者もおり、争いは一向になくならない。
そこでパライソ星人は、生物から他者を傷付けようとする性質をなくし、互いに争わないようにする
特殊パルス『ピースウエーブ』を開発した。そして、地球上でピースウエーブの効果を実験して
いたのである。これまで宇宙での事件を起こしたのも彼らである。
 そのために滅んだ星もある、直ぐやめろとイレイズは警告するが、星人は、滅んだ者達は
愚かな争いをやめなかったから滅んだのだ、必然だったのだと返し、反省する様子はない。
異常さを感じたイレイズは、真の目的は大義名分にかこつけた地球征服かと問うが、
星人は、そんな狙いはない、宇宙の平和のためだと頑強に言い続ける。そして、互いで争いを
やめない地球人を守り続けるウルトラマンイレイズも我々の目的の障害になると言い、
ピースウエーブを浴びせようとしてきた。イレイズはアジトから脱出し、巨大化する。
 同時に星人のアジト=巨大な要塞円盤が地下から浮上し、アンテナを表面に展開、遂に一斉に
ピースウエーブを周辺に放射し始めた。イレイズもウエーブの影響で戦意をそがれ、身体の力が
抜けていき、戦えずに膝を付く。虹色の美しい光と荘厳な音楽が山中から街へと広がり、
人々の目も美しい虹の輝きを放ち、無気力化して衰弱していく。

 だが、この事態を察知していた前原は、検出された異常なパルスを無効化するジャマーを
予め開発。BIDの面々にジャマー発信機を持たせて全員で現場に急行。四条のスペースジェット隊が
円盤を攻撃、アンテナを破壊してピースウエーブを止める。正気に戻ったイレイズはスライスメーザーで
要塞円盤の駆動機関を壊して停止させた。
 無力化された星人を捕まえて宇宙警備隊に引き渡すため、又等身大になってBIDと共に円盤へ
入っていくが・・・星人達の捕縛は出来なかった。

 巨大化したイレイズは、沈黙している円盤を宇宙へ持って行く。そして、宇宙空間で、
イレイズショットを撃って円盤を処分した。
 パライソ星人達は、イレイズや地球人と戦うことに精神的に耐えられず、争いに自分達が加担する
くらいならと、全員、自害していた。
 イレイズは叫んだ。
「何でこう極端なんだ!?」

 ピースウエーブの効果は切れ、地球人達は元に戻った。そして、再び各国間の紛争は再開され、
少し気に入らないことがあっただけで他人をなじったり殴ったりする者も世に蔓延していく。
 力ない表情で家事を続ける百合子に対し、暁はかける言葉を見つけられなかった。
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ウルトラマンイレイズ 18 ふざけるな暴力星団
岩獣・ロクストン、暗黒超人・ブラックロー、闘獣・バルトス、
火力怪獣・ドビドーグ、生体凶器・ラムパルス、巨剣魔人・ザンバ 登場


 雲がなく星の良く見える夜、信也は自宅のベランダで、学校の理科の授業の課題ということで天体観測を行い、
暁と百合子も付き合っていた。夜空の彼方の一角に、星が多く集まっている一帯を見つけ、信也は綺麗だなあと感嘆し、
暁も頷く。だが、暁=イレイズは、その星団の実情を知っていた。
 これまで地球のみならず、宇宙全体の征服をも狙う凶悪な怪獣や宇宙人が何度もウルトラ戦士に倒されてきたが、
それでも敵は尽きることなく現れ、襲ってくる。そういった邪悪な者達が、信也の見つけた星団、宇宙では
『暴力星団』と呼ばれる一帯にわだかまっているのだ。
 強力な技や超能力や武器を持ち、かつ相手を見つけるとその能力を総動員して殴りかかることしか考えていない
者ばかりが集まっているため、星団では戦火が絶えない。膨大な量の爆発の炎やビームの光が、地球からは
星の美しい輝きの集まりに見えているだけなのだ。
 地球防衛担当になる前、イレイズはその暴力星団への対処を担当していた。宇宙警備隊員といえども並みの者なら
まず敬遠する、はっきりいって汚れ仕事である。一体一体の敵への対処は出来ても、敵の集団の中での入り組んだ
いざこざをなくすなどということは到底無理である。今までの綺羅星の如きウルトラ戦士達でも、宇宙全ての悪を完全に
根絶することなど出来なかったのは、いまだに地球に外敵が襲ってくるのを見ても明らかだ。とにかく他の平和な星に
戦火が飛び火しないようにするので精一杯である。
 イレイズは複雑な想いだった。前回のパライソ星人は、ピースウエーブで地球や宇宙の人々の闘争本能を奪い、
強制的に争いをなくそうとした。そのこと自体は許されるものではないが、大きすぎる力で四六時中戦いっぱなしの
連中をずっと見続けたり巻き込まれたりしていたら、そりゃパライソ星人のようにおかしくなってしまう者も
出てくるのも無理は無いだろう。

 後日、事件は起きた。
 その暴力星団から、札付きの凶悪怪獣や巨大宇宙人が地球に向かっていると、宇宙警備隊に戻っていた
ディアナから連絡が暁に入った。しかも、6体。
 侵攻途上の宇宙警備隊員達が止めようとしたがかなわず、皆重症を負わされた。至急自分も地球に向かうから
それまで無茶はするなとディアナは警告したが、とにかく放っておくわけには行かない。暁はイレイズに
変身して宇宙に飛んだ。
 敵の襲来はBIDのレーダーにも感知され、一同はモニターを見て、見るからに強そうで悪そうな怪獣軍団が
並んで宇宙を進んでくるのを見て愕然としていた。世界中の人々に至ってはそりゃパニックである。
既にイレイズが軍団を迎えてにらみ合っており、その成り行きを人々は見守るしかない。

 敵の顔ぶれ。
 全身が岩のようにごつごつした頑丈な皮膚で、大きな隕石を手で弄んで投げたくて投げたくてうずうずしている、
怪力無双の岩獣・ロクストン。
 ヒューマノイドタイプの宇宙人で他の怪獣に比べて身体のボリュームはおとなしいが、無駄なく鍛えられた
筋肉を暗色のスーツで包み、腕を組んで不敵に笑っている宇宙格闘技の達人、暗黒超人・ブラックロー。
 長い尻尾と鋭い爪、牙の間からはひっきりなしに猛毒の涎を垂らしている、見るからに獰猛な闘獣・バルトス。
 高出力のビーム砲、大火力のロケット砲やミサイルを全身に装備し、その威力はブラン星人の砲獣をも
上回るであろう、火力怪獣・ドビドーグ。
 対して、右手の棘付き鉄球と左手の鎌はチェーンで伸縮自在、鋭い棘や角で全身を覆い、接近戦用の装備が
充実している、生体凶器・ラムパルス。
 そして、自分の身長と同じくらいの長さの巨大な剣を自在に振り回している鎧の騎士のような巨人、
巨剣魔人・ザンバ。

 自宅のテレビで不安げに見る百合子に対し、信也は、本当は何処か心の奥底ではわくわくしていた。
ヒーロー大好きな子供達や筋金入りの怪獣マニアが見たら、下手すると失禁しそうになるほど気色いい
図なのは確かだろう。

 イレイズははあーと溜息をつくと、居並ぶ怪獣軍団に対し、一応地球に来た理由を尋ねる。しかし、
帰ってくる答えは大方予想できており、実際その通りだった。
 一応代表格らしいブラックローが応対。地球侵略、というより、地球を自分達の強大な力で蹂躙し、
地球人達を恐怖のどん底に陥れるため。それと、その目的の邪魔になるウルトラマンイレイズを倒すため。
 お前達の実力なら、一匹で来るだけでも充分地球人に恐怖を与えることは出来るだろう、何故つるんで
来たのかと問うと、番付けを決めるためだという。彼らは暴力星団でずっと殴り合いを続けてきたが、
強さが拮抗して何時までたっても勝負が付かない。そこで、誰が一番最初に地球を征服するか、イレイズを
倒すかで決めようというのである。手柄の横取りもあり、イレイズを攻撃している最中に横から他の怪獣を攻撃、
競争相手を減らすために先にお互いで殺し合いもOK、ルール無用のバトルロワイヤルである。
 イレイズは黙って聞いていた。最後に、地球を自分達の強大な力で蹂躙し、地球人達を恐怖のどん底に陥れに
来たのはそもそも何故かと聞く。怪獣達はげらげら笑いながら答えた。
 何となくむしゃくしゃするので、とにかく誰でもいいから殴って蹴ってすっきりしたいから。

 地球に急行しながら、テレパシーを使ってリアルタイムで状況を捕捉していたディアナは、まだ手を出すなと
イレイズに必死で呼び掛けた。
 しかし、それも空しく、すさまじい轟音が脳に伝わった。

 強豪の怪獣軍団にも捉えられない速さで、まず視界に入ったバルトスに迫ってウルトラローキックで蹴った
イレイズに、一同の笑いが止まった。
 イレイズよりも一回り大きい重量級のはずの闘獣バルトスは、その一撃だけで内臓が破裂し、毒の涎を撒き散らして、
戦闘不能となった。痙攣しながら宇宙に漂っている。
「誰でもいいから殴って蹴って殺してすっきりするというのは、こんな風にか?」
 尋ねるイレイズに対し、言葉を失っていた怪獣軍団の腹の中に、次第にどす黒い怒りが湧き上がってくる。
 遂に、問答無用で乱戦が開始された。
 一斉に襲う5匹の攻撃をイレイズは交わし、捌きながら叫ぶ。
「こんなことで何がすっきりするんだ!? 貴様ら、何のために強いんだ!?」
 これではパライソ星人も浮かばれない。イレイズは、ウルトラ惑星破壊ミサイルの作動回路を切断したことを
心底後悔していた。使えたらこいつらを一掃してやりたい。
 とにかく、さすがに5匹相手では分が悪い。というより、ちまちま1匹ずつ屠るのも面倒臭い。何か強力な
攻撃手段は無いか。
 そして、イレイズは急に戦闘空間から離脱した。
「逃げる気か!?」
 追ってくる怪獣軍団から高速で離脱し続けるイレイズ・・・その意図は?

 続く。
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ウルトラマンイレイズ 19 やり直せ暴力星団
岩獣・ロクストン、暗黒超人・ブラックロー、闘獣・バルトス、
火力怪獣・ドビドーグ、生体凶器・ラムパルス、巨剣魔人・ザンバ 登場


 暴力星団から襲来した凶悪怪獣軍団に先に手を出して怒らせたウルトラマンイレイズは、彼らに
追われて宇宙を飛び続けていた。
ラムパルス「うわははは、今になって俺達が恐ろしくなったのか!」
ドビドーグ「だが逃がしはせん、なぶり殺しだ!」
 怪獣なのにべらべら喋るラムパルスとドビドーグは、一団に先駆けて先行してイレイズを追う。
ブラックロー「ああっ手前ら、抜け駆けは汚いぞ!」
ラムパルス「知ったことか、奴を倒して俺が怪獣軍団のボスになってやる」
ドビドーグ「そうはさせるか!」
 ラムパルスとドビドーグはどんどん加速する。
 だが、それはイレイズの策のうちだった。
 地球から遠く離れ、太陽系の中心部へと向かっていく。当然その先には、巨大な熱と光の塊、太陽が燃えていた。
「やべえ!」
 太陽の重力圏に捉われる危険を察知したブラックロー達は寸前で停止した。だが、ラムパルスとドビドーグは
既に加速が付いていて止まれなかった。
ラムパルス「ば、馬鹿な!」
ドビドーグ「奴はどうする気なんだ!? 俺達ごと太陽に突っ込む気か!?」
 イレイズは速度を弱める様子は無く、更に加速していく。
 その結末を見ることも出来ず2匹の怪獣は太陽に落ち、絶叫しながら跡形も無く焼き払われた。

 最大加速したイレイズは、太陽の反対側にそのまま突き抜けた。
 大きく周回し、2匹の最期を愕然と見ていた残り3匹の怪獣軍団のところへ、速度を下げずに戻ってくる。
全身火達磨で。
 ブラックロー達は、向かってくるものをただ見ていた。
 イレイズのカラータイマーの光は、激しい運動による極度のエネルギー消耗で既に消えている。
 邪悪な怪獣軍団への怒りと憎しみと執念だけで飛んでいる。炎の中の真っ黒な影の、目だけがらんらんと
光っている。
 画面に大きくテロップがかぶさる。


ウルトラマンイレイズ5つの誓い

一つ 犠牲者に対して美しい文句だけで済ませるものは消す。

一つ 何時までたっても血を吐きながら続ける悲しいマラソンをやめないものは消す。

一つ 自分達で怪獣を呼び出しておいて、あんたMATなんだろ早くやっつけてくれよとか勝手なことを言うものは消す。

一つ 優しさと、世界中の人々と友達であろうとする気持ちを忘れたものは消す。

一つ まだ何もしていない怪地底獣に地底貫通弾を撃ち込むものは消す。


 ブラックロー達は、一旦撤退した。
 というより、殆んど全力で逃げ出していた。

 榊家。
 最初は調子に乗って、いいぞイレイズ怪獣をやっつけろーとかテレビ中継に向かって応援していた信也だが、
妙な寒気を覚え、百合子にしがみついて震えていた。百合子もかすかに青ざめていた。

 別空間。
 死寸前のダメージを受けたイレイズは、又も、ディアナのサイキックケアで蘇生した。
 何故か今回の二人の姿は、人間の姿の暁とさやかである。
 暁が完全に回復するや、さやかはグーで暁をふっ飛ばした。そして、警告を聞かなかったこと、怒りにあかせて
戦って自ら死地に陥ったことを厳しく叱責した。しかし、暁は反発する。
「奴らは自分のエゴだけで簡単に他人の自由も命も奪うどうしようもないクズだ! 攻撃して何が悪い!?」
「相手がクズだったら、自分も同じところにレベルを落として感情だけで殴りかかるの!?」
「!」
「あなたはあの怪獣達に、貴様らは何のために強いんだと言った。今、逆に私があなたにそれを問いたい!」

 やっと自分の落ち度に気付いた暁に、さやかは、今回のことは特訓でどうにかできる問題じゃない、あなたが
自分で責任を取りなさい、この状況から抜け出せないならあなたは本当にもう終わりよと言い放ち、突き放した。

 BIDベースのレーダーにはまだ微弱な異常電波が捉えられている。怪獣軍団はまだ太陽系に潜伏しているのだ。
24時間態勢で基地に詰めて警戒し続けるBIDだが、敵のあれだけの戦力の前に自分達が出来ることはあるのだろうかと
上田がうそぶく。あるはずだと四条は返す。SJ隊はずっとスタンバイ状態である。
 怪獣軍団もさることながら、BIDは今回のイレイズの行動に、ブラン星人全滅以来の脅威を感じていた。
しかし、文はそれだけではなく、
「イレイズ・・・なんか、辛そうでしたね」
 一同は同意した。

 残った怪獣軍団は、月の裏側に隠れて機会を伺っていた。しかし、ロクストンとザンバは、どうも気が乗らなかった。
ラムパルスとドビドーグはやられ、バルトスはまだ生きていたものの、宇宙怪獣病院に入院、全治6ヶ月。退院しても、
もう二度と地球には来たくない、田舎に帰って親の農家を手伝って真面目に暮らすと言っている。
 ブラックローだけは、他の2匹の尻を叩き続ける。彼は、思わず怯えて逃げた自分が許せなかった。
イレイズの態度も癪に障っていた。
「大体、俺達みたいなのを相手にしてウルトラ戦士が言うことといったら、お前達の悪事は決して許しはしないとか、
俺の誇りに掛けて地球は必ず守り抜いてみせるとかそういうのだろう! それを何だあいつはヒステリックになって
頭ごなしに喚き散らしやがって! 負けてたまるかよあんな奴に!」
「その通りだ」
 いきなり月面に光と共に転移してきたイレイズに、3匹は飛びのいた。
 イレイズは、全くブラックローの言う通りだと思った。しかし、とにかく今はこいつらを倒す。そして、
ウルトラ戦士として、一人の男としての今までの失点を取り戻す。

 ロクストンは巨大な岩を連続で投げつけ、ザンバは剣を振り回して真空の刃を飛ばしてくる。何発かは食らいつつも
イレイズは避けながら冷静さを保つことに専念し、隙を狙って2匹に同時に突きと蹴りを放ち、ダメージを与える。2匹が
苦しむ間に、上からそれぞれにバリヤーフィールドの檻をかぶせる。しかし、ウルトラミキサーで粉砕するのではない。
 ウルトラブロンズ固め。
 バリヤーの内部で降り注ぐ硬化液に2匹は固められ、生きたまま像になって拘束された。何故か2匹とも
かっこいいポーズをしていた。
 一人残ったブラックローはそれでも怯まない。正面からの格闘勝負になる。カラータイマーの点滅が早まると共に
イレイズの連続突きは早まり、ブラックローは健闘したものの、遂に押し負けて吹っ飛ばされる。そして一気に
接近され、とどめを刺されるかと思われたとき、
「お前らもやり直せ」
 イレイズは当て身でブラックローを気絶させ、捕縛した。

 ディアナは捕まった3匹を護送して宇宙警備隊に戻る。イレイズはディアナに礼を言い、見送った。
 榊家では、又取材旅行に行ったことになっている暁を、百合子と信也が黙々と夕飯を食べながら待っていた。
信也は、イレイズの憤怒を思い出して寒気を覚えながら、今までにもあんな感じで誰かに叱られた気がする、
誰だったろう? 姉ちゃんじゃないし・・・とか考えていた。
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ウルトラマンイレイズ 20 地球を守るだけのもの
怪獣超人・タカトオ 登場


 16話に登場した上田隊員の実父であり、自分の身勝手を防衛軍幹部の権限で強引に正当化する
典型的腐敗上司・上田長官。その側近の、高遠(たかとお)武官という男がいる。
 高遠も上田長官とさほど変わらないタイプである。彼は、BIDとウルトラマンイレイズが
地球防衛の顔として民意を得ていることが気に食わなかった。マッシュラーケンに占拠された
街の人々を決死の奮闘で救った件についても、大衆に対してえーかっこするためにまんまと
自分達から指揮権を奪った、むかつくとかしか考えていなかった。そこで、BIDから地球防衛の
イニシャティブを奪うため、彼はある計画を思いついた。そして、上田長官の後ろ盾を得て
実行に移した。

 榊一家の住む街で、ちょっとした騒動が起こった。人々が集まって騒いでいる。暁と
榊姉弟が何事かと聞いてみると、防衛軍の兵士達が来て、駅前の超人塾の塾長・長谷川真樹夫を
連れて行ったという。真樹夫は最初反目していたが、暫く言葉を交わした後急に大人しくなり、
黙って連れて行かれたらしい。
 長谷川真樹夫はかつて7話に登場。人類がウルトラマンに頼らず自分達で地球を守る、
そのための超人的な潜在能力を引き出すという考えで、人間超越管を発明した天才科学者である。
人間超越管は危険だということでBIDに押収されて全て破壊されたが、高遠は、完全に防衛軍の、
いや、自分の意図の下で動く最強の兵団を作り上げてBIDから指揮権を奪うため、人間超越管を
再び大量生産して自分の部隊に持たせることを思いついた。そこで、真樹夫にもう一度
人間超越管を作らせる。逆らわないように、上田長官の威光で適当な名目をでっち上げ、
超人塾の生徒の子供達を予め拘束してきて人質に取った。
 真樹夫はやむなく従い、取り合えず試作型の人間超越管を一本作る。高遠の命令で
改良され、今度は怪獣超人になった後も喋ることが出来、元の人間にも自在に戻れるようになった。
 力を得てのぼせた高遠は、その場で自ら人間超越管を発動させ、怪獣超人・タカトオになる。
巨大化したので彼らの隠れ家が崩れ、真樹夫と生徒達、高遠指揮下の兵士達までも巻き込まれるが、
人を越えた力を持ったタカトオからすれば知ったことではない。崩れた隠れ家のあった厚木から
ずんずん踏み出して行く。
 情報収集・アリバイ工作に協力してくれていたさやかがディアナとして一時宇宙警備隊に
戻ってしまって不在だったため、暁は事態を把握するのに時間が掛かった。等身大イレイズに
なって隠れ家に駆け付け、生き埋めになった真樹夫達を救出、ディアナから教わった
サイキックケアで回復させる。兵士達も助ける。

 一方、タカトオは神奈川の市街一帯を襲撃。街を壊し、人々を虐殺し、何か高慢な口上を
叫んで高笑いしている。全身から拡散ビームを発し、全てを吹き飛ばしていく。
 そこへ、上田長官が部下を連れてやってきた。人間超越管の素晴らしい効果を賛辞する
ばかりで、市民の犠牲など気にもしていない。そして上田長官は、この力を以って
地球の力を宇宙に示すために民衆を完全に我々の手で管理するのだとタカトオに命令する。
 だが、タカトオは既に自分以外の全てがどうでもよくなっていた。とにかく全てを壊して
自分の力を誇示したかった。何か足下で嬉しそうに吠えている、虫けらのように小さい、
かつて自分の上司だったらしい年寄りの男が煩わしいので、周りの部下ごと踏み潰した。
最後に呆然としていた年寄りの男の表情が痛快だった。

 漸くイレイズが巨大化して現れるが、人間超越管の改良によってタカトオは
マキオ以上の戦闘力を誇っている。一方のイレイズはサイキックケアでエネルギーを
使ったため、何時ものパワーが出せない。
 BIDは何故助けに現れないのか。上田長官の手の者によってBIDベースの兵器管制
コンピューターにウイルスを仕掛けられ、高遠の暴挙への対応が遅れていたのである。
 自身の欲望を加速させ、タカトオはどんどん怪獣そのものの姿になっていく。もう
元の姿に戻る気などない。イレイズは散々痛め付けられて地に伏している。
イレイズに精神的にもとどめを刺すため、タカトオはまだ生き残っている街の人々を
拡散ビームで一掃しようとする。阻止しようにも、エネルギーを消耗していて
遠距離対応のビーム攻撃は出来ない。しかし、放っておけば、人々が殺される。
 イレイズは、渾身の力を絞ってジャンプした。
 そして、元は人間だったタカトオの頭を片手で掴み、直接格闘技のイレイズアーツでむしり取った。

 首がもげ、脳が体に指令を下すことが出来なくなり、タカトオは死んだ。首のない巨体が
地響きを立てて倒れる。おびただしい体液が溢れて地を染める。
 人々は、タカトオの生首を掲げて制止したままの巨人を、ただ見上げていた・・・

『ウルトラマンイレイズ』は、今回で最終回とさせていただきます。長い間のご声援、有難うございました。

 うそです。
 もう少し続きます。
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