ウルトラマンイレイズ 21 イレイズを更迭せよ
宇宙警備隊の隊員達 登場


 BIDとその上層部では、前回の事件の後始末が行われていた。組織内の腐敗の中心だった
上田長官と副官の高遠武官が死亡したのを契機に、彼らを中心にしていた勢力が総崩れになり、
結果的に膿が掃除された。皮肉ながら。
 長官の息子である上田隊員は、父の死については儀礼として葬儀を取り行っただけで、
正直何とも思っていない。息子に死を悲しまれるには問題がありすぎる父だったのは
周知なので、どうかとは思うもののわざわざ責める者もいなかった。
 それより、ウルトラマンイレイズを取り巻く環境が今回のことで変わってしまったことのほうが
問題だと上田は指摘した。結果的に高遠武官を直接手に掛けることになってしまったわけだが、
あの時高遠は既に取り返しの付かない状態になってしまっており、又そこに至るまでに
彼がやったことも、法的にも人道的にも許されるものではない。BIDも足止めを食って
戦闘に参加できず、市民を救うためにイレイズが取った手段を誰も責める事は出来ないだろう。
少なくともBID一同や榊姉弟はそうである。
 だが、彼らと人間関係の上で深い繋がりのない他の一般市民は、そう簡単には割り切れない。
イレイズがやったことの是非よりも、下手なことをしたら自分達もウルトラマンに罰を与えられ、
最悪殺されるかもしれないという強迫観念のほうが広まってしまっていた。
 そこに至る地盤を作ったのは、イレイズ本人でもある。地球と人々を救うためとはいえ、
これまで彼が戦って周りに与えた印象は余りにも苛烈すぎた。怪獣や宇宙人を第一印象として
かなりむごいやり方で殺傷し、又悪への怒りの表現も気の弱い者ならSAN値が減るほどだった。

 後、これまで描写はなかったが、イレイズは等身大の大きさになれるのをいいことに、
実はちょくちょく地球への内政干渉まで行っている。空き巣や引ったくりを捕まえてくれるとかなら
まだしも、悪ふざけで建物の壁にスプレーで落書きした不良集団をふんじばって脅して
きちんと掃除するまで見張り続けたり、警察や政治家の汚職まで暴いたりしている。
逮捕された者達には反省より先に憤りが立ってしまっている者もいる。悪いのは彼らで確かに
的外れの怒りなのだが、何でウルトラマンが市井の犯罪事情に介入するんだ、怪獣だけ倒してろよ
ばかやろーうわーーーーーーーーーーんみたいな。
 現在もイレイズは地球を襲う敵を倒すために戦い続けているが、人々は、そんな彼を
応援しなくなった。ウルトラマンの大きすぎる力に怯え、陰に隠れてびくびくしている
だけという状態になってしまった。塵も積もれば山というか。それでもイレイズは
文句も言わず戦い続ける。
 自分が人間超越管など作らなければと長谷川真樹夫は苦悩し、百合子に慰められる。
信也は、イレイズを怖がって応援しない他の子供達に怒って当り散らす。何か、歯車の回転が
おかしくなってしまっていた。

 そんな矢先。
 白昼、暁は誰もいない高層ビルの屋上で、宇宙警備隊の上司からのテレパシーを受けていた。
イレイズの地球就任最初期から、彼の行動を問題視して何度も査問を行っていた上司達の
リーダー格である。内容はずばり、M78星雲に一旦帰還せよ。
 このままでは地球人との溝が取り返しの付かないことになる、ほとぼりが冷めるまで
戻ってこい、と。
 だが、暁は断った。こうしている間にも地球はまだ多くの怪獣や侵略者に狙われている、
一時も目を離すことは出来ない、一旦責任を負った以上はまだ帰るわけにはいかないと。
後任の者を直ぐ選んで送るからと上司は食い下がるが、ウルトラ戦士としての責任だけではない、
恩義のある家主や地球の将来を担う弟分、直接は関わらずとも共に戦ってきた戦友達、
その他諸々の世話になった地球人達への礼儀を通すという自分自身の誓いがある、
そのためにも今帰るわけには行かないと暁は言い張る。背景には百合子と信也、
BIDメンバーや岡島長官に佐々木参謀、兵士の一人一人までがオーバーラップしている。
後、ヘキ・ゼンジロウもいるのはいうまでもない。
 上司は、やり方を変えた。

 暁は目を見開いた。街の人々も恐怖した。
 宇宙警備隊の隊員達・・・地球人から見れば一纏めでウルトラマン・・・が、大勢で一斉に
東京上空に飛来した。十数人いる。全員で腕を組み、巨大な体で街を見下ろして滞空している。
 かつてのそうそうたるウルトラ兄弟達などではなく、宇宙警備隊においては一般兵士だが、
それでも普通に暴れれば街の一つくらいは軽く破壊できる。自分を連れ戻すためだけに、
そんなことまでして恫喝するのか。暁は信じられなかった。
 街はパニックになる。暁はイレイズに変身するが、まだ巨大化して応戦はせず等身大のまま。
このまま大勢のウルトラマンが市街地で戦えば大惨事になる。それに、味方同士のはずの
宇宙警備隊員が同士討ちをする状況のほうがどう考えてもおかしい。
 ウルトラマン達の中心には、くだんの上司がいる。イレイズは宇宙警備隊員を退かせろと
要求するが、上司は、お前が戻ってきたら退かせるの一点張り。宇宙警備隊の目的は
宇宙全体の平和の維持で、地球だけに力を入れて守るわけには行かないのだと。
 ハッタリだと、イレイズは思った。自分もウルトラマンなら、彼らもウルトラマンである。
この市街地で事を起こすような短慮な真似はしない。絶対に。

 だが。
 上司が指示し、宇宙警備隊員達は腕を十字に組み、東京に、ビームを降り注がせてきた・・・!!
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 等身大だったウルトラマンイレイズは、瞬時に巨大化した。そして、自分の光の
フルパワーをバリアブレスに集中し、バリヤーフィールドの巨大な盾・バリアブレスシールドを
作り出し、空に掲げた。それによって、宇宙警備隊が一斉に降り注がせた光線はガードされ、
余波が地上に若干の被害を与えたものの、地上に犠牲者を出すことだけは免れた。
だが、急激なエネルギーの消耗と、シールドに掛かった十数人分の必殺光線の衝撃による
ダメージで、いきなりイレイズは力尽き、倒れてしまった。
 命を掛けて東京を守ったその様を、人々は見ていた。


ウルトラマンイレイズ 22 みんなで光れ
ナノマシン超人・シュトローム星人 登場


 悪夢のような光景は続く。
 動けないイレイズを、降下してきた宇宙警備隊は大勢で捕まえ、拘束する。
透明なクリスタルの巨大な十字架に閉じ込め、磔にして。
 更にイレイズ上司は人々に言う。イレイズがこのようなことになったのは、
只漫然とウルトラマンに守られる状況に甘んじてきたお前達地球の一般市民のせいだと。
それだけではない。同じ地球の生き物である怪獣のテリトリーを片っ端から荒らし、
地球防衛の名目で他の星にも爆弾を撃ちこむ。ウルトラマンや防衛隊が最前線で怪獣と
戦っていても助けるどころか応援さえしない。あまつさえ、科学技術を独占して自分自身が
怪獣になって同胞を手に掛ける者さえいる。そんな真似を続けてきた身で尚ウルトラマンに
守ってもらおうとする性根があつかましい。
 耳を塞いでも声はテレパシーで直接脳に響き、人々の心は傷付けられていく・・・

 しかし。
 語っていたイレイズ上司に、上空からビームが叩き込まれた。
 爆発が起きて上司は若干苦しむが、直ぐ空を見上げる。
「ふざけないで」
 現れたのは、女ウルトラマン・ディアナだった。
「私達宇宙警備隊は、そんなことで怒って地球防衛に対する意欲をなくすほど狭量じゃない!」

 結論から言う。今回イレイズを連れ戻しに飛来した宇宙警備隊は、偽物である。
 一般隊員は皆、精巧に作られたロボット。そして上司の正体は、全身を構成するナノマシン
金属を変型させてあらゆる宇宙人に変身できる侵略者・シュトローム星人。
 星人は、地球内で起きた様々な行き違いによって、イレイズが最近地球人からの支持を
得られなくなっている事態を知った。そこでその状況を利用して立ち回り、イレイズのみならず
ウルトラ戦士全体への地球人の信頼をぶち壊し、両者の絆を断ち切ってウルトラマンによる
地球の守りをなくしてから侵略しようとしたのだ。
 遅れ馳せながら星人の企みを察知した宇宙警備隊は地球に援軍を送ろうとしたが、
現在、星人が別に放ったロボットのニセ宇宙警備隊に阻まれている。やむなく、ディアナのみが
どうにか敵の包囲を突破して地球に先行したのである。

「それが判ったところでどうするというのだ」
 イレイズ上司はシュトローム星人の正体を現し、居直った。身体の要所が鋭く尖り、
金属の鈍い輝きを放つ巨大な悪魔。
「既に地球人と貴様らの絆は破壊された」
「まだ壊れていない!」
 とはいえ、ニセ宇宙警備隊の別働隊と一度交戦し、更にここまで全力で飛ばしてきたディアナも
かなり消耗している。それでも、空へ飛んで向かってくるロボット隊員達を上手く誘導し、戦う。
 更に、二の足を踏んでいたBIDも、宇宙警備隊が偽物だと判ったので、ディアナを助けるため
SJ隊を送った。両者協力して壮絶な空中戦を展開する。
 だが、シュトローム星人のコントロールを受けているロボット隊員は、幾らダメージを受けても
向かってくる。ディアナが既に消耗していることもあり、地球防衛側は劣勢になっていく・・・

「頑張れ、イレイズ!! 目を覚ませ!!」
 テレビでの現場中継に、一人声援を送り続ける信也。
 最初はただ見ていた百合子、そして、彼女に元気付けられた真樹夫も、一緒に応援を始める。
 そして。

 超高空から見た光景。
 東京を中心に白く眩しい光が灯り、次第に、日本列島全体に広がっていく。
 その大きな光は一点に圧縮された。
 輝きを失っていた、ウルトラマンイレイズのカラータイマーに。

 イレイズはクリスタルの十字架を叩き割って飛び出し、直ぐ脇にいたシュトローム星人の顔面に
肘を叩き込んでふっ飛ばした。
 今日本中の人々の声援が、光の力に変換されてイレイズに送られていた。

 ディアナを押さえつけていたロボット隊員達にイレイズは素早く迫り、イレイズアーツで
粉砕してスクラップにする。膝を付いたディアナは、イレイズが再び立ち上がったのを
満足げに見上げて確かめる。
 まだ半分以上残っているロボット隊員が一斉に両者に襲ってくる。
 だが、その足が止まり、動きが鈍る。
 ジオライザーで駆けつけた前原隊員が、機体に搭載されたジャマー発信機・・・対パライソ星人
戦でピースウエーブを封じたもの・・・の波長を変え、ロボット隊員へのコントロール波を
狂わせるジャマーに切り替えて放ったのだ。
 その隙に、イレイズは特大のバリヤーフィールドの筒を展開し、敵軍団を閉じ込めて
宙高く持ち上げる。ウルトラミキサーが発動し、バリヤーの中でニセ宇宙警備隊は
刻まれて大量の屑鉄の山になり、そのまま宇宙へと放り出された。

 まだ尻餅をついていたシュトローム星人にもイレイズは攻撃を加えようとする。
だが、星人は両腕をナノマシン変形させてミサイルランチャーにし、一斉にミサイルを撃つ。
バリアブレスシールドで街への被害を防ぐ隙に、星人は背中から大きなコウモリ羽を広げ、
上空から宇宙へと高速で撤退した。これで終わったわけではない、又来ると捨て台詞を残して。
 同じ頃、ニセ宇宙警備隊の別働隊も、本物の宇宙警備隊に漸く倒されていた

 首謀者に一時撤退されはしたが、イレイズは再起し、今回も地球を守ることが出来た。
信也や百合子達、BIDの隊員達、ディアナ、そして多くの市民達の応援の御蔭で。みんなの勝利である。
 一応断っておくと、かつてイレイズに悪事を暴かれたことをまだ根に持っている者たちや、
9話でブラン星人の策略に嵌まってまだ隔離病棟に引き篭もっているへタレどももいたりして、
厳密には全ての地球人が光をくれたわけではないと上田がわざわざ断る。今回はもうその辺は
てきとーに流しておけと岡島長官は諌めた。何でもかんでも100%にしようとすると、今回のような
惨事が発生するのである。

 地球を守った手柄は手柄として、イレイズは後でディアナや本物の上司に改めて此処暫くの
行き過ぎ行為についてこってり絞られた。でも、熱さが喉元を過ぎたら多分又やりそうだ。
暁「君も気をつけるのだ」
さやか「本人が言うな!」

イレイズデータベース

前原
「この22話は、本放送当時、ナイターの影響でいきなり臨時時間帯移動し、21話で東京が
壊滅してバッドエンドになってしまったと思ってトラウマを与えられっぱなしになった
視聴者も多かったんだ。みんなも録画予約のタイマー設定には気をつけてくれよな!

 ・・・とか言いながら今録画確認してたら、高校野球でリュウケンドーがずれやがったちきしょーーーーー!!」

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ウルトラマンイレイズ 23 神速の敵を討て
転送怪獣・ザロン、奸計宇宙人・ブラン星人 登場


 今回の戦いは、長引いていた。四度目の挑戦を仕掛けてきたブラン星人が送った怪獣兵器・ザロンは、
パワータイプではない細身だが、ヴォルカノン2号以上に素早く走り回り、イレイズの死角を突いて
両手の鈍器で痛打を与えてくる。それだけではなく、BIDが援護に来て自分が不利になったと判断すると、
テレポートで逃げてしまう。それを日を置いて何度も繰り返す。BIDとイレイズを消耗させる作戦らしい。
 又、今回はブラン星人指揮官も自ら出陣。巨大化できるわけではないので、乗っている円盤を
戦闘機並みの攻撃力とスピードにチューンナップしてきた。そして、イレイズを援護しようとするSJ隊に
横から攻撃を仕掛けて邪魔し、反撃しようとすると得意の逃げ足で素早く遁走してしまうのである。
BIDは対策に頭を痛めていた。

 一方、結構モラルの低い信也の小学校だが、不良上級生達による下級生いじめはまだ続いていた。
自分の友人にも事が及ぶようになり、信也は怒りを覚えていた。そこで、暁や百合子に相談しようかと
思ったのだが・・・思いとどまった。
 ここ暫く、暁は妙に生傷を作って帰ってくる。百合子に心配され、大したことではない、自警団の
肉体労働で付いた傷だと暁は言うが、信也は、本当の理由を何となく感じ取っていた。
 百合子も会社の仕事が繁忙期に入り、しかも文句も言わずに家事もやっている。今二人に余分な
仕事をさせるわけにはいかない。

 ブラン星人8度目の襲撃。指揮官の円盤操縦の技量は意外に高く、部下のSJを庇った四条隊員の
機体が撃墜された。四条は重症を負い、暫く出撃は出来ない。勢い、イレイズに更に負担がかかる
ことになった。
 その戦闘のテレビ中継を見ていた信也は、内心で決意を固めた。

 翌日、学校で信也は、友人達をいじめていた上級生達との直接対決に出る。
 信也も結構喧嘩は強いものの、多勢に無勢で次第にリンチの様相になっていく。だが、そこに
加勢した者がいた。
 上田隊員の甥で、かつて信也達にいじめられたこともあった級友、守である。自分のために
真剣に両親に怒ってくれた(手段に問題はあったが)上田の叔父さんに勇気をもらった守は、
信也を助けるためにいじめっ子達に挑んでいく。周りの下級生達もそれに触発され、一斉に加勢。
上級生達は逆に圧倒され、遂に泣いて降参した。

 ブラン星人12度目の襲撃。
 何度もザロンと戦って動きを観察し続けていたイレイズは、負傷覚悟で、脇腹に叩き込まれた
ザロンの腕を押さえ込んで動きを封じ、イレイズアーツで力任せにザロンの両腕を引き千切る。
大ダメージを受けて苦しむザロンに、イレイズショットを叩き込み、木端微塵に爆破。
戦士として修練を重ねてきたイレイズは、これまで威力が大きすぎて地上で撃てなかったイレイズショットの
出力を、調整できるようになったのだ。
 一方、四条を負傷させられて怒った副官の真理も、ブラン星人指揮官の円盤と一騎打ちで凄絶な
ドッグファイトを展開。懸命に冷静さを保ち、隙を突いて遂に円盤を撃破。しつこかったブラン星人の
地球侵略の野望は、ここに漸くついえたのである。

 学校で大乱闘が起こり、その中心に信也がいたと聞いて百合子は心配したが、今日も傷だらけになって
帰ってきた暁は、事情を聞き、今回は何も言わず信也をほめたのだった。信也は鼻をこすって笑い返した。
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ウルトラマンイレイズ 24 上司・デリート
火力怪獣・再生ドビドーグ、生体凶器・再生ラムパルス 登場


 ウルトラマンイレイズと女ウルトラマン・ディアナは、地球に侵攻しようとした怪獣を宇宙で
迎撃していた。怪獣は2匹いる。しかも、19話で倒したはずの、ドビドーグとラムパルスである。
何故蘇ったのかも不明だが、大幅にパワーアップしている。初期に比べてレベルが上がっている
イレイズをして尚苦戦するほどに。イレイズはドビドーグの火器の連射攻撃で吹っ飛ばされ、
ディアナはラムパルスの棘付鉄球と鎖鎌の素早い連打で痛めつけられる。
 消耗した二人に、二大怪獣がとどめを刺そうと迫ったとき。
「お待ちなさい!」

 何時の間にか、別のウルトラマンが現れていた。
「それ以上の乱暴は許しません」
 妙に穏やかに敬語でテレパシーを送ってくるそのウルトラマンは、上背は高いが、鍛えられた
体格のイレイズに比べるとやや貧相にも見える。しかし、イレイズとディアナは直ぐそのウルトラマンに
敬意を払う。
 初期の頃からイレイズの行動を監視し、査問してきた宇宙警備隊の上司達の中心人物・デリート。
執務中心で戦場にはあまり出ないが、その采配には定評がある。色々無茶をしてきたイレイズが
ずっと地球勤務を続けてこられたのも、警備隊の訓練生時代からの友人であるデリートの根回しによる
ところが大きい。

 そんな重要人物が何故直々に地球まで来たのか。それを得意げに説明しようとしたデリートに、
ゴオオオオオーーーーー「あちちちちちち!?」
 無視され続けたドビドーグが、腹立ったので口から業火を吐きかけた。デリートはあっさり食らい、
頭のてっぺんに火がついて慌てる。イレイズとディアナは助けようとしたが、そうするまでもなかった。
 デリートは、出し抜けにポーズをとった。頭の火が長く上に向かって伸び、
「ヘッドフレアーーーーー!!」
 両腕を左右に伸ばして前傾すると、頭の火が何十倍もの勢いと熱を持って逆にドビドーグを襲う。
ドビドーグは炎に包まれて苦しみ、更に全身の火力兵器に引火して爆死した。
「ああっ、ドビドーグ・・・おのれ!」
 残ったラムパルスが、技を放った直後のデリートの背後から両手の武器を振り回して迫る。
隙だらけだと、ラムパルスは思っていた。
「うるさいですね」
 デリートは振り返りもしない。
 だが、ラムパルスの身体は突然風船のように膨れ上がり、木端微塵に吹き飛んだ。
 ウルトラ念力を鍛え上げたデリートは、もう一つの超能力必殺攻撃『サイコバースト』で、
手を触れずとも念力で敵を爆破できるのである。
 驚きつつも、納得するイレイズとディアナ。仮にも自分達の上司である。これほどの力を
隠し持っていても、そう驚異するにはあたらないだろう。

 頭がちょっと焦げたまま、デリートはここに来た理由を淡々と告げる。
 イレイズの、宇宙警備隊への帰還命令である。
 そのことについては22話で話が付いたはずだ、さては又シュトローム星人の変装かと
二人で攻撃を加えようとする。攻撃されてはたまらないとデリートは慌て、
「そのシュトローム星人です!」
「?」
「状況が変わったのです。シュトローム星人が、再度地球を侵略しようとしているのです」
 ドビドーグとラムパルスをその技術力で復活させ、地球に差し向けたのもシュトローム星人だという。
星人は更に大規模な円盤部隊を編成し、全面攻勢を掛けようとしている。これまでとは
桁が違う全面対決になるので宇宙警備隊の総力を結集して当たりたい、だから帰ってくるよう
デリート直々に伝えに来たのである。
 正直、生還できるかどうかもはっきりしないミッションだと、デリートは真顔で言った。
先ほど造作もなく二大怪獣を屠った人物が。

 地球側はまだそのことを察していない。此処暫く事件は起きず、BIDベースでも穏やかな日々が続いていた。
 地道なサポート任務を真面目に続けてきた文はそれまでの功績を認められ、佐々木参謀直属の副官兼
秘書への転属の話が岡島長官から持ちかけられていた。迷う文を前原は喜んで称え、新天地で自分の力を
試すのも悪くないと激励した。
 入院生活を続ける四条の体は徐々に回復に向かっており、退院したら一度休暇をとって
温泉旅行にでも行こうと、真理や部下達と約束をしていた。
 守少年は以前ほど家庭での生活を束縛されなくなり(上田に殴りこまれた守の両親がトラウマを
与えられてびびったからだが)、暇を見て上田と会っては将来の夢を語り合っていた。

 そんな中、暁は数日の休暇をとり、此処暫くゆっくり遊んでやれなかった信也にたっぷり
つきあってやった。やった、というのは語弊がある。暁も十分楽しんでいた。
 街へ買い物に行った帰り、夕暮れの多摩川の川沿いを二人は歩いていた。互いに妙に言葉少なに
なっている。不意に、暁は切り出した。12話でガタストロンが地球を再度襲撃したとき、姉の百合子を
守ってやれと言ったのを覚えているか、と。
 勿論覚えている、これからもそのつもりだと信也は返す。
 暁は頷き、そのために強い男になれ、いざというとき自分だけでなく、自分が大切だと
思った人を守ってやれる力を持った男になれと、偽らない願いを伝えた。
 俺は、なれなかったからと、弱気になって最後に本音を漏らす。
 暁=イレイズの胸にはいつも、ディアナの遠く悲しい物憂げなたたずまいが付き纏っている。

「駄目だよ、暁兄ちゃん」
「え?」
「大人は、子供の前では堂々としてるもんだよ。ハッタリでもいいからさ」
「・・・信也」
「大人が堂々としてないのに、それを見て育つ俺達子供がどうして胸を張って大きくなれるのさ」
 にっこりと笑う信也に、暁は胸を熱くし、
「・・・生意気を」
 ぐりぐりと小さな頭に拳をこすりつける。
「痛い、痛いよ暁兄ちゃん」
 しかし、信也は嫌ではなかった。

 翌日。
 榊家の食堂のテーブルの上に置かれたもの。
 事情あって長い旅に出ます。これまでお世話になりました。挨拶もなしにこんな形で突然去ることを
お許し下さいという、暁の置手紙と、これまでの家賃を遥かに上回る金額の礼金の詰まった茶封筒。
 信也も、百合子も、うろたえることなく事態を受け止め、黙っていた。

 続く。
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 火星の地表。
 赤い荒野の中で、シュトローム星人は、黙って腕を組んで立っていた。
 22話でウルトラマンイレイズに挑戦してきた個体で、かつ、地球侵略部隊の最高司令官である。
 やがて、司令官との一騎打ちの申出を受けたイレイズが飛来し、星人の目の前に降下した。
 イレイズは、周辺に転がる、司令官一人に既に倒された宇宙警備隊先遣隊の亡骸の山を見て、
星人への怒りを新たにした。


ウルトラマンイレイズ 25 逆襲! シュトローム星人
ナノマシン超人・シュトローム星人、巨艦怪獣・ベムロックス、
昆虫艦載機・オーガヤンマ 登場



 太陽系の又別の宙域では、部下達を引き連れたデリートが、シュトローム星人の円盤大部隊と戦っている。
円盤の軍団は巨大な雲のようで、向こうの宇宙が見えない。
 デリートは自ら最前線に立ち、サイコバーストで円盤を片っ端から爆破していく。
 しかし、円盤は後から後から続々来る。
 負傷した戦士は銀十字軍が救護、手当てを続ける。ディアナはそれに加わって救護を続ける。
単身敵司令官と戦うイレイズに対しては、今は信頼するしかない。

 火星。
 イレイズとシュトローム星人の激闘が開始された。
 手合わせに真正面から格闘戦で組み合い、打撃を交し合うが、これは全くの互角。両者空に飛び離れ、
特殊能力の戦いになる。
 遠距離戦ではイレイズの小威力の光線の連打対、星人のナノマシン変形でのミサイル連射。更に星人は
腕を剣に変形させ、隙を狙って接近して切り込んでくる。イレイズはバリアブレスソードで捌く。
 けりがつかないと見た星人は、全身をナノマシン変形させて無数の砲身を出し、全方位に砲撃。
一帯が炎に包まれる。
 爆煙が消えると、荒れた大地には何も残っていない。イレイズを跡形もなく吹き飛ばしたと星人は思い、
邪悪に微笑んだ。だが、その笑みは直ぐ崩れた。
 煙に紛れ、イレイズは小さくなって等身大サイズになり、弾丸発射直後の星人の砲身の一本の
発射口から体内に侵入。一気に巨大化し、内部から星人を破裂させた。

 イレイズは息を切らしている。カラータイマーも鳴り出している。通常なら、これで決着がついていた
だろう。
 イレイズは、周囲に、異様な気配が漂っているのに気付いた。
 火星の空に、黒雲のようなものが広がる。忽ち空一杯に広がったと思うと、星人の破片に吸収されていく。
黒い気を放ち、星人は瞬時に再生、生き返った。
「貴様が人類の希望とやらを光として自らの力に変えられるのなら、逆もまた道理」
 黒雲に見えたものは、星人が宇宙各地から集めた、正義・愛・勇気・希望・信頼などと真逆の、
邪悪・憎悪・恐怖・絶望・疑心暗鬼などの、人の中に正しい心と対になって入っている感情である。
暴力星団では凶悪怪獣や宇宙人が相変わらずひっきりなしに戦いを続けており、その他にも宇宙各地に
互いの不理解による戦争やその犠牲者達の悲しみは満ちており、ちょっと探せば幾らでも手に入るのだ。
 更に星人は、別次元に隠していた秘蔵の怪獣兵器を呼ぶ。イレイズが消耗するのを待っていたのだ。
「出でよ、巨艦怪獣・ベムロックス!!」
 次元の壁を引き裂いて現れる、全長1kmの宇宙戦艦。艦首には巨大なワニのような獣の顔がついており、
全身も生物的なディテール。戦艦でありながら怪獣なのだ。牙の並んだあぎとを開き、火星全体に咆哮を
轟かせる。
 シュトローム星人はジャンプしてベムロックスに合体、自らの上半身を艦橋とする。
 力尽きかけているイレイズは、それでも諦めずに攻撃。渾身のイレイズショットを放つ。
 爆発の炎が消えた後・・・
 ベムロックスは、全くの無傷。

 猛攻開始。
 チェーンを伸ばして飛ぶ巨大な錨による打撃や拘束、ずらりと並んだ艦砲による一斉砲火等が容赦なく襲う。
更にベムロックスは口を開け、中から無数の艦載機を発進させる。トンボと戦闘機が混ざり合った怪物・
オーガヤンマ。群れで襲い掛かり、ぎざぎざの口で噛み付き、棘だらけの肢を叩きつける。後方で包囲した
別のオーガヤンマの一団がビームを撃ってくる。イレイズだけでなく仲間のオーガヤンマにも当たり、
撃墜されるものも多数いるが、幾らでもベムロックスから涌いてくるのでシュトローム星人は気にしていない。
ぼろぼろになったイレイズはオーガヤンマの軍団に引っ立てられ、最後に、ベムロックスの開いた口に
放り込まれ、飲み込まれた。
 シュトローム星人は勝利を確信し、かつてマイナスエネルギーと呼ばれた暗い炎を撒き散らして笑う。
「私を滅ぼしたいのなら、宇宙全ての人の中の邪悪な心を、

 完全にゼロにすることだ。

 いつぞやのパライソ星人がやったように、人類全てを洗脳でもしなければ不可能だがな!!」

 同じ頃、デリートは、シュトローム星人の円盤軍を、全滅させていた。
 だが、サイコバーストの連打で力を消耗しつくし、力尽きて宇宙に漂っていた。ディアナに回収される。
もう戦力としては期待できない。他の宇宙警備隊も皆重症。
 ベムロックスの地球への侵攻を止めるものは、いなくなった。

 レーダーで補足できる領域に侵入してきたベムロックスとオーガヤンマの大群を、BIDベースで愕然と
見つめる一同。街の人々は恐怖に騒ぐ。
 地球は、最期の時を迎えようとしていた。

 次回、最終回。
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「地球人ども! ウルトラマンイレイズは死んだ! 宇宙警備隊も全滅だ!
 もう貴様らを守る者はいない!」
 シュトローム星人の声が響き渡り、人々は逃げ回る。
 何処にも逃げ場などないのに。


ウルトラマンイレイズ 26 自分で光れ
ナノマシン超人・シュトローム星人、巨艦怪獣・ベムロックス、
昆虫艦載機・オーガヤンマ、自律破壊弾・ビッグマリア2号 登場


 避難用の飛行機や船舶や列車に我先に乗ろうと争う市民。明らかに肉体的に劣っている
子供や老人を平気で突き飛ばしていく者も大勢いる。
 信也は忸怩たる想いで、百合子や真樹夫や超人塾の生徒達と共に、街の自警団に混じって
黙々と避難誘導の手伝いをしている。
「負けるもんか・・・こんなもん、暁兄ちゃんのこれまでの苦しみに比べたら」

 BIDベース作戦室で、前原は、パニックになっている街から異常な波動が検出され、それが
現在宇宙を進撃している巨大怪獣に向かって吸収されているのに気付いた。
「これは・・・マイナスエネルギーか?」
 昭和の80年代初頭に来訪したウルトラ戦士と共に地球を守っていた当時の防衛隊によって
定義された、人の心の中の邪悪な側面から発生するエネルギーであることは、資料で知っていた。
「巨大怪獣は、地球人から発生する負の感情をエネルギーにしているのか?」
「だとしたら、このままでは敵の思う壺だ・・・」
 モニターに映る街の恐慌振りを、岡島長官は重い顔で見る。

 9話のへタレ市民達は、隔離病棟の中で膝を抱えて蹲っている。もう何をしてもどうせ
地球は滅ぶんだと諦めきっている。その負の感情も敵に回収されていく。
 上田はジャイフローに乗り、避難誘導をする兵士達を上空で統括しながらふと思った。
ヘタレ市民やそれに類する者達を全て殺害すれば、マイナスエネルギーの発生は
止められるのではないか・・・
 思うだけでやめておく。
「それをしてしまったら負けだ」

 遂に、オーガヤンマの先方隊が、地球に入ってきた。
 SJ隊は決死の迎撃を行う。オーガヤンマは怪獣の割りに打たれ弱く、スペースジェットの
銃撃でも倒せなくはないが、とにかく数が多い。
 SJ隊の隊長機は複座に改造され、真理が操縦、四条が後ろで指示をしている。四条の傷は
まだ完全に癒えておらず、真理は迷ったが、地球が滅んでしまったら怪我人も健常者も皆
死ぬから同じだと四条は同行した。
 しかし、SJ隊も次第に劣勢に。もう駄目かと思われたとき。
 襲うオーガヤンマの一匹を、フライングクロスチョップで吹っ飛ばしたものがいる。
「地球人類の未来のために、宇宙の鬼畜米英をぶっ殺せ!!」
 佐々木参謀の援護である。
 信管を抜かれ、惑星爆破の能力を失った自律破壊弾・ビッグマリア2号。だが、その
驚異的な格闘能力は健在だ。もうどう考えてもミサイルじゃないが、それはともかく、
佐々木の指揮と文のオペレーションで制御され、オーガヤンマ群を蹴散らしている。

 オーガヤンマ先方隊が手こずっているのを見て、シュトローム星人はベムロックスの
艦橋から分離し、高速で先行して地球に降りた。
 腕を変形させた剣で、ビッグマリア2号を一撃で斬り捨てる。
 見回すと、怯える人々の中、無駄に抵抗を続けている者達が見受けられる。
 BIDベースの岡島と前原。四条・真理とSJ隊。ビッグマリア2号を壊されても退かない
佐々木と文。避難誘導隊指揮の上田。他、多くの無名の防衛軍兵士達。
 更に、戦うのが役目の防衛軍はまだしも、市井の中にまで諦めていない者がいる。
 信也、百合子、真樹夫達、自警団の人々。
 特に、一番子供のはずの信也が、遠くから、えらい目で自分を睨んでくる。
 取るに足らない地球人が、ギリギリまでがんばってギリギリまで踏ん張って、ここから
一歩も下がらない、そういう姿勢が、シュトローム星人は心底許せない。
 全身から砲身を露出させ、早速一斉放火で消し去ることにする・・・

 同じ頃。べムロックスの中。
 マイナスエネルギーが充満し、宇宙全ての邪悪な心で構成された、真っ暗な闇。
 ああ・・・シュトローム星人。確かにお前の言う通りだ。誰の心にも暗いものは
存在している。生まれたときは無垢な心でも、生きていくうちに世の中のままならない
理不尽に次々打ちのめされて、殆どの人間はひねくれて歪んでいくのだ。
ウルトラマンのはずの俺自身がそうなのだから間違いない。

 だが。

「大人は、子供の前では堂々としてるもんだよ。ハッタリでもいいからさ」
「・・・信也」
「大人が堂々としてないのに、それを見て育つ俺達子供がどうして胸を張って大きくなれるのさ」

 その通りだ、信也!!

「!?」
 一斉放火を放とうとしたシュトローム星人は、異変に気付き、思わず空を見上げた。

 宇宙のべムロックスが、激痛に悲鳴を上げる。
 その超巨大なあぎとが内側から引き裂かれ、顎の関節が破壊される。
 もう余力が残っていないはずの体内の男が、力任せにべムロックスの口を破壊して持ち上げ、
出てこようとしている。
 その様子が、世界中に衛星中継される。
 彼のこれまでの活躍を知っている者達が歓声を上げる。

「おのれ・・・!!」
 シュトローム星人は跳んで瞬時に宇宙に戻り、再びべムロックスに合体し、マイナスエネルギーを
増幅させ、口を閉じさせようとする。中の巨人が押されていく・・・

 それをさせない者が来た。
「銀十字軍は、まだ倒れていない!」
 女ウルトラマン・ディアナである。
 テレポートしてくるなり、べムロックスの砲撃をくぐって突っ込んでくる。そして。
 べムロックスの口の中の者に向かって、十字を腕で組む。何をする気か。
 眩しい光線が発射される。
 だが、それは殺すための技ではない。標的を甦らせ、生かすためのディアナの最強光線。
『シューティング・サイキックケア』である。
 ウルトラマンイレイズは、死地から帰還した。
 べムロックスの口を完全に破壊し、飛び出し、ディアナと合流。熱く握手を交し合う。

 シュトローム星人は、オーガヤンマ軍団を呼び戻して結集させ、両者を攻撃させようとする。
 だが、それもかなわなかった。
 BIDベースの前原は、ピースウエーブジャマー、ニセ宇宙警備隊のコントロール波ジャマーを
経て、開発要員の意地を賭け、オーガヤンマのコントロール波の波長までも暴き出し、それを
無効化するジャマーを放ったのだ。その後、コンソールの前で力尽きてぶっ倒れた。
 オーガヤンマの動きは鈍り、なんか、口から白いゲロを吐き始めた。どうも、チルソニア
遊星産の電波怪獣とお里が同じだったらしい。
 後は、奮起したSJ隊と、防衛軍の地上部隊にどんどん始末されていく。

「おのれ・・・おのれ、おのれ!!」
 シュトローム星人は、べムロックスの口を無理やり押し開かせ、内部のマイナスエネルギーを
破壊光線に変換し、眼前のイレイズとディアナは元より、地球の地表の生きとし生けるものを
一掃すべく、撒き散らそうとする。
 その前に、イレイズとディアナは、べムロックスの口から、体内に突入した。
 内部は稲妻を放つマイナスエネルギーの黒雲に満たされているが、何ともない。
 イレイズの体は眩しく光り出し、その光はマイナスエネルギーの毒を打ち消し、
ディアナをも守る。
 べムロックスの最深部に到達。動力部である、機械と生体組織の混ざり合った巨大で不気味な
心臓が脈打っている。

 ディアナの放ち続けるサイキックケアで力を保ちながら、イレイズは腕を組んで構え、
飛んで心臓に突進。接触と同時に、

 地上の信也は、笑顔で頷く百合子に後ろから支えられ、叫んだ。
「行けーーーーーッ!! 暁兄ちゃーーーーーん!!」

「零距離イレイズショット!!」
 ウルトラマンイレイズは叫び、最大出力の光を放った。


 明日の世界を繋いでくれと 語りかけてる巨大な背中
 なくならない悪に挑めと 己れの正義が 指令を下す

 倒れても 挫けやしない 直ぐ立ち上がる 又立ち上がる
 勝つことを約束したのは 俺なのだから

 のしかかる重い使命は ヒーローの誇り
 戦え! イレイズ! ウルトラマンイレイズ

 宇宙が、真っ白に染まった。
 白い世界の中で、超巨大なべムロックスも、シュトローム星人も蒸発して消えていく。
「これで・・・終わったと思うなよ・・・」
 シュトローム星人は、最後に呪いの言葉を残す。
「私が消えても・・・宇宙全ての者の心から暗い闇がなくならない限り・・・私の後継者は、
際限なく・・・現れ・・・る・・・」
 消えた。
「そうだ。人の心から完全に暗い闇を消すのは、不可能だ」
 ディアナを傍らに、ウルトラマンイレイズは尚光り続ける。
「だからこそ、闇に怯える人々を照らすため、先ず俺が光るのだ

 一年後。
 地球は、徐々に復興を遂げつつある。
 BID宇宙基地が、遂に再建を成した。最大の危機を乗り越えてから出来上がったので結局
最終決戦には何の役にも立たなかったのが間抜けといえば間抜けだが、まあこれから役に立てばいい。
 四条、真理、上田、前原の四人は、宇宙へ転属することになった。岡島長官と、佐々木参謀の
秘書となった文に見送られ、旅立っていく。

 百合子は、超人塾の真樹夫と交際中。多分真樹夫が自分の義兄になるだろうと信也は
見越している。

 宇宙警備隊も、デリートの指揮の下、日々戦力を回復させている。
 ウルトラマンイレイズは、暴力星団の担当に戻った。凶悪怪獣・宇宙人を始末するのでなく、
更正させて社会復帰させるべく、日々頑張っている。
 後、ディアナとはやり直している最中らしい。

 以上の近況が記された手紙が、信也の下に届いた。
 クレーンで吊るされた左右幅5メートルの手紙が。
 地球人とサイズが大幅に違うのをうっかり失念して書いたらしい。
 信也はやれやれと苦笑した。
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