ウルトラマンイレイズ 外伝1 追憶・燃える超人
宇宙暗殺者・ギルト星人 他 登場


 宇宙警備隊の上司・デリートから、イレイズに指令が下った。暴力星団出身のたちの悪い
巨大宇宙人の一団が、近辺のカタギの文明惑星を荒らしているので至急向かって対処して欲しいとの
こと。只、今回は何時もの事件と多少趣が違った。
 宇宙警備隊の別部隊に所属する戦士の一人が、独断先行して現地に向かっているというのである。

 その文明惑星。
 独断先行した別部隊の戦士・バーンがいる。
 全身燃え上がるような紅のウルトラマンは、その内心も怒りの炎で熱く燃えていた。
 星の地上の街を荒らす凶悪星人達。故郷の星の大義を背負っての侵略などではない。欲にあかせて
暴れ回っていたら先立つものがなくなってきたので、刹那的に食糧や物資を奪いに来ただけである。
そして、邪魔する者も逃げる者も片っ端から攻撃。
 そんな暴挙をバーンは許せない。星人達の前に降下し、一応やめるように警告はした。
そしたら、軍団の一人は反省するそぶりもなく、最初からバーンを挑発する腹積もりで、
手近の逃げ遅れた市民を踏み潰した。
 先行してきたバーンが一人だけだと見てなめたのだろう。だが。

 バーンの脳裏に、地球での記憶が蘇る。
 時の防衛隊・HEETの奮闘も空しく、地獄の業火に焼かれる東京の街。
 強敵・シファンセス星人は、強大な防御力とパワーでバーンを圧倒し、手も足も出ない彼の前で、
逃げる子供を、容赦なく踏み潰した。

 その記憶を持つ彼に対して、この挑発は愚かに過ぎた。
 バーンは、市民を踏み潰した星人が対処できない速度で迫り、先ず下手人の星人をパンチの
一撃で肉塊に変える。それを見て怒った周りの星人達も群がってくる。バーンは敵の攻撃による
痛みも傷も怒りの余り認識できず、壮絶な取っ組み合いを続ける。
 他の警備隊員を連れたイレイズが駆け付け、星人達は多勢に無勢と見て逃げ出し、その後
バーンは倒れた。

 バーンが銀十字軍に担ぎ込まれ、ディアナの治療を受けている間、イレイズはデリートの
下に向かい、バーンについての話を聞いた。バーンがかつて地球勤務だったという話を予め
聞いており、又、現在自分自身に次の地球勤務についての打診がデリートからあったので、
興味があったからである。
 それ以前にも、イレイズは一度バーンに接触している。バーンが行きがかり上倒し、
そのままでは死を待つばかりの地球怪獣の身柄を引き継いで回収し、怪獣冷凍保存宙域へ
搬送したときである。

 その後、強敵のシファンセス星人を捨て身の一撃で倒したものの、そのダメージが響いて
これ以上の地球勤務が困難と判断されたバーンは、苦渋の決意で地球を去ることになる。
帰還命令を出したのは、デリートだった。
「バーン君は血の気が多くて短慮なところもありますが、弱い者を虐げる悪に対する怒りは
人一倍強い、まだまだ将来有望な人材です。失うのは惜しいと思っての判断だったのですが、
彼が地球に残してきた無念を思うと・・・気の毒なことをしました。
 バーン君の心中には、その無念がまだくすぶっているのでしょう」

 それを聞いたイレイズがどうしたか。
 バーンの独断先行に、自分も付き合うことにしたのである。
 或いは、気まぐれだったのかもしれない。只、ずっと顔を突き合わせている暴力星団の
ゴロツキどもの、日頃の虫唾が走る行いへの感情については、イレイズも同じだった。
 独自の情報網(宇宙タレコミ屋とか)で星人達が根城にしている星を突き止め、宇宙警備隊上部に
報告もせず、こっそり一人で向かう。
 無論、わざわざ不利な戦いの末に無駄死にしに行くわけではない。
 ゴーストタウンと化している星にたむろっていた星人達は、イレイズが一人と見ると、
調子に乗って一斉に襲ってきた。イレイズは適当に反撃しつつ、致命傷を受けないようにしながら
後退して行く。

 否。
 後退している様に見せかけ、大きなすり鉢状になった地点におびき寄せる。
 すり鉢の内壁の死角になっている横穴に入る。星人達は袋の鼠だと思い、一斉に窪地に飛び込んでいく。
 窪地の内壁には、イレイズの用意したバリヤーフィールドが仕掛けてあった。
 もうお判りであろう。ウルトラミキサーだ。
 巨大な地獄の罠が作動し、星人達は無数の光の刃の回転で切り刻まれ、激痛に悲鳴を上げる。
横穴の更に奥に掘っておいた抜け道からイレイズは地上に上がり、ぼろぼろになりながら
必死に這い上がってこようとする星人も、容赦なく蹴り落とす。
「死ね」と言い放って。

 程なく、穴の中は無残なバラバラ死体の山となった。見下ろしながらイレイズは、やはり
自分は地球に行くべきではないと思った。
 宇宙の中でも美しく平和な星といわれる地球には、そこに住むに相応しい人々を、
己を捨てて守り抜こうとするような高潔な魂の持ち主が行くべきだ。ウルトラマンなのに、
こんなえげつない手を使って、死ねとか言う言葉を平気で言うような自分が行くべきではない・・・

 物思いは、いきなりの激痛によって断ち切られた。
 一人だけ、寸前にイレイズの手を読んで罠を逃れた星人がおり、暫く保護色で身を隠してから、
隙を突いて後ろから不意討ちを食わせたのだ。
 隠密能力に長けた宇宙の暗殺者・ギルト星人は、背に鈍器で打撃をぶち込んでダメージを与え、
イレイズが苦しむ隙に、サイボーグ化した腕と繋がった鎖を飛ばし、首を締め上げる。
 汚い手を使えば、そりゃ汚い手が返ってくるのも道理かと他人事のように思いながら、
気が遠くなりかけたとき、轟音が響き、星人の攻撃が止まり、鎖が緩んだ。
「あんただったんだな」
 バーンは、かつてラルを回収しに来た、イレイズのことを覚えていた。
 まだ傷の癒えない体で駆け付け、ギルト星人の胴を後ろから、必殺のウルトラ正拳突きで
ぶち抜き、引導を渡したのだ。

 そのまま卒倒するバーンを、イレイズは駆け寄って抱え起こす。
 イレイズに次の地球勤務の話が来ている事を、バーンは噂で聞き及んでいた。
 息を切らして笑いながら、地球はいい星だ、あんたも一度行ってみるといい、そして、
出来ることなら、志半ばになってしまった俺の無念を継いでくれるとうれしいと言い、
又銀十字軍に担ぎ込まれていった。

 その後、ウルトラマンイレイズはデリートの打診を受け、地球へ向かうこととなるのである。
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ウルトラマンイレイズ 外伝2 勇者候補生
中継機獣・ブイロイド、ニセ宇宙警備隊 登場


 今回は、22話直後辺りの話。22.5話みたいな。
『ウルトラマンイレイズ』と銘打っているが、実は今回イレイズは登場しない。彼は今地球勤務の
最中で、尚且つ舞台がM78星雲近辺の宇宙だからである。
 22話は、狡猾な侵略者・シュトローム星人が全員ロボットのニセ宇宙警備隊を使ってイレイズを
騙し、地球を危機に追い込んだ話だった。シュトローム星人は地球方面だけでなく、別働隊の
ニセ宇宙警備隊も放ち、本物の宇宙警備隊の地球への援軍を妨害した。それらは本物の宇宙警備隊に
よって全て倒された・・・
「と、思われていたのですが。ごめん、調査不足でした」
 宇宙警備隊の上司・デリートは、呼びつけたウルトラマンバーンに先ず手を合わせて謝った。
そして指令を下す。
 討ち漏らしたニセ宇宙警備隊がおり、まだシュトローム星人に背後から操られ、本物に
なりすまして潜伏しつつ各地で破壊活動を行っているというのだ。
「こんなことをずっと続けられては我々の信頼に関わります。それがシュトローム星人の
狙いでしょうが」
「で、やっつけて欲しいってことだな。無論俺もそんな奴らを放っておくつもりはねえ」
 すぐさま向かおうとしたバーンに、
「それと、もう一つ頼みたいことが」
「?」

 今回も、現場に先行している戦士がいる。前回のバーンと違い、正式な特命でだが。
 太陽エネルギー吸収システム・プロテクターを胸に纏った、宇宙警備隊の新人・
ウルトラマンカイザーだ。
 歴代の先輩ウルトラ戦士を、魂の兄弟『兄さん』として尊敬しているカイザーにとって、
彼らの偽物を放って本物の信用を貶めるような手口は許せないものだった。そこで、ニセ
宇宙警備隊の討伐に自ら志願した。
 敵は、無人の荒野と岩場ばかりの星に潜伏していた。現地に着くなり集団で襲ってきた。
小攻撃の光線・ハンドスラッシュで撃ち倒していくが、それでもぞくぞく現れる。きりがない。
 だが、カイザーは事前に星の地形を調査し、策を用意していた。それを試してみることにする。
 予め見つけておいた洞穴。大きすぎず小さすぎない。後退してその中へ逃げ込む。
ニセ宇宙警備隊も追って入ってくる。
 洞穴の奥は行き止まり。だが、行き止まりの地点で、そこまでの経路が長く真っ直ぐな
一直線の穴になっているのを、カイザーは調べておいた。当然、追ってくるニセ宇宙警備隊も
完全に縦一列になる。
「メテオスペシウム!!」
 地道な修行の末に編み出した必殺光線をカイザーは放つ。洞穴の内壁に衝突して崩さない
絶妙の火線で。ニセ宇宙警備隊は避けることが出来ず、真っ直ぐ光線の軌道に串刺しにされ、
爆発、分解して崩れ落ちた。
「やった!」

 意気揚々と洞穴から出てきたカイザーだが、そこへ、突然の砲撃が襲った。
 間一髪で避けたカイザーは、崖の上に立つ砲手を見つけた。両肩にキャノン砲を搭載した、
人型のロボット兵器。これもシュトローム星人の配下、中継機獣・ブイロイドである。
ブイロイドからは特殊な電波が発されている。これでニセ宇宙警備隊を操り、シュトローム星人の
代わりに指揮していたのだが、ニセ宇宙警備隊が全滅したので自ら出てきた。
「おのれ!」
 カイザーは連続ジャンプし、ブイロイドの砲撃を避け続ける。その回避力は見事だが、
追ってくるブイロイドの機動力も高い。一点で狙い続けるだけでなく、頻繁に跳び回って
ポジションを変える。それでもどうにか反撃の機会を見出したカイザーは、もう一度
メテオスペシウムを放つ。ブイロイドは、真正面から食らった。
 だが、厚い装甲に阻まれ、十分なダメージを与えられない。
「何!?」
 痛みを感じない機械であるブイロイドは、肩からの砲撃を続けつつそのまま前進して迫ってくる。
一方、必殺光線を二発も撃ったため力を消耗し、鳴り始めるカイザーのカラータイマー。
「くっ・・・!」
 メテオスペシウムを破られた際の、更に一段階上(と思われる)の必殺光線・サンシャイン
ショットだが、この外伝における時点ではまだ完成していない。カイザーが地球勤務となるのは
まだかなり先の話である。

 カイザーを狙うブイロイドに、あらぬ方向からの光線が飛んで来た。
 よろめき、ブイロイドは攻撃の主を捕捉。
「待たせたな、新入り!」
 ウルトラマンバーンの、ヒートビームだった。
 新人・カイザーが不測の事態で危機に陥った場合の援護をデリートから頼まれたバーンは、
ブイロイドに突進。
「いけない! 敵の砲撃を食らいます!」
 だが、バーンは力にあかせ、砲撃が当たる前に前方へ加速。姿勢を低くして握れる程度の岩を
両手で一個ずつ拾い、投げつける。岩はブイロイドの肩キャノンの発射口に当たって詰まり、
砲撃を封じる。
「手前の装甲なんぞ、あのシファンセスの野郎に比べりゃ紙だぜ、紙!」
 ハイジャンプしたバーンは、呆然と見上げるブイロイドを、ダイナミックキックで
跡形もなく粉砕した。

「凄い! 貴方が噂に及んだ紅のウルトラ戦士・バーン兄さんですね! 流石です」
「に、兄さん?」
 先輩戦士の活躍を目の当たりにしたカイザーは興奮する。
「地球でのご活躍は聞いています。初陣で、現地にあるものを咄嗟に武器にして突破口を
開いたその手腕、今見せて頂きました」
 地球で、ブラックケルベロスに自動車やビルを投げたことを言っているらしい。
「・・・いや、もうその話は適当に流しといてくれねえか」

 勇士司令部に帰還していく二人。
「あの方角に、俺の第二の故郷・地球がある。お前も目指せ。そのために強くなれ!」
「はい!」
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ウルトラマンシグマ エピソードEX 決戦! シグマ対明野暁!?
宇宙窃盗犯・アンチョロ星人、一角怪獣兵器・ライノゴン 登場


 SGTの大和真悟隊員は、同僚の桃瀬雪と共に東京・練馬区の住宅街を調査していた。レーダーに
異常な電波がキャッチされ、何者かが地球に侵入した疑いがあったからである。
 だが、実は真悟=ウルトラマンシグマは、その原因を知っていた。やってきたのは、侵略者ではない。
シグマの旧知の人物だ。
雪「何で練馬区を重点的に調べるの?」
真悟「俺の戦士としての勘って奴さ」
雪「はあ」
 旧知の人物は、かつて地球防衛のために地球人の姿となって練馬区に潜伏し、そこに住むある姉弟と
家族同然に暮らしていた。真悟は、その姉弟の家を目指している。旧知の人物は、おそらくその姉弟に
再会しにやってくると睨んでのことだ。
「! 桃瀬隊員、隠れて」
「な、何だよ」
 咄嗟に物陰に隠れる両者。雪は急に真悟に腕を掴んで引っ張られたので意識してしまうが、真悟は
そんなことには気付かず、目的の家に近づく一人の男を見ている。長身で鍛えられた身体の、整った
面立ちの若い男は呼び鈴を押す。
 出てきた家主・榊百合子は、男を見て大層驚き、感動したようである。暫く互いに再会を喜び、
百合子は男を家に招きいれようとしたが、
「お前、誰だ!?」
 更に家から出てきた少年・榊信也が叫んだ。

「な・・・何を言うの信也。暁さんが帰ってきたんじゃない」
「そうだぞ信也。元気そうだな」
 暁と呼ばれた男は、信也に対して人懐っこそうな笑みを浮かべるが、
「違う! 暁兄ちゃんじゃない! 兄ちゃんはそんなキャッチセールス臭い偽善的な笑い方はしない!
もっとむっつりしてて無愛想だ!」
「そ・・・そういえば・・・確かに違うわ! 暁さんのしょってる空気は、ウルトラというより
ミラーマンとかシルバー仮面みたいに暗くて陰惨だったわ!」
 思わぬ展開に、物陰の真悟も雪も唖然としている。
「偽者め、出て行け!」
「訪問販売とか宗教の類でしたら間に合ってますから!」
「う、うわっ何を」
 姉弟はほうきや玩具のバットで暁をたたき出そうとする。暁は暫く苦しんでいたが、
「ふ・・・ははははは! よくぞ見破ったな!」
 暁の姿がぐにゃりと歪んだと思うと、宇宙脱走犯・アンチョロ星人の正体を見せた。
捩れた角が左右に一対生えた頭は大げさな作りだが、身体はまるで全身タイツのように貧相だ。
 真悟は思った。
(俺の、シグマの透視能力でも気付かなかった・・・しかし、すると本物のあいつは何処に?)
 そんな思いをよそに、
「明野暁に成りすまして暫く此処に居座ってやろうと思ったが、ばれたからには仕方ない。貴様らを
人質にして・・・」

「ふざけるな!」
 アンチョロ星人は、後ろから蹴りを食らって倒れた。何時の間にか、近所の住民が集まっていた。
「大丈夫ですか、百合子さん!」
「あ、真樹夫さん」
 蹴ったのは、超人塾の長谷川真樹夫。
「私と一度真っ向勝負をしたこともある終生のライバルの暁君に成りすますとは、命知らずな」
 何時の間にか終生のライバルらしい。
「全く、あの兄ちゃんに化けて悪事を働くたぁふてえ野郎だ」
「それにしても当時は驚いたよ。あいつが俺達の街を守ってくれてたウルトラマンだったなんてなあ」
「俺達と同じ大きさで、駅前の商店街で悪い宇宙人や空き巣を追い回したりしてた時はもっと驚いたけどな」
 暁が地球を去った後、信也が町内に片っ端から言いふらしたらしい。そして、暁自身は何者も
寄せ付けない孤高の戦士のつもりだったようだが、結果的にめちゃくちゃ地元に密着してたらしい。
「まあそんなことはいいや、とにかくこの宇宙人野郎をやっちまえ!」
「おう!」
 全員で星人を袋叩きにする。
「ぎゃーーーーーッ!?」
 シュトローム星人襲来時の大局面を乗り切ったこの街の自警団は、皆心臓に毛が生えていた。
ちなみに、現在新宿の大通りには、防腐処理されたオーガヤンマの肢の一本が記念に飾られている。

 シグマの世界においては余り時系列を気にする必要もなさそうだが、一応。再建した宇宙基地にBID本隊が
活動拠点を移すにあたり、首都圏防衛の管轄はSGTに移行された。岡島長官、佐々木参謀と藤川文は
新たに創設予定の防衛組織・EARの準備のバックアップに当たっている。カラになった晴海のBIDベースは、
侵略者などに対する機密保持のため、やむなく撤去された。元々基地自体の戦力は然程高くなかったし。

「いい加減にしろ!!」
 散々殴られたアンチョロ星人はぶちきれ、巨大化して暴れ出した。榊姉弟や自警団は逃げ出す。
その連携は見事だ。
「いかん! 桃瀬隊員、本部に戻ってファルコンで星人に対処してくれ」
「真悟はどうするのさ?」
「俺は地上から星人を銃撃して牽制し、時間を稼ぐ。頼んだぞ」
「合点!」

 SGTのスーパーファルコン隊が巨大星人に攻撃を開始。しかし、星人はびくともせず、反撃を開始。
両手持ちの大型の銃を取り出し、実体弾でファルコンを狙撃。荒井と中村のファルコンが墜とされ、二人は脱出。
地上の真悟は銃撃もそこそこに、スパークスティックで変身。
 ウルトラマンシグマを捕捉した星人は、銃を撃ってくる。シグマは最初こそ苦戦したものの、冷静に
弾道を見極め、手から念力で出した剣・シグマソードを出して迫ってくる。銃弾をソードで弾き、更に銃の
発射口を斬り飛ばす。おののく星人にソードで斬りつけようとしたとき。
 背後から強烈な衝撃を受けて吹っ飛ばされる。
 アンチョロ星人は、怪獣兵器・ライノゴンを別次元に隠していたのだ。ライノゴンは太く鋭い一本角を
シグマに向け、四足で突進してくる。二体の敵に挟まれ、シグマ、ピンチ・・・!

 轟音と共に、ライノゴンは歩みを止め、絶叫した。
「イレイズ!?」
「すまん、遅くなった」
 ウルトラマンイレイズが、上空から降下ざまにバリアブレスソードをライノゴンの背に叩き込んでいた。
 形勢逆転。動きの鈍ったライノゴンにシグマが連続で打撃を加えた後、アスシウム光線でとどめを刺し、
イレイズはバリアブレスチェーンを飛ばし、鎖でアンチョロ星人を捕縛した。

 今回イレイズが地球に来るのは、日々強くなる敵に対抗すべく、強化アイテムをシグマに届けるため
だったのだが、宇宙の連続窃盗犯のアンチョロ星人にそのアイテムを盗まれた。取り返そうと追っている
うちに、地球人への変装能力を持つ星人に地球に先回りされたというわけである。
シグマ「おいおい、しっかりしてくれよ」
イレイズ「面目ない。こいつは宇宙刑務所に護送してきっちり後始末をさせる」
星人「ひいい、お前、怪獣や宇宙人を始末するんじゃなくて更正させる方向に修正したんじゃなかったのか!?」
イレイズ「罰を与えないとは言っていない。かっこつけてるつもりで得意になって大事なことは全部置き去りに
しちゃって自分で自分を苦しめている囚人の性根は、トランスフォーメーションさせないといかん」
 宇宙刑務所送りとなったアンチョロ星人がどうなったかは、皆さんのご想像に任せる。
「それで、強化アイテムというのは?」
「さっき、お前が破壊した」
「・・・・・・」
 アンチョロ星人の使った銃が、盗んだというそれだった。

 イレイズは帰ることになり、シグマに大気圏外まで送られる。
「いいのか、イレイズ。あの姉弟のところでゆっくりしていかなくて」
「こいつを連れて行かないといかんからな」
 アンチョロ星人は鎖で無理やり引っ張られている。
「案ずるな。俺は居場所がなくなって地球勤務を退いたわけじゃない。帰ってこようと思えば、何時でも
帰れるんだ。第二の故郷に」

 地球では、榊姉弟や近所の人達が晴れやかな顔で見送っている。

「強化アイテムに関しては無駄足になったわけだが」
 そもそも、そのアイテムを失ったところで苦戦の原因には関係なかったが。寧ろ、強化アイテムを
使わずともシグマがまだまだ充分戦えるのが判ったので、イレイズは安心していた。
「預かっていた土産があるのを思い出した。お前にとってはその土産のほうが活力になるだろう」

 奥多摩のSGT基地。
雪「呆れた。あんた、食パン切らずに丸ごとかじる、普通?」
真悟「いいんだよ」
 土産とは、今やゾフィー隊長と同格のポジションまで出世している大いなる力の超人が、初心に
返って焼いたパンだった。真悟=シグマにとっては最高の土産だった。
 防衛隊に入る前はパン屋だったなんて設定、覚えてる人いるだろうか?
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ウルトラマンシグマ エピソードEX2 奇跡の予兆
寄生工作員・スナッチ星人 登場


 ウルトラマンシグマとSGTは、首都圏で巨大宇宙人と交戦していた。全身黒ずくめで顔も
のっぺらぼうで、とにかく正体不明で奇怪なその敵をメカマンの荒井隊員は分析する。新開発の
分析システム『マイナスエネルギーカウンター』で。
「物凄い反応だ・・・!」
 マイナスエネルギーカウンターの開発には、現在BID宇宙基地の科学チーフとなっている
前原哲夫も技術供与している。シュトローム星人襲来による大局面の際に前原は、地球人や
宇宙の各地から集められた人の心の中の邪悪な側面から生み出されるエネルギーが、シュトローム
星人を大幅に強化していたことを懸念し、それを検知・計測・分析するシステムの開発を提唱
したのである。
 前原の懸念の通り、最近、マイナスエネルギーを力の源にしている怪獣・宇宙人が多発
し始めている。昭和80年代以来である。シュトローム星人自体は一応通常の科学概念で分析できる
敵で、あくまでマイナスエネルギーを利用して自らを強化するに留まっていたが、現在
増加傾向にある敵は、マイナスエネルギーそのものが怪獣となっているかのように負の属性に
純化しつつある。今交戦している相手・スナッチ星人もその一体だ。

 星人は、手を伸ばして指先から白い糸のようなものを発射。だが、シグマを狙ってはいない。
周辺のビル群の中に入っていく。
 すると、ビルの壁に青筋が立ち、ビル群が怒って動き出し、ジャンプしてシグマにぶつかって
攻撃を開始したではないか! 苦しむシグマ!
 無機物のビルが生き物のように動き出すのも異様だが、
神隊長「あの白い糸は一体何だ?」
 分析した荒井は、真剣な顔で、
「疳の虫です」
 人間のいらいらの原因で、おまじないをかけると指先から出てくるというあれ。スナッチ星人は
疳の虫を体から生み出して目標に寄生させ、怒らせて暴走させるのだ。その目標が無機物であっても
障害とはならない。

 この危機に対し、最近試験的に新設された防衛隊・REDが援護にやってきた。
 空を走る老婆・スカイバーサンをうろたえず受け入れた前原、レーザー光線とかゆみ止め薬を
合成できるスキルを持つ荒井などもいるが、常識に捉われた殆んどの者はそういった一見非科学的な
事例を一笑に付す。しかし、マイナスエネルギーによって超常的な力を持った敵の増加に対し、既存の
科学だけで分析・対抗することが難しくなってきた。そうした不思議な事件に対抗するための能力に
特化した防衛部隊が、REDなのである。

 REDの隊長・井上は語る。
「事件の目撃者の証言がいかに信じがたいものであっても、まず信じ、真剣に検討することです。
又、子供達の語る言葉をおろそかにしないこと。大人の常識に捉われていない子供の観察・洞察力には、
不思議な怪獣に対抗する上で侮れないものがあるのです」
 なるほど、と神はうなずく。これまでも、真剣に事件を通報してきた市民に対し、そういうのはこども
相談室にねーとか、寝言は寝て言えとかいう応対をしたために大惨事になった例がいくつもある。
何度無駄足を踏もうとも協力者に真剣に応対する、それも防衛隊の務めだと井上は語っているのだ。
 REDは、疳の虫に対する民間療法を事前に調査してきた。シグマを苦しめるスナッチ星人に対し、
それらを片っ端から試す。掌に墨で文字を書く。塩で手をもむ。首筋にお灸をすえる等。
挽地「あちちちち」
橋本「でもこれ、疳の虫を出している相手にやらないと効かないんじゃ? 俺達がやって意味あるのか?」
小野「いいの。要は信心なのよ」
 そこへ、新人・宮野奇跡隊員が駆け付けてきた。
「有効と思われる手段が見つかりました! アビラウンケンソワカと呪文を唱えるそうです」
 多くの子供達が集められ、アビラウンケンソワカー、アビラウンケンソワカーと呪文を唱え続ける。
子供達に星人の攻撃が届かないよう、REDがしっかり守っている。
 すると、呪文の効果が現れ、スナッチ星人の全身から疳の虫があふれ出して死に、力を失った星人は
苦しみ出したではないか! ビルの攻撃も疳の虫が死んだので止まったではないか!
宮野「今だ、シグマ!」
 危機を脱したシグマは、スナッチ星人にアスシウム光線を発射。星人は爆死したではないか!
神「危ないところでしたね」
井上「ええ。ですが、このような事件は今後も多発するでしょう。警戒を緩めてはいけません」

 宇宙の彼方でも、危機を感じ取っている者がいた。ウルトラ戦士の故郷・M78星雲でも特に多くの謎に
包まれている場所、『奇跡の国』。
 国王・ハイパワーマンは、宇宙の各地で超常的な力を持った悪意が目覚め始めていることを、
その超能力で感じた。そこで、一人の戦士を呼ぶ。
 ハイパワーマンの前にひざまずく戦士。彼も、眩しい光に包まれてぼんやりとしか姿が見えない
ハイパワーマンについて、詳しいことは知らない。
「お前の力が間もなく必要になるだろう。そのときのために技を磨いておくのだ、ウルトラマンミラクルよ」
「ははっ!」
 後にウルトラマンミラクルは地球に向かって宮野奇跡と合体し、強大な魔力を持つ強敵・ジャーク星人や
封印の解けた宇宙妖怪など、不思議な特殊能力を持った敵と戦っていくことになるのではないか!
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ウルトラマンイレイズ 外伝5 戦うということ
黒い泥の者 登場


 26話を以って地球勤務を終えたウルトラマンイレイズは、宇宙警備隊本隊に帰り、
かつての役目だった、暴力星団関連事件への対処役に戻っていた。暴力星団は何度か述べて
来た通り、その強力な戦闘力ゆえに適当でやめておくということを知らない凶悪怪獣や極悪
星人がたむろし、ゴロツキ同然に際限なく戦い続けている、ある意味、宇宙のスラム区である。
その見苦しさに辛抱できなかったイレイズは、かつては同じように暴力的に対応し、多くの
怪獣・星人を容赦なく痛め付け、時に惨殺し、味方からも避けられていたものだった。
だが、それだけではいけないということを地球勤務のうちに多くの者から教わり、再度
暴力星団担当に戻ってからは、怪獣や星人を更正・社会復帰させる方向で動くようになり、
周りの協力もあって、次第にそれをなし得るようになりつつある。
 だが、そこまでして尚、どうしようもない事態も存在する。

 それは、暴力星団の最深部から来た。これまでにも何度か来ている存在だ。そのたび、
時の宇宙警備隊の勇士達によって駆逐されてきたが、今だに根絶させるには至っていない。
シュトローム星人がイレイズに倒され、絶命する寸前にその存在を示唆した、人が生きている
限り決して宇宙からなくす事が出来ないもの。それに属するものなのかもしれないが、
真相は判らない。

 迎撃態勢に入っている宇宙警備隊。彼方の星も見えない暗い闇から、それが、じわじわと
広がって湧いてくる。
 ウルトラ戦士達や巨大星人達と同じくらいのサイズで、一応人間に近い形をしている。
だが、全身が真っ黒で汚い泥に覆われ、顔も身体の細かい特徴も判らない。そういう感じの
ものの、無数の群れ。それが何をしているかというと、とにかくお互いに、お互いの身体に
泥を擦り付け合っている。そうして自分の身体から泥を拭って奇麗にしようとするが、
それぞれの力が完全に拮抗しているらしく、勝負が付かない。それでもやめない。
終いには互いを殴りあい、蹴りあい、首を絞めたり引っかいたりする。一声も発さない。
言葉で罵り合うのも鬱陶しいらしい。
 そんな状態で周りなど一切見ずに周りに広がってくる。放っておけばそのうちカタギの
星々にまで拡大して被害が及ぶ。倒さねばならない。宇宙警備隊は攻撃に移る。
 この『黒い泥の者』達は、どうしたことか、ウルトラ戦士の十八番の光線技で攻撃しても
一切効果がない。通り抜けてしまう。どれほど大出力の光線でもだ。過去、プラズマスパークの
エネルギーを直に浴びせても駄目だった。だが、色々試したところ、どうやら格闘技や
手持ち武器による直接攻撃は効く。なので、ひたすら殴って倒すしかない。しかも
中途半端にしぶといので時間が掛かる。だが、やらねばならない。
 この無駄に疲れるドブ掃除に、イレイズは、ウルトラマンバーンに頼み、此処暫く彼の
弟分となって精力的に宇宙警備隊の任務に奮闘していた、ウルトラマンカイザーの手を
借り受けていた。新鋭として活躍していた彼からしても、きつい仕事だった。

「イレイズ・・・兄さん・・・」
「何だ?」
 人から無邪気な好意をそのまま向けられることに馴れていないイレイズにとって、この
『兄さん』という呼称は今だに少々抵抗がある。だが、このきつい戦況で、呼び方に
文句を言っている余裕などない。物凄いマイナスエネルギーが一帯に充満している。
「この・・・今回の相手は、一体何なんですか・・・彼らは、何があって、ここまで
互いを憎み合っているんですか・・・?」
 新人のカイザーは争いをやめるように何度も必死で呼びかけたのだが、駄目だった。
「判らん」
 正直に言う。
「取り合えず、意味が理解できなくてもいい。こいつらを殲滅するまで・・・手を緩めるな」

 長い長い戦いの後、黒い泥の者は全滅した。闇の彼方からの流出も止まっていた。
宇宙警備隊はぐったりしていたが、まだ辺りに漂う敵の死体の片付けもしなければならない。
マイナスエネルギーを出したまま放置すると、又別の邪悪なものを呼びかねない。

 片付けも終わり、宇宙警備隊は泥まみれで帰途に着く。イレイズとカイザーも。
 憔悴しているカイザーにイレイズは、これが、宇宙の平和を守るために戦うという
ことだと言った。いや、宇宙平和のための戦いだけではない。生きていく限り、
理不尽なことや納得の行かないことは何度となく襲ってくる。だが俺達は、そういう世の中で
生きていかなければならないのだと。
「一戦一戦の中で、一度勝ったらそれで終わりということはない。人生を終えるまで、本当に
勝つという事はないのだ」
「・・・・・・」
「だが。
 人生を終えるまで、本当に負けるということもない。最後まで勝負は判らんのだ」
 イレイズは泥だらけの顔を向けて言う。
「お前は俺達の魂の弟だろう。だったら、兄である俺達の名を汚すようなことは、くれぐれも
してくれるな。どんなときでも、最後まで諦めずに戦い抜いてくれ。それが戦士の責任と
いうものだ」
「兄さん・・・」
「そうだ。俺はお前の兄だ。
 後、もう一つ。人生そのものにオリジナリティがない部外者の、どうでもいい野次など
放っておけ。今ここで生きているのはお前だ。お前の信じた道を行け、カイザー」

 そして、今日は疲れたので取り合えず戦士達は帰って寝た。
 兄の願いが叶えられたのかどうかは、明日起きなければ判らない
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「お控えなすって!」
 冥王星圏防衛の任務を続けていたウルトラマンバーンの前に、かつて二度も地球を襲った
暴力星団の札付き怪獣、一度目はウルトラマンイレイズに倒され、二度目の復活の際も
デリート隊長に倒された、ラムパルスとドビドーグが突如現れた。何事かと構えるバーンの
前で、二頭は中腰に構えて片腕を斜め下に伸ばし、仁義を切った。
 二頭は戦いに来たのではない。デリートの処遇で又復活させられ、執行猶予処分で
長い経過観察とお勤めの末、更正したのである。そして、バーンのカプセル怪獣として
平和のために働くことになったのだ。二頭をつむじ風のように回る光が包んだ後、二つの
小さなカプセルが出来上がり、バーンの手に収まった。


ウルトラマンイレイズ 外伝6 暁の中で
あのお方、他色々 登場


 時間はかなり遡る。
 地球に就任する前のウルトラマンイレイズは、銀河辺境の無人惑星の荒野の中で、やるせない
思いに浸っていた。周囲の荒野の光景が彼の今の精神状態そのものだった。
 暴力星団の管轄を長く続けていたイレイズは、疲れていた。来る日も来る日も、道理の通らない
自分勝手な化け物どもを痛め付け、殺し続ける。望んで引き受けた任務のはずだったのだが、
悪意に満ちた存在は倒しても倒しても現れ、家畜を屠殺する様にそれらを屠り続ける自分から、
宇宙警備隊の同僚も、守っているはずの市井の人々も皆遠ざかっていく。ディアナとも意見が
合わなくなり、もう長いこと逢っていない。

 そんなイレイズにも、他のオリウル戦士達の例に漏れず、心の師と密かに仰いでいる先達がいた。
無論、オフィシャルの存在の。
 かつて何度か、というか結構何度も地球を訪れ、その平和を守り抜いてきたその先達も、平和を
守るという理想と、そのために続けなければならない血塗られた闘争とのギャップに何度となく
苦悩したという。お前が守っている地球人は守るに値しない屑だと何度も何度も言われ、実際
地球人のどうかと思う行為を何度も目の当たりにし、ボロボロになっての帰還の後にもう一度
地球就任の役目についたら今度は脚を折られて長期の変身不能となり、仕方ないので当時の防衛隊の
指揮役になったら今度は防衛隊が敵の奇襲で壊滅して自分も怪獣に飲み込まれ、そんなことがあっても
なんかまだ生きていて平成の世で三度目の地球防衛を行ったら、地球人と骨肉の争いを続けていた
海底文明が最早私情レベルでしつこく根に持って怪獣を送りつけて来る、子飼いのカプセル怪獣
二頭がその戦いで殺される、防衛軍のタカ派の参謀はあまつさえ自分に銃を向け、大人とは思えない
情けない言い訳をやけくそで喚いて反省もしない、その手下は地球人側の不祥事をあくまで隠匿
するために機密ごと焼身自殺する・・・
 それでもいまだに宇宙平和のために戦い続けているというその先達を、イレイズは心底凄いと
思っていた。
「俺には出来ません。宇宙全ての人の心の闇と始終向き合い続けるなど・・・どうしても
手が先に出てしまう。俺は、暴力星団のゴロツキどもと同じレベルの修羅でしかない。
 こんな俺の前に、貴方は現れないでしょう。いや、それを願うこともおこがましい。シグマや
ミラクルのように、自分の理想とする人の領域に届きたいという想いとは違うのだ」
 自嘲した後、イレイズはその場から去ろうとした。

「本当に、出来ないのか?」

 突然聞こえた声に、イレイズは振り向いた。
「お前は本当に、私のいる場所に届きたいと思ってはいないのか? 出来ないのではなく、
自分の可能性に勝手に限界を定め、自分から成し遂げようとしていないだけではないのか?」
 愕然とするイレイズ。
 見上げた断崖の上には、その男が立っていた。
 地平からゆっくりと昇り、闇の夜空を赤く染めていく朝日が、邂逅した二人の戦士のシルエットを
浮き上がらせた・・・

 時間は一気に現在へ戻る。M78星雲。
 急に二頭のカプセル怪獣の上司となったバーンは、本国に戻り、『カプセル怪獣運用研修』を
後から受ける羽目になり、今日漸く資格試験に合格した。
 実は、カプセル怪獣を使うためには資格を取る必要があるのだ。というか、最近そういう
制度が出来た。別次元情報で、怪獣を使役するに相応しくない心の歪んだ巨人が、怪獣を悪用して
他の戦士やその守っている場所を襲わせるというケースが近年見られるようになったからである。
海の力の青い巨人が怪地底獣を暴れさせたとか、闇の絆の巨人の使うスペースなんたらとか。
そういう事態を防止するための制度である。
 バーンの合格祝いがラムパルスとドビドーグの進言で行われ、その席に、イレイズも参加していた。
ラムパルスとドビドーグにはイレイズも少なからぬ縁があり、かつての凶悪怪獣がここまで更正した
様をイレイズも嬉しいと思った。
イレイズ「思えばあの時は俺も大人気なかったな」
ラムパルス「お互い様ですって」
ドビドーグ「なんかむしゃくしゃして馬鹿な真似をしたのは俺達もですし」

 二頭から聞いた話では、彼らと昔つるんでいた怪獣のザンバやロクストン、これもイレイズ8話で
改心した怪獣ダマクラーなども社会復帰し、宇宙を回って精力的にボランティアを続けているという。
 バルトスはやっと入院生活から復帰し、実家の農業を継いでいる。只、かつて地球を襲ったことに
ついてはもう触れないで欲しいとバルトスの両親や担当医からもラムパルスとドビドーグは頼まれた。
心の傷に対して色々まずいらしい。
イレイズ「・・・・・・」
ラムパルス「ま、まあ、今真面目になって人に迷惑をかけてねえんなら」
ドビドーグ「そんなこともありますよ、旦那」
イレイズ「済まん・・・」
 そういえば、と、イレイズはもう一つ思い出した。地球を襲った暴力星団の怪獣軍団のリーダー、
イレイズに一番最後まで食い下がったブラックローはどうなったか。
 ラムパルスとドビドーグは困ったが、真相を伝える。
 宇宙刑務所に投獄され、収監期間の終わった後経過観察で出所したが、その後、姿を消し、現在
行方不明だという・・・

 そのブラックロー。
 辺境をぶらついては小規模な悪さをしていたところに、別の巨大宇宙人が現れ、その悪さを妨害
してきた。
「おぬし、小さいのう。こんなことをしていて何になる」
「何だ手前、いきなり脇から出てきやがって・・・手前に何が判る!?」

 激闘の末、奮闘したもののブラックローは又も負け、地に伏した。
「何故だ・・・何故俺は勝てない!? こんなことじゃ、あのイレイズの野郎にも勝てやしねえ!」
「何と?」
 宇宙人は尋ねた。
「おぬし、ウルトラマンイレイズの縁の者か?」

 現れた宇宙人は、裃に紋付袴にちょんまげの巨大な殿様。義賊路線に転向していた代官怪人・
アーダイカだった。今日は悪徳怪獣エゴチには別の場所で金勘定の仕事をさせている。
 アーダイカは、かつて再度地球を襲った際にイレイズに説得され、それを契機に現在の活動に
転向したことをブラックローに語った。
「あいつが・・・あの疳の虫野郎が、そんなことを・・・?」
「そうじゃ。あやつの言う通り、弱い者を守るために戦うようになってから、わしは精神的に
実に楽になった。今わしは、世直し活動が非常に楽しい。どうじゃ、おぬしもやることが特に
ないなら、一緒にやってみんか?」
「・・・俺は・・・」

 M78星雲。
ラムパルス「大丈夫、あいつもきっと何とか上手くやってますよ」
ドビドーグ「信じてますから、俺達は」
イレイズ「・・・ああ。そうだな、きっとそうだ」

 祝いの席には二人と二頭だけだが、宴は盛り上がる。次に、他のオリウル戦士の現在は
どうかという話になる。
 ミラクルは地球就任が終わってからは、ハイパワーマンから次の使命を与えられるのを
待ちながら、奇跡の国で修行中。まあ、何か大きな事件が起これば又出てくるだろう。
 最近地球勤務が終わったシグマは、修行がてら、宇宙の各地を旅して回っているという。
地球を離れる際にちょっと色々あったらしく、自分の中で整理をつける意味もあるらしい。
イレイズ「まあ、俺達が信じていた通り、あいつは最後の最後にあの恐るべきバゾード星人を下し、
地球を守り抜いてくれた」
バーン「きっと又元気な顔を俺達の前に見せてくれるさ。なあ」
 そして、カイザーは地球勤務を目指して研鑽中。色々問題もあるが、あと少しだろうと二人は
見ている。

 次に、バーンの言葉を受けてイレイズが地球勤務を決意した際の思い出話。
「人間に姿を変えて地球に行く際、俺は『明野暁』という名を自分につけた」
 イレイズが目標とする先達が地球を去った時、彼が最後まで守った地球の地平から眩しい朝日・・・
暁(あかつき)が昇り、明けの明星が輝いた、その逸話からつけた名である。
「自己陶酔と笑うなら笑えばいい。俺はこの名を気に入っている。信也や百合子さん、当時俺の周りに
いた地球人達がこの名を呼んでくれていたことが、俺が地球にいて地球を愛し続けた証だと思っている」
「笑わねえさ」
 バーンも、HEETの仲間達の勇姿を思い出す。
「そういえば、お前の心の師たるあの人、まだ現役やってるらしいな」
「ああ・・・宇宙のあちこち飛び回って今何処にいるのかも掴めないが・・・相変わらず、凄い人だ」

「あーーーーー!!」
 宴の席に偶然出くわしたウルトラマンバーストが、彼の目標であるバーンを指差して激しく興奮する。
バーストも、カプセル怪獣運用研修を受けに来ていたところだった。その彼の後ろには、斬撃怪獣・
ヤイバラスがいる。こいつもかつて15話で地球を襲ってバーストと交戦したが、その際出会った
地球人の余りといえば余りな醜態を目の当たりにして地球を襲う気が失せて宇宙に帰り、その後、
やっぱり真面目に暮らそうと思った口である。
バーン「誰、こいつ?」
イレイズ「・・・俺の後輩」
 バーストも飛び入りで宴席に加わり、宴は更に盛り上がっていく・・・

 宇宙の何処かの星。
 ガッツ星人の軍団は、ぴきゅぴきゅぴきゅと騒いで慌てふためく。
 彼らの悪事を阻止しにたった一人で現れた戦士を、昔のままに大勢で囲んで手からビームのゴムヒモを
放って拘束しようとしたのだが、戦士は縛られながら全く動じず、力押しで身体を振り回す。それだけで
ガッツ星人達は引き回されて転がされ、地に叩き付けられ、更に戦士は手の力だけでビームゴムヒモを
引き千切ってしまう。
「おのれ・・・あれを出せ、あれを!」

 ガッツ星人の指令で、宇宙ロボット・キングジョーが四体合体して出現。おあっしゃおあっしゃと
不気味な機械の音を立て、戦士に歩み寄ってくる。
 戦士は慌てず騒がず、頭頂にセットされた宇宙最強のブーメランに両手を掛け、分離させて投げつける。
光の刃が地面すれすれを飛んでキングジョーの足下から頭上へと駆け抜け、再び戦士の頭にセットされた
直後、キングジョーは、正中線から真っ二つになり、爆発した。
 ガッツ星人は蒼白になるが、まだ諦めず、更に最後の切り札を呼ぶ。
 円盤生物・シルバーブルーメ。
 宇宙の星空一杯に触手を広げ、胴体の中心の口から、戦士を再び飲み込もうとじわじわ襲い掛かる。
 銀の頭と胸と肩、真っ赤な身体の戦士は、黙って空を見上げ、両手を合わせ、L字に組む。
 最強光線・ワイドショットがかつてよりも遥かに威力を増して放たれ、シルバーブルーメの膨張した
超巨体を跡形もなく焼き尽くし、巻き起こった爆発でガッツ星人の軍団も一掃されていく。
「レオに後を託した時点で役目は終わり、私は夕陽のように只地平に沈むのみと思っていたが・・・
 まだまだ、沈めんな」
 ウルトラセブンは、地平から昇る朝日に照らされながら呟いた。
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