ウルトラマンアルファ 41 民間人夕陽に死せず!?
 改造暗殺宇宙人・ブラックナックル、ソルジャーナックル軍団、
 宇宙異次元人・ゼバット星人、苦情宇宙人・ノアン星人 出現


 ゼバット星人の異次元アジトに、又も来訪者が来た。
「何をだらだらやっているのかね、君達は」
 嫌味な口調で言うのは、これもメジャー悪役宇宙人の大御所・ナックル星人の眷属。マグマパイレーツも
三人で来たが、今回は今喋っているこのリーダーが大勢の兵士を連れてきている。そしてこのリーダー・
ブラックナックルも、自身の強化改造を自ら行っている。赤と黒のカラーリングの頭のてっぺんには、
金色の尖った大きな角。首から下の殆どは、有機的な質感の黒い頑丈な装甲で覆われている。それらの後付けパーツは、
彼らの使役獣で、かつて帰ってきたウルトラマンを一度は倒したあの強豪、用心棒怪獣・ブラックキングを
構成していたものだ。
 この手の奴が来るとろくなことがない。地球侵略作戦に当たって何度も失策を重ねたゼバット星人は、
後から来たブラックナックルにねちねち責められていたのである。ブラックナックルの戦闘力は無論ゼバットから
見れば絶大で、真っ向から抵抗できる力も気概もゼバットにはないので、甘んじて言われ続けている。
この前やってきてまだこのアジトに駐留していたノアン星人達も似たようなもので、ゼバット星人リーダーの
後ろに隠れてびくびくしてるだけ。
ゼバットリーダー「・・・仕方ないだろうが。幾ら作戦を進めたところで、後から後から不測の事態が起こるのだから」
ノアン1「そうそう。特に、ついこないだのプリズミオス戦は折角いいところまで行ったのに」
ノアン2「あれはズル以外の何でもないわな」
ブラックナックル「ほう? 詳しく聞かせて頂けるかな?」
 プリズミオスの中に閉じ込められたウルトラマンアルファ=城達志が、彼と近しい地球人の少女・西野恵の存在に
よって脱出の機を見つけ出し、彼が自分で臆面もなく『愛』とか吹聴する火事場の馬鹿力によってプリズミオスが
返り討ちにあった件が話される。
「何だ。じゃ、その西野恵を消せばいいじゃないか」
「!」
 ブラックナックルはこともなげに言った。
「え・・・マジでやるの?」
「非戦闘時の日常における心の拠り所を奪ってしまえば、ウルトラマンが怒りに捉われて冷静さを失うのは何度も
過去の事例で実証されている。仮に直後では怒りによる火事場の馬鹿力で絶大な力を発揮したとしても、その後ずっと高い
モチベーションを保ち続けることは出来まい。まあ、任せたまえ。この手の作戦は我々の十八番だ」
「いや、任せろって、お前ら勝手に・・・!」
 言いかけたゼバットリーダーは、ブラックナックルのガン飛ばし一発で黙った。情けない。
「というか、我々ナックルの眷属は『かけがえのない存在』という奴を見ると、黒外車で不意打ちで拉致して抹殺したくて
仕方ないのだ」
「・・・・・・」
「更に、さらおうとしたら半端に相手が抵抗した挙句、車の前に立ちはだかって思いっきり跳ね飛ばされて死んだり、
半ドアの車からはみ出して何十メートルも引きずり回されて打ち捨てられて死亡とか、ああもう考えただけで!」
 ブラックナックルはその光景を想像して感慨に打ち震え、後ろの配下・ソルジャーナックル達は、何台も用意した
黒外車のドアをばんばんばんばん開け閉めし、早く獲物を捕らえたくて仕方なさそうだ。
 その様子をずっと見てると不快なので、ゼバットリーダーは勝手にしろと言い捨ててさっさと退座させた。
「おい、横取りさせていいのか」
 後ろでびびってただけの癖にノアン星人が言ってくるが、ゼバットリーダーは沈黙している。
 何かを確信しているかのように。

 西野家宅。
 西野一家は(達志も含めて)リビングで顔を合わせて考え込んでいた。
 恵が下校中、黒サングラスに黒スーツの男達が乗る、黒塗りの大きな車に不意に襲われたのだ。
 迎えに来た達志が、恵の背後からそろそろと近づいてきた車の様子の不審さに気づき、咄嗟にドアを開けて中から
黒い男が半身を出して手を伸ばし、車を素早く近づけて捕まえようとしたところを、達志が駆け寄って恵を先に
抱えて車から離れ、誘拐を阻止した。
 誘拐に失敗した男達は、激しいスリップ音を立てて車で走り去っていく。彼らがソルジャーナックルの変身体であることを、
達志はウルトラマンの眼力で見抜く。取り合えず恵を守ることを優先し、その場で直ぐ車を追うのはやめた。
 互いの無事を確認して笑いあう達志と恵だが、ふと見回し、周りの通行人達が、呆然と二人を見ているのに気づく。
別に、昼間から往来でよろしくやってんじゃねーよとかいう下種な目ではない。正確には、恵を助けた達志を凝視している。
 恵の安全を最優先した達志は、彼女から離れすぎていた位置から、どう見ても人間の限界を超えた速さで走って駆け寄って
しまったのだ。近所の人々が見ている前で。

 初手で失敗してしまったソルジャーナックル達は恐る恐るブラックナックルに報告するが、ブラックナックルは
寧ろ嬉しそうな含み笑いをする。
「構わん。これはこれで面白いことになった」
 ブラックナックルも離れた場所から現場を見ていたのだ。
「どうする、ウルトラマンアルファ。周りの人間達から疑いの目を向けられた状態で、迂闊に身動きが取れるかね?
ふふふふふ・・・」

 ナックル達が近所のあちこちに潜んでいる邪悪な気配を、達志は感じ取っていた。これでは恵は迂闊に外出できない。
それに、恵だけでなく、一誠や和子も狙われる可能性もある。相手は宇宙人だ。自宅でさえ絶対安全とはいえない。
 問題はそれだけではない。宇宙人だけでなく、都市伝説・死神山のマラソン小僧並みの達志の走りを見た人々から噂は広まり、
隣近所の人々も奇異そうな目で西野宅を注視している。
達志「・・・軽率でした。申し訳ありません」
一誠「いや、恵の無事を第一に考えたのなら、それはもう仕方ない」
和子「今の状態を続けていれば、いずれ起こりえた事態でしょうしね」
達志「しかし・・・」
一誠「達志君。今私が問いたいのはそういう話ではない。
 この先何が起ころうとも、全てを賭してうちの娘を守る。その覚悟が君にはあるのかね」
達志「当たり前です!!」
 間髪入れずに言う。恵は余りのストレートぶりに赤面するが、勿論満更でもない。
一誠「うむ。ならば言うことは何もない」
 一誠は何やらごそごそやっていたが、
恵「!? お父さん、それは!?」
 2話のときよりによって一度達志=アルファに向けた、狩猟用ライフルをおもむろに取り出した。
達志「まさか、お父さんも戦う気ですか!? 無謀です! 戦いは僕に任せて・・・」
一誠「幾ら君が人を超えた力を持つウルトラマンであろうと、一人だけで全てに手が回るわけがないことはこれまでの
ことを見ていれば判る。今狙われているのは我が一家全員だ。家父長たる私が率先して自衛のために動かずにどうする。
故人曰く、一人ぼっちじゃ守れない。だけど何とかしたげたい」
和子「例え力が強くても、一人きりじゃ戦えない、とも言ったわね」
 和子も家具を集めてバリケードの用意を始める。
 止める達志に構わず一誠はライフルを携えて玄関に向かい、外の様子を窺うべくドアを開ける。
「・・・・・・あ」
 門扉の前で呼び鈴を押そうとしていた、気難しそうな顔で、頭の生え際の危ない小太りの中年の男が、ライフル持った
一誠を見て硬直していた。
 町内会長だった。後ろにも大勢の近所の人々がいる。

 一誠の趣味が狩猟だと近所に伝わっていなかったら、もっとややこしいことになっていただろう。
 直談判になる。町内会長は一誠の堂々とした顔を見て言う。
「私らが何しに来たのか察しておられるようですな」
「ええ」
「なら話は早い」
 会長は無表情で言う。
「どうもここ暫く妙な事件が多い。あんたんとこの家庭教師の兄さんももう二年近くここの家にいるわけだが、
詳しい素性を聞いたことがない。わしらとしてもあんたら一家とは長い付き合いだ。そりゃプライバシーというものも
あるだろうが、このままではお互いわだかまりが残ってよくない。一度色々きちんと説明して頂きたい」
 他の人々も、無表情で考えていることがつかめない。
 達志含めた西野一家は、迷いもしたが・・・4人で顔を見合わせ、頷く。
一誠「実は・・・」
達志「いえ、僕が言います」
 達志が前に出る。
「僕は・・・」

 そのとき、一帯が轟音に揺さぶられた。
『ははははは、出て来いウルトラマンアルファ!』
 ブラックナックルが、街の一番目立ちそうな位置で巨大化してこれ見よがしに暴れ始めた。
『出てこられるものならな、はははは!』
 達志が今まずい立場にいるのを知って、挑発している。
「うわあー又悪い宇宙人だ!」「ちきしょう!」
 町内の人々も騒ぎ出す。
 人々の目はブラックナックルに向いている。この隙を突き、密かに変身することも出来た。
 だがそれでは、又こそこそ正体を隠し続けなければならない。地球に留まり続けると決意した自分が、本当の自分を
偽ったまま人々と付き合い続ける。それでいいのか。
「・・・皆さん。丁度いい機会です」
 巨大宇宙人が街で暴れているときに『いい機会』というのもどうかと思うが、声を聞いた人々が振り返った前で、達志は、
アルファプラスを取り出した。
「今まで隠していてすみませんでした。僕は・・・僕の正体は・・・」
 かざしたアルファプラスの先端のクリスタルが、眩しく光る。
「アルファーーーーーッ!!!!!」
 恵が、悲痛な表情で目をつぶって俯く。
 愕然とする人々の前で、達志は、ウルトラマンの巨体をブラックナックルの前に現した。

『ふふふ、出てきたなアルファ。これでもう地球上でのお前の平穏な生活もおしまいだ!』
 勝ち誇るブラックナックル。
 同時に、彼の手下の黒い男達も、西野一家や町内の人々の前に、黒塗り外車に乗って一斉に姿を現した。男達も
等身大のソルジャーナックルの正体を現し、嬉しそうに車の扉をばんばんばんばんしている。
『お前と同時に、お前と親しくしていた連中も皆殺しにしてやる。後悔しながら死ぬのだな!』
『くうッ・・・!』
 と。調子に乗ってばんばんばんばんしていたソルジャーナックルの一人を。

 ば  ご  んッ

 おもむろに近寄った町内会長が、近くにあった消火器で殴り倒した。
 ソルジャーナックルは、見事なたんこぶを作って卒倒した。
『・・・・・・・・・』
 見下ろしていたアルファもブラックナックルも、どう反応していいのか判らない。
「そんなこっちゃないかとは思ってた」
 数年前、ウルトラマンイレイズ=明野暁という前例があったという話を、会長は知っていた。というか、昔あの街の
住民だった。暁の正体を一緒に暮らしていた街の人々が知ったのは、彼が地球から去った後だったが。
 会長はアルファを見上げ、
「あんたが保身に走って尚しらばっくれるような真似をしたら、わしは何としてもあんたをこの街からたたき出す
つもりだった」
 いい笑顔を見せた。

 アルファは、更に信じられない光景を見る。
 会長の先制攻撃を機に、機先をそがれたソルジャーナックル達を、人々が一斉に攻撃し始めたのである。
 わざわざ車から身を乗り出してドアをばんばんばんばんやって挑発するなどという真似をしないで、座席にいたまま
車を突撃させるなりしていれば、ソルジャーナックル達はもう少し有利に立ち回れたかも知れない。その前に一斉に迫ってきた、
数で勝る街の住民達に金属バットとか花瓶とかバス停の標識とかで殴り捲くられてリンチにされる。念のために人々は黒塗り車の
座席周辺から制御部も破壊して回る。
 我を取り戻した西野一家も、それぞれナックル達を攻撃する。恵が勢いよくガレージを開け放ったところで、実は免許を
持っていた和子が車を出してナックルを続けざまに撥ね、それでも人々をかいくぐって飛び掛ってくる奴は、一誠がライフルで
狙って容赦なく撃ち殺す。
「出て行け、凶悪宇宙人め!!」
 哲夫も意気揚々と助けに駆けつけ、エアガン(違法改造)でナックルの目や股間を狙い撃つ。哲夫の地味な両親も見つかる端から
鈍器を恐る恐る皆に補給。
「地球侵略が目的の方のご来店はご遠慮頂いております」
 多分誰も覚えていない24話の近所の喫茶店のウエイトレスまで出てきた。いつものポーカーフェイスで、店の裏にあった
使用済みのガスボンベを細い腕で軽く振り回してナックルをぼこぼこに・・・

 かつて人間超越管事件の際にも語られたが、人類は本来計り知れない可能性を秘めているのである。ZATの時代は
多くの民間人が竹槍やバレーボールで僕にも怪獣は退治できて僕にもタロウのシナリオは書けたり、MAC壊滅の悲劇の後にも
地球の未来を担う少年達が力を合わせて円盤生物の親玉のおっさんを袋叩きでぶっ殺したり出来たのである。
 地球には怪獣がいて、ウルトラマンがいて、怪獣や宇宙人のポテンシャルを凌駕する人間がちょくちょくいる。
このすばらしい星を、私達は何時までも大切にしていきたい。
『そうか・・・これが、地球なんだ! おーーーーーーーーーーい!!!!!』
 アルファは感極まって叫んだ。

 ブラックナックルは、沈黙して身を震わせていたが。
 なんか訳の判らんことを叫び、手足をめちゃくちゃに振り回しながらアルファに襲い掛かってきた。
 だが、ここまで来ると流れは完全に地球側に向いてしまっており、
『ナックルストリーム!!』
 ナックルの名前が入った近接技で拳の激しい連打を食らって吹っ飛ばされ、ブラックキングの外皮製の鎧があっさり砕ける。
反撃で破壊光線を放つも、ウルトラ縮地で軽く次々交わされて全く当たらない。
 キレたブラックナックルは、奥の手のオプション武器を空間転移で呼び出す。
アルファ『・・・・・・・・・』
 絶句するのも無理はない。
 巨大なブラックナックルと同サイズの、黒塗り外車。
 ブラックナックルは乗り込んでエンジンを掛け、
『轢き殺してやる!!』
 全速で突っ込んできた。
 アルファが急いで空へ逃げると、空までも飛んで、空中でスリップ音を立てて追ってくる。
 運転席のブラックナックルの視界に忽ちアルファが迫り・・・
『・・・!?』
 いきなり、アルファが消えた。
 撥ねた衝撃の感覚はない。見回すブラックナックル。
『ここだ』
 素早くジャンプして回避し、同時に車の屋根に飛びついていたアルファが、フロントガラスに逆さの顔を覗かせる。
 アルファブレードの柄の先でガラスを叩き割り、狭い車内に押し入る。
 内部での乱闘でぽかぽかしゃーんぽかしゃーんとドラムの音が響いて車が大揺れした後、大爆発。
 爆煙の中から宙に放り出されたブラックナックルを、追って飛び出してきたアルファが両手で捕まえる。
 そして、地上の街から離れた地帯の山中に、原典通りに脳天から投げ落とし、とどめを刺した。

 地平に沈み行く夕陽を浴び、赤く染まってそそり立つアルファ。その足下で、恵、一誠と和子、哲夫と両親、
町内会長、その他街中の人々が歓声を上げ、アルファと共に勝利を祝う。
 後ろのほうでは、ぼこぼこのブラックナックルがX字型の拘束台に逆さに磔にされ、等身大のソルジャー
ナックル達も全員人々によって十字架に縛られて悶絶していた。
「こんなもんだ」
 異次元アジトのモニターで状況を唖然と見詰めるノアン星人達を背に、ゼバット星人リーダーは、何故か
愉快そうに笑っていた。

 問題が只一つ。
「・・・・・・何・・・だと・・・?」
 街の人々を物陰から見る、特命防衛隊の柏村勝隊員。
 たまたまパトロールに回っていたのだが、達志が人々の前で正体を明かし、ウルトラマンになる場面を、
まともに目撃した。
 その後街で起こった事態も含め、直ぐ本部に連絡すべきだったのだろうが。
 柏村は、只愕然と目の前の顛末を見ていたのだった。


 まめちしき。
 ブラックナックルの使った巨大黒塗り外車は、飛行シーンなどのCGと同時に実物を走らせるシーンが
併用され、画面に臨場感を増した。
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 ウルトラマンアルファ 42 地球は侵略者の墓場
 宇宙異次元巨人・ゼバットリーダー、宇宙異次元人・ゼバット星人、
 苦情宇宙人・ノアン星人、人造人間・リカ 出現


 前回、ウルトラマンアルファ=城達志の懇意の地球人達を抹殺することで達志の戦意を下げて倒そうとした
ブラックナックル一味は、その懇意の地球人達から予想外の反撃を食らい、更に活気付いたアルファに敗れ、
全員磔の刑に処された。
 その醜態は写メで取り捲られて世界中のネットに流され、近所の悪ガキ共は(哲夫が率先して)十字架に
拘束されたソルジャーナックル達に石や空き缶や生ゴミを投げつけ、黒い額に白ペイントマーカーで『肉』と書く。
その姿を又写真にとって哲夫がビラに加工して街中に貼り捲くる。
 ナックル達のやったことがやったことなので誰も助けようともしない。
 プライドが完全に壊されるまで虐待されたナックル達は、最後にアルファによって宇宙に放逐された。
町内会長「殺す価値もないわい」
 ナックル達がウルトラマンだけでなく地球人に、しかも非戦闘要員に敗れたという事実は、地球内だけでなく、
直ぐに宇宙中の情報媒体にも画像つきで流れることになる。

 ゼバット星人・ノアン星人連合は、異次元アジトで顔を合わせて考え込んでいた。
 前回地球上で似たような光景があった気もするが、気にしてはいけない。
 強豪のはずのナックル達や、それまでにも多くの侵略者が地球に戦いを挑んでことごとく敗れ去っている事で、
彼らの上層部から、地球圏から一時撤退するよう命令が来たのである。
 しかしそれはそれとして、結局ゼバット・ノアン連合は地球侵略を成功させる方策を打ち出せなかったと
言うことで、本国に帰れば帰ったで冷や飯食いの立場に甘んじることになる。

 それでも、このまま勝てる見込みのない戦いを続けて殺されたり、兵糧が尽きて飢え死ぬよりはましだと
胸を撫で下ろす若輩達もいたが、多くの者が納得できなかった。苦渋に耐えてずっと敵地に留まり続けたのは
何だったのか。無駄だったのか。
人造人間リカ「そこまで言うんだったら、23話で異次元に乗り込んできたアルファとズィーベンに対してももう少し
徹底抗戦すべきだったのでは・・・」
ゼバットリーダー「無為に玉砕するのは又別の問題なの!!」
 叫んだ後、拳を握り締め続けるリーダーを見つめる一同。
ノアン星人達「どうするつもりだ?」
ゼバットリーダー「・・・・・・」

 ディフェンスポートで、柏村は悩んでいた。
 前回目撃した、一介の市井の青年が実はウルトラマンアルファだったという事実を公表すべきかどうか。
(しかし、何故俺はこんなに悩むのだ?)
 ウルトラマンを見つけ出し、地球防衛という崇高な使命のために特命防衛隊の戦力に加えることは柏村の悲願である。
ふんじばってでも連れて来ればいいはずで、以前なら迷わずそうしていただろう。
 だが、それを考えるたび、かつてハンターナイト・ヴァニルと化して凶行に走った、敬愛する上司・梶山参謀の
ことが思い出され、胸に引っかかる。
「どうしたの、柏村隊員?」
 そこへ、美樹が通りかかった。
「霧島か」
 そういえば、こいつも昔ウルトラマンが地球人に化けていた奴と接触があったはず。
「霧島、ちょっといいか」
「?」
 目立たない通路に呼ぶ。

「・・・・・・・・・・」
 柏村にこっそり事実を知らされた美樹は、反応に困った。彼女はアルファが達志であることをもう知っているからだ。
「えーと・・・」
 柏村が知ったのなら、もう隠しても意味はないだろう。
「ごめん・・・私、それ知ってた」
「・・・・・・・・・・」
 柏村は数瞬の後、激昂した。
「何で言わなかった!? 俺馬鹿みたいだろうが!!」
「だって・・・」
 貴方に言ったらどうなるかとか言うと角が立つので、
「由美子とかに知れたら、どうなると思う?」
 別の奴に転嫁する。
「・・・確かに・・・いいサンプルが見つかったわ〜とか狂喜して、手段選ばずにとっ捕まえて人体実験
し放題だろうな・・・」
 裏声で真似る。気色悪い。

 それはそれとして。
 ゼバット星人が、達志=アルファに挑戦を申し出てきた。
 呼び出された箱根山中で対峙するアルファと、巨大化したゼバットリーダー。
 既に、地球上でのゼバット・ノアン連合の侵略作戦行動の必要はなくなっている。今回実質的な敵戦力として
来ているのは、リーダーだけ。
アルファ『どういうつもりだ? 今更一騎打ちとは・・・』
 ゼバットリーダーは、切なげに大きな一つ目をつぶった後、意を決して見開き、
『我々は、近々地球圏より撤収する』
『何?』

『お前に対して敗北を重ねたことで、地球侵略作戦の指揮権を失ったということだ。だが、地球を去る前に、
作戦部隊を率いていた者の落とし前として、個人的にお前との決着をつけに来た・・・というわけだ』
『・・・結果的に作戦失敗なら、もうそこまで意地にならなくてもいいんじゃないのか? それに、お前程度が
今更僕に勝てると本気で』
『見くびるな!!』
 ゼバットリーダーの異様な気迫に、アルファは思わず気圧された。
『・・・お前の言うとおりだ。我々の旗色は圧倒的に悪い、そんなことは判っている。それでもやらねばならんときが
あるのだ!』
『お前・・・』
『我々がスパイとして送り込んだ人造人間リカからの情報で状況を聞き及んだ。お前は地球滞在のうちに懇意になった
この星の住民達との関係を捨てきれず、地球に留まり続けるため、本来お前が帰るべき宇宙警備隊の意志にも楯突き続けて
いるそうだな。そのお前が、私が何故こういう行動に出たか理解出来んというのか!?』
『・・・・・・・・・
 済まない。失言だった』
 アルファは、ゼバットリーダーに対しての構えを改めた。リーダーはふんと笑うと、
『その心構えに免じ、情報を一つ教えてやろう』
 リモコンのようなメカを取り出し、操作すると、巨大な立体映像が出た。
 地球全土から目視できるほど巨大な。そこに映っていたもの。
 宇宙の彼方の辺境宙域の一惑星。アルファもある程度知っている。何もかも上手くいかず行き場を失ってしまった者が
多くたむろしている宇宙のスラム区。その一角。
アルファ『!?』

 かさかさに枯れた巨大な木。その大きな枝の下に。
 首を吊って息絶えたブラックナックルが、ぶら下がっていた。
 足下にはご丁寧に、遺書。

(私が全てを思い通りに支配できない世界なんかで生きていても仕方ないので死にます。
 何故この世に生まれてきてしまったんだろう)

「・・・・・・・・・・・・・」
 地上から映像を見上げている、達志の住む街の人々。
 声もなく目を見開いている哲夫、子供達。

 アルファは激怒した。
『何故こんなものを見せた!? 街の人達や哲夫君達にまで!?』
『ブラックナックルがこうなってしまうほどに奴を追い込んだのは、他でもない、そのお前の仲間達だろう?』
『・・・・・・・・・』
 アルファは一瞬反論に困ったが、
『先に恵ちゃんの命を狙い、街で非道を働いたのは奴じゃないか!?』
『それは関係ない』
『何だと!?』
 ゼバットリーダーは淡々と言葉を続ける。
 これに限っては、アルファへの恨みからではない。事実だけを述べる。その声は世界に響いていく。
『私としてもブラックナックルのやったことを肯定する気はない。寧ろ不愉快だ。だが、地球が多くの侵略者からの
悪意に常に晒されている現状において、その侵略者がどういう意図で地球に攻めてくるかを一々問うのは無意味だ。
敵の意図が何であろうと、お前達は地球を守るために思いつく限りの手を変え品を変え、永久に戦い続けなければ
ならない。その事実は変わらないのだ』
『・・・・・・・・・・』

『そして、実際お前達はもう長いこと、実に優秀な戦いぶりを見せている。現に今回も、只の一般市民と思っていた連中が
ナックル共に対して見事な連携で一気呵成に畳み掛けた。邪悪な侵略星人のみならず、自分の星の命を繋ぐため、時には
他の星の罪のない怪獣も宇宙人も居住惑星自体も片っ端から容赦なく殲滅する! お前らウルトラマンの後ろ盾を
得てまでしてだ! 素晴らしいこの生き汚さ!』
『・・・・・・・・・・・・・』
『関わった宇宙の民がもれなく呪われるこの地球という星が、青いエメラルドとか奇跡の楽園とかいう呼び名の裏で
何と言われているか知っているか?
「侵略者の墓場」だ!!』

 アルファは、一言一句最後まで聞いた。
『言いたいことは判った。だが』
 アルファブレードを、音を響かせて素早く抜く。
『今僕の腹の中で煮えたぎっているお前へのどす黒い怒りは、又別の問題だ!!』
『それでいい』
 ゼバットリーダーは怯まない。ここまで言った以上、もう腹も据わってしまっている。
『改めろなどと傲慢をいう気もない。お前の守りたいものを守るためには、お前はそれ以外のものを永久に殲滅し、
踏みにじり続けるしかない、それだけのことだ。もっとも、私も只踏みにじられるつもりはない。
 話はここまでだ。行くぞ!!』
 見上げるような二つの巨体がにらみ合い、風が吹きすさぶ。
 その風が止んだ瞬間、戦いは開始された。

 ゼバットリーダーは、アルファを相手によく戦った。手から強力な弾丸を連射し、空を飛んで空中戦に
持ち込み、拳の激流・ナックルストリームをも恐れずに真正面から突き勝負を挑んだ。
 だが、第1話以前の本編で描かれていない2年近く前から地球上で多くの激戦を潜り抜け、経験値を溜めてきた
アルファ相手では、やはりレベルが違いすぎた。次第に拳を交わしきれなくなり、ダメージが溜まってボロボロに
なっていく。
 それでもやめなかった。致命的な一撃を受けて吹っ飛び、地上に倒れるまで。

「リーダー!!」「リーダーーーーーッ!!」
 加勢を禁じられた兵士達一同やリカ、ノアン星人達は、既に異次元から出てきて地上から見上げていた。
 もう立てないゼバットリーダーに、アルファブレードを抜いたアルファが近寄ってきて、切っ先を突きつける。
『・・・・・・・・・』
 が。

 澄んだ音を立て、ブレードの刃を鞘に収めた。

『何故・・・とどめを刺さない?』
『そんなことしたら、マジで僕が悪者じゃないか』
 横目でゼバットリーダーの同胞達を見るアルファ。
『それに、お前もブラックナックルと同じ轍を踏む気か? お前一人だけならそれでもいいかもしれないが』
『・・・・・・
 そうだな』

 かくして、ゼバット・ノアン連合地球侵略前線部隊はウルトラマンアルファに降伏した。
 彼らは宇宙警備隊によって確保され、ジャネットがM78星雲まで護送することになった。
 最後に、ゼバットリーダーは達志に言った。
「精々気をつけろ。前回地球人があれだけの力を見せたことで、地球を狙う他の敵は少数化と同時に精鋭化し、
本腰を入れてくるだろう。マグマやナックルやいつぞやのアングラスとかいう異次元人をも越えた、更に
力だけは異常にある、更に根性の腐りきった連中が来る。これまでのようには行かなくなるぞ」

「判ってるさ」
 達志はジャネットに連れられて飛び去っていくゼバットリーダー達を見送り、地球を守る決意を更に強くした。
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 前回、ブラックナックルの末路を見せ付けられたことで、西野家やその一帯の住民達は
へこんでいた。特に、哲夫や彼の周りの子供達はすっかり覇気をなくしていた。
 ブラックナックル一味のやったことは最悪だ。許されるものではない。それに抗したのが
間違っていたとも思っていない。いないのだが・・・
 是非に関しては、自分達で考えるしかない。


 ウルトラマンアルファ 43 力だけ強いもの
 暴走武装・ブレッセル 出現


 ディフェンスポート。
「完成ーーーーー!!」
 技術開発担当の由美子隊員は思わず諸手を挙げて叫んだ。長いこと掛けて開発していた、
ゼバット星人の異次元の拠点を探し出すための探知システムが、遂に完成したのである。
早速基地のレーダーシステムのツールとして追加し、何時反応があるかと楽しみに待っている。
 しかし、ゼバット星人は既にウルトラマンアルファに敗れ、地球侵略から手を引いてしまった。
よってもう彼らが地球に攻めてくることもなく、レーダーに反応もない。
 まあ、知らないほうが幸せなこともある。レーダーの性能は更に上がったわけで、無駄でもない。
 一方、ウルトラマンアルファの正体を知ったまま胸に秘めている美樹と柏村はまだ悩んでいる。
斎木「最近どうしたんだお前ら? なんかおかしいぞ」
美樹、柏村「いや、別に・・・」

 再び西野家周辺。
 町内会長は沈みがちな人々を盛り上げるため、空元気でも明るく振舞っていた。
 朝、西野宅から登校のために出てきた恵と、彼女を送る達志を見つけ、
「ようお二人さん、幸先はどうだい」
 恵と達志はあからさまに赤くなる。
恵「朝からセクハラですか、会長さん!!」
会長「やっはっはー。どうだい城先生、恵ちゃんのご両親はもう問題ないんだから、あんたの家族にも
そろそろ挨拶しとくと言うのは」
達志「え・・・」
 達志の様子が変わるのを、いぶかしむ恵と会長。
恵「どうかしたんですか、先生?」
達志「あ、いや、何でもないんだ・・・会長さん、申し出は嬉しいんですが、僕の家族はちょっと
おいそれとは帰れない遠くにいるんで、直ぐというわけには・・・」
会長「お・・・おおそうか、そういえばそうだったな」
 達志が宇宙の彼方から来たウルトラマンなのを思い出す会長。
「遠く離れて地球に一人? がはははは」

 その後、達志の様子が確かに変化した。
 学校から帰ってきた恵が呼びかけても、ぼーっとしていた状態から慌てて反応することが多い。
それ以外の暇なときは、しょっちゅう空の果てを見上げている。恐らくは、宇宙の彼方の彼の故郷の
ことを思っている。しかし、恵は違和感を感じる。
 何故そう感じるのかは勘でしかないのだが、達志の表情に込められているのは単なる郷愁だけではない。
何か別のものが混じっている。だが、それが何なのかは判らない・・・

「?」
 ベランダで空を見上げていた達志の表情が又変わり、厳しく強張ったのに恵は気付く。
 この変化が何かは、長い付き合いで直ぐ判る。宇宙から、又達志=アルファが戦うべき敵が迫っている
ことを彼が察知したのだ。
 同じ頃、由美子によって性能強化されたレーダーにもその外敵が捉えられ、ソニックビート小隊三機も
出動する。

 地球に侵入した物体は結構高速で、達志が変身して駆けつけたアルファとソニックビート小隊が
同時に遭遇したときには、既に東京郊外の山中に滞空していた。
美樹「何・・・これ?」
 見たところ、怪獣でも宇宙人でもない。アルファと同じくらいの大きさの、機械・・・なのか?
メタリックな質感の金属で構成された物体。侵略者の円盤か機動兵器かとも思われたが、やがて、見守る
一同、嫌な予感がしてきた。
 問題の物体だが、そのカラーリング・・・
 赤と銀のツートン。
 しかも、アルファはこの物体の形が何か、かつて自分が見たことがあるものに似ていると感じていた。
何だったか・・・?
 やがて、物体は、ちかちかとランプを点滅させ、びこびこ音を立て・・・目の前の一同を、標的と認識した。
そして、ソニックビート小隊の方を先に攻撃。その攻撃手段を見た瞬間、アルファは自分の記憶が
何だったのかやっと思い出した。
 だが、間に合わなかった。
 物体はその全体から、三日月のような形の光の刃を、素早く無数に吐き出した。
 避ける間もなく被弾したソニックビートは、翼や表面を斬りつけられた。火花を散らし、失速して
周囲の地上に三機とも胴体難着陸。煙を噴く。大破しなかったのはひたすら由美子の頑丈な設計ゆえだが、
もう飛べない。
柏村「ぐうう・・・強化型戦闘機のソニックビートが一撃で・・・!?」
斎木「くそ、動け! 動いてくれ!」

 地に墜ちた三機に、怪物体はとどめを刺そうと更に光の刃を放つ。
 だが、寸前で割って入ったアルファの、アルファブレードの回転防御で弾かれて阻止された。
『思い出した・・・この攻撃は、ウルトラブレスレット!』
 そう、巨大な怪物体の形状は、元祖ウルトラ兄弟の一員たる勇士・帰ってきたウルトラマンの万能武器・ウルトラ
ブレスレットに酷似している。更に、タロウのキングブレスレットやレオのアームブレスレットの意匠も
混じっている。そして、今さっきの攻撃も、ブレスレットが変形して放たれるウルトラスパークと同じものだ。
念のため、アルファは超視力で物体の構造を透視する。
『・・・構造も、ブレスレットのそれと同じだ! 何故こんなものが地球に、しかも襲って来る!?』
 考える暇などない。アルファを次の目標にした物体は、ハリネズミのように全体から無数の鋭い突起を突出させ、
打ち出した。その一本一本が、ウルトラランス。ホーミングミサイルのように、それぞれがアルファに誘導されて
飛んでくる。
『何故・・・何故だ!?』
 動揺したアルファの動きが鈍る。カウンターを返す余裕もなく、交わすので精一杯。外れたランスは周囲の山や地面に
ぐさぐさとぶっ刺さる。市街地だったら大惨事だったところだ。
 それでなくても、元来この手の相手はウルトラマンにとっては相性が悪い。普通の怪獣と違い、頭も四肢もない只の塊は、
どういう攻撃をしてくるのか初手が読めない。ピンチに陥るケースも非常に多い。
 遂に交わしきれなくなり、ブレードを抜いて抜き身で弾き続ける。だが、ランスの強度はブレードの刃と拮抗しており、
段々ブレードの刃が欠けていく。いずれは限界が来る。時間が立てば刃は再生するのだが、この状況ではその前に
アルファ自身の安否が危ない。
 これまでのようには行かなくなるというゼバットリーダーの警告が思い出される。

 アルファは手を変え、一旦久々のウルトラ変わり身で巨大丸太を出してそっちに攻撃を集中させる。その隙に
宙高く跳び、ギャラシウム光線を発射。
 だが・・・怪物体は、全体をいきなり現れた装甲で覆い、必殺のギャラシウム光線をも弾いてしまった。その装甲が
何に似ているか。ウルトラディフェンダー。
 決めになると思われた攻撃を止められて驚くアルファの不意を突き、怪物体は又瞬時に変形。ランスの嵐が飛んできた。
貫かれこそしなかったものの、全身に強力な突きを受けて火花が散り、地に叩き落される。警告のカラータイマーが鳴り出す。
 とどめの一撃を放つべく、怪物体は一際大振りのランスを正面から出し、アルファに向けて構える。手痛いダメージを受けて
膝を付いているアルファ。次は多分避けきれない。
『ギャラシウム光線も効かないとは・・・どうすればいい!?』
 必死で策を練るアルファ。
 その視界の脇に、地上に針山のように並んでいるランスの一本が入る。
『・・・あれと同じ材質の武器なら、或いは・・・』

 飛んでくる巨大ランス。
 アルファは地上のランスの一本を抜き、敢えて前に踏み出す。
 手に持つランスで、ぎりぎりまで迫った相手のランスを弾く。反れたランスの切っ先が肩にかすり、激痛が走るが、
致命傷は避ける。その勢いで、自分の持つランスを神速で前に投げる。
 ランスは、素早くウルトラディフェンダーを展開して身を守った怪物体をも、アルファの渾身の一撃で貫通した。
 その一撃は動力部に直撃し、怪物体はぐらりと傾いた後、大爆発して散った。
 全身で爆発の余波からソニックビートを守っているアルファ。ぎりぎりの勝利だった。
 しかし、もやもやした思いは晴れない。
『一体・・・何だったんだ・・・!?』

 一連の状況を、宇宙から超感覚で観察していた一団がいた。
『ブレッセルを下したか』
『当然だ。これまでの戦闘データからある程度奴の力量を測った上で送り込んだからな。地球への被害も出来るだけ
最小限で済むように考慮したのだ。これくらいはこなしてもらわねば困る』
『次はどうする? もう少し様子を見るか・・・』
『それとも、一気にレベルを上げて攻めに入るか・・・』
 ブレッセルと呼ばれる怪物体を送ったのは、地球侵略を狙う宇宙人とかの類ではない。
 現役の宇宙警備隊の中堅メンバー・・・ウルトラマン達だった。

 続く。
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\ ウルトラマンアルファ 44 プラズマハザード
 ウルトラビースト・レッドシルバー 出現


 前回ウルトラマンアルファは、突如地球に襲来した怪物体・ブレッセルによって危機に陥った。明らかにM87星系の
技術によるものとしか思えないブレッセル。アルファ=達志は宇宙警備隊にウルトラサインを送り、問い合わせて
みようとして・・・思いとどまった。
 よく考えたら、達志は現在宇宙警備隊の管轄下から離反している身である。厳密には様子見のためジャネットが
随時監視しているが、基本的に達志は宇宙警備隊の命令で動いているわけではない。逆に、達志が困っているからといって
宇宙警備隊が援護せねばならない義理もない。
 そこまで考えて、思い当たった。以前ジャネットが言っていた、正体がばれてもアルファが地球に滞在し続けている
ことが、他の多くの宇宙警備隊員の不興を買っているという話。
「まさか・・・」

 ディフェンスポートでは、ブレッセルの攻撃で大破したソニックビート各機の修理中。既に開発されてから結構
時期が経っており、予備機の用意も出来ないわけではない。だが、敵の余りにも圧倒的な力は、特命防衛隊に深刻な
不安を与えていた。
斎木「次又ソニックビートで出撃したとして、通用するのか? アルファでさえあんなにテンパってたのに・・・」
美樹、柏村「・・・・・・」

 宇宙警備隊。
「どういうつもりですか」
 デリート隊長は、眼前に並んだ宇宙警備隊員達に問うた。各々が外見的に特徴に乏しいので判りにくいが、彼らは、
地球にブレッセルを送った一団である。デリートに問われても怖気づく様子もない。
「ウルトラマンアルファは正体が地球人に判明したにも関わらず現地に留まり続ける、その資格があるかどうかの
試験とやらを受けているという話を聞きました。我々も、その資格を測るための働きかけをさせてもらったまでです」
「その件は現在ジャネットに一任しています。今はゼバット・ノアン連合の護送直後でまだ光の国にいますが、
直ぐ地球へ戻す予定です」
「そうした処断を行うのが、何故貴方の独断なのですか、デリート隊長」
「独断ではありません。既に私の責任で上層部に許可は取ってあります」
「私達は納得していません」
「・・・・・・」
「はっきり言わせてもらいます。本来、地球人に正体の知れたウルトラマンが現地に留まり続けること自体が大罪に
値するのです」
「ウルトラマンは地球人の力など遥かに超越した存在です。その分を弁え、只地球防衛のために超越者として外敵を
倒し続け、任期が終わるか新しい命令を受けるか正体が知れるかすれば光の国へ帰る。それ以外のことなど
必要ありません」
「地球人に必要以上に干渉し、まして家族同然となるなどもってのほかです。下手に関係を育んだ所で、一年もすればどうせ
宇宙へ帰らなければならないのですから無駄です」
「なのに、アルファはああいう暴挙に出ました。表立っていないだけで、不満を感じているのは私達だけではありません」
「相応の代償を支払ってもらわねば示しが付きません」
「・・・そこまでアルファ君を許せませんか」
「許せません」
「奴の勝手を只看過するというなら、私達も今後勝手にさせてもらいます」

 デリートは溜息を付いた後、
「『プラズマハザード』の産物を送り付けなければならないほどの話ですか?」
「話です」
「如何なる敵が来ようとも跳ね除け、奴が家族同然とほざく現地人共々地球の全てを守り抜く、そうアルファは吠えた
そうですからね」
「やってもらおうじゃないですか」

『プラズマハザード』とは何か。
 遥か昔、本来地球人と然程変わらない姿だったM78星人は、彼らの超文明の象徴たる人工太陽・プラズマスパークの
暴走事故により、大量に発生したディファレーターエネルギーの影響で、現在のような姿の光の超人・ウルトラマンと
なった。彼らはそれによって得られた強大な超能力を宇宙の平和を守るために使うことにし、宇宙警備隊が結成されて
現在も宇宙各地の平和のために働いているのはご存知の通りである。
 だが、ディファレーターエネルギーの影響を受けたのは、M78星人だけではない。
 膨大なエネルギーの放射が、宇宙各地の他の生態系にも影響を与え、結果、怪獣と言っても差し支えない異常な変異生物が
大量に蔓延してしまったのである。
 宇宙警備隊は責任上それらの変異体に対処することも任務の一環とし、狩り出しを続けているが、未だに根絶には
至っておらず、まだまだ多くの変異体が各地で迷惑を掛けているのが現状である。この変異体による害、或いは変異体
そのものを指し『プラズマハザード』という忌むべき呼称が存在するのである。
 ・・・ここまで書いて、マガジンZの、ゼットンに牙が生えたり頭の五つあるべムスターが出て来たりするあの漫画と被って
しまっているのに気づいたが、今更取り下げるのもモチベーションが下がるのでもうこのまま行く。パクリと謗るなら謗れ。
 で。
 ブレッセルは、実は人工物ではなく、プラズマハザードによって無機物であるはずの鉱物が変質した、不幸な
機械生命体である。天然で、ウルトラブレスレットと同様の機能を持ってしまったのだ。

 アルファの地球滞在資格試験と言いながら、実際は狭窄なエゴによって宇宙警備隊への強制送還を目論むこの悲しい
その他ウルトラマン達は、プラズマスパークの強力な力を持った変異怪獣を、ワームホールを経由して地球へ次々誘導して
差し向け、アルファを徹底的に痛め付けて力ずくで地球に留まる気力を殺ごうとしているだけなのである。
 地球侵略狙いでこそないが、ゼバットリーダーの警告通り、確かに無茶苦茶たちが悪い。
 この時代、宇宙警備隊は組織として巨大になりすぎていた。組織が肥大化すれば、デリート達の様な中間管理職を配置
したところでどうしても末端まで神経が行き届かなくなり、こういうろくでもないのも出てくるのである。
「大体、あれじゃないですか。地球の現地人達は今回自力でナックル共を実力排除したそうじゃないですか」
「そこまでやるようになった種族を、本当に我々ウルトラマンが現地駐留してまで守る必要があるんですか?」
「はい判りました! 判りました判りました!」
 デリートは様子を見ざるを得なくなった。下手に神経を逆撫でするようなことを言うと何時までも絡んでくる。
 かくして、アルファ強制送還強硬派一同は次の手先を送る。

 又嫌なものが地上に降下した。
 ウルトラビースト・レッドシルバー。
 ウルトラマンではない。ウルトラビースト。
 フォルムそのものは長い尾や鋭い爪や牙を持った、見るからに凶暴な怪獣。だがその体色が、又も赤と銀のツートン。
ディファレーターエネルギーでウルトラマンと同じ形質・能力を持ってしまった怪獣である。
 迎え撃つアルファもここまで来ると何が起こっているのか大体察し、げんなりしていた。
 ソニックビートの修理がまだ終わっておらず、直ったところで有効策が見つからないため、特命防衛隊一同は
ディフェンスポートから様子見。無論そんな状態で納得行くわけはなく、モニターで見届けながら何か手が
ないかと考え続けているのだが。
 今回の戦場も山あいだが、近場に街の景色が見えている。気を抜くと街に被害が及ぶ。
 街の人々は不安に怯えている。ブレッセルのことは既に風評になっており、続いてウルトラマンと共通項の多い
敵が来たことで。アルファ強制送還強硬派はそこらへんの演出効果まで見込んでいた。

『僕一人相手なら何やってもいいが・・・他の人達にまで当てこすりをするな!!』
 アルファはレッドシルバーと戦いを始める。
 レッドシルバーは怪獣として尻尾での打撃や噛み付きなどの基本的な攻撃もしてくる一方、組んだ腕や目や
額から光線を撃ち『ジュワッ!!』と鳴きながら両手を伸ばしてきーんと空を飛んで迫ってきたりする。徹底的に
人々に悪印象を植え付ける気だ。
『好い加減にしろ!!』
 アルファはレッドシルバーを空中で押さえ込んで地に叩き落し、動きを封じようとする。だが、レッドシルバーの
パワーは強大で中々参らない。寧ろ押し返され、そのままずるずると麓の街のほうに押される。このままでは街に被害が及ぶ。
『くそ・・・本気なのか!?』

 大気圏外で様子を見ている強硬派一同。
『おい、まずくないか』
『判っているさ。アルファの奴に自分の無力さを思い知らせればそれでいい。レッドシルバーは制御装置でちゃんと
行き過ぎたことをしないように・・・』
 警備隊員Aはブレスレットに仕込んだコントローラーを操作し、レッドシルバーの動きを抑えようとする。
 だが。
『・・・あれ?』
 スイッチをがちゃがちゃやるが、レッドシルバーの動きは止まらない。
『おい、故障か!?』
『違う! これは・・・』

 彼らは、プラズマハザードによって生まれた変異体の力を甘く見ていた。過度に興奮したレッドシルバーは
コントローラー程度では抑えきれず、暴走したのである。

 力任せにアルファを振り払い、滅茶苦茶に暴れ、四方八方にビームを撃ちだす。ビームは山を吹き飛ばし、土砂崩れが
麓を襲い、更にビームの猛威は街にも及び、建造物が次々爆破される。街には、まだ避難を終えていない人が大勢いる。
『やめろーーーーーッ!!』
 アルファも、まさか強硬派が本当に街に被害を出すとは、というより、彼らがここまで万一の事態への危機感がないとは
思っておらず、対応が遅れた。
 激しい後悔を噛み締めてアルファブレードを抜く。そして、久々のウルトラ居合い抜きを放つ。
 見えない斬撃がレッドシルバーのいる空間をじわじわと支配し、圧倒的なパワーを放っていたレッドシルバーの体が、
もやのようにぼやけ、血の霧と化していく。原子分解に近いレベルで微塵切りにされているのだ。その血煙の一粒一粒も
更に寸断される。
 本気を出せばプラズマハザード変異体さえも敵ではなかった。レッドシルバーは完全に消滅した。

 だが、時既に遅く、街は地獄の惨状を呈していた。路上にはビルの崩れた瓦礫が散乱し、市民達も死んだり大怪我を
負ったりして転がっている。
『もっと早く・・・全力を出していれば・・・!』
 激しい精神的苦痛に呻くアルファ。

 強硬派一同も困っていた。地球現地に自分達で怪獣を送り込んで被害を出したとなれば・・・しかも、ウルトラマンが・・・、
幾ら何でも宇宙警備隊上層部からの相応の処分は免れない。アルファの警備隊離反より遥かに問題である。
『どうするのだ!?』
 ヒステリックに叫ぶ警備隊員Bの声を受けたリーダー格の警備隊員Aが、
『・・・とにかく、現地に向かおう』

 おずおずと地上に降下してきたウルトラマンの一団を、アルファはねめつける。
『今頃何しにきた!?』
『・・・まあ、そう興奮するな。始末をつければいいのだろう?』
『始末・・・?』
『我々は宇宙の秩序の守り手たるウルトラマンだからな。どうとでもなる』
 そういうと、ウルトラマン達は、破壊された街に向けて手をかざした。

『街再生光線!!』
『死人生き返らせ光線!!』

 凄くやる気のない技名を叫び、手からウルトラ水流で火事を消すかのごとく、適当な光線をちょろちょろと出して
街に散布する。すると、壊されたビルや死傷者がフイルム逆転再生そのままでぴゅるぴゅるとせわしなく動きながら、修復し、
生き返った。人々は何が起こったのかときょときょとしている。
『・・・・・・・・・・・・・・・』
 絶句しているアルファにウルトラマン達は、
『ほら、ちゃんと元に戻しただろう』
『・・・・・・』
『そうさ、我々は生命の摂理からさえも自由なウルトラマンなのだ』
『幾ら被害を出そうが、命を二つでも三つでも百個二百個でも適当に持ってきて、犠牲者をちゃんと生き返らせれば
どうってことない』
『我々は地球人などより遥かに高等で超越した種族なのだから・・・』
 そこまで言った一同の、能面のように変わらないはずのウルトラマンの表情が、凍りついた。
 太陽を背に真っ黒な影になって目とカラータイマーだけ爛々と光らせたウルトラマンアルファが、刃をぎらつかせた
アルファブレードをかざし、彼らの反応など到底間に合わない速さで走り迫ってきた・・・!!

 続く。
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 突如ぬけぬけと地球に来訪した、ウルトラマンアルファ強制送還強硬派一同。
 無自覚に無責任に地球人の生き死にを弄んだ彼らに対し、怒りで我を見失ったアルファは、一同をアルファ
ブレードの錆にすべく必殺の気概で襲い掛かってきた!!


 ウルトラマンアルファ 45 卑劣!! 達志の正体暴露!!・1
 宇宙邪将・ゾギア星人、豪剣宙将・ゴーン 出現


 宇宙の超越者のはずの強硬派一同は、身がすくんで動けなかった。絶対に助からないと強制的に確信させられた。
 だが、アルファが何故そこまで怒るのか、彼らには全く判らなかった。
 判らないまま殺され・・・

 なかった。
「・・・デリート隊長!?」
 アルファは正気に返った。
 ブレードが強硬派一同に叩き込まれる寸前、彼らの前に緊急でテレポートしてきたデリートが、白刃取りでブレードの刃を
止めていた。
「アルファ君。ここが我慢のしどころです」
 アルファは沈黙していたが、
「・・・・・・はい」
 深く息を吐きながら、刃を鞘に収めた。

 度重なる地球への侵略者の侵攻や今回のようなケースで、只でさえ地球の民衆は不安になっている。この状況で
ウルトラマンが目立つ場で同士討ちを始めるような真似をしたら人々は更に混乱し、宇宙警備隊全体の士気にも関わる。
デリートの介入で咄嗟に頭を冷やしてそれを察したアルファは、寸前で凶行に走らずに済ませることが出来た。
 対照的に強硬派一同は、デリートに命を救われたことも認識できず、自分達の正当性を主張することが
最優先になってまだぎゃーぎゃー吠える。
「元祖ウルトラ兄弟が現役だった時代は、ウルトラ戦士の一存で地球人や怪獣がぽんぽん生き返らされてたじゃないですか!」
「何故私らがやると怒られるんですか!?」
「不公平だ!!」
 結局、長い時間を掛けてデリートが説得しても彼らは非を認めることが出来ず、自主的に転属願いを出して銀河辺境の
他の部署に行ってしまった。要は左遷であるが、あくまで自分の考えだけが大切らしい。それで他の場所に行っても
上手くやっていけるかどうか。だが、それはもうデリートの知るところではない。

 デリートは激しく疲れたが、まだアルファへの応対が残っている。
「よく我慢しましたね」
「いえ。ここでぶちきれて自分の立場を不利にするのは下策ですし・・・デリート隊長こそ有難うございます。
あそこで隊長が来てくれなかったら・・・」
 といいつつ、アルファもぐったりしている。
「ご迷惑をおかけしました」
 居合わせなかったジャネットが深く頭を下げる。本来の監視役のはずの自分の監督不行き届きだということらしい。
別にジャネットのせいじゃないよとアルファは気を遣う。
デリート「ともあれ今回のことを受け、軽率なことをする者への監視の目は今後厳しくなります。今回ほど
無茶なことをする者は宇宙警備隊からはそうそう出てこなくなるでしょう」
 ほっとするアルファ。
「しかしアルファ君、だからといって気を抜かないように。前例のない行動をしている君の品格は、これからも常に
試されます。仮に宇宙警備隊が公式に君の地球定住を認めることになったとしても、怪獣や侵略宇宙人の脅威が地球を
脅かし続ける限り、君の試練も続くのです」
「はい。精々精進します」

 アルファが退出して地球に戻った後、
「どう思いますか、ジャネット君」
「はい」
 ジャネットは、ずっとアルファを監視してきた上での意見を述べる。
「細かい問題は多々ありますが、ウルトラマンアルファは基本的には信頼のおける人物だと愚考します。今後はそう
力を入れて一挙一動に口を出す必要もないのではないかと」
「成程」
「しかし、敢えて一つだけ」
「はい?」
「西野恵についてのノロケが非常にうざいです」
「ははは」

 疲れる事件ではあったが、デリート達のフォローが真摯なものであったため、アルファ=達志の怒りは然程尾を引かなかった。
寧ろ、考えてみればずっと勝手な真似をしている自分をここまで信頼してくれるのは有難かった。これからも頑張ろうという
気力に燃えながら、達志は西野家への帰り道を行く。

 だが。
 宇宙警備隊でのしがらみとは別の試練が、既に迫っていた。

『アルファーーーーーッ!!』
 達志がアルファプラスを構えて光らせ、忽ち巨大なウルトラマンアルファに変身する。
 その一部始終の画像。
 それが、各地のありとあらゆる映像モニターに、強制電波ジャックで映し出されていた。
 更に、又も世界中の空一杯に、立体映像という手段で。

 達志の住む街。
 恵が空を見て愕然としている。一誠と和子、哲夫、近所の人々皆も。

 ディフェンスポート。
 特命防衛隊一同も愕然としている。
 既に達志の正体を知っていた美樹と柏村のみが、あいたたーという顔をしている。

 世界中の人々が驚く中、映像が切り替わり、映像を流した宇宙人が出てきた。
 異様に筋骨隆々とした男。その全身は、ギリシャの彫刻像のような石やブロンズに似た質感だが、ぐねぐねと動いている。
生物である。男は地球全体に響く重い声で、しかし楽しそうに語り出す。
『私はゾギア星人。地球の制圧を目論む者だ』
 堂々と言う。
『そのために事前に地球の戦力の調査を行っていた私は、その過程で興味深い事実を発見し、記録した。それが今見せた一連の
映像だ。地球を永らく守っていたウルトラマンアルファの正体は、東京近郊の西野一誠氏宅に住む家庭教師、城達志だ!!』
 騒ぎ出す民衆。
『嘘だと思うのなら、彼を探し出して問い質してみるがいい』

 まだ何処とも判らない拠点で声を送っている巨大なゾギア星人に、四人の部下が宙に浮きながらつき従っている。全員、姿は
一見等身大の人間。
 あからさまにスペースオペラっぽい、非日常的で体の線の出る扇情的なコスチュームの美少女。
 鎧を纏い、強い闘気を放っている屈強そうな男。
 迷彩のアーミールックで軍人然とした、これも大柄で筋肉質の男。
 細身の長身を暗い色のマントで覆い、フードの下で暗い笑みを浮かべる面長の男。
「それとも、我々が誘き出してやろうか?」
 地球に送られている言葉を続けたゾギア星人の意志を受け、鎧の男が動く。光と共にテレポートしてその場から消える。

「ウルトラマンアルファはどう出るでしょうね」
 少女が巨大な星人に愉快そうに問う。
「さあな。地球人共の追求を恐れて隠れ続けるか・・・無論、出てきて戦ってくれるほうが趣き深いのだが。いずれにせよ、
地球での奴の動きに枷を掛けるには有効な手なので、さっさと使わせてもらった」
「て言うか、今までの侵略者も直ぐこうすればよかったのにね」
「お約束という腐った因習に縛られる小物ばかりなのだよ。先日アルファと小競り合いの醜態を演じたという宇宙警備隊の
俗物共にしてもそうだ。自分は何もせずに先達が築いた遺産の上に胡坐をかいている分際で、見苦しいことこの上ない。
 ウルトラマンアルファ、お前は失望させてくれるなよ。ふふふ・・・」

 鎧の男が地球上、東京の市街にテレポートしてきた。同時に巨大化変身し、正体を現す。やはり鎧を纏った、巨体の半獣半人。
全体的には二本足で直立した人の形だが、頭は牙を生やした口の凶暴そうな爬虫類、太く強力な尻尾、鋭い爪の生えた手には
大きな剣を携えている。
 ゾギア星人直属の四将の一、豪剣宙将・ゴーンは、アルファを挑発して呼び出すため、目立つように街で暴れ、剣を揮って
ビルを切断する。人々は恐怖して逃げ回る。

 地球に戻ってきたばかりの達志は、街外れから一部始終を見て反応に困っていた。
「そりゃ、精々精進するって言ったけど・・・ちょっと性急過ぎやしないか?」
 といっても、もう最終回も近いので。
「まあ・・・町内会長さん達に自分でばらした時点で覚悟は決まってたか」
 達志はアルファプラスをかざし、街に駆け込む。そして、
「アルファーーーーーッ!!」
 衆目の中、逃げも隠れもせず、ウルトラマンアルファになった。
『来たな、ウルトラマンアルファ』
 ゴーンがアルファを見据え、アルファはアルファブレードを抜いて相対する・・・

 続く。
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ウルトラマンアルファ 46 卑劣!! 達志の正体暴露!!・2
 宇宙邪将・ゾギア星人、豪剣宙将・ゴーン、触手宙将・ジェフラン 出現


 ウルトラマンアルファと豪剣宙将ゴーンは、互いの剣で鍔迫り合いを開始した。
 刃の幅が広く重い剣をゴーンは器用に扱い、力でぐいぐい押してくる。対するアルファも細身のアルファ
ブレードで抗していながら全く押し負けていない。
 両者は一旦離れ、ゴーンは身を素早く翻し、強力な尾を揮って叩きつけてくる。アルファは身を逸らして
飛びのき、追って来るゴーンを上手く街の外へ誘導する。

「ほう」
 拠点で観戦しているゾギア星人は感嘆する。

 開けた場に出たアルファは攻めに転じる。ウルトラ縮地で高速接近と離脱を繰り返して何度もブレードを
打ち付ける。
『くっ・・・』
 ゴーンの動きが鈍ってくる。この機を逃すまいとアルファはゴーンの真上にジャンプし、ブレードを打ち下ろそうと
急降下して。
 横合いの死角から不意打ちの突きを食らい、吹っ飛ばされた。

 対決の場からかなり離れた場所に、次の敵が現れてくすくすと不快な笑いを漏らしていた。
 触手宙将・ジェフラン。ゴーンと時間差を空けてテレポートしてきた四将の二、マントの男が転じた姿である。
やはりすっぽりとマントを被り、そのまま巨大化したようにも見えるが、そのマントの下から、無数の太い触手が生えている。
そのうちの一本が先を尖らせ、素早く伸びて不意打ちをかけたのだ。
 元より、ゴーンはアルファと一騎打ちをするとは言っていない。アルファを牽制するためにジェフランがリーチの外から
触手で攻め、それに気を取られた隙に近接格闘に優れたゴーンが接近して大きいダメージを与えるという手である。
 二対一の不利な戦いを強いられることになったアルファだが、ここまで来て今更文句を言う気にもならない。
いい加減卑怯者の相手も慣れた。先の強制送還強硬派、能力だけウルトラマンのワラ人形共に比べれば、見苦しい言い訳を
してこない分清清しいものさえ感じる。
『このくらいこなさなくちゃな』
 不意打ちの痛みも何のそので直ぐ立ち上がる。苦しいとか辛いとか疲れてもう駄目だとか言わない。

ゾギア星人「よし、もういい。一旦退け」

 指示に素直に従い、二体の宙将は又テレポートして消え、拠点へ戻った。
アルファ『あれ?』

 ゾギア星人の脇にいる少女が尋ねる。
「いいんですか?」
「並大抵のことでアルファが折れないのはこれまでの調査で判っているが、一応確認のための前哨戦だ。それに、
放っておいても奴はこれからもっと面倒な目に合う。乗り越えられるかな? ふふふ・・・」

 ディフェンスポート。
 黙っているのも忍びなく、美樹と柏村は、アルファの正体が城達志であるのを既に知っていたことを特命防衛隊の
一同に打ち明けた。美樹は更に、ケムーリオスに捕われてアルファとズィーベンに救われた半年くらい前から、達志の正体を
知った上でちょくちょく接触していたことも話した。一同はそりゃ驚いたが、それで今までの妙なことの説明が全て付くと
合点がいった。
川上隊長「とにかく、この事実が知れたことで人々は混乱している。ここは早急にその城達志という青年に接触して
話を聞かねばならんだろう」
由美子「色々まずいことにもなりそうだし、急がないとね」
柏村「・・・お前、思ったより冷静だな」
 自分達の近くの街にウルトラマンがいたことを知った由美子が狂喜し、実験体にしようとか言い出すと思っていた柏村は
拍子抜けした。
由美子「ゾギア星人が地球侵略を狙ってて状況が切迫してるのに、もうそういう段階でもないでしょ」
 川上に一度怒られて、由美子はセルフコントロールするようになっていた。余裕のある状況だったら柏村の懸念していた
ような行為にも出たかもしれないが。
 と、外部から緊急連絡の通信が入ったとアンドロイド・ミリーが知らせ、近場に居た斎木が応対する。そして、
斎木「由美子。お前の言ったとおりまずいことになったぜ・・・」

 連絡してきたのは上層部だった。この件は、当初からウルトラマンについての情報を探っていた諜報部の管轄とすると
通達してきたのである。達志の身柄を確保するため、既に先行して彼が住んでいるという街区に部隊を送ったという。
由美子「ここに至るまでウルトラマンの情報も掴めずに、四日市で関係ないことやってたくせにね・・・」
 お前らは手を出すなという警告、というより威圧だろうが、だからといって引っ込んでいるわけにも行かない。
一同も至急現場へ向かう。川上も止めず、同行する。
川上「首都圏は本来我々の管轄だ。幾ら何でもこの采配はおかしい」
斎木「それに、放っておけば絶対もっとまずいことになりそうですしね」

 街にやってきたのは、四日市で関係ないことをやっていた当人の日高諜報主任だった。彼女は只、上から命令が来たので
それをそのまま遂行するためだけに来た。それ以外の意味も理屈もありはしない。もう全てがどうでもいいという彼女の
スタンスは全く変わっていない。
 後、達志が抵抗した場合を想定して武力で対抗するため、北米支部からダイアン隊長が補佐に来ていた。
 38話での怪獣プリズミオスの攻撃で北米全土は大被害を被り、その痛手はまだ癒えていない。プリズミオスの
容赦ないビーム攻撃の際に特防北米支部も壊滅に近い打撃を受け、ダイアンもそれに巻き込まれて重症を負い、現在も
全身包帯だらけでミイラのようである。そのことによって怪獣・宇宙人・とにかく人間以外の存在へのダイアンの憎悪は
決定的なものとなり、その憎しみが満身創痍の彼女を突き動かし、無理やり現場復帰にまで至らせていた。
ウルトラマンはこれまで地球の平和を守っていた存在であり、ダイアンの大怪我もウルトラマンの非によるものではないという
道理も今の彼女には通らない。ウルトラマンも含めた人間以外の存在が生きていること自体が彼女にとっては罪だった。
 ぶつぶつぶつぶつなんか凄く不穏当なことを呟き続け、包帯まみれの顔から片目だけが覗き、その目の光を見た者は皆退く。
全てがどうでもいい日高以外は。

 最悪のコンビは西野家の正面に到着し、恵を筆頭にした一家、更に町内の人々と睨みあっている。火器を携えた大勢の兵士を
引き連れて。目標が強大な力を持った異星人で、地球に危害を加えないという100%の保証がない限り、彼女らは火器を行使
することをごり押しで正当化する腹だ。達志がまだ西野家に帰ってきていない現状でそれである。
 恵は恵で、そんな言い分に屈する気はない。他の人々も同様。既にナックル一味を撃退した彼らは今更軍隊相手くらいでは
恐れない。いざとなれば本当に兵士達相手にやらかすつもりである。

恵「今まで貴方達は何を見てたんですか!? あれだけ何度も辛い目に合っても私達のために戦い続けてきた城先生が、
地球に牙を向く必然性が何処にあるんですか!?」
日高「この世の中に絶対なんかありません。千分の一でも万分の一でも危険性がある限り放置は出来ません。どうしても下がれと
いうなら、彼が地球に危害を加えない可能性を100%にしてください。危険性を完全にゼロにしてください」
 とてつもなく不毛な言い争いが続く。
 やっと駆けつけた特命防衛隊の五人が先行部隊に退くように説得するが、日高は上を通せの一点張り。
 日高の後ろでダイアンは身を揺すって息を荒くしており、このままでは冗談抜きで発砲しかねない。
 その悲しい様を見て柏村と由美子は、自分達がこういうことをする側に回らなくてやはりよかったと思った。
 無駄に時間が延々経過し、遂にダイアンが耐えかねて故郷のスラングで訳の判らんことを吠えて銃を振り回して暴れ出した。
兵士達が複数で押さえつけても弾き飛ばされる。怪獣そのものだ。いや、怪獣の方がまだ理性的かも知れない。
 一触即発かと思われたとき。

「落ち着きましょう」
 件の城達志が、今頃のうのうと現れた。

「城先生!?」
 叫ぶ恵、そして一誠や和子や哲夫、町内の人々も目を見張る。

哲夫「駄目だよ、達志兄ちゃん! 今此処に来ちゃ・・・」
達志「何故?」
哲夫「何故・・・って」
達志「何もやましいことはないのに逃げる必要はないだろう」
哲夫「そうだけど・・・ほら!」
 言ってる間に既にダイアンが兵士達を全て振り飛ばして走り迫り、下品な罵倒を英語で叫びながらアーミーナイフを
振り回して達志に襲い掛かる。達志はナイフを交わし続けながら、
達志「お久し振りです、美樹さん」
美樹「アル・・・城君・・・」
達志「同行して話を聞かせて欲しいというなら行きますので、とりあえずこの人を何とかしてくれませんか」
川上「・・・判った」
 川上が前に出て、麻酔銃でダイアンを撃った。ダイアンは昏倒した。
 象に使う麻酔薬で、普通の人間が食らえばショック死だが、ダイアンにはそのくらいでないと効かなかった。
がーがーいびきをかいて寝ており、やれやれな調子の兵士達に拾われる。
 川上は日高に言う。
「目標は素直に同行を申し出ている。過剰な戦力で拘束することもないだろう」
「・・・まあ、いいでしょう」

 達志は大勢の兵士に囲まれ、ディフェンスポートへ向かうことになる。悔しそうに見詰める町内の人々。
「先生・・・!」
 駆け寄る恵を達志は柔らかい笑顔で制止し、
「此処で僕が下手に抵抗したら、ウルトラマン全体の信頼を失うことになる。事を荒立てればこの町の人達も
無事ではすまない。防衛軍の人達もだ。それはお互いに不幸だろう」
「でも・・・」
「僕は以前、もう勝手な判断で君の下から去ることは二度としないと約束した。その約束は必ず守る。
信じてくれ」
「・・・絶対ですからね!!」
 恵は涙をこらえて達志に縋った。

 川上の制止で可能な限り時間が引き延ばされた後、いよいよ達志は連行されていく。
一誠「彼にもしものことがあったら」
町内会長「この町の全ての住民が、あんたらの敵になるからな」
和子「私達だけではありません。これまで城先生によって希望を与えられてきた、世界中の人々全員がです」
 睨み付ける町内の一同。
「・・・当然です。私の責任において、必ず彼を無事にお返しします」
 川上は答え、他の特防隊員四人も頷いた。

 大気圏外から事態を捕捉している、デリート、そしてズィーベンとジャネット。
ジャネット「・・・アルファを助けなくていいのですか」
ズィーベン「あのままでは・・・」
 二人を止め、静観することにしたのは、デリートだった。
デリート「ウルトラマンであるアルファ君は、防衛軍に正体を知られた時点で不利な立場にならないように
地球から去ることも出来ました。しかし、彼はウルトラマンであると同時に地球人の同胞であり続けるために、
留まることを選びました。ならば、今は我々の介入するときではありません」
ジャネット「そうですが・・・」
デリート「今は、大事な岐路なのです。地球と光の国の関係が、今後どうなるか決まるための・・・」

 達志を確保したというディフェンスポートからの連絡で、地球防衛軍・ガーディアンの重鎮クラスの人物、
高島参謀長が、VIP機に乗って向かっていた。日高の上官で、四日市の実験都市建造計画を通した男である。
「ガーディアンは・・・最強の地球の守りの力を手に入れた・・・
 ひひ・・・ひひひひひひひ!!」
 乱れた白髪の初老の男は、血走った眼で痙攣気味に震えながら笑っていた。

 続く。
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ウルトラマンアルファ 47 卑劣!! 達志の正体暴露!!・3
豪剣宙将・ゴーン、触手宙将・ジェフラン 出現

 東京湾岸、ディフェンスポート。
 その正体はウルトラマンアルファであった城達志が捕らえられたことを知り、大勢の報道陣や物見遊山の
連中が基地の周りに群がっていたが、基地周辺を高島参謀長下の部隊が厳重に固め、結構な騒ぎになった後、
睨みあいになっていた。そして基地の内部では。

「・・・城君」
「いやー、予測範囲予測範囲」
 美樹がへこんでいる前で、達志は頭以外をがちがちにメカの拘束具で戒められ、椅子に縛り付けられていた。
それでもへらへら笑っている。
「それに、ナイフで僕に襲い掛かってきたあの人よりはましですよ」
 象用の麻酔がもう切れたダイアン隊長は、彼女を達志以上に危険視した兵士達によって何重もの特殊鋼の
装甲で覆われた独房に入れられ、その壁をがんがん大音響で鳴らしながらわめき続けていた。
 それはともかく、高島参謀長の強権によって達志の身柄の処置権は特命防衛隊から奪われており、達志が
いきなりこのような扱いを受けているのを目にしても、特防は手を出せずにいた。
 いざとなれば、特防一同は上からどのような処分を食らうことになっても、恵達との約束通り達志を助け出して
無事に帰すつもりでいた。しかし、今無理にそれをやっても数の多い高島の部隊によって阻止される。
隙を見つけ出してチャンスを狙う腹だった。そのチャンスを生むため、川上隊長が策を用意してある。

 その川上は、司令室で高島と対話していた。
「で、城達志を拘束した上で、どのようなコミュニケーションを取るおつもりですか」
「コミュニケーション?」
 高島はあからさまになめた調子で笑う。
「得体の知れない異星人相手にコミュニケーションなど取る価値があるとでも?」
「では、どうなさるおつもりで?」
「物の価値の判らん奴だね、君は。強大な力を持つウルトラマンが我々の手に入ったのだよ。これを地球防衛のために
存分に有効活用しないでどうするというのかね」
 やはりそうきたかと川上は思う。『物』とか『これ』とか『手に入った』とかしか言わないのも非常に不快だ。
「それならそれで、表面的にだけでも人道的に扱ったほうが、周囲にも悪印象を与えず得策かと愚考しますが」
「それは取り越し苦労というものだよ。何、心配ない。どれほど人道にもとるとか世論が非難したところで、実際に
怪獣や宇宙人の脅威に晒され続ければ、民衆は嫌でも最後にはウルトラマンという切り札を持っている我々に
縋らざるを得なくなる。あのウルトラマンが化けた男に関しても、いざとなれば、奴が潜伏していた一家の娘辺りでも
人質に取っておけば迂闊に手は出せまい」
 渋面を作っている川上に高島は微笑む。
「判ってくれたまえ、川上君。これも地球の明るい未来のためなのだよ。そのためならば私は悪にでもなろう」
 ふうん。

 拘束されている達志の所に、日高諜報主任が来た。警戒する美樹に、準備が整い次第達志をこの基地から
高島参謀長管轄の施設へ移す予定であることを伝える。
美樹「貴方は、この状況をおかしいとは思わないの?」
日高「何をやったところで世界中の人々全員が納得する結果にするのは無理です。この世の人間全員が幸せになるのは
不可能なのです。私はもう考えるのは疲れたので何もしません。与えられた仕事しかしません。文句があるなら参謀長へ」
美樹「ああそうですか」
 そのとき、基地に警報が響き渡った。

 再び現れた豪剣宙将ゴーンと触手宙将ジェフランが、海の沖から波を砕いて歩いてくる。
 捕らえたウルトラマンアルファの扱いをどうするかで、防衛軍側は互いの意見が行き違いになって指揮系統が乱れて
いるはずだ、その隙にディフェンスポートを攻撃して殲滅せよというゾギア星人の命令だった。
ゴーン『アルファが出てきてくれれば少しは戦いも面白くなるのだが、どうだろうな』
ジェフラン『どうでもいいさ。私は地球人共を思う様なぶってやれればそれでいい、くすくすくす』
 新生ギラス兄弟以来の防衛基地への直接攻撃である。

 ディフェンスポート司令室。
 川上は呆気に取られていた。
 敵襲来の警報を聞いた途端、高島があからさまに過剰にうろたえ、広いフロアの隅っこに超速で飛んでいって
がくがく震えていた。
「参謀長?」
「・・・あ。いや、何でもない。何でもないよ」
 慌てて平静を取り戻す。
「そう、焦ることはないのだ。こっちにはウルトラマンという最強の戦力があるのだ。早速適当な脅しでも
交換条件でも与えて変身させ、敵を迎撃すればいいのだ」

 だが、そう上手くは行かなかった。
 護送中に万一達志が変身して逃げたり反撃したりすると困るので、彼の変身アイテムであるアルファプラスは取り上げられ、
基地内の別の場所に保管されていた。ダイアンを閉じ込めているのと同じくらい強固な壁の倉庫に。扉の開閉装置にも何重もの
プロテクトを掛けて。先ず取り出さなければならないのだが、大勢のオペレーターが寄ってたかってプロテクトを解除するのに
滅茶苦茶難航している。
 達志を拘束している拘束具も同様。片腕だけでも自由になれば手でアルファプラスを作動させて変身し、拘束から抜け出す
こともウルトラマンの力なら容易なのだが、そこに至るまでにさえ大騒ぎしている。

 司令室。
高島「・・・・・・・・・」
川上「警戒のし過ぎが仇になったようですな。これこそ取り越し苦労では?」
高島「うううう、うるさい!」
 高島は内線に向かって怒鳴る。
「もたもたしていないで早く準備をしろ!」

「といわれましても」
 日高は淡々と応対。焦っていないのは彼女くらい。
美樹「城君、どうにかならないの?」
達志「困りましたね・・・」
 達志としても敵を迎撃したいのは山々だが、動けないのではどうしようもない。実は、先程から倉庫に格納されたアルファ
プラスにウルトラ念力を送っている。アルファプラスは念力に反応して達志の下へ向かおうと、倉庫の内壁にかつんかつんと
何度もぶつかっているが、その程度では破れない。

 沖では、ソニックビートで先行した斎木が、トライビート隊を連れて二大宙将を攻撃しているのだが、びくともしない。
ディフェンスポートから飛んできたアタックデコイも、ジェフランの触手で次々叩き落される。
「突出しすぎると敵の餌食になるぞ! とにかく交わして、アルファが出てくるまで時間を稼げ!」
 斎木はトライビート隊に指示。

 牽制も空しく、二大宙将がいよいよ目視できる位置まで迫ってきた。
「まだウルトラマンは出てこんのか!?」
 高島は内線相手に明らかに動揺している。真っ青になり、冷や汗をかいている。
 頃合だと川上は思った。

「参謀長。この拠点を守るため、我々も戦いに参加します」
「・・・は?」
「ウルトラマンが出てこないのですから仕方ありません。この基地の責任者は私ですので、私の判断でやらせて頂きます」
「川上・・・貴様、何を!?」
「ミリー」
「了解」
 指示を受けたアンドロイド・ミリーは、密かにスタンバらせていた機動司令塔を、急速発進させた。
 この衝撃に慣れている川上とミリー以外の人員は、密かに下部施設に退去していたのだが、ウルトラマンを利用することで
頭が一杯になっていた高島は気づけなかった。
「ぎゃーーーーー!?」
 急な発進の衝撃に振り回され、床に転がり、壁に叩きつけられる。
 機動司令塔はハイパードリルを回転させながら二大宙将に向かう。
「いやー!! 怪獣いやー!! 死ぬのいやー!! ウルトラマン早く出てきて助けてーーーーー!!」
 防衛軍の人間である自分達がいざとなれば真っ先に戦いの矢面に立たされることも、高島の頭からはすっぽ抜けていたらしい。
 アルファの確保という事態で混乱しているこの基地に、敵は必ず遠からず攻めて来る。そう読み、敵襲の際にかこつけ、
話を続けて引き付けておいた高島ごと機動司令塔で発進し、高島を基地から引き離し、彼の部隊の命令系統を乱すのが川上の
狙いだった。
(この隙にウルトラマンを解放してくれ!)

 飛んでいく機動司令塔を呆然と見ている高島配下の兵士達。
 一方、音を上げたオペレーター達に代わり、出てきた由美子が達志の拘束メカのプロテクトを確実に素早く解除していく。
美樹「頼むわよ、由美子!」
由美子「まっかせなさーい!」

 アルファプラスを保管している倉庫のほうでも、
「ああー! 試運転作業のミスでうっかり突っ込ませてしまったーーーーー!!」
 大声の棒読みで、柏村がプロライザーを倉庫の壁に突っ込ませ(勿論ドリルを回転させて)、大穴を開けた。
 達志を変身させるための非常措置という言い訳は立つだろう。立たなければ立たないで、どのような処分も食らう覚悟は
出来ている。
 破れた倉庫から、光を放ちながらふわふわ飛んでいくアルファプラスを見届ける柏村。その眼差しに宿る光は、当初
アルファの力をがむしゃらに求めて奇声を上げて暴走していた頃のそれと共通していながら、何処か余裕があって優しい。
「頼むぞ、ウルトラマンアルファ・・・お前は、俺達人類の希望なんだ」

 が。
「・・・あ」
 プロライザー追突の衝撃で、倉庫と連なって立っていた建物も連鎖してがらがらと崩れる。その中には、ダイアンを監禁していた
独房もあった。
 積み上がった瓦礫を弾き飛ばし、幽鬼と見まがいそうな包帯まみれの巨女が眼を爛々と光らせて飛び出してきた。
「しまった!」
 味方側にさえどんな被害を出すか判らない。柏村は焦る。
 だが、ダイアンの関心は幸い味方側には向かなかった。既に基地の近くに迫ってきている宙将を見たダイアンは、吼えた。
「ギギャァァァァァーーーーーッ!!!!!」
 壊れた倉庫群の中から出てきた巨大な機銃を引っ掴み、ばりばり撃ちながら(都合よく弾丸まで入っていた)、宙将に
向かって突進。
 だが、雑魚怪獣や宇宙人ならともかく、相手は緒戦でアルファをも苦戦させた宙将である。
 それでも、西野家の近所の人々のように何かを背負い、何かを守るための戦いであったなら、もう少しいいところまで迫ったかも
知れない。だが、度を越した復讐心に支配されたダイアンはもう只の獣であり、自分のことしか頭になく、先のことも何も見えて
いなかった。
 鬱陶しい喚き声を上げて走ってくる小さな人間をつまらなそうに流し見たジェフランは、細いビームを眼から撃ちはなった。
それだけでダイアンは埠頭ごと吹き飛ばされ、熱で蒸発してかけらも残さず消し飛んだ。
「・・・・・・・・・」
 柏村はいたましそうな表情で手を合わせて念仏を一節唱え、それで済ませた。

「よーし外れたー!!」
 由美子の叫びと共にがしゅーと拘束メカが湯気を噴いて緩み、達志の右腕一本が漸く自由になった。
 丁度そこにアルファプラスが宙を飛んできた。達志は手でぱしっと受け止める。
「城君!」
 達志は美樹の声に頷き、アルファプラスをかざして叫ぶ。
「アルファーーーーーッ!!!!!」
 達志は眩しい光となって拘束具から抜け出し、その場から消える。
 同時に、基地上空の空がガラスのようにばりばりと割れ、その裂け目から光芒と共にウルトラマンアルファが姿を現し、
飛沫を上げて海に降り立った。

『出おったか、アルファ』
 くすくすとほくそ笑むジェフラン。
『だがもう遅い!』
 時間を稼ぎ続けた機動司令塔は、ジェフランの無数の触手に捕らえられ、高く掲げられていた。中では高島が怯えて
ぎゃーぎゃー悲鳴を上げている。
『こいつらの命が惜しければおとなしく』
 どしゅ
『・・・し・・・』
 言葉が終わる前に、投げ放たれたアルファブレードの抜き身が、触手を皆上に上げてがら空きになっていたジェフランの胸を
貫いた。
 6話の怪獣ザガランと同じ轍を踏んだジェフランは、機動司令塔を持ち上げたまま硬直してくたばった。
アルファ『べらべら喋ってる間に機動司令塔を破壊すべきだったな』

 ジェフランがやられたことなど気にも留めず、続いてゴーンが巨剣をかざして迫ってくる。
 投げたブレードをジェフランの死体から抜く暇もなく素手で相手することになるが、アルファは恐れなどしない。寧ろ、
ぎりぎりまで積極的に接近して格闘戦に持ち込んでいく。
『ぬ・・・!』
 こうなると、中途半端に長く重く大きな剣を使っているゴーンのほうがやりにくい。自分の間合いに持ち込もうとしても、
アルファは先に素早く距離を詰めてくる。
『緒戦で既に対応策を練っていたか!』
 ゴーンは間合いを取って思い切りよく剣を投げ捨て、自分も格闘で受ける。
 両者激しく波を蹴散らし、技を応酬させる。アルファの素早い動きにゴーンはしっかり対応し、爪や尻尾を閃かせて
隙を狙ってくる。ナックルストリームでの拳の連打も全て拳で止められる。大技で一気に決めたいところだが、ギャラシウム
光線の構えなどで動きが大振りになると逆にそこを狙われかねない。
(何か意表を突く手は・・・)
 戦いながら動き回っていたアルファは、ふと、その手を見出した。

「・・・!」
 立ち往生しているジェフランに抱え上げられたままの機動司令塔から様子をみていた川上は、こっちを見たアルファと
見合って何かに気づいた。
「・・・ミリー、いいな」
「はい」
 ミリーも気づいていた。

『貴様・・・何を考えている?』
 アルファが何か決めの一手を狙っているのをゴーンは感じ取っていたが、それが何なのか判らない。
 延々と互いにポジションの取り合いを続けた後、アルファが出し抜けに急接近して掴みかかってきた。そして、
力にあかせてゴーンを投げ飛ばす。
 しかし、ゴーンは飛ばされた上空で身を翻し、器用にバランスをとって降下してくる。
『何かと思えば・・・買いかぶりすぎたか・・・』
 そう思ったゴーンの全身が、轟音と衝撃に揺さぶられた。
 後、高島参謀長の悲痛な悲鳴も聞こえた。

『な・・・に?』
 自分の背から胸へと貫き通された、血まみれで高速回転を続ける巨大なドリルを呆然と見るゴーン。
 ゴーンはアルファとの戦いのみに気を取られ、惰弱な存在と最初からたかをくくっている地球人のことなど気にも
していなかった。そして、機動司令塔はまだジェフランの硬直した死体の上に乗っていたものの、既に触手の
締め付けは緩み、全力噴射すれば抜け出せる状態だった。
 アルファはゴーンと組み手を続けながら、機動司令塔のハイパードリルの先端の方向にゴーンを誘導し、隙を突いて
後ろからハイパードリルでとどめを刺すように促したのである。
『な・・・成程・・・地球人・・・侮りがたし・・・』
 ゴーンは大量の血を吐いて言い残し、ざんぶと海原に斃れた。

 事後、機動司令塔は無事基部に戻り、高島はひいひい言いながら外に転げ出てきたが、
「ひっ!?」
 まだ巨大な姿のままのアルファに見下ろされてびびる。
『あのー、高島参謀長、でしたっけ』
 間延びした調子のテレパシー。
『僕は別に大それたことをする気はないので、出来ればそっとしておいてほしいんですが』
「・・・し・・・信用できるか!」
 高島は虚勢を張る。
「宇宙人の言うことなど当てにならん!」
 当てにならんのに力を利用しようというのもよく判らない。信用できないのは危険とは考えないのか。
「お前のような巨大過ぎる力を持った者を野放しにしておくわけにはいかん! 防衛軍幕僚の沽券に関わる!」
 今更防衛軍としての大義名分を持ち出してくる。
『はあ。じゃ、今後もずっと僕が自由にするのを許さず連れ回し続けると』
「当然だ!」
『今回のゾギア星人の侵略軍団は、どうも僕をピンポイントで狙ってる節があるんですが、ずっと僕と一緒にいると、
貴方も巻き込まれますよ』
「・・・・・・」
『今回のようなひどい目に会い続けますよ』
 高島は青ざめるが、
「・・・そ・・・そのためにお前の力が!!」
『今回僕が勝てたのは、特命防衛隊の皆さんの協力があったからです。ゾギア星人の軍団は強敵です。次も勝てるとは
限りません。で、僕が負けてやられたら、そのときこそ貴方に事が及ぶと思うんですけど』
「・・・・・・・・・・・・」
『その覚悟、あります?』
 アルファは身をかがめて高島を覗き込む。
 ダークメフィストばりの異常パースで。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「川上君! そのウルトラマンの処遇は君に任せる!」
 既に日高はVIP機を用意して待っており、高島は裏返った声で川上に全てを押し付け、テープの早回しでこけつまろびつ
走りながら逃げていった。
 特命防衛隊一同の溜飲は下がり、はっはっはっはと笑いながら見送った(ミリーを除く)。アルファも巨大な姿のままで
シュワッハッハッハと腰に手を当てて笑い、特防と一丸となって見送った。
 太陽は眩しく、海と空は何処までも青く澄み切っていた。
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ウルトラマンアルファ 48 他人の星から
 改造恒星間弾道弾・マゼラニオス、爆撃宙将・グロント、宇宙邪将・ゾギア星人 出現


 地球に向かって、太陽系外から超巨大な物体が接近していた。
 改造恒星間弾道弾・マゼラニオス。
 要は、惑星破壊爆弾。
 かつて恒星間弾道弾を使って地球の爆破を狙ったマゼラン星から、宇宙邪将・ゾギア星人が
今回買い受けて使用に踏み切った。
 尚、以前のウルトラセブン37話同様、この話でも、マゼラン星人自体の描写はない。相変わらず
全貌は不明である。そして、地球人を宇宙から消し去るべき癌細胞と思っているのも相変わらずである。

「いいんですか? 私達の目的は地球の侵略で、その地球を木っ端微塵にしちゃったら意味ないのでは?」
 拠点に座するゾギア星人に、例の少女がきょとんとして尋ねる。
「地球がこの試練に耐え切れる星かどうかを試す」
「はあ」
「地球は自然に満ちた風光明媚で美しい星だが、私はそれだけで地球を狙っているのではない。
マゼラニオスを買った際にマゼラン星人どもも散々こき下ろしていたが、地球という星の美しさは
ともかく、そこに住んでいる住民については必ずしも肯定的な評判ばかりではない。モラルに
ついては大いに疑問視されている。何せ『侵略者の墓場』と評されるくらいだからな」
「はあ。それは確かにそうですね」
「こういうことを言うと、夢見がちな理想主義者どもは何時も、そんなことはない、それは一部の者達で、
いい地球人も沢山いると頭に血を昇らせて喚いてくるが、実際にろくでもない『一部の者達』がいて・・・
本当に一部の少数派かどうかはともかく・・・『いい地球人』との小競り合いで多々問題が発生している
事実に言い訳をさせる気はない」
「ほうほう」

「地球が如何に美しい星でも、そこに住む者が只の汚物のレベルを脱していないのでは意味がない。
その辺どうなのかを今回の攻撃で試す。この攻撃で滅ぶならそこまでの星だったということだ。
又次の征服目標を探すまでさ」
「ウルトラマンアルファについては?」
「奴は地球人と同じ地に立ち、地球人の同胞となることを望んでいる。いや、自らそうあろうと
試行錯誤を今も続けている。だから、私の挑戦に地球人が抗することにアルファが加担するのは
別に構わん。寧ろ、奴がどうでるか非常に楽しみなのだ。ふふふ・・・」
「といってたら、期待に応えて、来たみたいですよ」

 ばりんと次元の壁を割り、マゼラニオスの正面に、ウルトラマンアルファが転移してきた。
 無論、マゼラニオスの地球到達を阻止するためである。
 だが、それを妨害する者がいた。
 ゾギア星人の側にいた人物の一人、アーミールックの大柄な男。
 真空の宇宙空間を進むマゼラニオスの上に、腕組みして悠然と立ってアルファを睨んでいる。
人間ではない。
 男は忽ち身を膨れ上がらせて巨大化し、四宙将の三、爆撃宙将・グロントの正体を現した。
全身にごてごてパーツのついた、人型の上半身に牛のような四足の異形で、その四足でしっかり
マゼラニオスの装甲を踏みしめている。二人操演。
 グロントはアルファをマゼラニオスに近づけまいと、その巨体に大量に搭載された火力兵器を
一斉に撃ってきた。
 ホーミング式のミサイルやビームで、アルファが迂回してマゼラニオスに取り付こうとしても
正確に執拗に追ってくる。避けても避けても、無数とも思える弾を連続して撃ってくる。更に、
マゼラニオス自体にも全面に取り付けられた砲台からの一斉砲撃。宇宙が眩しい白に染まる。
 高速機動が身上であるアルファは食らわずにいるが、近付くことも出来ない。

『くそ・・・ウルトラ縮地!!』
 最大加速し、残像を残して移動しながら、砲撃を回避しつつ強引にマゼラニオスに接近していく。
そして、遂にその表面に降り立った、と思ったとき。
 巨体な分動きも鈍重だろうと思っていたグロントが、軽やかに走り跳びながら、瞬時に
アルファの目前に迫ってきた。
 直にアルファを手で殴り、吹っ飛ばす。
 マゼラニオスの上に転がったアルファに追い討ちを掛ける。前足で蹴り、後ろ足の上の胴体に
繋がった二本の触手を伸ばして鞭のように素早く振って叩きつけ、更にまだビームやミサイルを
撃ってくる。もう嫌がらせのようなしつこい追撃。是が非でもマゼラニオスを攻撃させない気だ。
ゴーンとジェフラン相手のときもそうだったが、この隙のない猛攻相手では、又もモーションの大きい
大技を掛ける暇がない。
『諦めろ、ウルトラマンアルファ!』
 グロントが叫ぶ。
 マゼラニオスの上を転がって避け続けるアルファ。
『やはり・・・あれを使うしかないか』

 地球。
 先行したアルファの妨害を突破された場合に備え、特命防衛隊と、地球防衛軍・ガーディアンの
大部隊が既に地球圏一帯に広範囲の警戒網を敷いている。
 既にアルファも防衛軍戦力の一端扱いだが、それはまあいい。ゾギア星人もいいと言ってるし。
 だからといって、強大すぎる敵の前に何が出来るかは怪しいのだが、特防も只待つだけに甘んじる
気はない。
 空を見つめる由美子。
「頼んだわよ・・・」

 アルファは素早く背に手を隠したと思うと、由美子が開発して渡したハンディサイズの手榴弾のようなものを出す。
それを投げて炸裂させると、グロントとマゼラニオスの同時砲撃による光熱を上回る眩しさの閃光が
一帯を埋め尽くした。
『があっ!?』
 グロントの目が潰れ、思わず顔を背ける。
 アルファは仮にも光の巨人のウルトラマンなので、多少の閃光は平気。今のうちに、由美子からのもう一つの
預かり物を出す。
 マゼラニオスをも一撃で破壊できる、超強力爆弾。
 だが、普通にミサイルに搭載してマゼラニオスにそのまま直進させても、グロントとの同時射撃辺りで
命中前に撃墜される。そこで、アルファに持たせて確実な命中を狙わせた。
 アルファはプラスチック式の爆弾をマゼラニオスに接続して時限装置を作動させ、グロントが苦しんでいる隙に
全速でマゼラニオスから離脱。
 逃げ切った遠くの位置から見届ける彼方で、マゼラニオスはグロントを巻き込み、跡形もなく爆破された。
 地球に帰還するアルファからのテレパシーでの報告を受け、防衛軍一同は大いに歓喜した。

 ウルトラマンアルファ=城達志は、地球の住人となるための過程を日々確実に踏んでいる。全世界レベルでの
正体暴露という難事があってから、一度囚われの身となった後も、押し寄せるマスコミとか、人々の不安を解消するために
川上隊長に伴われての公式の場での説明とか、雑事は度々襲ってくるが、特防のフォローもあり、今のところ
西野家に戻ってどうにかまともに暮らせている。
 マゼラニオス撃破祝いのパーティで町内中で盛り上がった後、達志と恵は西野家宅の二階のベランダに出て
夜空を見上げる。周りの人々は無論気を回してついていくようなことはしない。覗こうとした者はとっちめられた。
「中々ゆっくり出来なくてごめんね、恵ちゃん」
「いいです。今宇宙人が地球を狙ってて大変なときなのは判ってますから。それに」
 恵は意図的に目線を合わせずに言う。
「城先生は、必ず帰ってくるという約束をちゃんと守りました。それだけで、もういいです」

 暫し沈黙が続いたが、
「恵ちゃん。少し前に、僕の家族に話をしにいかなくていいのかって話が出たことがあったよね」
「え? ええ、そんなこともありましたね」
「実は・・・距離の問題だけじゃないんだ」
「?」
「多分、本当にわざわざ挨拶しにいく必要はない」
「・・・いや、それは・・・異星人とか、そういうことは私は今更気にしませんから」
「既に皆知っての通り、僕はウルトラマンで、宇宙警備隊の隊員だ・・・いや、脱走してきた今、まだ籍が警備隊に置かれて
いるかは判らないが、隊員だった」
「?」
 どうも話の流れが判らない恵。
「けど、純正の光の国・M78星雲の出身じゃない」

 ウルトラマンと呼ばれる光の巨人達は、元々地球人に近い姿の種族で、人工太陽プラズマスパークの暴走事故の影響で
現在の巨大な体と超能力を持つ種になったことは、以前にも言及された。
 ウルトラマンとなった人々は、姿が変わった後、別の星系に移住したりしてその生活圏を増やしていった。
マグマ星人の攻撃で壊滅して今はもうないL77星等が代表的な例だが、その他にも色々ある。
 そして、達志=アルファの故郷、Q538星。
 Q538星に住むウルトラマン達は、基本的に宇宙警備隊には参加していない。それどころか、ウルトラマンとしての
強大な超能力を持ちながら、その力を宇宙の平和のために使うという、世間一般のウルトラマンに対する認識とも
合致していない。かといって、近年になって増えた、『悪トラマン』と蔑称で呼ばれる、ダークサイドに走った悪の
ウルトラマン達のように他に害をなすといったこともしていない。では何をしているのか。
 何もしていない。
 ひたすらQ538星の中だけに篭り、他の文化圏との関わりを一切絶って暮らしている。強力な超能力を持っているので、
他と関わらずに自分達だけで暮らしていても別に不自由ではない。が、かたくなに他との関わりを拒むその意固地な姿勢が、
他の星の人々にとって好意的に受け入れられるわけはない。

 Q538星の周辺でも、宇宙の平和を脅かすような事件は頻繁に起こり、凶悪な怪獣や宇宙人が暴れたり、プラズマハザードの
変異体が災害を引き起こしたりしているのだが、それに対して宇宙警備隊や有志の宇宙人達が事件を解決するために尽力
している中でも、Q538星は何にもしない。
 こういう方針は、アルファの血縁であるQ538星の現在の統括者によって定められ、殆ど全ての住民もその方針に対して
特に異を唱えない。何故そんな方針になったかというと。
 幾らウルトラマンが宇宙の平和のために戦い続けても、宇宙中に住む一人一人それぞれの物の考え方が違う限り、
その行き違いによる争いは永久になくならない。
 だから、幾らやっても無駄。
 下手にその堂々巡りに介入して騒ぎを拡大するより、何もせずにいるほうが平和のためだ。
 考えの違う同士がお互いに下手に関わり合いにならなければ、争いが起きることもない。

 そういう考えでまとまった今のQ538星の社会が、どういう状態になっているか。
 あの四日市の実験都市の住民達の状況とそっくりそのままだ。互いの感情を一切共有しあわず、全員が自分一人だけの
生活圏で暮らしている。超能力があるので特に生活に不自由はないので、ずっとその状態である。

「・・・・・・・・・」
 恵は絶句している。
「だから、挨拶になんか行っても意味がないんだ」
 達志は笑顔のままで言う。その笑顔がとてつもなく空虚で寂しいと恵は感じた。
 以前、空の彼方を見上げる達志を見たときに感じた郷愁と微妙に違う違和感の正体は、これだったのだと気づいた。

 正直Q538星に対して憤るものがある。幾ら掃除しても結局埃はたまるからといって永久に掃除をしないのかとか。
 が、じゃいざどうすればいいのかというと、具体的な考えが何も出てこない。幾ら頭ごなしに怒鳴ったところで考えを
変えない奴は変えないというのは、達志がウルトラマンであることを知ってからのこの怒涛の一年で何度も思い知らされてきた。
達志もそうなのだろう。町内の顔見知りならまだしも、見たこともない何処かよその人相手に対して万事親密に全てを打ち明けて
振舞えるかと言われると、そんな自信はない。まして相手は遥か彼方の宇宙人である。
 多分、自分が彼らに何か言ってもどうにもならない。
「・・・じゃ、そのQ538星で生まれた城先生は、どうして故郷から出て地球の平和を守ろうと思ったんですか?」
「そりゃ」
 達志は答えた。
「ずっと閉じ篭った状態じゃいけないと思ったから・・・というのは、綺麗事だな。
 本当は、自分から可能性を閉ざしてしまった同郷の奴らにむかついたから」
 そして、又星空を見上げる。
「地球はいい星だ」
 そのコメントは嘘ではないと、これまでの彼の地球を守る戦いへの尽力振りを見て恵は信じられる。だが、それと同時に。
 達志には、故郷に対するいい想い出がないのだろう。

 後日。桜ヶ丘高校。
 恵は、放課後で他に誰もいない屋上で、ある人物と会っていた。
 ぱりっとしたスーツを着た、清潔な印象の長身の青年。纏う空気も柔和。
 ぱっぱと明かしてしまう。彼は、宇宙警備隊の辣腕中間管理職、デリート隊長が人間に変身した姿である。
 達志=アルファが徐々に地球の社会に溶け込みつつあることで、それを見届けるために何度かデリートが地球に
来訪しているうちに、恵と接触を持つことになったのも自然な流れであろう。最早ズィーベンやジャネットとは知り合い
レベルだし。といっても、デリートは仮にも重職についているのでそうしょっちゅう来るわけではないが。


 恵は、達志から聞いた話について、デリートからも話を聞いていた。
「ええ、事実です。Q538星からアルファ君が突然やってきて、宇宙警備隊で働きたいと言ってきたときは私も驚きました。
正直Q538星の印象は宇宙警備隊にとっても決してよろしくなく、いきなり入隊した彼は周囲から色んなやっかみも
受けましたが、それに負けず多くのハードルをクリアしてきました」
 そのやっかみの一端が、とち狂って自分達で地球にプラズマハザード変異体を送りつけてきたあのその他ウルトラマン達であろう。
「M78純正のウルトラマンは、正義と平和のために戦うことが当たり前という印象が定着している。しかし、アルファ君は
それが当たり前でない土壌から自ら思い立ち、誰にも言われずに一人で宇宙警備隊の活動に参加しに来た。これは
並大抵のことではないと私は思います。それほどまでに、Q538星の同胞であるはずの者達への彼の嫌悪の感情も強いのかも
知れませんが」
「けど、何故城先生はそれを私に打ち明けたんでしょう?」
「そりゃ、嫌なことを自分だけの胸のうちに抱えているのは辛いものです。かといって、気の知れない相手にそうそう言える
ものでもありません。逆にアルファ君は、貴方ならばそのことを打ち明けても受け入れてくれると判断するほどに、既に貴方のことを
信頼してるんじゃないでしょうかね」
「・・・・・・・・・」
 恵は考えた後、
「デリートさん。私が城先生にしてあげられることって、何かありますか?」
 デリートは、かすかに驚いた表情を見せる。

「・・・んー、別にいいんじゃないですかね。彼が戦いから帰ってきたときに貴方が待っていて、迎え入れてあげる。それ以上のことを
彼は別に要求しないと思いますが」
「それでも!」
 思わず大声を出した恵は、慌てて口ごもる。
「私達の前じゃいつも笑ってるけど、このままじゃ城先生、色んな重圧に潰されそうで・・・」
「・・・・・・・・・」
 ジャネット君じゃないですけど、本当にアルファ君を一遍サイコバーストで爆殺してあげたいですねとにこやかな顔で
デリートは思った。ここまで想われて。あの変態ロリ教師。愛しい想いの女生徒のため、心を萌やすあああいつ。
「そうですね・・・」
 考えるデリート・・・

 続く。
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 ウルトラマンアルファ 49 邪将の暴威
 宇宙邪将・ゾギア星人、分身宙将・ブローラ、プチブローラ軍団 出現


 ゾギア星人直属の配下のうち三人が倒れ、残るは四宙将の四・ブローラ=ずっと脇にいたあの少女
のみとなった。にも関わらずゾギア星人はおじける様子は無い。寧ろ楽しそうである。
 拠点にずっと座していた彼だが、ブローラ共々いよいよ自ら出陣することにする。
「ゾギア様のご満足なされる戦いになるといいですねー」
「うむ」

 地球を前にした宇宙空間に転移してきたブローラは、姿を変える。甲冑の様な姿の巨大宇宙人。
これまでの宙将に比べると細身で一見強そうには見えないが・・・
 ブローラの体中から、小型の分身体・プチブローラが大量に分裂し始めた。ディテールがブローラの外皮
そっくりな円盤状の生命体。
『いっくよーーーーー!!』
 本体ブローラの号令で、プチブローラ軍団は一斉に地球へ進撃を開始した。

 これを捕捉した特命防衛隊も、防衛軍本隊共々迎撃を開始。何しろプチブローラの数は
地球全土をカバーするほどであり、迎え撃つほうも総力戦である。
「そういうわけで、特防のトライビート、ソニックビートのみならず、防衛軍の戦闘機隊全てを投入して
事に当たります」
 川上隊長は通信モニターの向こうの高島参謀長に意図を伝えるが、モニターには執務机しか映っていない。
高島は、机の下に頭を抱えて蹲って隠れている。

 川上は溜息をつき、
「幾ら嘆かれても、侵略者はこっちの都合などお構いなく来るのですから仕方ありません。それが掛け値なしで
お嫌というのなら、もう他に誰もいないところで一人ぼっちで生きていくしかないでしょう」
 やがて、机の下から、ぐじゅぐじゅとすすり泣く声が聞こえてきた。大の大人の。
「ご心配なく。侵略者は我々がきっちり撃退して地球を守って見せます。参謀長は、戦い以外の場でのアフター
フォローをきっちりお願いします」
 泣き声がやんだ。
『・・・・・・・・・お願い?』
「そうです」
 川上は言う。
「信じてますから」

 通信を終えた川上はディフェンスポートの司令塔で指揮役に戻る。各戦闘機の状況の捕捉は、アンドロイド・
ミリーがオペレーター達の中心となって行っている。
 既に襲来したプチブローラ軍団と地球側の戦闘機隊の交戦は始まっている。戦闘機隊はソニックビートに搭乗した
各エースパイロットをリーダーとして中隊、小隊に別れて当たっている。
「ソニックビート計画のときは敵の襲撃でけちがついたからな」
「おう、今度こそ勝負をつけようぜ。この一戦でな」
 斎木と沖田はお互いの配下を率い、別々の空へ飛んでいく。

 別ブロックで、柏村は驚いていた。
「梶山隊長!」
「そんなに驚くことか」
 上空で戦う戦闘機隊に対し、地上部隊も支援砲撃に当たる。その一部隊を率いていた柏村に、梶山隊が合流して
来たのだ。横浜での一件以来である。
「あの時のことについては詫びる言葉もない。全力を持ってお前達を支援することで詫びに変えさせてもらう」
「・・・期待しております!」
 敬礼しあう両者。
 進撃していく戦車隊の様子がテレビ中継され、避難区でそれを見届ける市民達。
「頑張れー!」
 応援する青空学級の子供達、そして長門と留美。

 一方。
 各隊の現地指揮に多くの要員が出払い、ディフェンスポートそのものは手薄になっていた。
 というより、プチブローラ軍団に全面攻撃をさせてその相手をさせることで、基地を手薄にするのが敵の狙いだった。
 この前二大宙将が迫ってきた海の果てから、今回は、広範囲攻撃の指揮をブローラに任せたゾギア星人が、巨大な姿で
やってきた。一人で。
 その可能性も、地球側は既に想定していた。
「アルファーーーーーッ!!」
 川上達と示し合わせていた城達志が、アルファプラスを光らせ、ウルトラマンアルファに変身。
 今回も空を割り、光と共に海に降り立ち、基地の正面に立ってゾギア星人と相対する。
 ゾギア星人はゾギア星人で、アルファが出てくるのも想定済みだった。というか、楽しみにしていた。

『色々やってくれたな、ゾギア星人。御蔭で大変だったよ』
『だろうな。だが安心しろ。取り合えずこの一戦で最後だ。そしてウルトラマンアルファ、お前の戦いもこれで
最後となる。ゆっくり休めるぞ。あの世でな』
『残念だが・・・あの世でゆっくり休むのはお前だ』
 アルファブレードを構えるアルファ。
『後』
『何だ』
『なんかお前にも地球人に対するネガティブな主張が色々あったようだが、そこら辺の演説はぶたないのか』
『・・・・・・』
『今までも散々聞いてきたし、最後だ。僕はやられる気はさらさらないが、聞くだけは聞いてやるぞ』
 ゾギア星人は考えていたが、にやりと笑い、
『やめておこう。勝負に使うエネルギーが勿体無いわ』
『成程・・・それもそうだ』
 内心アルファはほっとした。うざい流れが避けられて。

 各地上空。
 防衛軍はよく戦う。空軍の見事な連携と地上部隊の的確な支援砲撃で、プチブローラを次々確実に墜としていく。
だが、指揮官のブローラもプチブローラ軍団を一人で器用に運用し、しかも数が減ってくると又体から生み出して
増やすため、敵の数は一向に減らない。
「やっぱり、元を断たないと駄目ね」
 近場の空域にいた美樹が隊を率いてソニックビートで向かう。

 周囲のプチブローラを配下達に任せ、美樹は単身ブローラに当たり、両者素早い空中機動で壮絶なドッグファイトを
展開する。美樹も決して攻め負けていない。銃弾を撃ち捲くる。
『おー、やるねー。じゃ』
 手からのビームのみで応じていたブローラは、そのビームの軌跡を固定して鞭とし、蛇のようにくねらせ、
ソニックビートを叩き落そうと振り回してきた。迂闊に近づけず逃げ回る美樹。
 鞭のリーチの範囲外に逃れたと思ったとき。
 いきなり鞭が長く伸びて遠くまで届き、遂にソニックビートに接触した。
「ああっ!?」
 強い衝撃で失速し、墜ち始めるソニックビートを。
 殆どショックなしで、受け止めたものがいた。
「・・・勇!!」
 コクピットの窓から美樹は巨大なその相手、ウルトラマンズィーベンのかつての名を呼び、表情を輝かす。
今回は正式な地球防衛の任務ということで、宇宙警備隊から援護にやってきた。
 ズィーベンは頷き、ソニックビートの噴射を待って手を離し、美樹に続いてブローラの相手となる。

 東京湾岸でも、アルファとゾギア星人の戦いが続く。先ずは動き回り、ポジションの取り合い。
 ディフェンスポートからも、アルファ援護のための砲撃がゾギア星人に飛ぶ。
 一対一の戦いに卑怯じゃないかとかいうのは的外れである。敗北すれば地球人類はゾギア星人に支配
されていいようにされる。卑怯も糞もない。それに、アルファ一人に二人がかりというシフトは
ゾギア星人側の二大宙将がとっくに先にやっている。
『構わんぞ。幾らでも撃つがいい』
 ゾギア星人も笑って納得している。そもそもポートからの攻撃は全く効いていない。
 だが、弾幕で煙が湧き起こって、ゾギア星人の視界が段々阻害されてくる。
 それを機会と見て、煙の外に退避したアルファ。ゾギア星人の位置は気配でしっかり捕捉し、
『ギャラシウム光線!!』
 必殺の大出力光線を、煙の中心に撃ち込む・・・

 上空。
 ズィーベンは手こずっていた。例によって彼の回避運動が最大限に発揮されているが、ブローラの
素早い空中制動からの攻撃の速さは、それをも徐々に上回っていく。更に、プチブローラ軍団が包囲して
援護射撃を掛けてくる。美樹や彼女の部隊が必死で露払いをしているが、それでも追いつかない。
 ビーム鞭の連続打撃。ウルトラ松葉杖や手刀で弾き続け、反撃の機会を窺うズィーベンだが、その機会を
一向に見出せず、次第に手傷が増えていく。
『くっ・・・せめて、周りのカトンボどもの邪魔がなければ・・・!』

 そのとき。
 地上方向から迸った大量の強力な白い光が、プチブローラ軍団を軒並み刈り取った。
ブローラ『なに・・・!?』

 地上。小倉研究所。
 37話でマインドビームカノンを開発した、小倉博士の研究所である。
 ゾギア星人の侵略に対抗すると言う名分を得て、小倉は防衛軍を援護するためにマインドビームカノンを
再度突貫工事で建造した。由美子の技術協力も得て。そして、地上から遥か上空の戦闘現場へ直に撃って
来たのである。
 今回の射撃には、子供達の精神エネルギーは充当していない。小倉と助手達が自前で精神エネルギー
抽出ヘッドギアをつけて搾り出している。地球を守るために。
「プリズミオス事件での不名誉を今こそ返上するんだ! 皆頑張ってくれ!」
「おーう!!」
 汗まみれの小倉に呼応する助手達。
「いったんさーーーーーい!!」
 技術協力が済んだ由美子は応援してるだけ。

 それでも十分だった。相変わらずマインドビームの威力は凄まじい。プチブローラ軍団は忽ち減らされ、
ブローラの周りから消えていく。
『ううう・・・負けるかーーーーー!!』
 悔しがるブローラは又全身からプチブローラを湧かせようと、再度踏ん張る。しかし、
『ズィーベンショット!!』づびびびびびびーーーーー
『あああーーーーー!?』
 その隙をあっさり突かれ、ズィーベンに必殺光線を叩き込まれた。
『あああーーーーーゾギア様ーーーーーご武運をーーーーー!!』
 妙に緊張感のない断末魔で、防衛軍の陽動に努めた最後の宙将・ブローラは爆破された。
 後は残ったプチブローラ軍団の掃討のみ。それでも大変なほど数が多いのだが。

 だが。
 形勢は逆転してはいない。

 これまで基本的に命中させた数多の敵を葬ってきたアルファのギャラシウム光線は、ゾギア星人に
確かにまともに直撃した。
『ふふふ・・・ははははははは!!』
『!?』
 だが、ホースで水でも掛けられたように、放たれ続ける光線を全身でばちゃばちゃ反射させながら、
ゾギア星人は煙の奥から平然と歩み出てきた。
 回避も防御も、無効化のための仕掛も何もしていない。素で効いていない。
 アルファが更に気張って光線の威力を強めてもゾギア星人はものともせずに接近し、片手を振り回しただけで
アルファを海に張り倒した。

 盛大な飛沫で視界が白く染まり、ゆっくり回復してきた後。
『ぬ?』
 見回すゾギア星人。
 その背後から、一端海中に身を隠したアルファが、
『ウルトラ居合い抜き!!』
 裂帛の気合で海を裂いて飛び出し、抜き身のアルファブレードの斬撃を放つ。ウルトラビースト・
レッドシルバーを無に帰した連続斬り。
 放った後、海に降り立つ。そして。
 アルファブレードの刃もゾギア星人の身体には通らず、抜き身がバラバラに砕け、零れ落ちるのを見て
アルファは愕然とした。

「いかん・・・!」
 機動司令塔で見ていた川上は叫ぶ。
「これはまずい流れだ! 相手にろくなダメージが見えないうちでの必殺技連打は・・・アルファ、
下がれ! 様子を見るんだ!」

 だがアルファはそれでも諦めず、今度は格闘攻撃に出る。
『ナックルストリーム!!』
 プリズミオスもブラックナックルの鎧も粉砕した素早い無数の拳がゾギア星人の全身に叩き込まれる。
 ゾギア星人は黙って立って浴びていたが、おもむろに両手を上げ、造作もなくアルファの両拳を掴む。
 そして手を握り締め、ぼきぼきと音高く左右の拳を握り潰した。
 アルファの声なき絶叫。

 アルファ苦戦の報せを受ける各地の特防メンバーやズィーベンだが、まだ多く残っているプチブローラ軍団が
妨害し、援護に向かえない。
斎木「くそ・・・!!」

 カラータイマーの音が海原に響く。
 ディフェンスポートからの援護射撃はやはり全く効かず、川上達の前で、ゾギア星人の素手の攻撃だけで
アルファは滅多打ちにされる。全ての必殺技は通らず、異常な怪力、そして動きさえもアルファのウルトラ縮地に
よる高速機動以上に素早い。
ミリー「隊長。機動司令塔のハイパードリルでの援護は」
川上「駄目だ・・・ハイパードリルは基本的に、事前の搦め手で敵に隙を作ってからの最後の手だ。
この状況で只突撃しても命中前に撃墜される!」
 それでもポート側も何もしないわけではなく、一般兵のトライビート隊が飛んで牽制のためにゾギア星人を
銃撃。だが、元よりその程度の攻撃では効かないのは判っており、ゾギア星人は銃弾を平然と浴び、
完全に特防を無視している。牽制は通じない。
 ゾギア星人は手っ取り早く済ませる。ちんたらやって邪魔を入れるような可愛げのあることはしない。
 海に倒れたアルファの頭を片手で掴み、持ち上げてだらりとぶら下げる。
 そして、もう片方の手刀をアルファの頸部に渾身の勢いで叩き込み、盛大な音で首の骨を折った。

 目の光もカラータイマーの光も消え、ウルトラマンアルファは、海に落ちて沈黙した。

 その頃。

 前回、人間体のデリート隊長と直接の接触を図り、何か自分がアルファ=達志を助けるためにできることが
ないか尋ねた西野恵は、デリートによって、銀河辺境のとある惑星へ瞬間移動でいざなわれていた。

「こちらです」
 人間体のジャネットが待っていた。彼女に案内され、三人で巨大な洞穴へ入っていく。
 薄暗かった洞穴の最深部は、柔らかく明るい光に満ちていた。
 恵は目を見開いて見上げる。
 最深部は広い空洞になっており、その中空に、ウルトラマンの巨体が浮かんで静止していた。それ自体が
光を発している光源だった。
 同族から見れば小さな体躯の女ウルトラマン。
「彼女はジャネット君同様、女性でありながら他の男性ウルトラマンをも圧倒する戦闘力を秘め、宇宙警備隊の
一員として数多くの凶悪な怪獣・宇宙人を倒し、宇宙の平和を守っていました」
 デリートが説明する。
「しかし、その余りに長く果てしなく過酷な戦いの末に遂に力尽き、休眠状態に入ったのです。以来、
ずっとこの状態で眠り続けています」
「はあ・・・」
「今、地球はゾギア星人によって危機に陥っています。今こそ勇者の目覚めるとき」
「はあ」
「しかし、問題が一つ。彼女のダメージは余りに大きく、外的な力の刺激によって初期起動しないと
目覚めることが出来ない状態になっているのです」
「外的な力とは?」
「愛する人を救いたいと心から願う女性の、強い精神の力です」
「・・・・・・・・・」
 デリートは、得体の知れない黒いものを秘めた爽やかな笑顔で恵に振り向き、
「私が何故此処に貴方を連れてきたか、判りますか?」
 汗を一筋たらす恵。
「・・・・・・まさか・・・・・・」

 次回、最終回。
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 ウルトラマンアルファ 最終回
 50 二大ウルトラマンの恐怖!? 東京湾愛の大竜巻!!
 宇宙邪将・ゾギア星人 出現


 ウルトラマンアルファがゾギア星人の猛攻を受け、首の骨を折られて倒れ臥したという報せを受けた
他の戦場の戦士達は、漸くプチブローラ軍団を下し、駆けつけられる者から次々に東京湾に駆けつけた。

 そして、全滅した。

ズィーベン『ちょっと待ておい!!』
 失礼。全滅というのは語弊があった。正確には、次々ゾギア星人に挑んでいったのだが、悉くかなわず
ボコボコにされてぶっ倒れていた。特命防衛隊の面々のソニックビートや配下の戦闘機隊は全て墜とされて
軟着陸(ゾギア星人が全て直にジャンプしてはたき落とした)、沿岸から射撃した柏村と梶山の戦車部隊も壊滅
(直にジャンプして踏み潰して回った)。全員重軽傷。死人が出なかったのは奇跡というかご都合というか。
 小倉研究所の面々は散々プチブローラ軍団にマインドビームカノンを撃って精神力を使い果たし、
ぶっ倒れているので援護できない状態。もっとも、対地攻撃でマインドビームは危険すぎて使えない。
ディフェンスポートや味方の軍まで吹っ飛ばされる。
「い・・・勇ーッ!!」
 負傷した美樹が見上げる先で、ウルトラマンズィーベンがゾギア星人に首を締め上げられて持ち上げられている。
ウルトラ義足も松葉杖も折られ、満身創痍。

ズィーベン『幾らなんでもこのパワーインフレ展開はないだろう! 俺達の奮戦振りをもう少しフォローするとか!』
ゾギア星人『お前、今までウルトラマンアルファのピンチに何度も颯爽と現れておいしいところを持って
いったではないか。最終回くらい自粛しとけ』
ズィーベン『そうは行くか! 俺の部下に好き放題しおって・・・せめて一矢報いるまではやられるものか!』
ゾギア星人『ええい、煩わしい』
 抵抗してくるズィーベンを、ゾギア星人は勢いよく投げて埠頭に叩き付けた。
 ズィーベンは大ダメージを受けたが、まだよろよろと身を起こしてゾギア星人を睨んでくる。
 周りの特防の戦士達も同様。まだ負けていない、全員の燃えるような目。
 それを見回すゾギア星人。そして、足下に倒れっぱなしのアルファを見る。
『そうか。これまで多くの難局を打開し、地球の活路を開いてきたこいつが、その目の光の源になっていると
言うことか。ならば・・・その源を断ち切るまで』
 動かないアルファの体を片手で海から引っ張り出し、宙に吊るす。
ズィーベン『な・・・何をする気だ!?』
ゾギア星人『きっちりとどめを刺すのよ。そうだな・・・』
 ゾギア星人は暗い笑みを浮かべ、もう片方の手を貫手にし、アルファの胸のカラータイマーに狙いを定める。
ズィーベン『やめろおおおおおッ!!』
 貫手が振り下ろされ・・・

 勢いよく、空ぶった。

『なに・・・!?』
 ゾギア星人の手許に、アルファの姿がない。
『何だ・・・貴様は!?』
 見上げるゾギア星人。他の一同も釣られて空を見る。

 アルファは、突如現れた介入者に、風に飛ばされたかのようにかすめ取られていた。
 上空でアルファを抱えている、この場の誰も見たことのない光の巨人。前回、デリートが西野恵に相対させた
女ウルトラマン。
 その名も、ウルトラマンメタファ。
 メタファは、例のめみょみょむみょみょみみょみょとかいう音を出して赤い球体のバリヤーを自分と
アルファの周りに展開し、一度その中に閉じ篭る。

 真っ赤な光に満ちた世界の中で、アルファ・・・から、人間体となった達志は、目を覚ました。
身体のダメージも既に回復しているのに気付く。
 身を起こすと、自身の超能力で達志を回復させたデリート、そして、恵が眼前にいた。
「え・・・恵ちゃん? デリート隊長も・・・どうして此処に?」
「どうしてもこうしてもないです」
 何やら膨れている恵。
 その恵と、何やら幻のようにぼんやりと重なって見えている存在を、ウルトラマンの超感覚で達志は
視認し、仰天した。
 ウルトラマンメタファと恵の体が、同座標に存在していた。

 メタファが眠っていた辺境惑星で、デリートは恵に、アルファ=達志の力となるための手段を示した。
即ち、メタファと一体化して恵自ら光の巨人となり、アルファと共に戦うこと。
「私が・・・ウルトラマンに!? や、ちょっと、ちょっとちょっと待って、いきなり言われても
心の準備が」
 流石に戸惑う恵。

「ま、拒否するのも貴方の自由ですが」
 デリートは人の悪い笑みを浮かべる。そんな彼をジト目で見て黙っているジャネット。
「貴方のアルファ君を助けたいという想いは所詮そこまでのものだったと、そういう解釈でいいのですかね」
 恵はブチッと来た。結構単純。
「誰もそんな事言ってないでしょう!」
「そうですよね。じゃほら、ささっと行きましょう」
 デリートは、メタファと一体となってその超パワーを引き出し、ものにするための変身アイテム・
『メタファプラス』を出して恵に手渡した。そのアイテムの形状が、更に恵の気勢を殺ぐ。
「何ですか・・・これ?」
 光を発動するためのクリスタルが先端に付いているのは他の変身アイテムと同じだが、妙に長い。
そして、祝いの引き出物のような見るからにおめでたい装飾があしらわれた、布団たたきのような・・・
要するに、魔法少女の変身バトン。
「それをおもむろに高くかざしてから、所定のキーワードを唱えててきとーに振り回してください。それによって
貴方はウルトラマンメタファと一体となります」
「・・・私、高校生なんですけど・・・それに、これってもうウルトラでやるべきことなんですか?
この期に及んで又色んな方面の原理主義者の神経を逆撫でしそうな・・・」
「ふーん。ほー。貴方のアルファ君への想いは結局一時の恥にも劣るものであると・・・」
「はいはいはい判りました!!」
 やけくそで恵はメタファプラスを振り上げ、
「プラズマプラズマディファレーター!! マキシママキシマデュナミスト!! 光と絆で・・・
ウルトラマンにな〜れ〜〜〜〜〜!!!!!」
 メタファプラスとのシンクロで自動的にキーワードが口からつむぎ出されて踊るような流麗なポーズが
取られる。恵自身もバレエやダンス教室の習い事の経験があったのも身のこなしのセンスに繋がったようだ。
 忽ち色鮮やかな光が全身を包み、恵はウルトラの力を得、ウルトラマンメタファと一体となり、
最初の変身を見事に果たした。きゅぴーんと決めポーズまで自動的に取った。

「というわけで、こんな恥ずかしい思いをさせた責任を取って、私と一緒に戦ってください城先生」
「というわけでじゃない!!」
 達志は憤った。
「そんな危ないことさせられるわけないだろう! デリート隊長も、何で恵ちゃんをウルトラマンになんか
したんですか!?」
「彼女自身の希望ですしー」
 デリートは全く悪びれない。
「恵ちゃん、只でさえゾギア星人は超の付く強敵なんだ! そんな奴と戦う死地に君を伴って
行くわけにはいかない!」
「城先生が一人だけで戦ってもボロ負けしたじゃないですか」
「ぐうっ・・・!!」
「デリートさんは、アルファとメタファが共に戦うことでゾギア星人をも打ち倒せる力を何処までも
引き出せると言ってます。今この状況を打開できる方法があるんなら、しのごの言わずに試しにやってみる
べきだと思いますけど」
「だ・・・駄目だ! 駄目だ駄目だ駄目・・・」
 ごねる達志の目前に、恵がすっと寄ってきた。
「え・・・な、何?」
「城先生は、私の事が好きなんでしょう?」
「な・・・何を今更判りきったことを」
「将来、私と一緒に暮らすんでしょう?」
「う・・・うん」
「だったら、私の事をもっと信頼してください。頼れるところは頼ってください。お互いに好き合って、
一緒に暮らしていくというのは、楽しいことも嫌なこともひっくるめて分け合って生きていくことじゃ
ないんですか? 私とそうするのは嫌ですか?」
「・・・恵・・・ちゃん・・・あの、顔が近い・・・」

「先生は私の事、何度も好きだって言ってくれました。私はまだ返事をしてません」
 恵は意を決して達志の耳に口を寄せた。
 何かを囁いたが、そこだけサイレント演出になり、我々には聞こえない。
 他の奴に聞かせる気は恵にはない。意地でも。
 デリートは既に要領よく、その場から姿を消していた。

『貴様、何時までそこに篭っている!?』
 赤いバリヤー球を前に、そろそろゾギア星人は痺れを切らし始めた。
『勝負に興じていたところに水を差しおって! さっさと出て来』
 言い終わる前に、赤いバリヤーの球が風船のように膨れ上がり、ぱーんと弾けた。
『イェッフゥゥゥゥゥーーーーーッ!!!!!』
 続いて、肉体的にも精神的にも全回復し、異様に高揚したウルトラマンアルファが吼えながら飛び出してきて
海原を砕いて降着した。
 タイの巨大な白い猿の神様のようにせわしない動きでそこら中をうろつきまわる。体が勝手に動き出す
百万倍の好奇心で空の彼方に届くみたいな百万倍のハイテンション。
『うるさい黙れ!!』
 続いて降下してきたメタファがばつ悪そうに怒鳴る。
 何があったのかゾギア星人には判らない。周りの一同にも判らない。皆呆然としている。

 埠頭から見届ける人間体のデリートとジャネット。
デリート「アルファとメタファの意志が一つとなったとき、彼らはその大いなる力を知るでしょう」
ジャネット「・・・インスパイアとかオマージュとかリスペクトとか都合のいい言葉を言っとけば何でも許されると
思ってますか?」
デリート「ははは、まあまあ。男女の愛というものは時に計り知れない力を発揮するということです。
大体あれですよ。個人的に好意を持っているたった一人の相手のために戦うのと、何処の誰とも知れない無数のその他
大勢のために戦うのと、普通どっちがやる気が出ますか?」
ジャネット「・・・個人差というものは常に存在します。その理屈は全てに通用し得るわけではありません」
デリート「ごもっとも。只、この場においては前者の例が適用されたということでしょう」

 とにかく、アルファとメタファはその大いなる力をいよいよ顕現する。
『恵ちゃーーーーーん!!』
『城先生ーーーーーッ!!』
 ゾギア星人がボケている隙に、両者、離れた場所から互いに海をざんぶざんぶと割り砕いて爆走してくる。
メタファ=恵はやけくそで叫んでいるのだが。
 そして両者ぴったりのタイミングでやーっと高くジャンプし、空中で宙返りしながらクロスすると同時に、
眩しい光が迸る。
 じゃかじゃかじゃーーーーーん ぱっぱーーーーーッ
 アルファとメタファの融合した光の巨人、メタファの纏っていたプロテクターを全身に纏って見るからに
打たれ強くなったアルファ。
『メタアルファ』が、虹色の光芒の中から、くるくる回りながら拳を突き出して飛び出してきた。
 そして、そのままの勢いで拳からゾギア星人に激突して吹っ飛ばした。

 はい。これがしたいためだけに、『A』のギリシャアルファベット読みの名を主人公に付けて
ここまで49話掛けてタイミングを計ってきました。

 よりによって最終回でフォームチェンジ、合体して大幅にパワーアップしたメタアルファは、
素早い動きと強烈な打撃でゾギア星人に猛反撃を開始した。打撃のたびに轟く衝撃は東京湾に
激しく響き、津波が巻き起こって竜巻が吹き荒れる。でも何故か沿岸には全く被害は出ない。
メタアルファの戦っている周辺の空間だけ黒雲に大嵐で、そこ以外の周りの空は気持ちいいほどの晴天だ。
『うぬ、おのれ・・・だが、ふふふ』
 殴られて揺さぶられながら、ゾギア星人は邪悪な笑みを取り戻す。

『貴様の動き、見切った!』
 もう攻撃は食らわんと、ゾギア星人は急加速してメタアルファのパンチの間合いから飛び離れた・・・
 と思ったら、甘かった。
 前進するメタアルファの身体から、メタファが存在の座標をずらして乗り出し、キックを見舞って
ゾギア星人を又吹っ飛ばした。
 追い討ちを掛けんと、メタアルファは再びアルファとメタファの二人に分離した。

 デリートは何時の間にかエキサイトして拳を握り、
「そう、大いなる力の真価はここからです。メタアルファの真の恐ろしさは合体しての攻撃
ではなく、アルファとメタファのタッグによるコンビネーション攻撃にあるのです!!」
ジャネット「そんなに興奮するほどの話ですか?」

 アルファとメタファはゾギア星人を挟み打ちにして華麗なコンビネーション攻撃・・・というより、
二人がかりの容赦ないリンチを行い始める。倒れたところを更に二人で同時に蹴り殴り、アルファが
押し倒して押さえつけたところでメタファが星人の脚を力任せにへし折り、そしてアルファとメタファの
カラータイマーが同時にちかちかと光を放つと竜巻が起こって星人を天高く吹き飛ばす。
 もうすることもなく、座り込んで完全にギャラリーと化している周りの一同。
ミリー「加勢はどうしますか」
川上「必要だと思うのか?」

 吹き飛ばされた星人が落ちてくる前に、アルファとメタファは互いのウルトラ念力を合わせ、アルファブレードと
ウルトラマン用サイズのメタファプラスを手元に出現させる。更にその両者が融合して形を変え、刃の幅の広い
派手な意匠の巨剣になる。二人は身を寄せ合って互いの手を合わせて剣を持ち、落ちてくる星人目掛けて同時ジャンプ。
アルファ『メタアルファブレード!!』
メタファ『最初の共同作業ーーーーーッ!!』
 光を纏いながら放たれた合体必殺斬撃の前には、散々猛威を揮った宇宙の邪将・ゾギア星人さえも、ウエディング
ケーキ程度の強度でしかなかった。
 袈裟懸けに真っ二つにされ、遂に最期を迎える邪将。
『おお・・・お前達なら・・・お前達なら、やれるやも知れぬ・・・』
 死ぬ寸前にいきなりいい奴になる系の台詞を恥知らずにも吐く。何をやれるのかは不明。
 そして、凄く満足そうな表情をして、白い光の世界の中にかき消されていった。

 フィニッシュを決めた二人の光の巨人が海上に凱旋。
 調子よくメタファをお姫様抱っこしてそそり立ったアルファは、過剰に反応したメタファから横っ面に拳を食らい、
皆からばっかでーと笑われた。
 何処までも、平和だった。

 しかし、プチブローラ軍団の全面攻撃を受けた各地は混乱状態から脱していない。事後処理はこれからである。
その事後処理の中で、高島参謀長は日高諜報主任を伴い、破壊された都市の市民の救助活動を率先して指揮していた。
まだトラウマは癒えていないので、執務机を被って上半身だけ隠したまま。

 その後。
 ウルトラマンアルファ=城達志はどうなったか。
 無論、結局まだ地球に居て、西野一家と一緒に暮らして充実した日々を謳歌している。
 しかし、ゾギア星人一味が倒されたからと言って、未知の領域からの突然の怪獣の出現や、宇宙からの侵略が
完全になくなったわけではない。だから、何かあれば特防に要請されたり自主的に立ち上がったりして戦いに
行くのである。一人ではきついときは、現在もなし崩しでメタファと一体化している恵も伴って。
 生きている限り様々な楽しみを満喫し、夢を追うこともできるが、それに付随して煩わしいことも何処までも
付きまとう。だが、そんなことは一々言うまでも無く当たり前である。
 それが本気で嫌なら逃げるのも各々の自由だ。周りに迷惑を掛けないこと前提で。

「さあ、今日も特防から協力要請だ! 行くよ、恵ちゃん!」
「・・・はいはい」
 渋々後ろに立っている恵を背後に、達志がアルファプラスを意気揚々と掲げる。そして、今日もウルトラマンアルファに
変身し、地球の平和を守るのだ。
「アルファーーーーーッ!!」

 ねばーえんど。
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