数多の怪獣・侵略者が地球への襲来を続けて幾年月。
 謎の巨人・ウルトラマンの幾度もの助力を受けながら、それに依存することを良しとしない
者達は、互いに知恵と力と勇気を集め、多くの障害を乗り越え、確実に守りを強いものに
しつつある。
 だが、宇宙や異世界から来る邪悪な敵も、その都度力を拡大し、地球の守りの壁を越え、
今尚襲い続けているのである。


ウルトラマンバースト 1 炸裂! エクスプロージョンキック
弾頭怪獣・ミサイガル 出現


 ここにも、その侵略の爪痕の一つが。
 東京郊外の山岳地帯に、深夜、宇宙怪獣が飛来した。
 現在大気圏外の宇宙基地に拠点を置いている防衛組織・BIDは、管轄下の地上部隊を送り、
怪獣を迎撃。だが、全身に火力兵器を搭載し、何者かの地球侵略のために造られた生物兵器と
目される怪獣は、全身からミサイルを発射し、前線部隊を全滅させる。そして、次元転移によって
忽然と消えた。
 燃える森に転がる大勢の兵士の死体。
 その死体の一つ、最早物言わぬ、まだ若い兵士の死体を、上空から見下ろす視線。
見下ろしている者の姿は、我々人類には認識できない。だが、その者は確かに中空におり、
若い死体を見下ろしていた・・・

 数日後。
 再度激化し始めた侵略怪獣の襲来に対し、BIDは地上戦力の強化を図るべく各部隊を再編し、
更に、それらの戦力の中心となってもらう予定の少数精鋭部隊『N-BID(ネオ・ビッド)』の
設立を決定した。そのために、大勢の人員が富士の裾野に作られた広大な演習場に
集められていた。N-BIDの新造基地もこの一帯に建造される予定で、急ピッチで作業が
進められている。
 ・・・『ウルトラマンオーバー』の防衛隊EARの基地・アイアンタワーが直ぐ近所にあるはずだが、
時間的因果関係とかは又適当に突き合わせるという事でご容赦を。因みに『ウルトラマンイレイズ』
での最終決戦から大体5、6年経過という前提。
 臨時に設営された簡易基地の司令塔から、N-BIDの創設計画責任者・神田章二(かんだ・しょうじ)
総監は、集まってくる者達を見下ろしていた。50を越える神田よりもう少し若い彼の側近・
藤堂俊介(とうどう・しゅんすけ)も脇に控えている。藤堂は既に、実働隊としてのN-BIDの
隊長に任命されており、神田と共にN-BIDのメンバーを選出することになっている。そこで、二人で
眼下の人員達を品定めしているのである。
 実は、既に最初の隊員が一人選出されている。今二人の前の席に座り、集まる者達の誘導の
ためのオペレーションを行っている、まだ少女といっても差し支えない齢18の女性オペレーター・
朝香江里(あさか・えり)。細いフレームの眼鏡の下の童顔は、緊張を必死に押し殺していた。
一応、オペレーションをしているのは彼女一人ではなく、周りでも妙に美人・美少女頻度の
高いオペレーター達が作業をしているのだが・・・

 江里は、真っ先に気付き、報せた。
 演習場のすぐ近くに、異常な次元の歪みが検出されている。
 青空に稲妻が走ったかと思うと、何もないはずの中空が歪んで裂ける。そして、巨大な穴から、
先日地上部隊を襲った怪獣・作戦上呼称『ミサイガル』が出現した。
 此処に人員が集められるタイミングを狙っていたらしい。
 ミサイガルは全身の生体弾頭や口からの火炎を発射し、突然の敵襲に浮き足立った隊員候補生達を
容赦なく襲う。無論非常時に備えて地上兵器も待機しており、戦車隊や砲台が迎撃するが、
ミサイガルはびくともせず、そのまま新造基地の建設地点を目指していく。このままでは
新基地が完成前に破壊されてしまう・・・!

 そのとき、脇の樹海から、眩しい光が迸った。激しい爆音と共に。
 湧き上がった煙が消えていくのを見詰める候補生達、そして司令塔の人々。
「あれは・・・!」
 光の巨人。
 全体的にウルトラマンイレイズにも近い意匠だが、二本の角が短くなっている。身体の肉付きは
更に引き締まって逞しい。
 新たに送られた宇宙警備隊からの使者・ウルトラマンバーストである。

 当人が明野暁に変身していたイレイズと違い、バーストは、選んだ地球人と合体して地球に潜伏する
タイプである。先日東京郊外の森で戦死した兵士の一人・小原公平(おはら・こうへい)を上空から
見下ろしていたのは、バーストだったのである。そしてバーストは公平と合体して一体となり、
地球で活動するための体を得、この場に駆けつけ、樹海に身を隠して変身したのである。
 ウルトラマンバーストの変身は、宇宙警備隊から支給されるアイテム『ウルトラボレット』に
よって行われる。人工太陽プラズマスパークから生み出されるディファレーターエネルギーの
詰まった弾丸で、銃に込め、天に向けてトリガーを引き、炸裂させる。人間体・公平は左手の人差し指で
耳をしっかり塞いでいる。彼の持っていたのはN-BID支給で地球製のネオビッドガンだが、何故か
装填可能。玩具展開にも親切だ。
 炸裂すると100万ワットの輝きと共に爆煙が湧き、忍者が巨大なガマや大蛇を召喚するかのように
ドロロンとバーストの巨体がそそり立つ。『爆発』の名に相応しい。

 バーストは新造基地へのミサイガルの侵攻を止めるべく、初陣を開始した。真正面から
ぶち当たり、押し返そうとするが、ミサイガルのパワーは凄まじく、バーストなど眼中にないかの
ように突き進み、逆にバーストがずるずると押される。息を呑む候補生の面々。

 一瞬、ウルトラマンの無表情な顔が、不敵に笑ったように見えたのは、彼らの気のせいか。
『ウルトラ山嵐!!』
 エコーの掛かったテレパシーが轟く。
 バーストは、ミサイガルの脚の隙間に自らの片足を押し込む。そして、柔道技で力の向きを
逸らせ、空高く投げ飛ばす。吹っ飛んだ大怪獣は、離れた樹海に地響きを立てて落ちる。
意気上がり、声援を送る隊員候補生達。
 立ち上がったものの、目を回してよろめいている怪獣に対し、バーストは空高くジャンプ。
『エクスプロージョンキック!!』
 ミサイガルに蹴りを叩き込む。
 脚のインパクトと同時に膨大なエネルギーを叩き込まれたミサイガルは、その負荷に耐えられず、
よろめいてくるくる回り出す。何故か身体のあちこちから、あからさまに花火を差し込んで
火を付けた様な火花がしゅうしゅう物悲しく飛び散っている。
 やがてミサイガルは倒れ、大爆発を起こして粉砕された。

 飛び去っていく新戦士に皆が声援を送って一段落した後、おーいと公平が白々しく走って現れた。
 先日のミサイガルの攻撃で全滅したはずの前線部隊の中、奇跡的に生き残った・・・と解釈
された公平は、そのサバイバビリティの高さを買われ、江里に続いてN-BIDのメンバーに
選ばれることとなったのである。取り合えず長持ちしそうなので。
 更に選ばれるメンバー達については、次回に。
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ウルトラマンバースト 2 公平・大いに泣く
隕石獣・メテオストン 出現


 富士の裾野に、遂にN-BIDベースが完成した。地上に見るからに未来的で堅牢な基地が
そそり立っているが、本体は寧ろ地下に広がった広大な施設にある。既に大勢の人員が詰め、
活動が開始されている。
 科学分析ブロックのリーダー格・泉敏(いずみ・さとし)は、黒ぶちの四角眼鏡、7・3分け、
隊員服の上に纏った白衣と、あからさまに科学者然とした風貌だ。彼は藤堂隊長に報告を行っていた。
先日出現した怪獣ミサイガルについてである。地球外の何者かによって送り込まれた形跡は
みられるのだが、それが何者なのかが一向に判明しない。これまでの侵略者は適当なタイミングで、
或いはいきなり現れて自分達の狙いを得意気に語ってくれたものだが、その様子も見られない。
かなり巧妙に姿を隠している。藤堂は調査の続行を命じた。
 この研究・技術開発要員の泉が、間もなくN-BID第三の隊員として選ばれた。

 小原公平は困っていた。正確には、ウルトラマンバーストが困っていた。公平の肉体は
健在だが、公平という個人の人格はもう存在しない。
 公平の体を手に入れたバーストは、偉大なる先人の中でも特に偉大な先人・初代ウルトラマンの
如く、自分と一体となった公平の心に語りかけ、共に地球の平和を守っていこうとか言おうと
したのだが、出来なかった。ミサイガルの攻撃で、既に公平は死んでいたからだ。最近、
地球勤務となるウルトラ戦士にとって重要な修得スキルとなった回復能力・サイキックケアも
一応身に付けてはいたが、銀十字軍の特A級のベテラン救護隊員でもない限り、死んだ者の蘇生
までは出来ない。仕方ないので、基地のデータベースから公平のプロフィールを見つけて
ウルトラの頭脳で早急に学習し、なるべく生前の公平と同じように振舞うことにする。

 調べたところ、公平には防衛隊員として働いて養っている家族がいる。母方の祖父母だ。
事故で早くに両親を亡くした彼を祖父母が引き取って大事に育て、公平もその恩義から
祖父母を大事にしていたらしい。それを知った公平=バーストは、祖父母の住む浜松へ向かう。
N-BIDベースから真っ直ぐ南だ。
 実家から出てきた老夫婦は、大層喜んで公平を迎えた。公平は仕事が忙しくて暫くろくに帰って
いなかったらしい。老夫婦は、『恭平』とか、『康生』とか、頻繁に公平の名を間違える。
そろそろボケかかっているらしい。御蔭で、本物ではない公平の僅かな挙動から正体がばれる
心配もなかったようだが。
 暫く一緒に過ごしていると、N-BIDベースから緊急通信が入った。ミサイガルを送り込んだ
正体不明の侵略者が、次に送り込んできた怪獣が接近している。警戒態勢に入るから
戻るようにとオペレーターの江里が伝える。祖父母に別れを惜しまれつつも公平はどうにか
宥めて実家を去る。そして、自分は実の孫ではないが、死んだ公平の分までこの祖父母を
本物の家族と思って大事にしていくことを内心で誓った。

 宇宙から飛来した怪獣・メテオストン。手も足もない、怪獣の顔が付いただけの巨大な丸い岩塊。
隕石に偽装して接近してきたらしい。体表は堅固で、対宇宙迎撃部隊の攻撃でも傷一つ付かず、
あえなく地球に降下された。続いて、N-BID管轄下の航空部隊と地上部隊が攻撃。

 旧スペースジェットを強化改造した新型戦闘機・スペースジェット2号に乗り、通常戦闘機隊を
率いるエースパイロット、影山一(かげやま・はじめ)と、野崎史郎(のざき・しろう)。
そして地上では、現用戦車と戦闘ジープの部隊のみという聊か不安な装備ながら、その先頭を切り、
バズーカとロケットランチャーを左右に抱えて怯えもせず哄笑する怪力の巨漢・両国豪(りょうごく・
ごう)。その隣で、こちらはかなりびくびくしている工作兵・松野三吉(まつの・さんきち)。
以上の4名が更に選ばれ、少数精鋭部隊としてのN-BIDは一応揃うことになるのだが、それは後の話。
 彼らは空と地上から懸命に攻撃するが、それも空しく怪獣はごろごろ転がりながら南下していく。
目前には、静岡・浜松の市街。公平の故郷だ。祖父母の住む街が危ないと知った公平は、ウルトラ
ボレットを炸裂させ、ウルトラマンバーストになって立ちはだかる。
 バーストは先ず小威力の光弾・バーストスラッシュを手から連射。メテオストンはその攻撃も
全く問題とせずに転がって接近、更に目からレーザーを撃って反撃してくる。
だが、バーストは拠点防衛の戦いを想定し、バリヤー技も十分に鍛えていた。
『ハイパーバリヤー!!』
 街全域をカバーできる巨大なバリヤーが展開し、レーザーを弾き、そしてメテオストン自体の
激突も跳ね返す。メテオストンは反動で逆方向に吹っ飛ばされる。バーストは続いて攻撃を畳みかけ、
一気に敵を殲滅する手に出る。

 宙に浮き、手足を真っ直ぐ伸ばした飛行ポーズとなり、うみょみょうみょみょうみょみょと
変な音を出して回り出す。そして、初代マンやゾフィーがやった、あの赤い球の飛行形態になる。
『アタックバリヤー!!』
 球体の赤いバリヤーに身を包み、バーストは突撃。体当たりで、メテオストンを跡形もなく
粉砕した。
 街を守ったバーストは、公平の姿に戻り、高揚した気分で引き返して祖父母の様子を見に行った。

 だが、祖父母は死んでいた。

 ウルトラマンバーストが街を守り抜いたのとは関係なく、寿命で。
 実家の畳の広間で仲良く座ったまま、眠ったように往生していた。

 N-BIDのメンバーに選ばれた隊員達や藤堂隊長、その他若干名の関係者が実家に集まり、葬儀が
行われる。公平の血縁者はいない。残った身寄りは祖父母だけだったらしい。
 今の公平は本物ではない。たった二人の実の家族を亡くし、それを悲しむ孫はもういないはず
だった。
 だが、公平は泣いた。黙祷し続けるN-BIDの仲間達に囲まれた中で、体裁も構わず号泣した。
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ウルトラマンバースト 3 N-BID集結
宇宙蜂・べスパルト 出現


「よう、皆」
 小原公平はN-BIDベースの作戦室に出勤し、明るく挨拶をした。
 他の隊員達6人はきょとんとした。おりしも、前回公平の祖父母が亡くなり、公平が落ち込んでいた
ことで、どうフォローするか考えていた最中だった。そこにこれでは皆も驚く。
「小原隊員、もう大丈夫なんですか?」
「おう、心配かけたな朝香。そう何時までも落ち込んじゃいられないからな」
 よかったと胸を撫で下ろす江里。
「けど、忘れたわけじゃない」
「?」
「じいちゃんとばあちゃんの命を奪われた仇は討つ!」
「・・・え?」
「見てろよ、邪悪な侵略者め! 奴らの好きにさせてたまるか!」
「・・・ちょっと待てよ」
 エースパイロットの影山が突っ込む。
「お前のじいちゃんとばあちゃん、怪獣に殺されたわけじゃ・・・」
「皆! 悪い宇宙人から地球を守るため、一丸となって行こうぜ!」
「うおおおその通りじゃあ公平!」
 何も考えてない地上兵の両国が暑苦しく同意。
「泣き寝入りせんおんしの不屈の魂、感じ入ったぞい! わしも戦うぞい!」
「そうですね。私も!」
「わいもやりまっせ!」
 更に江里と松野が同意。
「そうか、判ってくれるか! ようし、やろうぜ皆!」
「おーっ!」

「おいおいお前ら」
 訂正しようとした影山を、江里が胸に飛び込んで止める。ちょっとリンスのいい匂いが。
「な・・・何だよ朝香」
「聞いて下さい、影山隊員」
 江里は長身の影山を熱い目で見上げ、
「小原隊員は今、大事なご家族が亡くなられた直後で精神が不安定なんです。都合のいい結論を
脳内で捏造することで、どうにか心の平穏を保っているんです。今は暫く夢見がちにさせて
あげましょう!」
 悪意はないのだが、かなりひどいことを言っている。
「そうですわなあ、誰かて大事な身内を亡くしたら辛いですわなあ」
 釣られて泣く松野の後ろで、気付かない公平と両国は盛り上がっている。
「いや、だって」
「まあ待て影山」野崎が止める。貼り付けたような不自然な笑顔で。
「俺達は、まだ結成されたばかりのチームだ。それが今、この切っ掛けで一つに纏まろうと
している。いい機会だ。それに朝香隊員の言う通り、小原自身が納得してるんならそれで
いいじゃないか」
「野崎、お前まで・・・無理にいい話に持って行こうとすんなよ!」
「いいのです」
 笑っている泉。黒ぶち眼鏡のレンズが怪しく光る。
「結果的にチームの士気が上がっているからいいのです。小原君の家族が亡くなったこととは
関係なくても、謎の敵は既に多くの犠牲者を出しています。それだけで万死に値するのです
くくくくく」
 そんなわけで、6人の隊員は拳を上げてうおーと意気上がる。
「いや、だから!」
 影山がまだ突っ込もうとしたとき、鳴り響いた警報が無情にそれを断ち切った。
 宇宙怪獣の接近である。

 真空の宇宙を、翅でぶんぶん飛んでいる、巨大な蜂。作戦コード『べスパルト』と命名。
 モニターを見て分析する泉。
野崎「前回まで来ていた侵略怪獣の仲間か?」
泉「いえ、あれらの怪獣と同じパターンの怪電波は検出されていません。単独で来たものと
思われますが」
影山「何のために?」
 と、べスパルトは近くに一基の人工衛星を見つけ、近付いて尻の針を打ち込んだ。
 やがて、衛星から無数の蜂の子が湧き出し、瞬時に人工衛星を食い尽くす。
 そのさまを見て蒼白になる江里。
松野「まさか、地球に卵を産み付けにきたんか!?」
両国「いかん! 絶対に地球に入れてはいかんぞい!」
 しかし、指示を下す立場の藤堂隊長は、N-BID結成についての報告を、上層部・ガーディアンの
岡島長官に直接報告するため、おりしも神田総監と共に基地を離れてしまっていた。幸い
通信は出来るため、緊急連絡して指示を仰ぐ。
 べスパルトや蜂の子の体組織をスキャン・分析した泉は、体組織にとって毒性となり、
卵を殺せる薬を調合できるが、少し時間が掛かるという。そこで、薬を詰めた特殊ミサイルが
完成するまで、スペースジェット(以下、SJ)隊で怪獣が地球に降下しないよう牽制することになる。
野崎のSJ2がSJ1隊を連れて先行。ミサイルが完成次第もう一機のSJ2に乗せて影山が向かい、
怪獣にミサイルを撃ち込んで産卵機能を潰す。

 大気圏外に飛んだSJ隊は、べスパルトが産んだ蜂の子を撃墜していく。それを見て怒った
べスパルトが迫り、尻から卵の入った針を発射。しかも、連射してきた。針が当たったSJ1は
パイロットごと蜂の子に食い尽くされる。
「くっ・・・!」
 配下の犠牲に歯軋りする野崎。べスパルトを攻撃するが、通常弾では然程ダメージを与えられない。
「急いでくれ、泉!」
 地上でも影山が焦る。N-BID候補生になる前の訓練生時代から、野崎は航空部隊での影山の
同期であり、親友なのだ。

「出来ました! 中絶爆弾!」
 叫んだ泉は、他のメンバーが、ネーミングセンスがちょっと・・・という反応をしているのに
気付く。
「じゃ、避妊爆弾!」
影山「名前なんかどうでもいい!」

 SJ2で至急宇宙に飛んだ影山は、特殊ミサイルをべスパルトに撃ち込む。見事命中し、べスパルトは
苦しみ、体内の卵は死滅した。歓声を上げるN-BID。
 だが、べスパルトの武器は卵針だけではなかった。
 出し抜けに、目からビームを撃つ。対処できなかった野崎のSJ2が被弾。墜ちていく。
影山「野崎!?」
 叫ぶ影山の機にもべスパルトが襲い掛かる。
 SJ隊の不利を見た公平は、一同が戦況に気を取られている隙に基地を抜け出し、バーストに変身
して宇宙に向かった。

 SJ隊を守り、バーストはべスパルトと交戦。バーストスラッシュを速射するが、べスパルトの
動きは素早く、次々回避される。逆にビームで反撃され、危機に陥る。
 そこへ、影山のSJ2が配下を率いて加勢に入る。銃撃はさしたるダメージを与えないものの、
べスパルトは気を取られてうるさそうに一箇所で暴れる。
 その隙を突き、バーストは両腕を構え、必殺光線を発射。
『ライトニングバースト!!』
 大出力の光線の直撃を食らい、べスパルトは爆発した。

 基地に至急帰還する影山。既に野崎は救出されて医療ブロックに運ばれ、手術が行われているが、
どうなるかはまだ・・・と、口ごもって返答する医療主任。
影山「・・・野崎ーーーーーッ!!」

 続く。
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 宇宙蜂・べスパルトの撃ったビームによって野崎隊員のスペースジェット(以下、SJ)2号は撃墜され、野崎は
重症を負った。べスパルトはウルトラマンバーストによって倒されたが・・・


ウルトラマンバースト 4 N-BID団結
宇宙蜂・べスパルト(幼虫) 出現


 N-BIDベースの医療ブロックで緊急手術を受け、野崎は一命を取り留めた。だが、彼の負った傷は
深く、医療主任は、パイロットとして再起できるかは正直難しいと答えた。
「俺のせいだ!!」
 野崎の親友、影山は自分を責める。
「ちきしょー! これが他の奴のせいだったら貴様はN-BID失格だとか怯える者にここにいる資格は無いとか
言ってなじれるのに、俺がいたらなかったせいなので誰も責められねーーーーー! 俺の馬鹿俺の馬鹿俺の馬鹿!!」
 壁にがんがん頭を叩きつけ、他の者に止められる。
両国「やめるんじゃ、影山!」
松野「そうでっせ、誰が悪いとかいう話やあらへんがな。今は野崎はんの容態を・・・」

 そして数日後、実際誰の責任などと言っていられない事態になる。
 箱根山中の地下から、巨大な白っぽい芋虫が出現した。N-BIDの面々は一目見て気付いた。べスパルトの
幼虫である。成虫が産んだ蜂の子は全て撃破したと思われていたのだが、討ち漏らしがあったようだ。
公平「それにしても、何て成長速度だ!」
泉「地球の地下に潜伏した段階で、地熱をエネルギーにしたのでしょう。放っておけば更に成長して成虫になり、
又そこら中に卵を産み付けて殖えかねません」
 そこへ、江里から報せが入った。
「怪獣の出現した地点に、影山隊員がSJ2で勝手に出撃しました!」

 自責の念に捉われた影山は、何としても自力で怪獣を倒そうと焦るが、そんな精神状態で、しかも一人で
どうなるものでもなかった。べスパルトが幼虫の状態からでもビームを撃てるとは予想できず、影山も野崎の
二の轍を踏んで撃墜され、その後べスパルトは又地に潜り、まんまと逃げてしまった。
 幸い影山の傷は浅く、充分戦闘に参加できる程度で済んだ。しかし、精神的なダメージのほうが大きく、
藤堂隊長の戒告を受けた後、半ば自主申告で謹慎して自室に篭ってしまった。

 泉と江里の調査続行により、地下に潜伏しているべスパルトの位置が捕捉できた。地熱エネルギー吸収で
着実に成長している。次に地上に出てくるときが羽化のときだろう。させてはならない。隊員達は迎撃態勢に入る。
 その際、隊員5人は互いに相談をした。

 やがて、べスパルトが浮上してきた。成虫より大きくなっている。脱皮寸前で、成虫の身体を内部に仕込んで
いるので当然だが。
 待機していた、かつてのBIDの装備のジオライザーを元に新たに建造されたN-BIDの地底戦闘装甲車・グランド
ライザーは、現場へ向けて地中を爆走。乗っているのは両国と松野。後、影山も無理やり乗せられていた。
影山「どういうつもりだ、お前ら!? 俺は謹慎中で・・・」
両国「汚名を晴らしたいんじゃろうが」
影山「何?」
 続いて、機体に衝撃が走る。先端のドリルが地中を移動中のべスパルトに直撃し、両者はそのまま地上へ
飛び出した。猛り狂う巨獣に、グランドライザーはワイヤーを飛ばして巻きつけ、ウインチで引いて動きを封じる。
エンジン出力は松野が制御し、ウインチは両国が操作。
両国「何をしとる、影山。おんしは怪獣に銃撃してダメージを与えるんじゃ。働かんかい」
影山「しかし、俺は・・・」
 そこへ、基地から通信。
「しっかりしろ、影山!」

 病室で意識を取り戻した野崎は、泉と江里のフォローでベッドの上に辛うじて身を起こし、通信機に叫ぶ。
影山「野崎・・・大丈夫なのか!?」
野崎「喋るくらい出来る」
 ベッドの傍らで、藤堂隊長も黙って立っている。全て承知ということらしい。
野崎「俺の仇を取ると息巻いていったんなら、最後まできっちりやれ! 地球を守るN-BIDの隊員としての
使命をきっちり果たせ! そのためなら皆力を貸してくれる! 仲間を信じて力を合わせろ!」

 その言葉で、影山は迷いを断ち切った。
「おおおおおおお!!」
 雄叫びを上げ、ワイヤーで戒められたべスパルトにグランドライザーの機関砲の弾丸を叩き込む。
苦しみ、グロッキー気味になってくるべスパルト。頃合と見て、
「行くぜ!」
 公平の乗ったSJ2が飛んできた。中絶爆弾(結局正式名称に)を怪獣に撃ち込む役である。
ミサイルは今回も見事に命中し、怪獣は生殖能力を失う。
「やったぜ!」
 ボキャブラリーのない主人公。
 だが、べスパルトはカウンターで反撃。幼虫なのに、針を射出してきた。接触し、失速するSJ2。
息を呑む仲間達。
 公平はウルトラボレットを炸裂させ、バーストに変身。眩しい光と爆煙と共に現れ、無人になった
SJ2を抱えて降ろし、適当に救出したように偽装。そして、怪獣と対決。
 巨大な芋虫を打撃で痛め付けて弱らせていく。しかし、べスパルト幼虫の背面に縦に裂け目が
入り、いよいよ脱皮しようとしている。バーストは飛び離れる。そして、べスパルト幼虫の背から
翅が飛び出した瞬間、ライトニングバースト。羽化寸前に爆破した。

 野崎は別の本格的な医療施設に移され、当分リハビリということになった。それでもパイロットとして
復帰できるかは判らないが、何、直ぐ戻ってきますと、病室で藤堂隊長に答えた。
「それに、N-BIDの結束は一段強まった。それを思えば俺の怪我くらい安いものです」

 野崎を乗せて去っていく輸送機に、影山と仲間達は手を振り続けていた。
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 東京都心に、突如怪獣が出現し、破壊活動を始めた。N-BIDが出動して迎撃するが、苦戦気味。
怪獣は重量級。特に超能力を使わず、普通に暴れるだけで結構な被害を出している。派手な色だが、バランスよく
配色されているので見苦しくは無い。何というか、プロデザイナーが時間をかけて構想して仕上げたかのような
精悍な美しさだ。姿は。
 何故この怪獣が現れたのか、N-BID一同は既に突き止めていた。そして、全員不快な胸中。特に影山は
今回も代表して怒りを露にしている。


ウルトラマンバースト 5 僕の考えた怪獣大戦
超究極怪獣・モンスターキング 出現


 都内に本社を持つ某放送局が、巨大ヒーロー特撮番組『ウルティメットマン』を放送していた。本来の受け手
たる子供達、そしてマニアにとっても結構な人気を得ており、視聴率も高かった。気を良くした局は、視聴者の話題を
呼ぶための企画として『僕の考えた怪獣』を公募した。局側の選によって最優秀作品とされた怪獣は『ウルティメット
マン』本編に登場し、各種商品ももらえるという企画だ。元々人気番組であり、多くの作品が集まった。そして
最優秀作品に選ばれたのが、

 わにでんでん。

 名前である。ワニそのままの姿にカタツムリの殻が乗っただけ・・・らしい、すさまじくつたない絵。クレヨンで
塗った色もはみ出し捲くっている。『ウルティメットマン』は割とハードな世界観で統一されている作品だが、
その空気にも『わにでんでん』は素人が見てもそぐっていない。それでも、この作品を送った者がきちんと
『ウルティメットマン』を見てきちんと考えた上で結果的にこういう解釈になってしまったのなら仕方ないだろうが、
どんな怪獣なのかという設定も何も書いてない。これを送ったガキ・・・もとい、小学生は、放送局から届いた
沢山の賞品の封も切らずにほったらかしにし、そろそろ『ウルティメットマン』にも飽きてきたのでコンビニで
ム@キングに精を出しながら鼻水をたらしていた。
 更に話は続く。『ウルティメットマン』のディープなマニア達はこの事態に激怒し、抗議した。現場で作品を
作っているスタッフ達にとっては忸怩たる想いの者達も少なからずいたのだが、局本社側で色々あって
『わにでんでん』に決まったので仕方ない。文句を言ったら製作予算を出してもらえない。『ウルティメットマン』
全体の中でそこだけどう見ても浮いている、子供騙しにもならないどうでもいい話を一本でっち上げなければ
ならないのである。
 そして、直接抗議しに来たマニア達に対し、局の人達は内心辟易しながらも頭を下げつつ穏便な応対をしていたが、
脇からスポンサーの一人、頭からジャリ番なんか知るかという態度の太って脂ぎったおっさんが出てきた。
そしてマニア達に、テレビは視聴率と収益が全てとか、ウルティメットマンとかいうチンドン屋が怪獣を毎回
てきとーにやっつけてこっちに金を落としてくれればいいのであって、内容がどうとか言う話なんぞ知るかさっさと
帰れとか、局の人達の苦慮をぶち壊す暴言を敬語も使わずに吐き、彼の子飼いの警備会社のガードマン達をけしかけて
マニア達を力ずくで追い出した。

 抗議に行ったマニア達の殆んどは泣き寝入りしたが、一人、気合の入った根性の曲がり方のマニア、栗山という
男がいた。彼も怪獣公募に送った作品を没にされた口で、彼の送った作品『超究極怪獣・モンスターキング』は、
名前はちょっとあれだが、それまでの『ウルティメットマン』のストーリー展開を充分吟味した上で設定された
怪獣であり、デザイン的にも良く出来ており、ライターや造形班も本当はモンスターキングを採用したかった。
だがその想いが栗山に伝わることはなく、栗山は暗い自室でモンスターキングの絵を怨念を込めて何枚も描き、
濃いマイナスエネルギーを発し続けた。
 そしたら、そのマイナスエネルギーで巨大なモンスターキングがなんか知らんが実体化した。
 モンスターキングは、怨念の余りおかしくなった栗山の命令で、まず問題のスポンサーのおっさんの私邸を
中のおっさんごと粉砕した。更に東京に侵入し、放送局のビルへと向かう。N-BIDは、放送局を破壊させまいと
迎撃しているのである。彼らも必死だが、栗山の設定によってモンスターキングは一方的に強い。このままでは
押し切られる。

 公平は隙を見て物陰に隠れ、M78星雲の宇宙警備隊本陣にテレパシーで要請を送る。通常、宇宙警備隊から
支給される変身アイテム・ウルトラボレットは次元弾倉に随時13発分用意されているのだが、公平は通常弾では
ない特殊弾の支給を要請した。栗山の設定で幾らでも強くなる強敵・モンスターキングを確実にしとめる必要が
あったからである。
 非常措置が認められ、何時もと違う弾丸が、光と共に何もない中空から一個落ちてきた。金色の縁取りで
見るからにワンランク上っぽい弾丸だ。公平はそれをネオビッドガンに込めて撃ち、ウルトラマンバーストに
炸裂変身した。

 モンスターキングはバーストを認めると、栗山の命令で攻撃開始。体の背面から羽の生えた小型の手下怪獣が
無数に生まれ、前面からは体そのものが牙の生えた口の小型の手下怪獣が無数に出てきた。バーストに群がり、
食い尽くそうとする。
 バーストは慌てず、特殊弾丸によって一時的に承認された特殊能力『ディスティニーチェンジ』を行使した。
まず、全身から眩しい光の力が発され、その力に当てられた小型怪獣群は全て死に、バーストの体から
零れ落ちて消えた。
 尚輝き続ける巨人にたじろぐ怪獣に対し、バーストは手から出し抜けに、一抱えもある巨大な消しゴムを
取り出した。突進してそれを怪獣に押し付け、がしがしと消し始める。それでも足りないので、洗剤と水と
デッキブラシを出して更にこすって消す。
 ディスティニーチェンジを使うと、どんな後出しの反則技でもありになり、どんな事態でも打開可能になり、
どんな強敵でも絶対倒せる。無論、こんな技を何時も使ったら宇宙全体の因果律がぶっ壊れるので、
外付けの承認制の能力となっている。今回は事態が事態なので承認されたようだ。
 かくして、モンスターキングは消滅した。

 栗山はN-BIDに身柄を拘束されたが、世の中の仕組みが悪いのだと往生際悪くわめく。それに対して
公平は言った。
「自主制作!!」
「!」
「怪獣を生み出して操れるほどのバイタリティと気概を持ったお前なら出来る!」

 栗山は真面目に働いて資金を貯め、モンスターキング(勿論着ぐるみ)を主人公とした自主制作の
本格怪獣映画を製作した。マニア層に絶大な支持を得、尚意欲的に次々と作品を作り続けている。健康的に。
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ウルトラマンバースト 6 幽霊爆撃機
幽霊爆撃機・ゴーストファルコン、海底文明人・ノルマントン 出現


 地球の海の底には、我々の知らない文明を築き上げた種族がいる。
 めちゃめちゃ唐突だが。
 その種族・ノルマントンは、地球防衛軍上層部においては実は30年以上前から存在が知れており、
当初ノルマントンは地上征服を狙っていたことから、防衛軍タカ派と水面下で延々と抗争を
続けていた。だが、余りにも長く抗争を続けてそろそろ疲れた両勢力は、取り合えず休戦協定を
結ぶことになった。上手くすれば平和協定に発展させ、共存していくことも出来るかもと
いうことで、防衛軍は細心の注意を払って駿河湾でコンタクトを開始。N-BIDも万一の時のために
平和使節団の警護に借り出された。ノルマントンは彼らの潜水艇に乗って沿岸に浮上し、交渉は
上手く行くかと思われた。
 だが、そこへ突然、所属不明の大型爆撃機が飛来した。レーダーには全く捉えられていないが、
肉眼では見えている。その機は、いきなりノルマントンの潜水艇を爆撃し始めた。取り合えず
N-BID側が通信を送ってやめるように呼び掛けるが、応答が無い。やむなく影山率いるSJ隊が
迎撃すると、爆撃機は適当に応戦しただけで直ぐ消えた。比喩でなく、本当にもやのように消えた。
一方、地上人は交渉と見せ掛けて不意打ちするつもりだったと誤解したノルマントンは怒る。
使節団が弁解するも効果なく、ノルマントン潜水艇は使節団に向けてミサイルを撃って来た。
公平はバーストに緊急変身。巨大な身体を自ら盾にして使節団を守り、ミサイルの爆発でまともに
ダメージを受ける。バリヤーを張る暇がなかった。驚くノルマントンにバーストは、地上人に
敵意は無い、信じてくれと懸命にテレパシーを送る。やがて潜水艇は沈黙したまま去っていき、
その後バーストも透明化して消えてしまった。

 負傷した公平が、ミサイルの爆発に巻き込まれたと適当に言い訳して医療部に運ばれる一方、
N-BIDは謎の爆撃機について調べる。肉眼でしか見えない敵については前組織・BIDの戦闘記録にも
前例があり、同じように超常現象の類ではないかと泉は見た。幸い、泉も超常現象にアレルギーを
起こす体質ではなかった。更に、爆撃機のコクピットを拡大映像で見たところ、パイロットが
乗っていた。いや、普通に考えれば当たり前なのだが、実は地球防衛軍の一平卒からのたたき上げで
ある神田総監はそのパイロットに覚えがあった。神田が現役隊員だった時代の地球防衛軍のエース
パイロットだった男・倉山隊長だと神田は語り出す。
 倉山は、30年以上前から地球を狙っていた数多の侵略者の円盤部隊を次々撃墜し、敵本陣に
戦闘機で攻め込んで殲滅し、何度となく地球を救った。ただ、ちょっと血の気が多くてしかも粗忽で、
間違いで侵略意図の無い異星文明を滅ぼしてしまったことも2、3度あり、少なからず問題にも
なったが・・・基本的には地球の同胞を愛し、地球の未来を真剣に考えている男だった。そんな倉山は、
一度地球に向けて連合を組んで攻めて来た大円盤部隊に対し、当時の技術の全てを注ぎ込まれたという
最新鋭大型宇宙爆撃機・ゴーストファルコンに、部下を全て後ろに下げてたった一人で乗り込んで交戦し、
敵の全滅と同時に巨大な爆発に巻き込まれて、それっきり行方不明。戦死ということになっていたのだが・・・

 泉はマイナスエネルギーカウンターで大気中の霊的反応を探り、それによって幽霊爆撃機の位置を
突き止める。爆撃機は、ノルマントンの潜水艇が去った方向に向かっている。人類がいまだにノルマントンと
敵対していると思い込み、ノルマントンの本陣を殲滅するつもりなのだと神田は推測し、というか断じ、
SJ隊はこれを阻止するために大至急現場へ飛ぶ。
 先行して防衛軍の通常戦闘機部隊に足止めしてもらっているが、次々墜とされている。SJ隊が駆け付け、
影山はゴーストファルコン内の倉山・・・の幽霊と思われるパイロットにもう一度呼び掛けるが、
応答は無い。やむなくSJ隊が攻撃を加え続けると、ゴーストファルコンは突如形を変え、鳥のような
獣のようなメカの巨獣になり、反撃してきた。銃弾や大出力のビームを撃ち、鉤爪を振り回し、ファンや
バーニアで突風を起こし、スペシウム弾頭弾まで撃ってくる。
 病室でSJ隊が危機に陥っている事態を通信機のモニターで知った公平は、バーストに変身し、ウルトラ
テレポートで現地に現れる。しかし、ゴーストファルコンは強い。バーストのビームを、身体を三つに
分離させて素早く回避し(防衛軍の兵器だった頃のゴーストファルコンも三機に分離合体できた)、
分離と合体を立体的に使い分けてバーストを攻撃してくる。負傷している上にテレポートでエネルギーを
消耗したバーストは思うように戦えない。
 そこへ、思わぬ援軍。
 自分達を必死に守るSJ隊やバーストを見て、彼らには本当に敵意はないと悟ったノルマントンが、
彼らの海底都市からミサイルで援護射撃してきたのだ。士気を取り戻したSJ隊とバーストは全員で
ゴーストファルコンを連携攻撃。その攻撃力・・・というより、力を合わせた地上人と海底人の気迫に
ゴーストファルコンは押され始め、一体に合体したところでライトニングバーストと火力兵器の一斉
射撃を同時に受け、爆発した後、その破片も現世から消滅していった。コクピット内の倉山は消える寸前、
何処か安らかな表情をしていた。現世への執着から解放されたかのような。

 ノルマントンとの休戦協定は成立した。平和協定への移行も進められていく予定である。勿論今日明日
直ぐにというわけには行かないが。
「倉山君。戦うばかりでなく、違う世界の住民達とも共存できる新しい時代を、君の後継者達が
作っていくだろう。安心して眠りたまえ」
 神田は呟いた。
 それはそれとして、ぼろぼろになった公平は、怪我人の身で何を勝手に抜け出してるんだと
どやされながら病室へ逆戻りとなったのであった。
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ウルトラマンバースト 7 藤堂隊長の秘密
宇宙霊獣・ギガマイラ 他 出現


 5、6話の事件もそうだったが、最近、マイナスエネルギー絡みの事件が多発していた。自動車事故の
被害者の恨みが怪獣となって自動車や高速道路を襲う。失恋した者の恨みが怪獣となって片思いの相手を襲う。
苛められた子供の恨みが怪獣となって苛めっ子を襲う。禁忌の土地を荒らされた土地神の恨みが怪獣となって
乱開発者を襲う。なんちゃって教育ママ(死語)の見栄で子供が無理やりバイオリン教室に行かされたら
その恨みがバイオリンに手足の生えた怪獣になって暴れる。後、金に執着しすぎた子供が変な大きな繭に
閉じ込められて、金を食べないと生きていけない怪獣になる・・・
松野「久米田康治の漫画やないんやから箇条書きはやめてくれんか」
両国「どいつもこいつも辛抱が効かんのう」
泉「まあ、登場怪獣のネタを考える側としては、科学的エクスキューズをすっ飛ばして全部単発キャラの怨念の
せいに出来るので楽なんでしょうが、私は邪道だと思いますね」
影山「そんなことより、原因だ。何故こう一遍にマイナスエネルギー事件が起きる?」
江里「お盆はもう過ぎたはずなんですけどね・・・」
 そんなN-BIDベース作戦室に、公平が飛び込んできた。
公平「皆、藤堂隊長を見かけなかったか? 幾ら探してもいないんだ」
影山「何だと?」
江里「そういえば、今日は朝からずっと姿を見ませんね」
影山「又留守か!? こんなときに本当にあの人は・・・!」
神田「それについてはちゃんと理由がある」
 神田総監が入ってきた。
神田「マイナスエネルギー事件の多発については藤堂君も懸念し、対策を考えている。そして今、その対策
手段の一つを試すために自ら動いている。此処に来ていないのはそのためだ」
影山「しかし、今怪獣や侵略者が現れたら・・・」
神田「準備が出来次第フォローに向かうと言っている。諜報部でも、マイナスエネルギー事件多発の原因に
ついては探っている最中だ。君達はとにかく君達の出来ることをやり、敵の出現に備えていてくれ」

 とか言っているうちに、ちょっと大き目のヤマが来た。
 北米某所の宇宙開発局の関係者が、本局以外の場所にいる者含めて全員、突然原因不明の熱病にかかって
苦しんでいる。病原菌の類に冒されたわけではない。霊障だ。
 開発局の敷地に、宇宙怪獣が鎮座している。開発局は最近、太陽系外の某惑星のテラフォーミングを
行っていたのだが、その惑星の土地に霊的な存在として昔から住んでいる『ぬし』がいた。それが、地球人が
勝手に土地に踏み込んできて開発を始めたので、祟りに来たのだ。牛の頭に鱗の生えた体、鳥の翼の生えた
霊獣は、体から黒い瘴気を撒く。それに当てられた者達が次々病気になっていく。出動した米国防衛隊も皆
返り討ち。
 放っておくわけにもいかないので、SJ隊出動。銃撃をかけるが、怪獣の身体は半透明の霊体になり、
攻撃を通過させてしまう。瘴気の反撃でSJは次々墜落。影山、両国、松野も病気になってダウン。
公平は不時着したと見せかけてバーストに変身。だが、バーストになっても攻撃が効かないのは同じ。
逆に相手の攻撃は効き、瘴気や打撃で痛め付けられる・・・!
 そこへ、ちりーんと、鈴の音が響いた。
「待たせたな、皆」
 徒歩で現れた藤堂隊長は、編み笠を被った行脚僧の格好をしていた。いや、格好だけではなく、
本当に僧侶だ。

「通常の怪獣ではない魑魅魍魎の類は、昨日今日に現れたわけではない」
 日本のN-BIDベース作戦室で、開いた口が塞がらない泉と江里を前に、神田は泰然と解説。
「そういった敵への対処も、水面下で地道に体系立てられてきた。藤堂君もその系譜だ」
 藤堂の号令で、彼の配下達も大勢現れた。全員屈強な僧侶だ。彼らは尋常ではない速度で走り、怪獣を
囲むと、印を結んで経文を唱え出す。効果はてきめんで、怪獣は苦しみ出す。画面に白い毛筆の般若心経の
テロップが延々と流れる。怪獣の動きを封じたところで、藤堂自ら駆け寄り、錫杖や独鈷杵を武器に、
信じられない高さでジャンプして怪獣を直接殴ってダメージを与えていく。霊的パワーによる攻撃は効くらしい。
 アメリカで法力僧が妖怪退治を行うというB級映画そのものの光景に、バーストももう呆然と見ていたが、
「ウルトラマン、とどめを!」
 藤堂の叫びで半ば機械的にライトニングバーストを放ち、怪獣は爆発の後消滅した。霊障にやられた
者達の体調も元に戻った。
影山「・・・防衛軍関係あんのか?」

 藤堂配下の実験部隊は本格的に活動を始め、冒頭部の箇条書きの皆さんの下を読経しながら行脚して
悩める民を救い捲くっている。御蔭で藤堂は益々隊長職に戻ってこない。又、彼の進言で、他惑星の
テラフォーミングを行う際は、神主や僧侶を呼んで土地のお払いを事前に行うことが義務付けられ、
今日も宇宙開発の最前線で地鎮祭がはらいたまえーきよめたまえーと厳かに行われている。
神田「そう、ここは全てのバランスが崩れた恐ろしい世界なのです」
江里「何でそこだけ口調が変わるんですか?」

 このノウハウが遥か未来、リュウラ世界の、呪符や神社の結界で宇宙からの侵略を防御するシステムに
進化していくとかいかないとか。
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ウルトラマンバースト 8 X病棟
邪念収集生命体・トリムス 出現


 多発していたマイナスエネルギー事件の元凶と思われる場所が、諜報部により突き止められた。
N-BIDは現地へ向かうことになり、それに際し、新兵器『ヴァルチャー』が投入された。量産が利くものの、
単体としての火力の弱さは否めないスペースジェットの欠点を補う意味で試験製造された大型戦闘機である。
ウルトラマンバーストと同じくらいの巨大さだ。威力の高い武器が数も大幅に増え、更にα、β、γ号の三機に
分離合体でき、それぞれのコクピット全て使えばN-BIDの現7人全員が乗れる。で、今回は折角だから全員で
現地へ飛ぶ。
 ヴァルチャー誕生のきっかけは、6話の幽霊爆撃機・ゴーストファルコン。その顛末は忌まわしいものだったが、
戦闘力はすさまじく、戦術的に参考になる側面も多数あったため、今後の戦いのためにあえて類型機を作って
みようということになった。N-BIDの面々、特に藤堂隊長と影山は、倉山隊長を見舞った悲劇は決して
繰り返すまいと心に誓った。

 目的地は、太平洋の真ん中の名も無い孤島に造られた巨大施設『X病棟』。
 初代BIDの地上活動期、侵略者・ブラン星人の策にはまり、精神的な脆弱さを誘発されて社会生活できなくなり、
隔離病棟に入れられた人々が大勢いた。ブラン星人の策はあくまできっかけで、根本的な原因は彼ら自身の心の
弱さにあったのだが。そして、彼らはまだその状況から抜け出していない。結果、このX病棟に移されて
きたのである。

 X病棟に入れられているのは彼らだけではない。社会生活が出来ない、もっと言うと、社会に出しておくと
度を越したレベルで迷惑になる者達が、片っ端からこの施設に放り込まれている。病棟の名の通り、一応
精神クリニックの努力をしているスタッフもいるが、実態は最早隔離病棟というレベルではない。監獄である。
もっとも、収容されている者達は、実際社会から強制的に隔離されても仕方ない者達である。提供者は消費者に
全面的に無条件で譲歩すべきだとか、欲しいものを盗む事は基本的人権だとか、行きずりで気に入った女がいたら
犯すことも、気に入らない奴がいたら殴ったり殺したりすることも全て基本的人権だとかいうことを臆面もなく
言い、実際に実行して反省のかけらもない者ばかりだ。元々犯罪経歴があった者ばかりでなく、これまで普通の
生活をしていた者からもそういう人間が多発してきている。収監されているのはかなりの人数だ。
もう、暴力星団で殺し合っている凶悪怪獣や宇宙人と変わらない。そして、そういう人間が増えたのが
元々マイナスエネルギーという外的要因のせいだったのかはわからない。本質的にそういう性分なのかもしれない。
 ・・・という施設があることを、今回の作戦に当たって知らされたN-BIDは、非常にへこんだ。特に、
感性自体は常人レベルである江里や松野はかなりショックを受け、公平は二人の姿に心を痛める。
 それはともかく。そのX病棟が突如音信不通になった。通信が遮断され、連絡が取れない。何かあったと
判断され、N-BIDが現地に出向いて調査を行うこととなったのである。
 孤島に向かっていく、7人を乗せたヴァルチャー。泉は既に現地の分析を行っている。そして、膨大な
マイナスエネルギーがX病棟から発されていること、それだけではなく、1、2話で怪獣兵器を差し向けてきた
謎の侵略者の反応と同じ異常電波も検出されていることを突き止めた。
泉「これも、謎の侵略者の仕業なのでしょうか・・・?」

 X病棟の責任者・・・『監守』と言ったほうが似つかわしいだろう、監守は、外部の者が近づいてくるのを
察知し、微笑んだ。
 収監者達を人道的に扱うべきだと主張した他の医療スタッフは、鬱陶しいので全て殺害した。そして監守は、
侵略者の手先としての正体を、病棟の上空に現した。
 巨大で真っ黒な、巻貝に似た半機械生命体。
 後でわかったのだが、既に本物の責任者を殺し、摩り替わっていたらしい。

 ヴァルチャーは、間に合わなかった。
 巨大な巻貝・トリムスは、高速回転し、竜巻を起こした。そして、病棟に収監されていた者達のマイナス
エネルギーを吸い上げ、更に上空に開いた、別次元に繋がった黒い大きな穴に送り込んでいく。
 自身の弱い心によって既に精神全てがマイナスエネルギーに汚染されていた収監者達は、全身のエネルギーを
全て吸われ、ミイラ化して全員死亡した。
 一箇所に集められたマイナスエネルギーを採取することが、トリムスの狙いだったのだ。
 トリムスは既に目的を達したが、更に、飛んできたヴァルチャーに電撃を放ってきた。藤堂の号令で
ヴァルチャーは三機に分離し、敵に立体攻撃を掛ける。囲んでの攻撃で有利になったかと思われたとき、
トリムスはいきなり体当たりを仕掛けてきた。ドリルのように回転してγ号に接触。頑強に造られた
ヴァルチャーはそれでも破損しなかったが、γ号は失速して島に不時着。同乗していた江里と松野は気絶し、
二人の失意の表情を見て敵への怒りを強めた公平は、バーストに変身。
 素早く飛び回り、電撃やドリルアタックで攻めてくるトリムスに苦戦するが、α号に乗っていた影山が
怒号と共に大出力のビーム砲を発射、トリムスに大ダメージを与える。それをチャンスとしたバーストは
エクスプロージョンキックを命中させ、島に落ちたトリムスは駒のように回転して花火を撒き散らした後、
爆発した。

 日本に帰還するN-BIDは、謎の敵の背後に、想像以上の巨大な悪意を感じていた・・・
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ウルトラマンバースト 9 謎すぎの恐竜基地
培養獣王・ゴラース 出現


 江里と公平はN-BIDベースから西、琵琶湖へ向かった。琵琶湖湖畔には、江里の叔父で生物工学の権威・
日本橋博士の研究所があった。
 尋ねてきた江里を日本橋は歓迎するが、江里は挨拶もそこそこに用件を切り出した。
 最近北米某所で発掘された、太古の恐竜の化石ではない、奇跡的に生きたまま残っていた細胞組織が、
研究機関への搬送中に紛失した。調査依頼を受けたN-BIDは、その細胞組織が日本橋の手によって盗まれた
ことを突き止め、姪の江里が自ら此処にやってきたのである。
 指摘を受けた日本橋は高笑いし、あっさり自らの犯行を認めた。
「だがもう遅いよ、江里ちゃん。その細胞組織は、既に有効に使わせていただいたよ」

 琵琶湖から、怪獣が浮上した。直立した爬虫類の様相のそれは、日本橋が、男のロマンといえば聞こえのいい
個人的でオタクな研究欲によって、問題の細胞組織を培養して生み出した怪獣・ゴラースだった。黒く
ごわごわした皮膚、ぎざぎざの背びれ、錆びたブランコが軋むような鳴き声、そして、首を取り巻く大きな
襟巻き状のひれ。
 長年の希望、自分で怪獣を生み出すことに成功した日本橋は「ゴラース! ゴラース!」と叫びながら
研究所から飛び出して嬉しそうに怪獣に走り寄っていくが、

 あっさり踏み潰された。
 きゃーーーーーと絶叫する江里。
 それを見た公平は、江里の叔父さんの仇を討つと決意し、物陰に隠れてバーストに変身して現れた。
日本橋の自業自得とかいうことは余り考えていない。

 江里は悲しみながら叔父の亡骸に走り寄っていくが、

 日本橋は、あっさり生き返って立ち上がった。
「・・・・・・」
 自らの身体も生体改造し、ダメージを受けても直ぐ再生するようにしてあったのだ。トカゲの尻尾とか
オオサンショウウオとかヒトデとかプラナリアとか色々細胞に混ざってるらしい。トレードマークの白衣は
血まみれで、身体のあちこちから中身が色々はみ出していて、骨もぼきぼきに折れて四肢が変な方向に
曲がってて、修復にはまだ時間がかかる。きちゃないので江里は微妙に距離を取り、何で考えなしに
怪獣に近寄るのよ、踏み潰されるに決まってるじゃないと怒ると、考えはあったと日本橋は言う。
造物主に反抗してこそ新造生物の真の自立、後、一度でいいから自分で作った怪獣に踏み潰されて
死にたかった。
 江里はもう日本橋の脳の構造について考えるのはやめた。

 日本橋が生き返ったことに気付いていないバーストは、果敢にゴラースに挑む。
 だが、非常にでたらめな経緯で誕生したにも関わらず、ゴラースは強い。
 前哨戦で宙に投げた岩の撃ち落し合い。バーストはバーストスラッシュで2個だが、ゴラースは口から吐く
とてもチェレンコフ光臭い、でも一応放射能ではない光線(勿論背びれも光る)で、一度に10個命中。
 怒ったバーストは直接格闘に持ち込み、手刀でゴラースの襟巻きを切り飛ばそうとすると、軽い身のこなしで
交わしたゴラースは、自ら襟巻きを手ではずし、ブーメランにしてバーストに投げて叩きつけ、痛打を与える。
襟巻きは戻ってきてゴラースの首に再びがしーんと装着。とても、剥がした襟巻きをバーストが持って闘牛ごっこ
とかいう状況ではない。倒れたバーストにゴラースは更に追い討ち、口からの光線や長い尻尾の打撃で
痛めつける。バースト、ピンチ!

 そこへ、N-BIDベースからヴァルチャーが援護に飛んできた。
 三機に分離し、松野のγ号がワイヤーを撃つ。両端に錘がついたワイヤーはボーラとなって巻きつき、ゴラースの
動きを封じる。続いて、両国のβ号が機体下部に大きな鉄球を吊るし、振り回して叩きつける。
 ヴァルチャーは前回初登場したばかりなのに、もう見事な連携を見せているN-BIDのメカ操作技術はすさまじい。
 影山のα号が大出力ビーム砲でとどめを刺そうとしたとき、ゴラースは光線を足下に向けて吐き、地面を爆発させて
激しい土煙を起こした。N-BIDが視界を遮られた隙に、力でワイヤーを切り、尻尾を地に叩きつけてハイジャンプ。
更に口からの光線を一際の威力で吐き、その噴射で空を飛んで上昇していく。
『見事だ、人間ども。だが、俺様はまだまだこの程度では負けん。又機会を改めて合いまみえようではないか』
 白いテロップの漫画吹き出しで捨て台詞を残し(音声は流れない)、にやりと笑いながら急加速で飛び去った。

「流石、天才の私の作った最強の怪獣だ」
 もうおおよそ身体が修復した日本橋は満足そうに言い、防衛軍の兵士達に拘束されてお勤めのために連行されて
いった。あっさり彼が生き返ったと知った公平は、俺は何のために激昂したのかと激しく脱力して江里に慰められていた。
 消えたゴラースの行方はようとして知れない。
 突如現れた強敵に対し、バーストとN-BIDはどう立ち向かうのか。前回謎の侵略者という宿敵も現れたばかりなのに、
こんな唐突な伏線を又作って大丈夫なのか。ちゃんと責任を取れるのか。それは、
ゴラース『誰にも判らない! 判るはずがないんだよ! 地球の馬鹿どもめふはははは!』(音声なし、吹き出しのみ)
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ウルトラマンバースト 10 閉じた楽園
強食怪獣・レッガー、邪念収集生命体・トリムス 他 出現


 東京都心の上空に、宇宙怪獣が出現した。8話で社会不適応者の巨大隔離施設・X病棟から
マイナスエネルギーを吸い上げ、多数の死者を出した邪念収集生命体・トリムスである。生き返ったのではなく、
同じ種類の別個体らしい。トリムスは又も一帯のマイナスエネルギーを吸い上げようとしたが、事前に
マイナスエネルギーカウンターで気配を察知したN-BIDから送られたスペースジェット2号部隊(1号に続いて
量産体制が整った)の攻撃を受け、テレポートしてあっさり逃げ去った。

 泉による事後の調査で、都心一帯でマイナスエネルギーの発生量が一時的に上がっていたことが判明。
時間帯は朝のラッシュ時で、通行人の過密状態で皆一様にいらいらしていたこともあっただろうが、それと別に、
車同士の接触で喧嘩になったドライバー同士が自制が利かずにお互いに大怪我するまで殴りあったり、
学生間での恐喝行為や刹那的な暴力行為なども丁度多発していたようである。
「まだ目的は判りませんが、謎の侵略者は明らかに意図的に地球のマイナスエネルギーを狙ってきています」
 泉の提唱により、マイナスエネルギーを狙うこの謎の存在は『マイナスフォース』と呼称されることになった。
だが、そのマイナスフォースの被害者や、彼らの行為によって不快な思いをする者達にとっては、呼称など正直
どうでもいい。江里もその一人で、周りを気遣って笑顔を保っているが、内心へこんでいるのを公平は感じていた。
 ともかくN-BIDの当面の方針が決まり、常時マイナスエネルギーカウンターで各地の観測を続け、係数が
高まっている地点を警戒し、トリムスの出現に備えることになった。そして、今回警戒対象となったのが、
本土南西の海上、カツラギ諸島である。

 カツラギ諸島では、多くの地球怪獣が保護・飼育されている。人の住んでいる場所にいると色々問題になるので
連れてこられた怪獣達である。おとなしい怪獣だけでなく、実は凶暴で肉食性のものもいるのだが、人間や
他の怪獣以外の餌をとにかく大量に与え続けることで何とかしている。島の管理者で有力資産家の桂木氏は、
怪獣も生きていくのに充分な環境を与えられれば人を襲うことは無い、人間と共存していけるのだと主張し、
各方面の反対意見を抑え、この事業を行っている。
「島に自分の名前をつけるのはどうかと思うがな」
 現地に赴いた影山は愚痴りつつ、飼われている怪獣達の様子を見る。確かにおとなしくはしているのだが、
餌を与えられすぎているのか、皆ぶくぶくに太ってごろごろ寝て怠けている。御覧下さい、皆争わず平和に
暮らしている、まさに地上の楽園ですと桂木は嬉しそうに言う。はあそうですねと影山は適当に流した。
取り合えず自分達の任務はこの地の防衛で、異議を唱えることではない。将来的には一般客も招き、
子供達の情操教育のために怪獣達の公開を行う予定ですとか言われたときは閉口したが。要は動物園だが、
どうも桂木はそうは思っていないらしい。営利目的ではなく、この飼い殺し状況が地上の楽園であると
本気で信じているらしい。

 そこに、別ベクトルの事態が発生した。
 最近、カツラギ諸島から更に南方の島が地殻変動で海底に沈んだのだが、どうもこの島が自然発生の
地球怪獣の生育地であったらしい。殆んどが陸生の島の生物は溺れ死んだが、それらの食物連鎖の頂点に
立っていた巨大生物が、餌がなくなったので当然腹が減った。そして、大量の餌があるカツラギ諸島へと
向かってきたのである。

 カツラギ諸島では、多くの地球怪獣が保護・飼育されている。人の住んでいる場所にいると色々問題になるので
連れてこられた怪獣達である。おとなしい怪獣だけでなく、実は凶暴で肉食性のものもいるのだが、人間や
他の怪獣以外の餌をとにかく大量に与え続けることで何とかしている。島の管理者で有力資産家の桂木氏は、
怪獣も生きていくのに充分な環境を与えられれば人を襲うことは無い、人間と共存していけるのだと主張し、
各方面の反対意見を抑え、この事業を行っている。
「島に自分の名前をつけるのはどうかと思うがな」
 現地に赴いた影山は愚痴りつつ、飼われている怪獣達の様子を見る。確かにおとなしくはしているのだが、
餌を与えられすぎているのか、皆ぶくぶくに太ってごろごろ寝て怠けている。御覧下さい、皆争わず平和に
暮らしている、まさに地上の楽園ですと桂木は嬉しそうに言う。はあそうですねと影山は適当に流した。
取り合えず自分達の任務はこの地の防衛で、異議を唱えることではない。将来的には一般客も招き、
子供達の情操教育のために怪獣達の公開を行う予定ですとか言われたときは閉口したが。要は動物園だが、
どうも桂木はそうは思っていないらしい。営利目的ではなく、この飼い殺し状況が地上の楽園であると
本気で信じているらしい。

 そこに、別ベクトルの事態が発生した。
 最近、カツラギ諸島から更に南方の島が地殻変動で海底に沈んだのだが、どうもこの島が自然発生の
地球怪獣の生育地であったらしい。殆んどが陸生の島の生物は溺れ死んだが、それらの食物連鎖の頂点に
立っていた巨大生物が、餌がなくなったので当然腹が減った。そして、大量の餌があるカツラギ諸島へと
向かってきたのである。

 レッガーは戦いつつ、殺された島の怪獣の肉を手掴みで旨そうに咀嚼しながら、俺は自然界の弱肉強食の
摂理に従っているだけだとか言ってきた。弱いものが強いものに食われるのは当然だ、俺は強いから弱いものを
幾ら虐げても殺しても許されるのだ、全ての生き物は皆仲良く暮らしていけるとか訳のわからんことを言う人間も
いるようだが愚かで間抜け極まりないとか言いながら、げらげら笑っている。
 これはこれでむかつく。
 バーストはレッガーにも捉えられなかった勢いで動き、その巨体を拳で地に叩き付けた。
『手前の根性が腐ってるのを、他の奴の責任や自然の摂理とかに転嫁するな!!
 愚かで間抜け極まりないのは手前だ!!』

 拳骨と共に言い返されてレッガーも怒り、両者の凄絶な拳の応酬。
 その憎しみ合いがマイナスエネルギーに転換され、一方の桂木の発するマイナスエネルギーもあいまって
負の感情が一帯に満ち、それを感知したトリムスが遂に現れた。トリムスはエネルギー収集の前に、邪魔になる
バーストとレッガーの両方を電撃を発して攻撃。バーストはダメージを受けつつも、最初の目標だったトリムスに
迷うことなく反撃。ハイジャンプしてエクスプロージョンキックで地上に叩き落し、更にライトニングバーストを
見舞って木端微塵に爆破した。
 だが、その隙に手負いのレッガーは海へ逃げ延び、素早く泳いで姿を消した。
 自分にこれだけの傷と屈辱を与えたウルトラマンバーストを、いずれ必ず八つ裂きにして食らってやると
誓いながら。

 取り合えずトリムスは倒され、レッガーもその後カツラギ諸島には現れていない。
 桂木氏は以後どうしたかというと、カツラギ諸島一帯を巨大で広範囲で強固な特殊金属の防壁で隙間なく覆い、
自分の関係者のごく僅か以外とは完全に袂を分かち、自分の作った楽園の中だけで生きている。外には一切出てこない。
しかし、N-BID一同はそれに対してどうこう言う権限はないので、島を後にするしかないのである。
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