ウルトラマンバースト 11 マイナスフォースの影
享楽獣人・エッダ 出現


 江里隊員は又へこんでいた。N-BID上層部の幕僚会議に、神田総監と藤堂隊長に書記役として
随行したのだが、8話でのX病棟の議題が出たとき、収監者が結局マイナスフォースの手によって
全員死亡した件について、扱いに困っていたので寧ろ助かったとかいう発言をした幹部が
いたのである。死んでもいい人なんていないと思わず江里は憤ってしまい、強制退出させられた。
問題発言をした幹部は幹部で、こってりと戒告を受けたのだが。
 此処暫くのマイナスエネルギー事件で消沈している江里を藤堂は特に責めず、一度休ませる
べきだろうと考え、臨時休暇を与えた。作戦質から出る江里に、公平は何とかフォローしようと
色々声を掛ける。江里は無理して笑顔を見せるが、決め手にはならなかった。

 街に出た江里は、一般オペレーター時代の僚友・河森みどりと出会う。彼女も丁度休暇を
取ったところで、適当に店に入って近況を話し合う。現在はN-BIDの広報部に所属しているみどりは、
頃合を見て、急にひそひそ話をしてきた。仕事柄手に入れた秘蔵の情報。
『レッドポピー』と呼ばれる麻薬が最近若者達の間で流行っていて、闇値で取引されているという。
それだけなら警察の管轄だろうが、みどりは、蛇の道は蛇とばかりに、どうにか極少量手に入れた
レッドポピーのサンプルを密かに江里に見せる。基地内の気の知れた技術者の知人に分析させた
ところ、地球上で生成できる成分ではないというのだ。話を聞いた江里が、その赤い結晶状の
粒を調べたところ、マイナスエネルギーカウンター(休暇で基地から離れる際、試験的に作ったので
試供品として泉が江里に与えた、携帯用に小型化されたもの)にも微かに反応した。

 これは即座に真相を究明しなければと思った江里に、みどりは、二人だけで先行捜査しないかと
持ちかける。実は、彼女も江里のようにN-BIDの選抜メンバーになりたかったらしく、ここで一番
手柄を上げれば選ばれる見込みもあるかもと、そういうことだった。極秘情報をリークして
あげたんだからちょっとぐらい聞いてくれてもいいじゃないよーねぇーとせっつかれ、やむなく
江里は了承した。確かに大人数で捜査するよりは感づかれにくいだろうという考えもあったが、
マイナスフォースの非道に対する憤りからの先走りという部分が一番大きかったかも知れない。

 で、そういう姿勢で事に臨むと、失敗するのである。
 みどりが目処をつけた手掛かりを元に、二人はレッドポピーの取引現場を突き止める。だが、
マイナスフォースの手先で当然その正体は地球人ではない売人は、集まった中毒者の中に二人の
健常者が紛れ込んでいるのに超感覚で気付き、中毒者達を操って江里とみどりを襲わせる。
 江里に襲い掛かろうとした中毒者を、当身の一撃で沈めた者がいた。
 こっそり様子を見ていた、公平である。
 公平だけではない。携帯マイナスエネルギーカウンターへの反応は、それを渡した泉の下にも伝わる
ようになっており、野郎どもは直ぐフォローに入れる用意をしていたのだ。中毒者達を次々気絶させて
倒しつつ、公平は、皆仲間なんだからこういう時は相談してくれと江里に懇願。江里は自分の突出を恥じ、
わびる。後、江里をそそのかしたみどりはきっちり叱られ、選抜メンバーの道は遠のいたのであった。
みどり「とほほ・・・」
公平「すげー懐かしい反応するね」

 荒事は苦手な泉と松野はへっぴり腰だが、影山や両国といった腕っ節の強い者の援護もあって、
中毒者をどんどん確保。だが、売人は中毒者の一人の若い男に、一気に大量のレッドポピーを投与。
薬に含有されたマイナスエネルギーと、自身の中で醸成されたマイナスエネルギーの相乗効果で男は
細胞組織の生体活動に異常を起こし、悪趣味な三原色の身体の巨大な半獣半人となって笑いながら
街を壊して暴れ出す。
 公平は隙を見てバーストに変身、獣人に立ち向かう。元は操られているだけの人間なので殺すわけにも
いかず、格闘戦でダメージを与えてスタミナをそいだ後、治療光線・サイキックケアを当てて体内の
薬物を分解・浄化し、見事、元の人間に戻した。他の被害者にもサイキックケアが当てられ、皆助かり、
正気に戻った。

 だが、被害者達の中から追い出されたマイナスエネルギーは、まだ大気中に漂っていた。マイナスエネルギー
そのものは、バーストの力でも完全に消すことは出来ない。そもそも薬物で地球人の心の底の獣性を呼び覚まし、
それによって醸成されたマイナスエネルギーを回収することが売人の目的だったのだ。
 離れて見届けていた売人は、一帯のマイナスエネルギーを自分の体内に吸い込むと、気付くのが遅れた
バーストが攻撃を加える前に、次元の穴を開けて逃げ延びてしまったのである。
 マイナスフォースの暗躍はまだ続く・・・

CM N-BID隊員セットシリーズ
 闇にうごめく邪悪な力・マイナスフォースのエージェントを見つけ出せ! マイナスエネルギー反応で
光とサウンドが炸裂! マイナスエネルギーカウンター!
(通常サイズと小型携帯サイズがあります)

 子供同士がカウンターを向け合いながら、
子供A「見つけたでー! お前がマイナスフォースやろ!」
子供B「違うわいお前がマイナスフォースじゃー!」
 取っ組み合いになる子供達。
泉「ひひひ、これが人間の正体です! 子供が純粋な存在だと思っているのは人間だけなのですひひひひひ!」
公平「・・・疑い出すときりがないから、使い過ぎるのはやめような」
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ウルトラマンバースト 12 獣人遊戯
装甲異星獣・ギアーム、享楽獣人・エッダ 出現


 享楽獣人・エッダが又出現した。
 レッドポピーをばら撒いて中毒者を獣人化する作戦を、マイナスフォースはまだ続けているらしい。
N-BIDはヴァルチャーに乗って対処に向かう。
公平「しつこいな、マイナスフォースめ!」
泉「まあ彼らにしてみれば、送り込んだ怪獣が倒されてもマイナスエネルギーを回収できればいいんですからね。
有効だと見ればそりゃ同じ作戦を繰り返しもしますよね」
影山「気分悪くなる正論は言わなくていい!」
泉「しかし、前回手に入れたレッドポピーのサンプルを元に、その効果を無効化する薬剤を既に開発しました。
それを込めた弾丸を撃ち込めば人間に戻せます」
 ヴァルチャーは三機に分離し、エッダを立体攻撃して疲れさせて動きを鈍らせるが・・・
 そこへ、次元の穴を開けて別の敵が現れた。甲虫の外殻のような金属のような体表をした頑丈そうな怪獣。
藤堂「何者だ?」
江里「マイナスフォースと同じ電波反応があります。援軍じゃないかと・・・」
 だが、怪獣は攻撃してこず、弱ったエッダを捕まえて抱えると、直ぐ次元の穴に逃げ込んで消えてしまう。
公平「ああっ待て!」

 獣人エッダ=さらわれた被害者は見つからない。更に、諜報部や、広報部の河森みどりからの情報によると、
他のレッドポピーの中毒者も次々行方不明になっている。これまでのように放置されず、どうもマイナスフォースに
よって連れ去られているらしい。何処にさらわれているのかを突き止め、敵の狙いを探らねばならない。
取り合えず、もっとも失踪が頻発している地点の調査に、公平、影山、両国の三人が、N-BIDの特殊車両・
スタイニーに乗って向かった。
 郊外の人気の無い山中。スタイニーから降りた三人は、ネオビッドガン(旧ビッドガンに若干機能を
増設したもの)を構え、警戒しながら一帯を捜査するが・・・
 一帯の外気そのものに、電撃が走った。ショックを受け、三人は気絶した。

 その正体はウルトラマンバーストであり、常人より優れた肉体能力を持った公平が最初に気絶から覚めた。
周りで倒れている二人を揺さぶるが、まだ目覚めない。
「おはよう、小原公平君。いや、ウルトラマンバーストと呼んだほうがいいのかな」
 振り向いた公平の前にいたのは、あのレッドポピーの売人だった。既に公平の正体を見抜いている。
仲間の隊員二人が気絶しているのはその意味では幸運だった。
 更に見回すと、最初に来た山中の光景だが、空が真っ赤だ。マイナスフォースが発生させた何かの結界で囲まれ、
内部は異次元空間になっている。
「君達が探しているレッドポピーの購入者達は、確かに全員ここにいるよ」
「そいつらを返せ!」
「いいだろう。だが、連れて帰れるかな?」
「何だと・・・?」
「直ぐ会わせてあげよう」

 売人が指を鳴らすと、中毒者達が現れた。山の向こうから。
 全員、レッドポピーの末期症状で、巨大なエッダになっていた。
 そして、凶暴化した彼らは、互いを敵とみなして同士討ちを始めた。
「皆既に獣人化してたのか!?」
「どうかね、連れて帰れるかね?」
「・・・言われなくても!」
 公平はバーストに変身。殴り合っているエッダ達に対峙。エッダ達も現れたバーストを敵とみなし、身構える。
 確かに数は多いが、前回の様子を見る限り、エッダ自体の戦闘力は大したことは無い。暫く適当に格闘で打ちのめした
バーストが、サイキックケアで一気に全員まとめて浄化しようとしたとき。
 不利と見たエッダ達は、手をかざして援軍を呼んだ。
 エッダをさらっていったあの怪獣が現れた。しかも、ここにいるエッダの人数分。
 驚くバーストの前で更に変化が起きる。怪獣達の鎧のような身体が、出し抜けにバラバラに分割した。そして、
飛んでいってエッダ達の身体に本当に鎧となってがしんがしんとはまり、防御力と戦闘力を大幅に強化した。
「装甲異星獣・ギアームは、マスターとなった相手の身体に鎧となって装着し、力を強めることができるのだ」
 地上で笑いながら解説する売人。
「ウルトラマンバーストよ。言っておくが、レッドポピーやギアームを買ったのはその地球人の小僧達の意思だ。
薬に頼って心の中にたまったストレスを晴らし、ゲーム感覚で互いに暴力を揮い合って刹那的な快楽を満たす
ためにな。そんな行動に走る時点で、地球人は獣人化する前から既に獣なのだ!」
 しかし、そんな解説を聞いている余裕はない。強化されたエッダ達の素早い格闘攻撃でバーストは滅多打ちにされる!

藤堂「罠だったのか・・・」
 先行した三人の連絡が途絶えたのでヴァルチャーで現地に飛んだN-BIDの残り四人は、郊外の山岳地帯一帯が
赤いバリヤーに包まれているのを目の当たりにした。中の様子はわからない。銃弾やミサイルやレーザーで撃って見たが、
全てバリヤーで弾かれる。
松野「この状態じゃ中に入れまへんがな!」
江里「どうすれば・・・!?」
 内部では、痛めつけられるバーストのカラータイマーが鳴り始めている。
 序でに、なんか歌が流れ出した。


 欲しいものを盗むことは基本的人権 気に入らない奴を殴ることも基本的人権
 ちょっと肩が当たったので You shall die! ちょっと意見が合わなかったら You must die!
 どうせ俺たちゃ未成年 やり逃げOK! 投げっぱなしOK! Wow Wow Wow・・・


 なし崩しに、続く。
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 公平、影山、両国の三人は、人間を獣人化させる宇宙麻薬・レッドポピーをばら撒くマイナス
フォースの使者の足取りを追っていたが、逆に使者の罠にはまって異次元空間に閉じ込められる。公平は
ウルトラマンバーストに変身するが、レッドポピーの売人が差し向けた獣人エッダの群れは、装甲異星獣・
ギアームを鎧として装着し、強化して集団で襲ってきた。バーストの運命は!?


ウルトラマンバースト 13 ヴァルチャー突撃
邪念売人・ルキ、装甲異星獣・ギアーム、享楽獣人・エッダ 出現


 一方、ヴァルチャーは売人が張った異次元の結界の外で足止めを食ったまま。泉は考えていたが、
泉「・・・結界への突入方法があります」
松野「! ほんまかいな、泉はん!?」
泉「ヴァルチャーは現在、一番後部に合体したγ号のエンジンだけで飛んでいますが、α号、β号のエンジンを
全てγ号に直結するのです。その状態でヴァルチャーが最大出力を出せば、ごく短時間ですが、光速をも越える
ことが出来ます。そうなれば結界など関係ありません。力押しで突破できます」
松野「おお、そんなことが出来るんか!」
江里「じゃ、早くそれを使って中の三人を助けましょう」
泉「ですが、最大出力モードのテストはまだ行われていません。最悪、機体が出力や加速に耐えられずに爆発、
分解する危険性が・・・」
 そういわれ、又考え込んでしまう四人。

 だが、
藤堂「此処で悩んでいるうちにも事態は悪化していく」
泉「・・・隊長」
藤堂「我々の仲間とマイナスフォースの被害者達は、何としても助けねばならん。機体が爆発する危険があると
いうなら、その危険をなくし、乗り越えるのが技師たるお前の務めだ、泉」
泉「・・・そうですね。その通りです」
藤堂「N-BID隊長として命令する。敵の結界を突破し、中の者達を救助せよ! 松野、お前も泉に協力して
エンジンの暴走を何としても抑えてみせろ」
松野「よっしゃ! 任せて下さい」
藤堂「江里君はオペレーターとして周辺状況を警戒し、結界内部に突入した際の状況の変化に備えろ」
江里「了解!」
藤堂「よし。ヴァルチャー、最大出力モードに移行!」

 結界の中では、エッダ達の集中攻撃を受けたバーストが力尽きようとしていた。最早ハイパーバリヤーで
攻撃を防御するのみだが、そのバリヤーの出力もカラータイマーの点滅の早まりと共に下がっていく。
「とどめを刺せ!」
 売人の命令で、エッダ達が兜として被ったギアームの頭部の口が一斉に開く。そして、口からビームを
吐いてハイパーバリヤーを突き破らんと・・・

 赤い空から、巨大な金属の巨鳥が飛んできた。
 眩しい光を纏ったそれは、次の瞬間異次元空間内の地上すれすれに到達し、衝撃波でエッダの群れを
吹き飛ばした。
泉「成功です! 結界突破、成功しました!」
松野「せやけど・・・あきまへん、動力炉がもう爆発寸前でっせ!」
藤堂「至急出力を下げて通常速度に戻せ!」
 ヴァルチャーは暫くランダムに飛び回ってエッダ達を追い回した後、徐々に速度を下げて行った。
機体を覆う光も消えていく。
泉「素晴らしい! ヴァルチャーのこの力、ひひひひひ!」
松野「泉はん、それはもうええから」
泉「はっ・・・そうでした失礼」
江里「状況報告していいですか?」
 突入した四人は事態を把握していく。要するに、中毒者達は全て獣人となり、しかも何かの強化
パーツで身を覆い、ウルトラマンバーストを窮地に追い込んでいる。というか、バーストはもう
立つことも出来ず、仰向けに倒れ込んでタイマーをぴこーんぴこーん鳴らしている。
江里「ウルトラマン!?」
藤堂「いかん、エネルギーが切れているらしい。助けねば」
松野「ちゅーても、どないして・・・?」

 と、一同の脳内に、
『・・・光・・・』
「?」
『光が・・・欲しい・・・』
 テレパシーで、バーストのうわ言が聞こえてきた。しばしば技名を大声で叫ぶので皆声を覚えている。
泉「・・・判りやすい・・・」
江里「そういえば、かつての光の巨人達も、月でピンチに陥ったときになんか都合よく隕石が落ちてきて
その爆発の光で助かったり、都心で市民から懐中電灯やペンライトや車のヘッドライトで照らされて力を
取り戻したとかいう話が」
藤堂「・・・よし」
 藤堂は指示を出し、ヴァルチャーを三機に分離させる。男衆がα号とβ号でエッダ達を牽制。
その間に江里はγ号でバーストの下に向かい、出来る限りの手段を講じて光のエネルギーを与え、
甦らせる。

 倒れたバーストの上に来たγ号は、とにかく搭載された信号用の発光弾を次々炸裂させ、
その光をバーストに送り続ける。江里の願いと共に。
「このくらいの光で足りるかは判らない。けど、ウルトラマン、もう一度立ち上がって! 地球で
生きている皆の未来のために!」

 バーストが地球に来てからまだ三ヶ月弱。だが、その間地球人・小原公平として共に戦った
人々の顔が、胸中に甦る。影山。両国。松野。泉。藤堂隊長。そして、今リアルタイムで
自分の復活を願い続けている江里の姿・・・
 が、一番大きいのは、まあ許してやってくれ。
 そして、可愛い女の子にお願いされた時、余力がなくても無理やり搾り出すのが男だ。
超人であると共に、男なのだ。

 真っ赤な地獄の空の下、激しい光と共に、巨大な爆煙が炸裂した。
 その光と煙の中から、爆発の超人は再び立ち上がった。
 ないはずの力がどんどん湧き、カラータイマーは青く輝く。いい感じにα波が出ている。
 その勢いのまま、呆然と見ている獣人達に、バーストは、
『活人ライトニングバースト!!』
 を放った。
 通常のライトニングバーストではなく、サイキックケアが同時に放たれる。大きな光の奔流は
獣人達を飲み込み、彼らを元の人間に戻し、その身体に装着されたギアームのみを破壊した。
更に、獣人達の中で醸成されて根絶出来ないはずのマイナスエネルギーまでも、残さず蒸発
させたのである。
「何!?」
 驚愕する売人までも、その光は飲み込んでいく。

 レッドポピーの被害者達は皆、気絶して地上に転がっている。全員無事。
「うむ!」
 頷く藤堂・・・だが。
 ギアーム軍団の残骸の下から、暗い闇を全身から放ち、現れる巨大な影。
「私をこの姿にさせるとは・・・」
 売人は、ライトニングバーストを浴びて、まだ生きていた。そして、マイナスフォースの使者、
暗黒の巨人の正体を現した。
 驚くN-BID一同の前で、悪魔そのものの姿の巨人・ルキは不気味に笑いながら語る。
「だが、この力を以ってしても、残念ながら、我々を滅ぼすことは叶わん。お前達地球人が、
醜い心の力を放つ獣である限り・・・」
 最後まで言う前に、ウルトラマンバーストの鉄拳を横っ面に浴びて、ルキは吹っ飛んだ。
『地球人全体の罪みたいな言い方すんなデュワーーーーー!!』
 尻餅をついて呆然とするルキにバーストは怒る。
『一人一人当人の問題と責任だろうが! 手前の甘言に乗せられて獣になって暴れたのは、そこで
倒れてるガキども一人一人の問題と責任だ! 償うのもそいつら自身だ! 地球人全体じゃねえ!
そして、やばい薬や玩具をばら撒くという真似をしたのは手前だ! その責任が最終的に帰属するのも
手前だ! 地球人のせいにすんなデュワーーーーー!!』
 音声としては、ウルトラマンの声帯なのでデュワーデュワーと喚いてるようにしか聞こえないが、
怒り心頭なのがN-BIDには伝わってくる。

「・・・今日はゲンが悪いようだ」
 ルキは立ち上がり、背後に次元の扉を開く。
「改めて出直そう。次の勝負を楽しみにしているよ、ウルトラマンバースト。そして地球人諸君」
 もう一度バーストが殴りかかる前に、ルキは逃げ去った。
『手前らが何者だろうと、必ず責任を取らせてやるからなデュワーーーーー!!』

 ルキの張った結界も消え、空は青に戻っていく。
 今回も地球を守りぬいたN-BIDの仲間達の下へおーいと走って戻っていく公平は、この星を
守っていく決意を新たにしたのであった。

 元に戻ったガキどもは、お勤めのためにきっちり少年院に送られた。違法な薬物の売買、
それまでにも色々余罪を重ねているから当然である。
 後、今回はいいとこなしだった影山と両国はまだ寝ていた。
「むにゃむにゃ・・・もう食べられんぞい」
 両国が超ベタオチな寝言をかました。
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ウルトラマンバースト 11 みどりの誇り
姑息宇宙人・ペプラ星人 出現


 江里の僚友、N-BID広報部の河森みどりは、幕僚部の古参幹部・三浦長官から召喚を受けた。三浦については、
最近極秘で何やら新兵器を開発しているらしいという裏情報をみどりも掴んでおり、恐らくは情報戦上の
取引か何かだろうと見込んで、一人で勇んで向かった。だが、そんな程度のものではなかった。
 暗い締め切った自室で、三浦は、地球を我々に売り渡す気はないかと言ってきた。
 実は彼の正体は地球を狙う侵略者・ペプラ星人であり、潜入工作員として地球内での信頼を得るために
長いこと防衛軍の幹部に成りすまして人脈を築いてきたのだという。情報収集に関しては優れた能力を持つ
みどりを抱きこみ、N-BIDの極秘情報を探らせて地球侵略に役立てようというのだ。交換条件として、みどりを
彼女の望む防衛軍内でのポストにつけてやる、N-BID正規隊員は愚か、陸海空の軍を指先一つで操れる高官の
地位も、現在の私の権限でなら思いのままだ、我々と共に地球を牛耳ろうではないかと持ちかけてきた。
 だが、みどりはあっさり断った。
 自分がN-BID正規隊員になりたいのは、悪い怪獣や宇宙人を仲間達と共にやっつけて地球の平和を守る事で
かっこよく活躍したいためで、最初から地球が宇宙人の手に落ちている状況下で茶番を演じる気は無い、と。
「えっ・・・君ってそんなキャラだったの? へっへっへー任せてくださいよーとかいって揉み手擦り手で
ゴマをすって権力者に取り入ろうとする小悪党とか思ってたのに。そのほうがギャグとしても笑えるし」
 といって、三浦はみどりにハリセンで殴られた。
 頭にでっかいたんこぶを作った三浦は、交渉決裂と見て不気味に笑い、では折角だ、君が情報を探っていた
秘密兵器を見せてやろうと言い、隠し扉を開けて問題の兵器を見せた。
 それは、地球人の意思を操り、星人の手先にして地球防衛軍に差し向けるための洗脳電波発信装置だった。
しかも・・・

 巨大フジ隊員、月星人・南夕子とか以来ではなかろうか。
 ペプラ星人によって操られ、しかも、ウルトラマンサイズに巨大化したみどりが、虚ろな表情をしながら
N-BIDベース攻撃のために樹海を歩んできた。目の下に隈があるのが、操られている何よりの証だと
泉は看破するが、とにかく操られているだけの味方のみどりを攻撃するわけには行かない。
 みどりの友人の江里は取り乱したが、公平達のフォローで平常心を取り戻し、みどりの情報コネの
ルートを探っていくうち、微弱だが異常な電波の発信源を突き止める。その地点に向かうと、三浦が
あからさまに怪しく笑いながらコントローラーを操作していた。影山が銃でコントローラーを撃って壊し、
みどりは正気に戻る。しかし、身体は巨大なまま。その状態でみどりは怒り、元に戻せと三浦の下に
ずしんずしん歩み寄ってきた。踏み潰されてはたまらんと、三浦は星人の正体を現して巨大化、反撃。
しかし、みどりは喧嘩も結構強く、格闘戦で不利になった星人は手から電撃を出してみどりを気絶させ、
続いてN-BIDベース破壊のために進撃。巨大みどりと巨大星人の戦いという異常な光景に毒気を抜かれていた
公平は漸く我に返り、バーストに変身。星人を食い止め、エクスプロージョンキックで爆破してとどめを刺した。

 私欲を抑えて星人の甘言を跳ね除けたみどりの姿勢に感じ入った神田総監は、みどりのかねてよりの希望を受けて
N-BIDの正規隊員に昇格させてもいいと持ちかけるが、みどりはこれも辞退し、遠からず自分の功績で隊員に
なってみせると宣言した。そして、自分を助けるために奮闘した江里と喜びを分かち合った。

 後、巨大化したみどりがどうやって元に戻ったのかというと、特殊ウルトラボレットでディスティニーチェンジを
承認されたバーストの何でもあり能力により、巨大な漬物樽で塩漬けにされて縮んで元に戻った。
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ウルトラマンバースト 15 見苦しい男の意地
斬撃怪獣・ヤイバラス 他 出現


 N-BIDベースに、初老の身なりのいい男が尋ねてきた。彼は、10話に出てきたカツラギ諸島の持ち主、
桂木氏の秘書であった。あのときの一件で心に深い傷を負った桂木氏は、厚い防壁で徹底的に封鎖された
島に閉じこもり、死んだような顔で保護怪獣に餌を与え続けるだけで、一歩も外に出てこないという。
何とかする方法はないかと秘書は相談に来たのだが、藤堂隊長が一同の心情を代表して回答。あいにく、
N-BIDの役目は地球の平和を乱す敵への防衛活動であり、又、桂木氏が引きこもっているのは彼自身の
心の弱さの問題であり、そこまで面倒は見れない。もっと正直に言えば、皆もうあのおっさんには
関わりたくないのだったが、藤堂はそこまで言うのはやめておいた。
 だが、秘書はもう桂木氏との長い付き合いで彼に色々と恩義があり、簡単に引き下がるわけにも
いかない。それに、桂木氏の心情もある側面においては理解できるのである。

 淡々と怪獣に餌をやりながら、桂木氏は秘書に、
「かつて、我々人類と怪獣との関係はもっと牧歌的でのどかだったはずだ。そりゃ確かに行きがかりで
人間と対立しなければならないこともあるが、基本的に怪獣は自分の生活領域さえ荒らされなければ
おとなしく暮らしていたはずだ。人間との戦いにしても、昔はもっと単純で判りやすい図式だったはずだ。
それが何時から、緒戦でいきなり地球が滅びかねないほどのカタストロフが発生するとか、宇宙人が
個人的にウルトラマンや防衛隊に恨みを持って何時までもしつこく付狙い、その身内まで殺そうと
するとか、地球人も地球人で先制攻撃とばかりに他の星を一撃で滅ぼすほどの超兵器を撃ち込むとか・・・
何時からそんな荒んだ世界になってしまったんだろうな・・・」

 そんなわけで秘書は執拗に食い下がり、藤堂が困っているところに、江里が緊急連絡してきた。
宇宙怪獣の地球への接近がキャッチされたのだ。
 頭頂、肩、腕、尻尾などに大きく鋭い刃を持った、見るからに獰猛な怪獣・ヤイバラスは、SJ2隊の
迎撃をやすやすと跳ね除けて地上に降下。それで何をしにきたかというと、強力な嗅覚で地球産の怪獣が
生息している地点を確実に見つけ、捕まえて殺しては食っている。捕食自体が目的で、今回はマイナス
フォースとは関係ない単独の敵らしい。
 そして、やがてヤイバラスは、贅沢な食生活をして美味しそうな怪獣が沢山保護されている、カツラギ
諸島の匂いを嗅ぎ付けた。島が防壁で厳重に封鎖されているにも関わらず。凄い鼻である。
 ヤイバラスはカツラギ諸島に進撃し、防壁を破ろうと、身体の刃をブーメランにして飛ばしてぶつけてくる。
防壁は桂木氏の執念によって異常に頑丈に作られ、簡単には壊れないが、それでも徐々に傷がつき、がんがん
音がして中の桂木氏を怯えさせる。怯えているのは保護怪獣達もで、桂木氏はそんな怪獣達に対し、大丈夫だ
守ってやる守ってやる守ってやる守ってやると執拗に言ってくる。鬼気迫る表情で。
 怪獣達は、互いに顔を見合わせた後・・・

 ヴァルチャー(藤堂、両国、松野搭乗)と、影山と公平がそれぞれ乗ったスペースジェット2号二機が
現場に到着。敵が強力なので戦闘機の数を増やしている。しかし、それでもヤイバラスのブーメラン攻撃の
前に苦戦。公平の機が撃墜される。公平はバーストに変身して出現、怪獣と対峙。

「ああっ!? お前達、何処へ行く!?」
 保護怪獣達は、地面に穴を掘って一斉に地下へ逃げ始めた。よく考えたら、地下には防壁を作ってなかった。
防壁もいずれは破れる。桂木は守ってやる守ってやるというが、この脆弱そうな人間が自分達を守れるとは
思えない。閉じ込められた状態から逃げたほうがまだましそうだ。それに、しつこくわめき散らすこの人間と
一緒にいるのは、なんか気分が悪い。ので、怪獣達は去っていく。
「行かないでくれ、わしを置いていかないでくれー!」

 外ではバーストと怪獣の対決。バーストはヤイバラスの飛ばしてくる刃を手刀で器用に捌き、食い下がる。
業を煮やしたヤイバラスは、バーストが接近してきたところで、不意打ちに、隠し武器の強力な粘液を
吐いた。バーストは粘液で固められて動けず、その間にヤイバラスは防壁の攻撃を再開し、遂に壁を破ってしまう。
 だが、保護怪獣達は既に逃げ去っていた。いたのは、銃器で全身武装した桂木氏だった。
 彼の発する異常な気迫に、ヤイバラスの動きが止まる。
「何で貴様らは来るんだーーーーーッ!! 明らかに貴様らより弱いわしら人間をいたぶるのがそんなに楽しいか!?」
 桂木は絶叫しながら巨大な怪獣に走り迫り、機銃を乱射して攻撃。驚いたN-BIDが下がれと叫んでもやめない。
「『およそこの物語の怪獣・星人は人間に負けることなどないのです』!? 勝手に決めんな!
『生きる厳しさと哀しさを鮮烈に謡う』!? 謡いすぎじゃー! 鮮烈すぎじゃー!
『男なら誰かのために強くなれ』!? 好きで男に生まれたんと違うわい!」

 勿論豆鉄砲など何と言うことはなく、ヤイバラスは試しに桂木を蹴ってみる。桂木は吹っ飛び、アバラの二、三本が折れ、
傷にまみれて血まみれになった。だが、まだ立ち上がり、走り寄って銃で怪獣の足を殴ってくる。
「皆が皆ウルトラマンや防衛隊員みたいに強くなれるわけ無いだろう! 弱くて、勇気がなくて、周りの顔色を伺いながら
びくびくして生きていくしかない奴だって世の中にはいるんだ! むしろそっちのほうが大半だろうが! そのことも
考えず、自分が強い力を持ってるからって好き勝手しやがって! 貴様に何がわかるってんだちきしょー
うわーーーーーーーーーーん!!」
 桂木の呪いの声は、曇り空に何時までも響いた。

 で、ヤイバラスがどうしたか。
 気が滅入って来たので、嫌になって宇宙に帰った。

 桂木は入院し、今度は病院で引きこもっている。秘書は彼の面倒を見るために去る。
「桂木様はへタレです。命を賭けたヘタレです」
 そういい残して。
 色んな人生があるものだと藤堂が適当にまとめ、N-BIDは今回もそれ以上突っ込まず基地へ帰った。
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ウルトラマンバースト 16 勇気って何だ
虚像怪獣・フィルゴン 出現


 東京都心に怪獣が突然出現した。暴れ回って建造物を破壊する。N-BIDが駆け付け、暫く立ち回った後
公平がバーストに変身して立ち向かうが、怪獣はバーストがとどめを刺す前に突然もやのように消えた。
以後、同じ事件が頻発。突然現れては消える怪獣に、N-BIDは根本的な対策を打ち出せないでいた。
出現時にマイナスエネルギーが検出されることは判明していたが、何らかのジャミングがかかっていて
発生源が特定できず、捜査は難航。だが、ウルトラマンの超感覚を持つ公平はジャミングの網を
かいくぐり、発生源を突き止めていた。しかし、自分がウルトラマンだから突き止められたとN-BIDに言う
わけにはいかないので、定時パトロールの合間を見て独自に発生源に向かう。そこは、大きな病院だった。
 病院には、心臓に慢性的な欠陥があるためにもう長く入院している少年・功(いさお)がいた。このまま
では永くないため手術が必要なのだが、非常に難しい手術で成功確率は五分五分。功自身の生きようとする
気力が重要なのだという。
 そして、怪獣は病院のある地点を中心に出現を続けている。功の手術が予定された時期に限って。
 公平は功を密かに見張り、怪獣が現れた瞬間、功の身体からマイナスエネルギーが放出されているのを目撃。
怪獣を出現させているのは、手術を恐れている功の恐怖心だった。怪獣が現れて非常事態になれば、病院側も
警戒、場合によっては避難せねばならず、手術が中止になるのである。

 公平は功に個人的に接触し、怪獣を呼び出すのを止めるよう警告。とにかく手術を受けてみないことには
状況は変わらないと説得する。だが、功はつっぱねる。僕はウルトラマンでもN-BIDでも怪獣でも何でもない、
怖いものは怖いんだ、公平さんは強いN-BIDだからそんなことが言えるんだと。自分も最初から強かった
わけじゃないと公平は食い下がるが、過程なんか知ったことじゃない、僕は明日死ぬかもしれない身だと
言うのに今から一から強くなれというのか、何様だと言って功は聞かない。
 桂木氏の、皆が皆強くなれるわけ無いという叫びが公平の胸にのしかかる。自分が防衛隊員であり、
引いては誰も知らないこととはいえウルトラマンであり、その力を功の前で行使する限り、功は言うことを
聞かないだろう。そう考えた公平は、腹をくくった。

 再度怪獣が出現して暴れる。その状況は病院の功の脳内にリアルタイムで情報として入ってきており、
功は怪獣を暴れさせ続けるが、その手が止まった。
 崩壊した街の中、見下ろす怪獣の寸前に、公平が立っているのが見える。ネオビッドガンも何も
持っていない。丸腰だ。更に、公平だけに聞こえる、直ぐそばの別空間でウルトラボレットの用意が出来て
危険だから直ぐ変身しろという激しいワーニングメッセージも無視している。公平は、今回の件に限っては
ウルトラマンや防衛隊員として対応はしない。怪獣に踏み潰されて死ぬことになってもだ。

 正気の沙汰じゃない、止めろとテレパシーで叫ぶ功の警告を、公平は拒絶。
(俺の今やってることは、多分勇気でも人を救うための自己犠牲でも何でもねえ。功や、桂木のおっさんの
言ったことが幾らある一面では正しくても、個人的にむかつくから個人的にこうしてるだけだ)
(公平さん・・・)
(ああそうだよ、お前の言うとおりだよ! だけど、じゃあこれからもずっと自分は弱い人間だから
何時までも弱いままで居続けるってのか!? 周りの奴らのお前を心配する気持ちも何も全部無視してか!?
お前がそういう態度を続けるんなら、俺も同じようにさせてもらうまでだ!)
(う・・・うわああああ!!)
 怪獣フィルゴンは、功の意思のままに暴れた。その勢いで公平は吹き飛ばされ、瓦礫に叩きつけられて
大怪我を負った。それでもよろよろと立ち、又怪獣の前に来る。
(どうした・・・俺はまだ生きてるぞ。中途半端にすんじゃねえよ!)

 怪獣は、消えた。それっきり出てこなかった。
 功は病室の中で蹲って泣き叫んでいた。

 公平は、怪我の治療のため入院をかねて暫く謹慎処分となった。だがその頃には、怪獣が功のマイナス
エネルギーによって現れていたことも漸く泉によって突き止められており、何故公平がこんな真似をしたのか
理解したN-BID一同は特に何も言わず、彼の現場復帰を待つことにした。
 そして、功は手術を受けることにした。手術室に運ばれ、手術中の赤ランプが点灯する・・・

 今回の話は此処で終わる。手術が成功したのかどうかはあえて描かない。皆さんそれぞれの胸のうち。
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ウルトラマンバースト 17 邪念売人再び
邪念売人・ルキ、装甲異星獣・ヘビーギアーム 出現


 マイナスフォースの尖兵・ルキが、再度挑戦してきた。
「ウルトラマンバーストよ。君は以前、地球人の全てが悪意に満ちた獣ではないと言ったが・・・
本当にそうかな?」
 月面に現れたルキは、地球全土に向けて言う。そして、地球に向けて飛び始めた。
手に、何かの装置を持っている。
「かつて私は地球に宇宙麻薬レッドポピーを流布させ、人類の獣性を目覚めさせる作戦を行った。
しかし、少しずつ広めているのでは効率が悪い。そこで、ガス状にしてこの装置に詰めたレッド
ポピーを、地球の大気に散布して全人類に吸わせる」
 戦慄するN-BID。
「地球人全てが悪ではないというのなら、吸っても平気な者もいるはずだな? ははははは」

 結果は判り切っている。ルキの言う通り平気な者もいるとしても、少なくない人間が獣人になって
一斉に暴れ出し、それだけで地球は壊滅的被害を受ける。ルキの陰険な手にN-BIDは怒りを覚えたが、
とにかくそんな作戦は絶対に阻止せねばならない。N-BID一同、そして宇宙ステーション基地の旧BIDも
含め、これまで以上に団結して立ち上がる。
江里「しかし、小原隊員が・・・」
 小原公平は、前回の大怪我でまだ医療ブロックで安静状態。
藤堂「休ませておけ。小原は、前回おのれの命を賭けて十分に戦った。無理はさせられん。此処は我々
6人で事に当たるべきだろう」
江里「・・・そうですね」
藤堂「皆、今回は小原の分まで頑張るんだ」
 おーっと意気上がる隊員達。かくして、6人はヴァルチャーで宇宙へ飛んだ。

「冗談じゃねえ!」
 置いてきぼりにされた公平はベッドから出て後を追おうとするが、怪我がひどくて思うように
動くことも出来ない。無念を噛み締めていると、
「落ち着きなさい、バースト」
 看護婦(今は看護士か?)が入ってきた。ウルトラマンの方の名で呼ばれて公平は驚く。
看護婦は、秋月さやか・・・人間の姿になってやってきた、銀十字軍の女ウルトラマン・ディアナ。
バーストの宇宙警備隊での先輩・ウルトラマンイレイズの恋人だ。
 ディアナはさやかの姿のまま、サイキックケアを公平に放ち、一瞬で傷を癒した。
「これでN-BIDの援護にいける! 有難う、ディアナさん」
「くれぐれも用心して戦いなさい。戻ってきたら、イレイズが探ってきた重要な情報を伝えます」
「重要な情報? 何ですか?」
「この戦いが終わってから聞いたほうがいいと思います」
「?」
「とにかく、行きなさい」
「・・・了解!」
 公平はバーストに変身し、宇宙に飛ぶ。

 宇宙では激闘が展開されていた。ヴァルチャー、そしてBIDステーションから放たれたSJ1、2の
大編隊も加わって、ルキに一斉攻撃。苦戦したものの、ヴァルチャーαの影山が執念を見せて
ビーム砲を撃ち、ルキの持っていたガス発生装置を破壊する。
「やった! これでもうガスの散布は出来ないぞ!」
 だが、ルキは怯んでいない。高笑いし、まだ地球に向かって進もうとする。
両国「なんじゃ、自棄になったんかのう?」
江里「・・・! 違います!」
 ルキの身体をスキャンした江里が叫ぶ。
江里「レッドポピーガスは、装置に詰まっていた分だけではありません! ルキの体内にも
ガスが詰まってます!」
藤堂「まさか・・・地球の大気圏内で自爆してガスをばら撒く気か!?」
 地球軍は追撃するが、間に合わない・・・と思われたとき。
 地球から、ウルトラマンバーストが飛んできた。
「おお!」

 決着のときが来た。バーストとルキは宇宙を飛びながら凄絶な格闘を展開。拳と蹴りを何度も
打ち合わせる。ここまでほぼ互角。
 きりがないと見たルキは、次元の穴から援軍を呼んだ。
「あれは!?」
 装甲異星獣・ギアーム・・・だが、以前のそれよりも一回り大きく凶悪な様相。
 ギアームを強化した装甲異星獣・ヘビーギアームは又も全身を分割してルキの身体を覆い、
その戦闘力を上げる。
「これならどうかな? 太刀打ちできるかな、バースト?」
 強化したルキの攻撃力は更に増す。素早い格闘攻撃に打ちのめされるバースト。このままでは
押し切られて地球に侵入される。ならば。
 腹を括ったバーストは、ハイパーバリヤーを展開。広範囲をカバーできる巨大なバリヤーは、
戦っていたバーストとルキを丸く閉じ込める。
「これでもう地球には行けねえだろう」
 バーストは腕を組み、ライトニングバーストの構えを取る。
「ば、馬鹿な! この閉鎖状態で私を爆発させたら、一緒に閉じ込められている君も只では
済ま・・・」
 言い終わる前に、ライトニングバーストは放たれた。
 バリヤー内で大爆発が起き、ルキは粉々に吹っ飛ばされていく。
「む・・・無念・・・」

 だが、最後にルキは笑う。
「まあ・・・いいだろう。私は此処で死ぬ。だがウルトラマンバースト、そして地球人よ。君達は
決してマイナスフォース本陣を倒し、責任を取らせることは出来ん」
「何!?」
「何故なら・・・はははははは!」
 ルキは完全に粉砕された。その体内に充満したレッドポピーガスが拡散し、バリヤー内を
埋め尽くす。爆発のあおりでダメージを受けたバースト(既にカラータイマーは鳴り出している)は
急いでバリヤーを解くが、既にレッドポピーの毒を吸ってしまい、内から湧き上がる獣の衝動に
苦しみ出す。
 だが、泉がヴァルチャーγから、以前開発したレッドポピーの効果解除薬を詰めたミサイルを
撃ち、バーストの周りで炸裂させる。薬が効き、バーストの身体の毒を消していく。獣化は見事
阻止され、全員の団結で得られた勝利に、一同は勝ちどきを上げるのだった。

 地球に戻った公平は、さやかから秘密情報を聞かされる。同じ頃、泉も以前から探っていた
情報を突き止めていた。その内容は奇しくもどちらも同じ。
 マイナスフォース本陣の位置と、彼らの地球攻撃の目的の真相だった。
 詳細は次回に。
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「ウルトラマンバースト、そして地球人よ。君達は決してマイナスフォース本陣を倒し、
責任を取らせることは出来ん」
 言い残して、邪念売人ルキは倒された。
 そして、その通りだった。


ウルトラマンバースト 18 眠れマイナスフォース
マイナスフォース機動要塞 出現


 秋月さやか=ディアナを通じて齎された情報、そして、泉隊員がずっとマイナスフォースに
ついて調べ続け、得た情報は一致していた。
 先ずマイナスフォースの本陣だが、現在、太陽系の最外周に位置している。それ自体が移動
能力のある巨大な機動要塞であり、遂に地球を直接攻撃するために接近してきているのである。
 そして、その要塞内には、人間は一人もいない。無人の自動要塞である。
 要塞を造った、いずれかの異星人がいる・・・いたのだが、今はもう居ない。
 彼らの星は、かなり昔に滅んだ。
 大型機動要塞を造れるほどの科学力を持つ彼らが如何なる理由で滅んだのか。調べると、
星自体の寿命が尽きたとか、新兵器開発実験の際にトラブルがあったとか、互いの無理解による
戦争とか、複数の理由が色々重なったらしい。それについては地球側が何か出来たわけでもなく、
不運としか言いようがないだろう。問題はその先である。

 星の住民達は、自分達が滅んでいくという事実を受け入れることが出来なかった。当然といえば
当然だが。死にたくないので、破滅を回避するためのあらゆる方法を試した。だが、駄目だった。
破滅が近付く中で、彼らの胸中で高まった感情。
 何故、自分達がこんな目に合わねばならない。
 この怒りと悲しみのやり場を何処にも持っていくことが出来ないのなら・・・自分達だけ
こんな目に合うのは不公平だ。他の繁栄を享受している星にも同じ苦しみを味わわせなければ
やり切れない。
 かくして、彼らは滅び行くまでの最後の時間を、他惑星攻撃用の無人要塞を建造することに
全て費やした。その時点で彼らの心から生み出された膨大なマイナスエネルギーが、要塞を
動かすための大きな力となり、更にそれを源として要塞自体が他惑星を攻撃するための
怪獣や巨大化工作員(ルキなど)を無人プラントによって次々生み出して宇宙にばら撒き、更に、
要塞の活動を維持するために、トリムスなどの収集システムを放って他の場所からもマイナス
エネルギーを集めていたのである。既に死んだ主人達の世の中そのものへの恨みで要塞は
動き続けているのだ。
 そんな八つ当たりで攻撃されてたまるかと思っても、残念ながら、その文句を持っていく場所は
もうない。ルキが言い残したとおり、もう死んでしまった相手を罰するのは不可能だ。
 N-BID一同は非常に不快な思いに捉われた。特に気性の激しい影山は椅子やゴミ箱をがんがん
蹴り散らしたが、そんなことをしても何にもならない。疲れたので適当にやめた。
 とにかくはっきりしていることは、このまま放っておくと地球人の都合など一切関知せず
無人要塞が近付いてきて地球を滅ぼすので、現地に向かって阻止するしかないということである。

 ヴァルチャーは合体している三機の動力炉を全て直結することで一時的に光速を越える事も
出来るので、太陽系の最外周に行くこともそう面倒ではない。だが、そのための先方隊として
事に臨むN-BIDの7人の士気は上がらない。蹴っても殴ってもうんともうんとも言わないかかしや
藁人形を殴りに行くようなものである。何の達成感もない。
 作戦決行を前にし、一同がへこんでいる中、ふと、江里が言った。
江里「ルキは、どんな気持ちだったんでしょうか」
一同「?」
江里「こんなことをしても何も得るものがないことは、彼も判っていたはずです。でも、他の星を
滅ぼすためだけに造られたんだからそうするしかない。だからそうしていた彼も、私達と同じ
気持ちを味わっていたんでしょうか」
影山「あいつに同情するのか!? マイナスフォースは地球を滅ぼそうとしてるんだぞ!
そのために多くの地球人を傷つけ、殺したんだぞ!」
江里「それは判ってます! 私だってそのことは腹が立ちます! でも、怒ったってもう
どうしようもないじゃないですか」
公平「・・・そうだな」
影山「公平まで!」
公平「此処で俺達があいつらと同じように只怒りにあかせて事に臨んだら、あいつらも多分
同じように際限なくやり返してくるぞ。そして、お互い何時までも殴り合っているうちに・・・
何時か、宇宙全体が滅ぶ」
 作戦室は沈黙に包まれる。
影山「じゃ・・・どうすりゃいいんだよ」
江里「考えがあるんですが・・・藤堂隊長。協力してくれますか」
藤堂「? 私がか?」

 そして、決行された作戦。
 ヴァルチャーは光の速さを越え、太陽系最外周から迫る大要塞の前に転移してきた。
 要塞の制御システムもそのことは既に想定しており、迎撃用の無人円盤を周囲に配置して
迎撃に当たる。
 だが、ヴァルチャーを三機に分離したN-BIDは襲ってくる円盤に対してこそ反撃して撃ち落すが、
前進しない。要塞に直接乗り込んで攻め入ることをしない。何故なのかが読めず、制御システムは
思案を続けていたが・・・
 その計算速度が落ち、要塞全体の出力が弱まり始めた。

 地球、N-BIDベース。
 藤堂によって大勢集められた、魑魅魍魎系怪獣への対抗のための法力僧達。そして、地球外惑星
開発の際に現地でこれまで地鎮祭を執り行ってきた神主や僧侶。
 彼らが一斉に広大な敷地に集い、マイナスフォースの前身となった、滅んでいった星の住民達の
供養の儀式を行っていた。朗々とした祝詞や読経の呟きが集まり、富士の樹海中に響き渡る。
その効果が太陽系の果てにまで届き、マイナスフォースの募り募った怨念を鎮めていく。
 そもそも要塞の真の動力源となっているのは、マイナスフォースの恨みから生まれたマイナス
エネルギーだ。それを浄化し、エネルギーの供給を止められれば、攻撃しなくても要塞はいずれ
活動を停止する。そう考えた江里の進言だった。だが、江里は地球を守るためだけにこれを思い
ついたのではない。先ず単に、何時までも現世への恨みに捉われて苦しんでいるマイナスフォースの
怨念達を、成仏させてあげたいと思った。現在もヴァルチャーの中で戦いつつ祈り続けている。
「喝ーーーーーッ!!」
 藤堂もヴァルチャーを操縦しながら念仏を唱える。

 円盤軍は次々停止し、要塞も止まりそうになる。しかし、最後の怨念が要塞上部からもやのように
大量に湧き上がり、実体を結んで怪獣になって反撃しようとする。それに対し、両国と一緒に
β号に乗っていた公平は、こっそり後ろのハッチから機内の通路に抜け出し、ウルトラマンバーストに
変身して対応。両国は余り頭よくないので要塞の方にのみ気を取られており、気付かなかった。
 巨大な怨念のもやの前に現れたバーストも、積極的に攻撃はしない。前にあわせた両手は
光線発射ではなく、合掌。なんまんだぶなんまんだぶと唱えて怨念の成仏を祈り続ける。公平=
バーストは正式な般若心経なんか知らないが、別に問題なかったようだ。
 怨念は、次第に現世への執着から解放され、姿が薄まっていき、消えた。
 同時に、巨大な機動要塞もその力をなくし、自然にばらばらに分解し、只のスクラップとなった。

 念のため、マイナスエネルギーの猛威そのものがなくなったわけではない。人の心に他人を
憎んで妬む感情がある限り、これからもマイナスエネルギー事件は起きるだろう。だが、少なくとも、
これ以降、マイナスフォースの電波反応がキャッチされ、彼らの手先が地球に送り込まれることは
なくなった。
「おやすみなさい」
 地球に帰っていくヴァルチャーの中、江里は彼らの安らかな眠りをもう一度願った。
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 地球防衛軍・ガーディアン管轄下の巨大な拘置施設。
 太古の恐竜の生きた細胞を盗み、それを培養して怪獣を作り上げた日本橋博士は、そのかどで此処に拘留
されていた。しかし、相変わらず悪びれる様子などなく、独房の中で何やら笑っている。
「もう直ぐだ・・・もう直ぐあいつが帰ってくる。ふふふ」


ウルトラマンバースト 19 日本列島強奪作戦!!
培養獣王・ゴラース、強食怪獣・レッガー、鋏怪獣・シザーミ、掘削怪獣・グラボーラ 他 出現


 此処暫くの地球は比較的のどかだった。マイナスフォースが事実上消滅して以来マイナスエネルギー事件の
件数も減り、その面倒さに比べれば散発的に出てくる地球怪獣は事件としては遥かに組しやすく、ウルトラマンが
出張らずともN-BIDだけで充分対応できていた。今現在も東京近郊の山中で、影山率いるSJ2隊で一頭の地底怪獣を
攻撃し、間もなく倒すところまで至っていた。
 だがそれは、再び襲わんとしていた嵐の前の静けさだった。
 怖気づいた怪獣は暴れるのをやめ、穴を掘って地下へ逃げようとする。その前に影山が殲滅しようとしたとき。
 地下から飛び出した巨大な腕の鋭い爪が、怪獣の胸を貫き、絶命させた。
『軟弱者が。敵前逃亡する奴など生きている価値も無い』 
 地下から出てきた影は、死んだ怪獣を引き裂いて食らう。かつてカツラギ諸島を襲って多くの保護怪獣を食い殺し、
ウルトラマンバーストとタイマンの後逃げ延びて姿を晦ましていた怪獣・レッガーだった。
 レッガーは都心の方向に向かって侵攻しつつ、吠える。いや、普通の人間には吠え声にしか聞こえないが、
ウルトラマンである公平には言葉として聞き取れた。
『出て来い、ウルトラマンバースト! さもなくば人間どもの住みかに攻め込んで暴れるぞ!』
 自身としても因縁の相手と見ていた公平は、N-BIDベースから出てバーストに変身。現地に向かって
レッガーと対峙した。レッガーは宿敵との再会を果たして歓喜しつつ、回想する

 現在、バーストもN-BIDも知らない場所で、日本侵略を狙っているものがいる。『そいつ』は、事前にそのことを
レッガーに伝えに来た。日本侵略がどうのこうのはレッガーの知ったことではないが、バーストが日本も含めた
地球の平和を守っている以上、日本侵略の旨を伝えに来た『こいつ』とぶつかるのは必至だろう。それはレッガーに
とっては面白くない。奴を倒すのはこの俺だ、横取りは許さんとレッガーは宣言する。
 すると『そいつ』はあっさり、それで構わんと言った。
 お前がバーストを倒し、日本侵略においての障害を取り除いてくれるなら寧ろ助かる、止めはせんからやってくれと
そいつは言った。
 意図は判らないが、もたもたしていると『そいつ』の気が変わってバーストを横取りしようとするかも知れない。
元よりずっと機を伺っていたレッガーはバーストと戦うことにした。

 その頃『そいつ』は、太平洋の海底で、海の怪獣・シザーミと戦っていた。シザーミは一言で言うと、二足で
直立した巨大なカニだ。固い甲羅に、両手の鋏や口から吐く粘性の泡を武器とし、近寄らせない。勝負は長引いていた。
と、シザーミは突然身体の自由を奪われた。海底の岩盤を掘り砕いて現れた地底怪獣・グラボーラが、鉤爪の大きな
前足で足を押さえつけている。その隙に『そいつ』はシザーミを狙い、何かの塊を口から飛ばし、シザーミの身体に
付着させた。それは、忽ちシザーミの体内を侵食していく。絶叫するシザーミ・・・

 日本。
 バーストにかつて手傷を負わされた屈辱を執念の糧とし、格闘技を鍛えていたレッガーは手強い。炎や光線を吐いたり
変な超能力を使ったりせず、普通に組み合うだけでバーストのスタミナを奪っていく。カラータイマーが鳴り出す。
これ以上長引くのは不利だ。バーストは下がり、ライトニングバーストの構えを取る。レッガーも遂に勝負が決まると
意気込み、バーストの攻撃に備えて回避の機を測る。消耗した同士、にらみ合いが続く・・・

 そこに、水が差された。
 海底のときと同様に不意を突いて地下から現れたグラボーラが、バーストを後ろから鉤爪で殴り、痛打を与えた。
倒れるバーストに追い討ちをかける。何が起こったのかと気を取られたレッガーの背後からも、シザーミが地中から
飛び出し、泡を吐いてレッガーを固めてしまう。
 シザーミの目は、正気を失ったように虚ろだ。グラボーラの目も。
 痛みで目が眩む中、まだ視界を確保できているバーストの眼前、戦場から間合いを取った場所に、山向こうから
『そいつ』が、地響きを立てて現れた。
『どういうことだ!? 止めはしないと言ったんじゃないのか!?』
 泡で動けないレッガーが叫ぶ。
『まだ気付かんのか。お前を予めウルトラマンバーストにぶつけ、消耗させてから倒し、その後日本列島を
頂こうという俺様の計略に』
 テロップの吹き出しで語る『そいつ』。
 培養獣王・ゴラースは、凶悪な顔で笑う。
『脆弱な人間どもを日本にはびこらせ、大きな顔をさせておく必要は無い。これより日本列島は、我々怪獣が
支配する』

 日本橋博士は独房で哄笑。
「変わるぞ! 日本が、世界が変わる! 私の生み出したゴラースの手で! あはははは!」
 ぴどーーーーーんと稲妻が走る。
 凄くいい天気の空に。
 これもマイナスエネルギーのなせる業だろうか?

 続く。
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ウルトラマンバースト 20 ゴラース東京を蹂躙
培養獣王・ゴラース、強食怪獣・レッガー、鋏怪獣・シザーミ、掘削怪獣・グラボーラ、 蘇生怪獣・ネクロス 出現


 ウルトラマンバーストは、培養獣王・ゴラースの罠にはまり、レッガーとの戦いで消耗していた
ところを奇襲された。グラボーラに痛めつけられ、一方でレッガーを粘性の泡で拘束したシザーミも
加わって二対一でバーストを攻める。
 カラータイマーの点滅が止まって光が消え、遂に力尽きたバーストは、透過して消えてしまった。
 宿敵と認めた相手との対決に水を差され、動けないままいきり立つレッガーを後に、ゴラースは
二頭の怪獣を率いて東へ去っていく。
 目標は、東京都心。

 怪獣軍団の侵攻に対し、N-BIDを筆頭に防衛軍側は迎撃戦を挑むが、ここでもゴラースの方が上手だった。
地中を素早く移動できるグラボーラを先行させ、地盤沈下を起こして市街に混乱を起こす。防衛側の対地底
装備といえばN-BIDのグランドライザー一機くらいしかなく、幾らスペックが高くてもそれだけで対応
仕切れるものではない。グランドライザーを操る両国と松野がおたおたしている隙に、本隊のゴラースと
シザーミが地上の防衛隊を蹴散らして東京に侵入。シザーミは泡を吐いて市民を次々固めて動けなくしてしまい、
一方ボスのゴラースはそのパワーに物言わせ、口からの破壊光線でビルを次々倒壊させる。
 東京は、あっさり炎の地獄と化した。

 ゴラース軍団への対策を練るため、そのゴラースの生みの親である日本橋博士が特別処置で仮釈放され、
N-BID作戦室に召喚された。N-BIDは召喚などしたくなかったのだが、ゴラースについて一番詳しいのが
日本橋だから仕方ない。怒りに耐えている野郎どもの前で日本橋は高笑いし、
「ゴラースの今回の快挙を見ても判るだろう。力なき正義や秩序とかのお題目など何の役にも立たん。能力と
それを十二分に生かす器を持った者が最終的には天下を取るのだ。ゴラースは最強の怪獣で、それを作り上げた
私は最高の天才だ。だから無能力な者達に何をしてもいいのだ!!」
 と言って、姪の江里に椅子で殴られて頭を割られた。
「痛いなあ。叔父に何をするんだ江里」
「どうせ死なないんだから問題ないでしょう」
 その通り、頭から血と脳漿を噴出しながら、超再生能力を持つ日本橋は平然と起き上がっている。怪我も直ぐ
治るだろう。とにかく彼は情報の提供を始める。改心してゴラースの暴挙を食い止めようとかいうのではなく、
並大抵のことでは自身の傑作・ゴラースは倒せないだろうという絶対的な自信から来る余裕である。N-BIDは
腹が立つが、実際ウルトラマンバーストさえも倒されてしまっているので何も言えない。
 ゴラースの操っている二頭の怪獣をスキャンしたところ、体内に異物・・・ゴラースが吐いた生体組織の塊、
『ゴラース細胞』が植えつけられ、怪獣の身体に侵食している。これによってゴラースは他の怪獣を自在に
操ることが出来る。潜伏しているうちに自己進化で後天的に生み出した能力らしい。ゴラースはゴラース細胞を
使い、どんどん手下の怪獣を増やして日本を乗っ取る気だろうと日本橋は推測した。
 そんなことをさせるわけには行かない。藤堂隊長はゴラース細胞を無効化する何らかの手段を開発するよう
日本橋に命じ、日本橋も手を考え、泉も技術協力しているが、今回の戦いには恐らく間に合わない。N-BIDは
N-BIDで、現在堂々と東京に居座っているゴラース軍団を撃退せねばならない。ウルトラマンバーストがいなくても。

 バーストだけではない。今回敵に挑むのは、又しても公平を欠いた六人である。何時の間にか大怪我して
N-BIDベースの前で倒れていた公平は、又かと愚痴られながら医療部に運び込まれていた。
 6話や16話に続いて3回目でいい加減周りも怪しみそうなものだが、今回も又何時の間にか宇宙警備隊から
ディアナ=秋月さやかが看護婦として医療部に潜入し、苦心して情報操作を行って偽装工作をしていた。
だが、もうそろそろ限界であろう。さやかは、公平がある意味レッガーとの私闘でバーストに変身したことを
叱責。挑発に乗らずにN-BID隊員として対応する手もあったはずだ、今度同じ事態になったらそろそろフォロー
しきれないと釘を刺した。公平は一応考え込んでいるが、心底判ったかどうか。イレイズ先輩はうまくやったよなー、
何で殆んどの歴代皆正体のばれる確率が高い防衛隊にわざわざ入る慣例になってるのかな、俺もいっそN-BIDを抜けて
市井に一人で潜伏して変身しようかな、いやでもN-BIDの皆とわいわいやってるのも楽しいしなーとか言っている。
 不安は残るが、今は東京の危機をまず救わねばならない。さやかは今回もサイキックケアで公平の傷を治した
後、彼が戦場に向かうに当たり、今回は自分もディアナに変身して戦うことにした。公平は驚いたが、
考えれば只でさえ敵怪獣は三頭もいる。素直に共闘することにした。

 廃墟寸前の東京。激しい戦いで頓挫したグランドライザーから両国と松野は脱出し、果敢にグラボーラに
白兵戦を挑むが、蚊ほどのダメージも与えられない。藤堂、江里、影山は上空からヴァルチャーでシザーミを
攻撃するが、固い甲羅の前に然程効果は無く、泡の反撃をかわすのが精一杯。ゴラースは相変わらず悠然と
戦いを見届けている。

 そこへ、二人の巨人が飛来した。
江里「ウルトラマンバースト!」
影山「おお、生きてたのか!」
藤堂「それに・・・もう一人のウルトラマンも」
 二人のウルトラマンの援軍を受け、N-BIDの士気が上がる。

 ディアナはサイキックケアの効果を切り替えてシザーミが街に吐いた泡を分解し、固められていた人々を解放。
自分に向かってきたシザーミの泡をバリヤーで防ぎ、鋏の攻撃を手で弾いて捌き、更に敵の突進の勢いを逆利用
して宙高く投げる。落ちてくる前に、時空教練場からウルトラジープを召喚、乗り込んで空中に突撃。ジープで
シザーミをはねて粉々に粉砕した。
 バーストは、両国と松野に襲い掛かるグラボーラの尾を掴んで投げ、地に叩きつける。グラボーラは穴を掘って
地中に逃げ、地下を移動して奇襲を狙う。だが、来ると判っていれば油断はしない。バーストは目から透視光線を
発してグラボーラの位置を捕捉。飛び出してきたところを掴んで、ウルトラ山嵐でこれも宙に投げ飛ばし、更に
アタックバリヤーで身を覆って体当たり。粉々に砕いた。

 残るは一匹だけと二人でゴラースを狙うが、ゴラースは全く驚いていない。にやりと笑ったあと、地鳴りが
響き、別の怪獣が一匹地下から現れた。頭に生えた、派手な羽飾りのような羽毛。
 これも操られているのかと江里がスキャンするが、ゴラース細胞は発見されない。この怪獣ネクロスは、
怪獣が日本を支配するべきだというゴラースの考えに同調し、自主的に協力している。そしてネクロスは、
異様な念力を体から発した。すると。
 粉砕されたシザーミとグラボーラの破片が集結し、元の姿に戻り、生き返ってしまった。
 愕然とする防衛側。
 ネクロスは、念力でマイナスエネルギーを制御し、死んだ怪獣を蘇生させることが出来るのだ。
 四頭に増えた敵陣の中、ゴラースは更に邪悪な笑いを浮かべる・・・!

 一方、東京郊外の山中。轟音が響いた。
 泡で拘束されていたレッガーは、長い長い踏ん張りの末、硬化していた泡を力押しで砕き破り、自由を
取り戻した。ぜえぜえ息をついているが、
『ゴラース・・・このままでは済まさんぞ!!』

 続く。
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