ウルトラマンバースト 21 大きな英雄!?
培養獣王・ゴラース、強食怪獣・レッガー、鋏怪獣・シザーミ、掘削怪獣・グラボーラ、
蘇生怪獣・ネクロス 出現


 ウルトラマンバーストとディアナは、怪獣シザーミとグラボーラを共同作戦で撃破したが、怪獣軍団の
リーダー・ゴラースは、仲間の蘇生怪獣・ネクロスを呼び、ネクロスは自身の超能力で二頭の死んだ怪獣を
復活させてしまった。敵が四頭に増え、防衛側は再び不利に。
 ネクロスは更に念力を二人のウルトラマンに放射し、両者は思うように動けない。息を呑むN-BID・・・

 雄叫びと共に現れた介入者。
 怒りのレッガーがネクロスに跳び蹴りを放ってふっとばし、念力を乱した。自由の戻った二人のウルトラマンが
膝を付く。
『レッガー!?』
『よくもはめやがったな、ゴラース。お前の思い通りには行かさんから覚悟しろ!』
 二頭の巨獣が吹き出しで会話する。ほのぼのした図に見えるが、言ってることは物騒だ。
『何を言い出すかと思えば』
 ゴラースは相変わらず悪びれない。
『強いものが勝ち、弱いものは淘汰されるというのはお前の信条だったはずだろう、レッガー。俺様の強さが
力だけでなく、策略においてもお前より優れていただけの話だ。悔しかったらお前も俺様を騙して出し抜けばいい。
それだけの知恵がお前にあるかは怪しいがな』
『何い・・・!!』
『そういきり立つな。卑小な人間など滅ぼして地球を牛耳るべきは我ら怪獣という考えは、お前も同じだろう。
俺様の下へ来い。共に怪獣の天下を取ろうではないか』

 レッガーは無言で、神速で瓦礫のつぶてを投げた。ゴラースは黙って片手で受け止める。
『断る。お前は信用できん』
『そうか。残念だ』
 さして残念そうではないゴラース。ネクロスがダメージから立ち直ったところで、
『後日出直そう。今度はもっと俺様を楽しませてくれ』
 ゴラースは光線を地面に吐いて爆発を起こし、その煙に紛れて怪獣軍団は消え去った。
 レッガーは歯軋りをすると、自分も穴を掘って地底に消える。追跡しようにも、防衛側にはもう余力が
残っていなかった。

 人間の姿に戻ってN-BIDベースに帰ってきた公平とさやか。公平はサイキックケアを浴びたので当然傷が
完治している。驚くN-BID一同に、医療部で開発された最新式の高速治療法を試したとか、さやかは一応それっぽい
偽装の説明をしてごまかした。すると、
「よかった!」
「へ?」
 真っ先に、江里が素直に公平の傷の完治を喜んだ。それに合わせ、他の男達も喜ぶ。公平とさやかはいささか
拍子抜けした。藤堂隊長と影山については、もう一々突っ込むのが面倒臭くなっただけだったのだが。

 七人揃ったところで作戦会議。怪獣軍団のリーダー格のゴラースもマークしなければならないが、とにかく
ネクロスを最初に倒さないことには他の怪獣を幾ら倒しても蘇生させられてしまう。それに関しては、泉が
特殊弾丸射出砲『スパーク9』を開発した。SGTの荒井隊員の開発した『スパーク8Z』からの技術供与もあったという。
ネクロスが収束させるマイナスエネルギーを拡散させて無効化し、同時に対象を木端微塵に吹き飛ばす強力な武器だ。
次の戦いでは他の怪獣を牽制し、まずスパーク9をネクロスに命中させる方針となった。ゴラース対策についてはまだ
日本橋博士が研究中。
 後日、ゴラースから挑戦状が来た。怪獣スケールの毛筆の巨大な手紙で、N-BIDベースの前に何時の間にか置いてあった。
ウルトラマンイレイズの最終回での榊信也への手紙以来だ。
影山「ふざけやがって!」
 どうやって基地の人間に気付かれず挑戦状を届けたのかへの突っ込みはもうない。

 N-BIDは決闘の場として指定された、ゴラース軍団が最初に現れた東京郊外の山岳地帯へ向かった。色んな方面から
『じごく谷』と呼ばれている果し合いの定番の地点である。決闘にN-BIDが敗れれば、怪獣軍団は再び東京に侵攻
するという。負けられない。
 ゴラースは、じごく谷の一角の岩山に何時の間にか巨大な自動ドアが作ってあり、それをスライドさせて開けて現れた。
N-BIDは突っ込みたいのをひたすら我慢。ペースに乗ってはならない。
 夕陽の中、既に他の三頭の怪獣も揃っている。N-BIDに同行した通常兵器部隊が他の怪獣を食い止め、その間に
スパーク9をそれぞれ搭載したヴァルチャーとグランドライザーが空と地からネクロスに突進。だが、ネクロスの念力に
妨害され、中々弾丸を当てられない。通常部隊はどんどん消耗していく。ゴラースは今回も後方で腕を組んで笑って
見ているのみ。
 見かねた公平は隙を見てバーストに変身。さやかもディアナになって戦列に加わり、通常部隊に代わって二頭の怪獣の
妨害に入るが、それでも尚N-BID本隊はネクロスを仕留められない。スパーク9の残弾が減っていく・・・

 そのとき、ネクロスの足下から地を破って、レッガーが飛び出した。
 レッガーはネクロスを打撃で痛めつけ、弱ったところで両手で高く抱え上げる。そしてN-BIDに、
『今のうちに撃て!』と吠える。
 言葉が通じたわけではないが、絶好の機と見たグランドライザーの両国と松野は、残りのスパーク9を一気に
ネクロスに叩き込んだ。ネクロスの巨体はどんどん欠けて弾け飛び、遂には完全に粉砕された。
「やったぞい!」「此処から一気に逆転や!」
 だが、虎の子の戦力のネクロスをやられて怒ったゴラースは、超長射程の破壊光線を吐き、レッガーの背に撃ち込んだ。
レッガーは、ゴラースに一泡吹かせた充実感に満たされつつ、爆発して跡形も無く散った。
 その光景を見て、バーストは激昂した。怒りのライトニングバーストをゴラースに直接発射。
 だが、ゴラースの悪運はまだ尽きない。シザーミとグラボーラを操り、自分の前方に配置して盾にする。
 爆死の瞬間、二頭の怪獣は吠えた。
『い・・・嫌だ、死にたくない!』『助けてくれー!!』
 叫びも空しく二頭分の大爆発が起こった後、ゴラースは又も要領よく逃げ去っていた。

 怪獣軍団に大打撃を与え、ゴラース一頭を残すのみにすることには成功した。多くの犠牲と引き換えに。
「強敵(とも)よ、お前達の仇は討ってやる。必ず俺の手でゴラースを葬る!」
 夕陽に誓う公平。茜空には、にやり笑いでサムズアップするレッガーの面影が半透明で浮かんでいる。
後、シザーミとグラボーラも。
 別にこれらの怪獣達は人類に味方したわけじゃなく、怪獣同士の内紛で死んだだけなのだが、公平の士気が上がって
いるのでまあいいかとさやかは特に突っ込まなかった。

 ゴラース編、まだ続く。
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 九州・阿蘇山。
 その地下に、何時の間にか巨大な空洞が掘られている。
 そして、その中心部に広大に広がる、不気味に蠢く細胞組織の沼。
 それを見て邪悪に笑う、培養獣王・ゴラース。


ウルトラマンバースト 22 決戦! ウルトラいちょう返し
培養獣王・ゴラース、クローンゴラース軍団 出現


 今回も、N-BIDベースに巨大挑戦状が届けられた。前回の戦いで手駒を失ったため、ゴラースは、
自らのゴラース細胞を阿蘇山のマグマによる地熱で大量に培養し、それをばら撒いて又他の
地球怪獣に手当たり次第に寄生させ、手下にしようと考えている。その企みをわざわざN-BIDに
教えるのは、止められるものなら止めてみろという挑発であることは明らかだ。
 だが、N-BID一同はもう激昂はしなかった。そこまで言うなら、満を持して阻止に向かうのみ。
無論罠があるだろうが、いずれにせよ人類を守るためには計画を潰さないといけない。
 阿蘇山に向かうにあたり、今回もN-BIDのみならず防衛軍の通常兵器部隊で一斉に攻撃を掛ける
ことになる。量産できる限りのスパーク9が各機動兵器に装備され、更に、日本橋博士がやっと
対ゴラース用の特殊弾丸を作り上げた。ゴラース細胞の代謝を急激に加速させ、瞬時に細胞を劣化
させて死に至らす薬が仕込まれている。
「だが、やるなら急げよ。ゴラースは自己進化によってどんどんパワーアップしている。私の作った
弾丸も直に効かなくなるかもしれんぞ」

 で、現地に向かった大部隊は、阿蘇山を包囲。現地を偵察・調査しつつ、攻め込む機を伺っていた時、
一帯に地鳴りが起き、地下から一斉に現れた。
 大きさ10mほどの、白いゴラースの軍団。山を下り、包囲網に迫ってくる。
 ゴラースが培養した細胞組織の沼の副産物である。
 地下空洞で沼を見守るゴラース。
『時間稼ぎには丁度いい戦力だろう。もう少しで、この大量の細胞組織が自ら動くようになり、一斉に
各地の地底に生息している怪獣どもに寄生するために飛び立つ。それまで俺様のクローン軍団の相手を
してもらうぞ、人間ども』

 防衛軍側には既にスパーク9や特殊弾丸などの装備もあり、クローンゴラースを倒せないという
ことはない。だが、とにかく敵の数が多い。このままでは、大量のゴラース細胞が日本中に蔓延し、
ゴラースの意志で動く無数の怪獣軍団が編成されてしまう。
 藤堂隊長はN-BIDの隊員達に、ヴァルチャー各機やスペースジェット2号をあるだけ投入し、各々
散開して各自でクローンを攻撃するよう支持を下した。各員散っていく。
 これを機と見た公平は、適当なタイミングで目立たない場所に自分のSJ2を降下させて地上に降り、
ウルトラマンバーストに変身した。人間の状態で戦い続けている時間は無い。変身と同時に、
防衛軍が見上げる中、地下空洞へテレポートした。
江里「ウルトラマン・・・何故此処に?」
藤堂「ゴラースと決着を付ける気だ。我々も一刻も早くクローン軍団を殲滅するぞ」

『来たな』
 ゴラースが振り返る。対峙するバースト。両者、決着のときだと自覚していた。
 バーストは変身時間のタイムリミット対策として、さやか=ディアナから、ウルトラコンバーターを
与えられている。かつて、大いなる先達・ウルトラマンエースが対ギロン人・アリブンタ戦で苦戦したとき、
ゾフィーから与えられたあのアイテムと同じもので、腕にブレスレットとして装備することでエネルギーが
補充され、一時的に戦闘時間を大幅に伸ばせる。だが、どちらにしてもゴラースに敗れて倒れれば意味が無い。
長引くと沼のゴラース細胞が成長してしまうということもある。早めに決着をつけなければならない。

 戦いが始まった。両者微妙に距離を取り、巨体からは想像もつかない身のこなしで動き捲る。ゴラースは
技の出し惜しみをせず、急速接近から尻尾や腕での打撃狙い、又離れて口からの光線や襟巻きブーメラン、
更に、口のビームジェット噴射と同時にバーストに背を向け、鋭い背びれで体当たりしてくる(ジャンプしたとき
何故か空中でシェーのポーズをする)など、怒涛の攻撃。一方、バーストは牽制するようにバーストスラッシュでの
弱攻撃の連打のみ。
『何をしている? 貴様の力はそんなものではあるまい。もっと俺様を楽しませろ!』
 バーストとしても威力のある技を出したいのは山々だが、ライトニングバーストやエクスプロージョンキックは
威力のある分モーションが大きく、隙が出来る。ゴラースは動きも早い。隙を狙われたら目も当てられない。
勿論、隙を狙うための挑発であろう。それよりも、バーストにはある考えがあった。時間の許す限り、逃げ回り
ながら冷静にゴラースの動きを観察し続ける。次第にダメージを受けながら。

 やがて、ボロボロになり、膝を付くバースト。カラータイマーも点滅し始めている。
『・・・つまらん。貴様には期待していたのだが』
 ゴラースは襟巻きをはずし、高く構える。襟巻きがブーメランになり、更に大きく肥大し、縁が鋭い刃になる。
『せめて一思いにとどめを刺してやるわ! さらばだ!』
 巨大なブーメランが投げられ、飛んでくる。
 地下空洞に、切り裂く音が大きく響いた。

 向き合い続ける、二つの巨大な影。
『・・・このタイミングを狙っていたのか』
 愕然と呟くゴラース。
 素早く旋回させた腕を止め、構えたままのバースト。
 彼に飛んでいったはずのブーメランは、ゴラースの背後の岩壁に刺さっている。

 再現映像。
 バーストは全神経を集中し、自分に迫るブーメランの動きを見つめ続ける。スローモーションのように
ゆっくりと迫る刃。
 それにバーストは手の先で触れ、力の流れを確実に読みながら捌いてベクトルを逆転させ、ゴラースへと
投げ返した。ブーメランはゴラースのいる空間を通り抜け、背後の壁に突き刺さった。
 バーストの脳内には『史上最大の侵略・後編』のあのピアノソロの旋律が激しく響いていた。セブンから奪った
アイスラッガーを投げた改造パンドンが、逆にいちょう返しでアイスラッガーを投げ返され、首を落とされたあの
クライマックスの光景も。
 ゴラースはこれまでで恐らく最大の強敵だ。普通に必殺技を放っても効かないか、交わされる可能性が高い。
弱い攻撃しか出来ないと見せて油断させ、その隙を突き、ゴラースの得意としている必殺攻撃を跳ね返すのが
一番有効だと判断したのである。

『・・・見事だ』
 素直に賞賛。
 不敵な笑いを浮かべた顔のまま、巨体が正中線から左右に真っ二つに裂け、獣王は散った。
 同時に、彼の精神制御を失ったクローン軍団も全て倒れて死に絶え、泡になって溶けて消えた。巨大な細胞組織の
沼も同様に。
 長く続いた一大決戦は、此処に終結を見たのである。

 ゴラース殲滅に力を貸した日本橋博士だが、これまでゴラースが起こした騒動を思えばそのくらいでは罪は消えず、
又獄中に戻されてお勤めの続きとなった。にもかかわらず、彼も平然と笑っていた。
「まあ、生きていれば後もう一回くらいできるだろうさ」
 全然反省していないことを言って。

 防衛側一同勝利を喜ぶ。再度集まったN-BIDの七人も。
 そんな中、江里は、皆と一緒に笑っている公平の雰囲気が微妙に変わっているのを感じていた。
 一回り大きくなったような。
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 富士の裾野の演習場に、多くの機動兵器と、地球防衛軍・ガーディアンの兵士達が集まっている。
 ガーディアンは下部に複数の防衛組織を持ち、N-BIDもその一つだが、この富士近辺にもう一つ、
拠点・アイアンタワーを持つ防衛隊・EARがある。今回の集まりは、両組織の親睦を兼ねての合同演習である。
岡島総司令の下開かれた開会式で、神田総監と静戦闘参謀、藤堂隊長と赤山隊長が互いに挨拶し、そして
演習が開始された。


ウルトラマンバースト 23 超越爆裂!!
光翼怪獣・ヴァンヴァリアル二代目、姑息宇宙人・ペプラ星人二代目 出現


 上空では、石野副隊長のエアーストーム率いるD-ウイング隊と、影山のヴァルチャーα率いるスペースジェット
2号(以下、SJ2)隊の連携飛行の訓練が行われている。歴戦の空の勇士たる石野を前にして影山は緊張し、
逆に石野からリラックスを促される。ともあれ、両者のフォーメーション飛行のレベルは非常に高く、
パイロット達を感嘆させる。
「あ〜・・・」
 SJ2隊の中に公平のカスタム機も混じっているのだが、はっきり言って影が薄い。
「だ・・・大丈夫ですよ小原隊員。ええ」
「何が?」
 何のフォローにもならない江里のN-BIDベースからのオペレーション。
 地上では戦車隊の訓練が行われ、その旗印となっているのは両国と松野のグランドライザー。
両国「空中戦じゃEARさんらにゃかなわんからのう」
松野「せめて地上ではええとこ見せんとあきまへんで」
 稼動しているライザーを前に、見学に来た道城と和崎に泉が解説。
泉「N-BIDの前身組織であるBIDの地底戦車・ジオライザーをベースに、大型化して出力を上げつつ武装数も
増やしたのがこのグランドライザーです。汎用性の高さから地上戦でも頻繁に使われてますね」
和崎「はー、なるほど」
道城「うちの目立った地上兵器は、戦闘車両のエアロスぐらいだしな。空中戦も見込んでの装備だし」
泉「尚、現在はスペックを下げる分生産性を高めた地底戦闘装甲車の量産計画も予定されてますね」
道城「ドリルタンクの量産部隊・・・」
和崎「なんか壮絶な図が・・・」

「そんなことをされてたまるか」
 響き渡った声に、一同は思わず誰だっ何処だっと周りを見回す。
 周りにいた兵士の一人が出し抜けに姿を変え、宇宙人となった。
「ペプラ星人!?」
 14話で地球侵略を企んだ敵と同種の別個体の正体を、泉が直ぐ看破する。
「これ以上地球防衛軍の戦力増強を行われては都合が悪い。阻止させてもらうぞ」
 同時に、他の大勢の兵士達も一斉に星人に変身。泉達は驚く。
「今回の演習に乗じて一気に貴様らを殲滅するため、潜入させてもらった」
「本物の兵士達はどうした!?」
 リーダーの星人はにやりと笑い・・・

 富士樹海の一角。
 既に殺された本物の兵士達が、大勢打ち捨てられている。

「貴様あッ!」
 和崎が憤る。道城も怒り、生き残っている他の兵士達も含めて、星人達との白兵戦になる。しかし、
星人達は強い。一般兵士はどんどんなぎ倒され、道城と和崎も追い詰められていく。開発・分析担当で
戦闘向きではない泉は最初から当てにならず、身を守るので精一杯・・・

 だが、形勢はあっさり逆転。
 星人達の陣の一角が、後ろから崩れる。
「我々に紛れ込んで内部から崩そうとは」
「命知らずな連中だ」
 崩れた位置の後ろから音もなく現れたのは、勿論、
道城「津上隊員、川浪隊員!」
 現れた格闘戦の両雄は、星人達を次々悶絶させていく。その様に驚くリーダーのペプラ星人。
「ば、馬鹿な・・・」
「わしらをなめてもらっては困るのう!」
 事態を知ってグランドライザーから降りてきた両国も、リーダーを背後から掴んで軽々と持ち上げ、
投げ飛ばして地に打ち付けた。
 星人の兵士達は忽ち一掃された。
「うぬぬ・・・しかし、戦力はこれだけではない」
 リーダーの星人は後方の安全域に下がり、
「出て来い、ヴァンヴァリアル!」
道城「何!?」

 かつて宇宙から来てEARと交戦した怪獣・ヴァンヴァリアルは、ウルトラマンオーバーの
初陣において倒された。しかし、地球侵略を企むペプラ星人によって再生・強化改造され、強力な
侵略生体兵器として甦ったのだ。
 上空に飛来したヴァンヴァリアルは、演習中だった防衛軍の戦闘機を次々墜とし始める。
「おのれ・・・!」
 これ以上犠牲を出させまいと、公平はSJ2で怪獣に突撃。
「待て、公平!」
 影山の制止も間に合わず、スピードが遥かに増したヴァンヴァリアルの爪の一撃を受け、SJ2は
あっさり撃墜。だが、公平の目に燃える炎は勢いを失わず、墜落していくSJ2の中でウルトラボレットを
炸裂させ、ウルトラマンバーストが出現した。
 乗っていたSJ2を救い上げ、そっと地上に降ろすという偽装も忘れない。
 直ぐ空に戻り、戦闘開始。しかし、空においてヴァンヴァリアルは驚異的な運動性能を誇る。バーストは
相手を捕らえることも出来ず、空中で滅多打ちにされる・・・!

 そこへ、地上から一条の眩しい光が迸り、ヴァンヴァリアルに直撃させ、地に叩き落した。
 地上で道城が変身して現れたウルトラマンオーバーの、ハイスパーク光線である。
 危機を救われたバーストも地上に降下し、オーバーと一瞬だけ目を合わせるが、直ぐに怪獣に向かって
並び立つ。
 二大巨人の共同戦線、此処に成る。

 だが、それを以ってしても、地上においてもヴァンヴァリアルの強化されたパワーは圧倒的である。
格闘戦だけで、両巨人は同時に怪獣に掛かっていっても振り回され、何度も地に叩きつけられる。
ヴァンヴァリアルは倒れたオーバーに襲い掛かり、押さえつけて噛み付こうと迫ってくる。
気力を絞って身を起こしたバーストが高くジャンプし、エクスプロージョンキックをヴァンヴァリアルの
背に放ち、ダメージを与える。ヴァンヴァリアルは吹き飛ばされ、火花を吹いて回りながら倒れるが、
それでもまだ致命傷には至らず、然程間をおかずに立ち上がってきて猛り吠える。
 別々に攻撃していても駄目だ。連携して力をあわせなければ勝てない。オーバーとバーストは、
アイサインだけで互いにそれを了承した。
 バーストが先行し、怪獣に組み付き、ウルトラ山嵐で投げ飛ばす。空中で動きが大降りになり、
隙が出来たヴァンヴァリアルに、オーバーのスペシウムソードが突き刺さる。苦痛に絶叫し、又地に
落ちるヴァンヴァリアル。
 今がとどめを刺す絶好の機だ。
『オーバーヒートバスター!!』
『ライトニングバースト!!』
 両巨人の必殺光線が完全にタイミングを合わせて叩き込まれ、ヴァンヴァリアルはよろめいた後、
遂に粉々に吹き飛んだ。

「あんたがウルトラマンオーバーか。いるのは知ってたけど、変身して出会うのは初めてだったな」
「ああ。今回の協力感謝する、ウルトラマンバースト」
 人間体に戻った公平と道城は、笑って握手を交わした。
 だが、
「安心するのはまだ早い!」
 そう、ペプラ星人のリーダーが残っていたのだ。星人は巨大化。
「お前達ウルトラマンには、地球上で変身して戦うのに制限時間があるのは知っているぞ。
ヴァンヴァリアルと全力で戦った直後で消耗している今、直ぐ又変身して戦うことは出来まい」
 しまったと口を噛む公平と道城。
「この隙に、私自らの手で防衛軍の戦力を一掃して・・・」
 言い終わる前に、巨大星人は背後からの砲撃を受けて吹っ飛んだ。
 グランドライザーに残った松野を筆頭に、地上部隊の総攻撃だ。更に、和崎のエアロスが飛行モードで
星人に急接近、顔面に銃撃。顔を押えて苦しむ星人。とどめに、石野のストームと影山のヴァルチャーαの
同時ミサイル射撃で、巨大ペプラ星人は、あっけなく爆発四散した。

 自分達だけでなく、故郷の地球を守るため、人類戦力も確実に強くなっている。そのことを
見せられた公平と道城は充実感を覚え、再び握手を交わしたのであった。
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ウルトラマンバースト 24 帰ってきた翼
強奪宇宙人・ドロ星人 出現


 N-BIDは、現在空中戦の要として運用している大型戦闘機・ヴァルチャーをベースに、
『ヴァルチャー2号』を建造、完成させた。
 EARに供出するためである。
 先にEARが対峙した事件、強力な宇宙怪獣と、それと並行して日本の全上空がマイナスエネルギーの
暗雲に覆われた事態。宇宙怪獣は一度ウルトラマンオーバーを倒したほどの戦闘力を誇り、
未曾有の危機に対処するため、EARはその所持する大型戦闘機、ストーム、タイフーン、
ハリケーンを越える性能を持つ戦闘機をガーディアンの下の他組織の装備から物色し、
やむを得ず一時的に強奪するという強攻策に出たのである。
 その行動に関するEARメンバー当人達の反省という問題はさておいて、今後の対策という
意味で、十分な性能を持つ機体を供出することは地球防衛の活動上無駄にはならないのではないか、
そう考え、N-BIDはヴァルチャー2号を開発したのである。
 ヴァルチャー2号も三機に分離して立体戦法を取ることが出来、α号はレーザー砲、β号は
ガトリング砲、γ号は連装マイクロミサイルを搭載しているが、必要に応じて武器を換装、
カスタマイズ出来るようになっている。又、元祖同様合体時に各機のエンジンを直結して光速を越える
速度を一時的に出せるようにもなっているが、パイロットの事前訓練が必要である。
 搬入期日が来て、ヴァルチャー2号はN-BIDベースからの遠隔操作で飛行、影山、公平、松野、両国の
各隊員達の乗るSJ2隊の護衛でアイアンタワーに直接飛んで向かうことになった。
 直ぐ近くであることもあり、特に問題も無く片付くと思われたのだが。

 突然、ヴァルチャー2号のコントロールが乗っ取られた。
 N-BIDベースから江里と泉がコントロールを取り戻そうとするが、外部から強力な電波が干渉して
強制的にヴァルチャー2号を操っている。通信機から声が聞こえてきた。
「はははは! この兵器はいただいた!」
 続いて、搬送途上の樹海から声の主、地球侵略を狙う宇宙人・ドロ星人が巨大化して現れた。大きな耳に
猿のような顔、手に持った棍棒とカンテラ。
 星人の体から制御電波は発信されている。
「お前達の武器を使って逆用し、地上を破壊しつくしてやる!」
「冗談じゃねえ、そんなことをさせるか!」
 影山のSJ2が先行して攻撃する。それに対し、星人はカンテラを掲げた。
 すると、巨大なカンテラから牽引ビームが迸る。
「何!?」
 ビームに引っ張られ、影山のSJ2は、巨大なカンテラの中に閉じ込められてしまった。脱出できない。
 星人はカンテラを掲げ、棍棒をカンテラに突きつけ、
星人「手を出せばこいつの命が無いぞ」
影山「畜生・・・!」
 包囲しているものの、手を出せないN-BID・・・

 突然の銃撃。
星人「な・・・!?」
 銃撃は星人の掲げていたカンテラの紐だけを切断し、更に落下するカンテラの外枠だけを正確に、
続けて飛んできたミサイルが破壊する。
「誰だ!?」
 通信が影山機に入る。
「しっかりしろ、影山。全く、まだまだ俺がいないと危なっかしいな」
「・・・その声は・・・」
 攻撃の主、飛んできたカスタムタイプのSJ2。そのパイロットを、影山は声で察した。
「野崎!? 野崎か!?」
 パイロットは、にやりと笑った。

 第3、4話の作戦中に重症を負い、入院していたN-BIDの初期メンバー・野崎史郎。一刻も早く
地球防衛の戦列に戻るため、必死のリハビリを続け、遂に此処に復帰した。
「もう大丈夫なのか、野崎!?」
「実はまだ完璧というわけにはいかんのだが」
 コクピットの脇には、松葉杖が置いてある。
「日々敵が強くなっているというのに、ちんたらベッドの上で寝てなどいられん。戦闘機を操縦する分には
問題ない。今日から返り咲かせてもらうぜ!」
「おお!」
 影山も親友の復活に意気を盛り返し、二機のSJ2は星人に連携攻撃を開始。残る三人の隊員も後に続く。
 ドロ星人は思わず怯むが、
「おのれ・・・これを見ろ!」
 コントロールを押えたままのヴァルチャー2号を前に出し、それで銃撃を放ってくる。慌てて回避する一同。
「まだ切り札はこちらにあるのだ! 下手に攻撃して折角の新兵器を破壊するか、ん?」
 N-BIDベースにも状況はモニターされている。
泉「・・・なんてことだ」
江里「星人さえ倒せば制御電波は遮断され、ヴァルチャー2号のコントロールも戻るんですが・・・」
公平「・・・ようし」
 公平は、自機をオートパーロットに切り替え、こっそりウルトラボレットを出す。
 光と爆煙の炸裂と共に、ウルトラマンバーストが出現した。
 ドロ星人との戦いになるが、星人は棍棒による打撃と目からのビームを併用し、バーストをうまく牽制して
中々決め手を出させない。逆に棍棒で痛めつけられるバースト。

 だが、さらにそこへ援護が入る。
「遅れてすまない!」
 アイアンタワーから、EARのストーム、ハリケーン、タイフーンの三機の主力戦闘機が飛来、星人を
背後から撃って怯ませる。
藤堂「おお、協力感謝します!」
赤山「いや、わざわざのご好意で新型兵器までいただくのに、基地でのうのうとしているわけには行きませんからな。
此処は我々にお任せを!」
 三機のEAR戦闘機はV字に並び、ヴィクトリーアタックフォーメーションを掛ける。後ろの二機からエネルギーを
送られたストームの機首から大出力のビームが走り、星人に大ダメージを与える。
道城「今だ、バースト!」
 バーストは声に応えて素早く腕を構え、ライトニングバーストを放つ。ドロ星人は断末魔の叫びと共に吹っ飛んだ。

 ヴァルチャー2号は奪還され、無事アイアンタワーに搬入された。
 そして、永い眠りから覚めた野崎はN-BIDに帰還し、仲間達の結束と地球の守りは更に強くなったのである。
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ウルトラマンバースト 25 湧かない力
触腕怪獣・ヒドロス、極寒怪獣・ガーダン、強襲怪獣・ドルバ、リモコン怪人・ガゴス星人 出現


 深夜のN-BIDベース。
 自室で寝ていた公平は、夢を見ていた。
 その夢に、公平=ウルトラマンバーストの宇宙警備隊での先輩・ウルトラマンイレイズが現れた。
 厳密には公平自身の夢ではなく、光の国からテレパシーによる連絡が来たのである。
「それは・・・」
 嫌な予感がした。その予感は当たっていた。
 宇宙警備隊への帰還命令である。
「俺、著しく体力や精神力を消耗してるわけでも、地球人に正体がばれたわけでもないんですけど・・・」
「判っている。解任ではない。別の星への転属だ」
「・・・転属ですか」
「宇宙警備隊は地球の平和だけを守っているわけではない。状況によっては他の悪化している戦局の打開を優先
しなければならないこともあるのだ」
 しかし、そういうイレイズも地球勤務からの解任を促された際には(促した上司は偽者で正体はシュトローム
星人だったが)かなり我を張って食い下がった。そのことを思い出し、今後任に対して同じ事を言っている
自分にちょっと嫌気がさすが、それはイレイズ個人の問題である。
 近いうちにお前は地球を去らねばならない、それまでに身辺の始末をしておけと伝え、イレイズは夢から去った。

 公平は目を覚ました。脇の壁にはふくろう型の時計がかかっているが、別に変な眼鏡が目にはまったりは
していない。それはともかく、公平は身辺の始末ということについて考える。自然に、これまでの地球での
思い出が頭を駆け巡り、共に地球を守ってきたN-BIDの仲間達の思い出へシフトしていく。
 生身で宇宙霊獣ギガマイラに直接錫杖で殴りかかる袈裟姿の藤堂隊長。
 暑苦しく肩をばんばん叩いて親愛の情を示してくる両国と、その脇で控えめに明るくおどける松野。
 新兵器や敵のデータの解説をしては危険な笑い声を上げる泉。
 直情的な影山とそれを冷静に諌める野崎の空戦コンビ。
 そして、困ったような笑顔を浮かべて状況を必死にフォローする江里。
 モラルの無い上官達の心無い発言に真剣に怒る江里。
 敵であるマイナスフォースの境遇について憂え、彼らの安らかな成仏を心から願う江里。
 公平が密かにバーストに変身して毎回戦いに向かい、ボロボロになって帰ってくるたびに身を案じ、
無事の帰還に安堵の微笑を見せる江里・・・
「・・・江里ばっかじゃん」
 赤面してみっともなくにやけていた公平は、頬を両手で叩いて気合を入れ直し、机の引き出しを開けて
綺麗な印刷の紙片群を出す。江里とのデートのために密かに用意していた、映画やアミューズメント施設などの
招待券や優待券などである。

 翌朝、公平は江里をデートに誘う一大決心をし、基地内を歩いていた。
 居住ブロックの窓からは明るい日差しが差し、一般隊員達は穏やかなやり取りをしながら行きかう。これまでの
自分達の苦闘が守り抜いてきた平和な光景だと公平は実感して充実感を覚えていた。しかし自分はもう直ぐ地球を
去らねばならない。それまではこの星の住人としての日々を思う存分謳歌しよう。そのためにもまずは江里との
デートだ・・・
「小原隊員」
 不意に後ろから当の江里に声をかけられ、公平は飛びのいた。
「おっおっおっおはようっ、何かな朝香隊員?」
 アドバンテージを取られて思い切り不自然になるが、江里は然程怪しまずおはようと挨拶を返した後、
妙に赤くなってもじもじしている。
「あのね、小原隊員・・・後で時間取れる?」
「?」
「ちょっと相談したいことがあって・・・」
 おおっ・・・これは。これは。ひょっとして、彼女も俺のことを!?
 公平は時間が無くても空けると即座に了解した。

 休憩時間。
 公平が勇んで会いに来たところで、江里は、人目につかないところでこっそり話したいと要求してきた。
公平の期待は更に強まる。勿論了承。死角になっていて人気の無い通路に移動する。
 江里は、延々思い悩んだ後、
「・・・公平君は」
 下の名で『君』に昇格。
「誰かを・・・好きになったことってある?」
 おおおおおお。
 とにかく好感度を下げないよう、必死に言葉を選んで当たり障りの無い一般論で答える。何言ったかは
覚えてない。
 どうも言葉の内容そのものは重要ではなかったらしく、懸命に答える公平の態度を見て江里は安心したようだ。
普通こういう相談は同僚の同性の気の知れた友人などにするものだろうが、ウルトラマンバーストがこれまで
多くの敵を倒し、試練を越えるたび当然公平も成長し、その様子は無意識に江里にも伝わっていた。そして、
阿蘇山での強敵・ゴラースを下して帰ってきた公平を見たときに感じた今までと違う感覚が、個人的に
大事な相談を打ち明けてもいいなと思えるまでに至らせていたのである。
 実は、今ずっと気になっている男性がこの基地内にいるのだが、中々自分の中で踏ん切りがつかない。
思い切って告白すべきだろうかと江里は思いつめた様子で尋ねてきた。
 そうか、そんなに長いことずっと苦しい思いをしていたのか。気付かなくてすまなかった。俺は何て罪な
男なんだ。でも、もう苦しむ必要は無い。全てを打ち明けて俺の胸に飛び込んできてくれればいい。というか
是非打ち明けてください。

 渦巻く下心を抑え、告白すればいいんじゃないか、君の真摯な思いを包み隠さずに打ち明ければ、きっと
相手も悪いようにはしないはずだ、全身全霊で応えてくれるよと公平はぬけぬけとほざきさらした。
「そうかな・・・大丈夫かな」
「大丈夫だって。もし何か都合の悪いことがあったら、そのときは又俺に相談してくれればいいさ。何でも聞くぜ」
「ありがとう・・・公平君」
 江里は心底嬉しそうな笑顔を向けてくる。それだけで、これまで怪獣や宇宙人に殴られたり蹴られたり火や光線を
吐かれたり刃物や棘で貫かれたりした苦痛など、公平の中から全て吹っ飛んでいく。
「んにゃー何の何のはっはっは。で、朝香隊員・・・その、君の好きな問題の相手というのは?」
「うん・・・公平君には教えるね。誰にも言っちゃ駄目だよ」
「おう言わない言わない。ひみつだぜひみつだぜシッシッシッ、だれにもいってはいけないよ意中の相手が誰なのか。
で?」
「あのね・・・」
 江里は耳に口を近づけ、頬を染め、小さな声で言った。

「警備部の沢村さん」

 ぱんぱらっぱーーーーー じゃん(アイキャッチA)

 じゃかじゃかじゃん ふぁっふぁーーーーー(アイキャッチB)

 大地が割れる轟音。
 ウルトラマンバーストは巨大な腕に掴まれて振り回され、地に叩きつけられる。
 触腕怪獣ヒドロスは、胴体と同じほどの巨大な手に鋭い爪、長大に伸縮する怪力の腕を持ち、相手のリーチの外から
素早く攻撃を仕掛けてくる。
 バーストの薄れ行く視界の彼方で、N-BIDベースの端々から火の手が上がっている。
 侵略者・ガゴス星人の侵攻は余りにも迅速だった。完璧なステルスで宇宙のBIDステーションと地上のN-BIDベースの
二重の警戒網を欺き、全く気付かれずに地上、N-BIDベースの直ぐ前の地点まで巨大な司令円盤を侵入させた。
そして、円盤から三頭もの強力な怪獣兵器を転送・降下させて遠隔操作し、まさに力押しでベースの直接破壊を狙ってきたのだ。
ベースのほうは残り二頭の怪獣・・・何でも瞬時に凍らせる冷気を吐く怪獣・ガーダンと、背の翼で素早く飛んで
襲ってくる怪獣・ドルバ・・・に襲われており、確実に施設を潰されていく。完全な奇襲で、N-BID正規メンバーを
筆頭とする戦闘要員達もろくに対応が出来なかった。
 神田総監は苦渋の末、基地の放棄を決意、全職員の避難命令を出した。非戦闘要員から順に、旧BID装備の
ホバークラフト・ジャイフローや、ジープなどの車両に乗せられて逃がされていく。その光景をN-BIDは悔しい思いで
見つめるが、その思いに浸ってもいられない。避難が終わるまで敵の侵攻を食い止めなければならない。ヴァルチャーも
グランドライザーもガーダンの冷気で凍らされて稼動できないが、影山、野崎、両国、松野の四人は残ったスペースジェット
2号(以下、SJ2)に乗って敵に挑んでいく。戦闘向きでない泉は避難誘導に加わっている。
 基地から離れた地点でヒドロスに痛めつけられているバーストを見る神田と藤堂。
「おかしい」
「総監も気付かれましたか」
「うむ。ウルトラマンの動きに、何時もの切れがない」
 そう。敵が幾ら強大とはいえ、ウルトラマンバーストが通常のコンディションであればここまでの事態になることは
なかったろう。

 じゃっじゃっじゃっじゃっじゃっじゃっじゃ〜 ちゃ〜ちゃららららら〜〜〜〜〜
 バーストの胸中には、セブン暗殺計画のBGM(しかもレオのときの悲惨さが倍増しになった別バージョン)がさっきから
響き捲くっている。
 ウルトラマンの光の力は、変身している当人やその周囲の人間環境を含めて、精神状態に大きく左右される。光エネルギーが
補充できなかったり、変身のタイムリミットが過ぎたりした状況であっても、周りの人達の精神的な助力を得られたり
することで、点滅したり消えたりしていたカラータイマーがなんかてきとーに又点灯して蘇ったり出来ることが
ままあることは、ずっとウルトラマンの物語に付き合ってきた皆さんなら周知だろう。
 だが逆に、ウルトラマンの力は負の精神感情にも又大きく左右される。例えば人間体で平時の生活をしているときに
マイナスな事態に出くわしたりすることで、変身時のコンディションがガタガタになることもしょっちゅうだということも、
ずっとウルトラマンの物語に付き合ってきた皆さんなら周知だろう。何がそれほどの事態をバーストに及ぼしたのか。

 回想。
 江里の意中の相手を知った公平は、それでも、精神力を著しく消耗して笑って彼女の恋の成就を応援した。
江里は最高の笑顔を浮かべ、公平の手を握り締めて感謝した。
 デートへの誘いはどうした? 散々調子に乗ってきっと江里の想いはかなうと吹聴しておいて、言える訳ないだろう。
黙ってその場を去った。そんなわけで、公平の精神状態はガタガタだった。平和を守り抜いた充実感を噛み締めていた
周囲の色鮮やかだった世界は、いきなり無彩色の灰色だった。

「どうしたんだ、バースト!?」
 両国と松野のSJ2が基地のほうを攻めている両怪獣を攻撃している間、影山と野崎のSJ2がヒドロスの攻撃に向かうが、
殆ど攻撃が効いていない。バーストはヒドロスにかなわないだけでなく、どうも殆ど積極的に戦っていないふしがある。
実際、公平が変身するときも半ば機械的に惰性で変身した。
 ゴラースと怪獣軍団のときはディアナが助けに来たが、今回はガゴス星人の別働隊の大円盤部隊が、宇宙警備隊が
地球へ向かうのを阻んでおり、対抗するのに手一杯で助けに行けない。

「公平君!!」
 江里は、バーストが現れているので当然見当たらない公平を、崩壊していく基地施設の中で必死に探していた。
「朝香さん! 何をしてるんだ、早く避難しないと」
「沢村さん!」
 一人の警備兵が江里の下へ走ってきた。この男が江里の意中の相手、沢村三郎である。サラサラ髪の線の細い
優男風。
「だって・・・公平君が見付からなくて・・・何処かで怪我したり瓦礫の下敷きになったりしてるのかも」
「公平・・・君の同僚の小原隊員か」

 シミュレーション1。
「諦めるんだ! この惨状だ、彼はもう助からない! 俺達だけでも逃げ延びるんだ!」
「そんな・・・ひどいわ沢村さん! 公平君を見捨てるなんて出来ない!」

 シミュレーション2。
「ふふふ・・・掛かったな」
「えっ?」
「実は俺は、ガゴス星人の本隊から密かに送り込まれてこの基地に潜入していた工作員だったのだ。
此処で貴様も始末してやる」
「い、いや! 助けて公平君!!」

 そんな都合のいい話があるわけない。現実。
「・・・よし、判った。俺も一緒に探そう!」
「有難う、沢村さん!」
 二人は助け合って公平を探し始める。

 その光景は、超長距離の状況も見通せる視力を持つウルトラマンバーストの目に、全て見えていた。
 心のBGMが、藤宮がウイルスプログラムのニセ稲森博士をワクチンプログラムで抹殺するシーンのアグルの
テーマの暗いアレンジに変わり、更に、リコが「孤門君て・・・誰だっけ・・・」とか言って狂っていくシーンの
曲とかにシフトしていく。
 ウルトラマンは手からビームが出て怪獣を爆殺でき、空を飛び、更に真空の宇宙も飛び、万年単位で
生きられる。だが、そんな力があったからといって、この状況で何ができるというのか。
(イレイズ先輩・・・ウルトラマンの力・・・めっさ使えませんわ・・・)
 そして。
 赤く点滅していたカラータイマーの光が途切れ、ウルトラマンバーストは次第に透明化し、力尽きて消えた。

 廃墟と化していく基地の中、江里は沢村と共に尚も公平を探し続ける。
「公平くーーーーーん!!」
 BGMは、セリザワ隊長のディノゾールへの特攻シーンへとシフトしていた・・・

 次回、最終回。
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 ガゴス星人侵略部隊の急襲により、N-BIDベースはほぼ全壊した。
 最早戦略的拠点の意味を成さないと見たガゴス星人は、テープの早回しのような何を言ってるのか
判らない言葉で指示を下す。それに従い、三大怪獣兵器は星人の司令円盤に転送されて回収され、
ガゴス星人は一旦引き上げた。
 しかし、N-BIDという地球の守りが大打撃を受けた以上、直ぐ攻撃を再開するのは必至。
ウルトラマンバーストは怪獣ヒドロスに敗北して消滅し、小原公平の安否も不明のままである。


ウルトラマンバースト 26 さらば涙の流れ星
触腕怪獣・ヒドロス、極寒怪獣・ガーダン、強襲怪獣・ドルバ、リモコン怪人・ガゴス星人 出現


 撤退したN-BIDは厚木の自衛隊基地を臨時拠点としていたが、対怪獣・侵略者の防衛拠点としては
心もとないのは明白だった。負傷して手当てを受けている者も多い。
 江里と沢村はぎりぎりまで公平を探したが見つからず、結局この場に一緒に避難してきていた。
江里は医療班に加わって一心に怪我人の手当てをしている。何かしていないと精神が安定しないからと
言うのは、一緒に作業している沢村にも判った。
 事前、江里は公平のアドバイスに従い、既に沢村に自分の想いを告白している。沢村も彼女の好意を
受け入れ、万々歳かと思われたのだが、その直後にこんなことが起こってはいちゃいちゃしている
どころではない。
「公平君は、私に勇気を与えてくれました」
 作業をしつつ後ろを向いたまま江里は沢村に言う。
「今までもずっとそうでした。地球が危機に陥って皆が落ち込むたび、真っ先に行動して皆の気力を
奮い立たせて、何度も大怪我してそれでも立ち上がって・・・彼も一緒にいてのN-BIDなんです。
なのに、何処へ行ってしまったんだろう、公平君・・・」
「朝香さん・・・」

 そうしているうちに、ガゴス星人が再度の攻撃を開始。今度は首都・東京を襲う。バーストが
おらず、N-BIDも痛手を受けた今、街はあっけなく破壊されていく。基地での迎撃戦でスペースジェット
2号群は破損して使い物にならなくなっていたが、それでもN-BIDの野郎どもはゲリラ戦を挑む。
 藤堂やその配下の法力僧部隊が裂帛の叫びを上げて錫杖や独鈷杵で怪獣軍団にかかっていくが、生憎
今回の相手は妖怪や怨霊ではなく、SJが銃撃してるのとかと同じレベルのダメージしか与えられない。
ヒドロス相手に必死に牽制をしているところに、ドルバが横合いから素早く飛んで不意打ちを掛けてくる。
 だが、それは更に死角からの銃撃で阻止された。かつて泉の開発した対怪獣必殺弾・スパーク9を野崎が
撃ち放ったのだ。野崎はまだ脚のダメージが癒えていないので踏ん張りが利かず、影山が後ろから支えていた。
スパーク9を食らったドルバは木端微塵に爆発。
「ウルトラマンはもういない! 公平もいない! その分まで俺達がやるしかないんだ!」
「おうよ!」
 だが、続けて狙ったガーダンは冷気を吐いて弾丸を凍らせて落としてしまうため、目標まで弾が届かない。
残った二大怪獣の反撃を受けるかと思われたところを、後方からの両国と松野、更に泉も加わっての援護射撃が
食い止め、そこまででスパーク9も弾切れ。N-BIDはやむなく一時後退した。

 地球人が自分達の怪獣を倒すとは思っていなかったガゴス星人は、N-BIDを警戒し、司令円盤を厚木に
向けて進め始めた。リーダーの星人が理解できない音声で喋り、字幕スーパーで、
『不安材料は全て潰す』
 翻訳が入った。

 厚木基地に苛烈な攻撃が開始される。現用兵器しかない基地もいいように潰され、又犠牲者が増えていく。
N-BIDが抵抗するも焼け石に水。
 負傷者の避難作業を続けながら、江里は遂に我慢の限界を越え、泣き出す。泣きながら作業を続ける。

「小原公平!! 何処へ行った!! 出て来い!!」
 一般兵士達も、終いにゃ神田総監もN-BIDを援護して傷ついた者達を守って戦う中、沢村もその戦列に混じり、
効きもしない機銃を撃ち捲くりながら虚空に向かって叫ぶ。
「朝香さんが今どんな思いをしてると思ってる!? どれだけ貴様のことを心配してると思ってる!?
貴様に彼女の顔を涙で汚す権利は無い!! 帰って来い!! 瓦礫の下で致命傷を負ってても帰って来い!!
死んでても今すぐ0秒で生き返って戻って来い!!」
 叫ぶ沢村の下に、ガーダンが地を踏み砕いて迫ってくるが、お構いなしに沢村は叫ぶ。
「聞いてるのか小原公平ーーーーーッ!!!!!」

『聞いてるよ』

 声は、沢村の中から、彼の心自体に響いた。
『好き放題言いやがって・・・鬼ですかおのれは』
 呆然とする沢村の体が、眩しい光を放ち始める。
『だが・・・お前の言うとおりだな、沢村。
 俺は、皆の幸せを守るためのウルトラマンなんだからな』

 ヒドロスに倒されて力尽き、一時の迷いから心の力までも失い、実体化出来ずにいたウルトラマンバーストは、
心底江里の身を案じて行動した沢村の心意気に呼応した。そして、彼の身と心の力を借り、再びこの世に現出を
なしたのである。
 光の爆発と共に再起したウルトラマンバーストは、
『フラッシュナックル!!』
 そのままアッパーでガーダンを吹っ飛ばした。
 拳は巨大化シーン別撮り用の人形と同倍率で通常の十倍くらいにでかくなっていた。
『小原・・・お前は・・・』
『へへ・・・このまま消えたんじゃ、江里に対して格好がつかねえからな。
 だが、それを俺に教えてくれたのはお前だよ、沢村』

 沢村の心の光で全身輝くバーストに対し、おののくガーダンは既にビジュアルでも完全に負けているが、
往生際悪く猛吹雪を吐きかける。バーストは厚い氷に閉ざされる。
 だが、氷の中からあっさりバーストの手が飛び出し、ガーダンを鷲づかみ。全身の氷も忽ち崩れて剥がれ落ちる。
そのまま両手でガーダンを押さえつけ、
『ウルトラ山嵐!!』
 投げ飛ばす。ガーダンは中空に飛んでいたガゴス星人の司令円盤に激突。ガゴス星人達はテープの早回しで
ぴゅるぴゅる叫んで狼狽し、やがて円盤の動力部が破損。ガーダンもろとも円盤は大爆発し、星人達は全滅した。
 残るはヒドロスのみ。指令を受けずともヒドロスはバーストに対していきり立ち、巨大な腕を伸ばして飛ばしてくる。
バーストはそれをジャンプで交わし、更に長大に伸びた腕の上に乗り、腕が縮んで元に戻る前に腕の上を走って
ヒドロス自身に迫り、
『エクスプロージョンキック!!』
 ヒドロスの顔面に蹴りを叩き込む。ヒドロスは吹っ飛んで転がり、全身からやっすい花火の火を吹いてくるくる回る。
 そこへ、万感の思いを込めてのフィニッシュ。
『ライトニングバースト!!!!!』
 腕を構えて組んでの必殺光線が撃ち込まれ、最後の難敵は光と炎に焼き尽くされ、灰燼と化した。

 地球での最後の戦いを終えたバーストは、沢村を体から分離して地に下ろした。
 沢村から真相を知らされ、一同は呆然とバーストを見上げている。
 江里の目に、半透明の巨大な公平がバーストと重なって見える。
「公平君・・・私・・・」
 バーストは江里を見下ろして人差し指を口に当て、『しー』のジェスチャーをする。みなまで言うな、判っていると。
「納得行くはずないだろう、こんな結末!」
 バーストと合体して戦っていた沢村には、公平の真意も全て伝わっていた。彼の江里への想いと、もう地球を去る
彼のその想いがかなわないことも。
「お前はどうなる、小原!? お前の想いはどうなるんだ!?」
『それをかなえるのは、地球人のお前だ』
 テレパシーが伝わる。
『頼むよ、沢村』
 そして、バーストは中空に次元の穴を開けて手を突っ込み、ウルトラボレットを取り出す。ディスティニーチェンジ
用の特注。
 一同から下がり、地に叩きつけて炸裂させる。
 爆発と共に綺麗な花吹雪が巻き起こり、それは日本から世界中へと広がっていく。全ての人々に幸あれと願いを込めて。
その花吹雪に紛れ、ウルトラマンバーストは飛び立つ。有無を言わせず。
 最後のテレパシーが響き渡る。
『じゃあな!!』

 巨人は、忽ち空の彼方に向けて小さくなっていく。無力で未熟な地球人は見送るしかない。
 沢村は公平との約束(一方的だが)を守ると誓うべく、江里の肩を強く抱き、巨大な公平を見送る。
 江里も泣き笑いながら公平を見送る。
 N-BIDの仲間達一同、大きく手を振って見送る。

 宇宙では、ウルトラマンイレイズと、女ウルトラマン・ディアナが待っていた。両者、ガゴス星人の別働隊を
漸く下して此処に来たばかりで、ボロボロになっている。にもかかわらず、バーストの様子を見て満足そうにしている。
『始末はつけたんだな』
『はい』
『よし。行くぞ』
 三人の巨人が光を越えて太陽系から飛び去る後に、バーストの一滴の涙が流れ星となって散った。

 その後、ウルトラマンバーストは先達のイレイズに名を連ねる宇宙警備隊髄一の捜査官となっていくのだが、
それはまだまだ先の話である。
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