第11話「雑音か、意見か」リフレクター怪獣「フィラーウィルグ」
怪獣、及び宇宙人からの被害に対処すべく、日本は消防庁配下の新組織、「安全保護隊」を結成した
これは今まで怪獣出現の際は、EARや自衛隊が戦力を割いて避難誘導していたのに対し、その避難誘導など市民の相手をする専門のチームとして結成したものである
既に日本のほとんどの地域に支部が置かれ、怪獣出現の時を待っている
赤山隊長も護衛に道城と津上を引きつれ、今後のために安全保護隊本部へおとずれた
赤山が安全隊長官と話している間、津上と休憩室にて時間を潰す2人
そこに、訓練を終え、一休みしようとしたのか、一人の女性が入ってきた
彼女の顔を見て、道城は驚く、その女性も、道城を見て驚き、挨拶を交わした
彼女は道城の、中学、高校、防衛大学で一緒だった「友人」の竹下といい
道城の話では、それなりに仲がよく、戦闘車両や航空機の話でよく盛り上がったのだという
EAR入隊試験を受けたが、女性隊員募集の採用人数一人の座を、川浪に負けて落とされ、今ここに居るのだと彼女は語った
人間相手の仕事はきつそうだけど、やるんだから、がんばってやりきると、己の決意を語る竹下
「大変だな」「そっちこそ」などと盛り上がる2人についていけず、一人津上が突っ立ていると赤山が来て、2人は竹下の元を去った
帰り道で、(人間の相手は大変、・・・か)などと道城が考えていると、アイアンタワーから緊急通信が入ってきた
宇宙怪獣がBIDステーションの防衛網をかいくぐり、地球に向けて飛来しているとの事である
道城はエアロスのスピードを上げ、アイアンタワーへの進路を急いだ
後ろで安全保護隊の車両とヘリが発進しているのをバックミラーでみて、道城は竹下達の無事を祈るのだった

一方、大気圏外では既に静戦闘参謀の指示で出動したガーディアンの宇宙戦闘機「D−ウィング」の編隊が地球へと向かう怪獣に戦いを挑んいた
しかし怪獣は周囲にバリアを展開してレーザーを弾き、逆にD−ウィングを撃ち落としていく
形勢不利と見た静はD−ウィングに撤退を指示し、石野達に出動を命じるのだった

成層圏でフィラーウィルグと交戦を開始する石野達
和崎は相手のバリアを計算にいれ、ミサイル攻撃を行うが、怪獣はミサイルを目から光線を放って破壊
今度は石野が川浪とフォーメーションを組んで左右から攻撃を仕掛けるが、片方のミサイルは目からの光線でやられ、もう片方は尻尾に破壊された
それならと今度は3人で機銃掃射を加えるが、怪獣の甲皮は硬く、銃弾を弾き返してしまう

一方地上では赤山と津上、道城が、怪獣の出現予想地にて安全隊と共に市民の非難誘導を行っていた
非難は順調に進んでいるが、怪獣の到着までにすべての市民が逃げ切れるわけでもない
それでもあきらめずに必死に市民を安全な場所に逃がそうとする赤山達だったが、一人、非難する人々から逆走する人間が現れた
男はある企業の社長で、社員の給料を取るため社に戻ろうというのだ
慌てて安全隊隊員が取り押さえようとするが、他の逃げる市民がいるためその場を離れる事ができない
代わって道城が男を追う
男を取り押さえ、「社員の未来のために私はどうしても行かねばならないのだ」と叫ぶ社長を無理に安全な場所に連れて行こうとしていると
石野達の防衛線を抜けて、とうとう怪獣が町に来襲してきた
道城は社長を竹下達安全隊に任せ、怪獣に立ち向かうが、まるで歯が立たない
そして怪獣は目からの光線で町を破壊し始めた
ビルの瓦礫が安全隊と社長に降り注ぐ
慌てて駆け寄る道城に、竹下達安全隊は自分達より怪獣を何とかしてくれと懇願してきた
道城は苦い思いでうなずくと、再び怪獣に立ち向かっていった
その時、怪獣の目から発射された光線が、非難しようとしていた安全隊隊員達と社長に命中し、爆発した
爆風に飛ばされ、コンクリートに打ちつけられた道城は気を失ってしまう
石野達の必死の攻撃をあざ笑うかのように、怪獣は咆哮する

道城が目を覚ました場所、そこは野戦病院の中だった
周囲は負傷者、重傷者で満ち溢れ、医者、ガーディアン衛生兵が忙しく走りまわっている
竹下達の身を案じ、周囲を見回す道城に、周囲から冷たい目線が浴びせられてきた
その目線から逃げようとその場を去ろうとしている道城に、周囲は容赦ない罵声と、質問をし始めた
「なんで守ってくれなかったんだ!」「なぜ怪獣が突然現れたんだ?」「あの怪獣お前等が作ったんじゃないのか?」「ふざけやがって」「金貰って地球守ってるんだろ?」「なんで?」
耳を覆いたくなるような罵声と質問の声に、道城は冷たく当たり、その後の声を無視すると、アイアンタワーへと戻っていった

アイアンタワーに戻った道城は、竹下の事を聞こうとするが、止めた
任務に私情を入れるわけにもいかないからである
フィラーウィルグはあの後石野達の猛攻をかいくぐり、いずこかえ逃走してしまった
レーダーで探そうにもレーダー派も体が跳ね返すのである
フィラーウィルグに対抗する術を検討する隊員達
その時、アイアンタワーにあの市の市民が押しよせ、EARに賠償金の請求や、文句を言ってきた
警備の兵士が基地に入れないようにしているが、暴動まがいの行為は収まる気配が無い
赤山は直接でむき、彼らに次は必ずしとめると誓い、なんとか大多数を帰らせる事に成功した
しかし、やくざの様な連中が何人か残り、ぐだぐだぐだぐだと文句や罵詈雑言を投げかけ、警備兵をからかい、赤山を襲おうとし始める
赤山は彼らを完全無視し、作戦の遂行を優先し始める
ふと、やくざのふかしたタバコを見て、道城は怪獣の打開策を発見した
そこに、一人の少年が現れ、道城に石を投げつけてきた
警備兵が取り押さえると、彼は姉が道城のせいで死にそうだとわめき散らす
その少年は竹下の弟だったのである
道城は少年に駆け寄ろうとするが、彼に近寄った所で、自分が彼に何かしてやれない事を道城は知っていた
司令室に戻る隊員達、道城は決意をこめて赤山に作戦を提案した

目の前にフィラーウィルグが立ち塞がり、後ろから人々の叫び声が聞こえてくる
道城は必死に攻撃するが、リフレクターで攻撃を弾かれ、逆に怪獣の攻撃で吹き飛ばされ、周囲が悲鳴で満ちてしまう
かろうじて生きていた道城が顔を上げると、目の前にフィラーウィルグが巨大な闇の城のように立っていた
死を覚悟した瞬間、自分の腕に暖かい感触がして、聞きなれた戦闘機の爆音が聞こえて・・・
道城はベッドから飛び起きた
作戦を立てた後、隊員達は次の戦闘に備え、各自自室で眠りについたのである
ふと、腕にあの暖かい感覚が残っている事に気づき手を見ればそこには道城が人間、道城光也を超越した存在である事の証明である、オーバーフラッシュチェンジャーが握られていた

その時、基地内に緊急サイレンが鳴り響いた
道城はもう一度オーバーフラッシュチェンジャーを見つめた後、駆け出した

山中でガーディアンパトロール隊に発見されたフィラーウィルグは先行したスペースジェット隊が攻撃を加えているが進行は食い止められず
町の避難も終わっていない、つまり最初の状態に近い状態で戦闘は開始された
いつもの用に石野、川浪、和崎がそれぞれストーム、タイフーン、ハリケーンで出動し、今回は特別装備のSJで道城も出動
フィラーウィルグに立ち向かう
石野達がフィラーウィルグをバルカン攻撃し、その隙に道城は機体下部からスモークを噴出させ、フィラーウィルグを包む
濃度の高いスモークの中で、光学兵器は使えない
あの光線を出す事はできないし、リフレクターもはれないのだ
ただし、こちらもだが
ここぞとばかりにミサイルを撃ちまくる石野たちだったが、フィラーウィルグは尻尾の一振りでミサイルを叩き落し、咆哮する
万事休すと思われたその時、道城はオーバーに変身
フィラーウィルグに立ち向かい、格闘戦を挑むが、強力な尾で防がれ、有効打を与えられない
逆にオーバーが尻尾に苦しめられ、更に光線技もここでは使えない
石野はウルトラマンを援護しようとするが、今回は一般防衛軍がいる手前堂々と命令無視もできない
下手に派閥関係の人間の前で命令無視すれば、内部抗争に繋がるかもしれないからだ

その時だった
道城の耳にはるか彼方から声援が聞こえてきたのだ
後ろの町で非難中の市民達が逃げながら必死にウルトラマンに声援を送っているのである
その声援を素直に受けて、道城は奮起してフィラーウィルグをジャイアントスイングでスモークの外に投げ飛ばし、背中にオーバーヒートバスターを叩き込んで、フィラーウィルグを粉砕した
すべての戦いが終わった後、アイアンタワーに戻った隊員達
しかし、やくざは未だにねちねちと過去の失敗と今回のスモークが無意味だったとシャマー星人がごとく言ってくる
その態度に隊員達は苛立ち、忍耐力の高い津上ですら苛立ちの台詞を呟きだし、和崎にいたってはウィンドブラスターに手をかけようとさえしている
そこに退院した竹下が来て、やくざのリーダー格を平手ではたきつけた
なんと彼は竹下の兄で、妹の仇とばかりにEARと道城に嫌がらせをしていたのだ
竹下は兄と弟を道城達に謝罪させ、すっかり健康になった足取りで帰途につく
それを、道城達は生暖かい視線で見送るのだった

次回予告
少年「あの沼には本当に怪獣がいるんだよ」
道城「坊や、EARは暇人軍団じゃない」
石野「なんつう装甲だ・・・・」
和崎「EARだけでも、ウルトラマンだけでも、駄目なんです!」
赤山「全機!ウルトラマンを、援護せよ!!」
次回「EARの事情」
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第12話「EARの事情」超再生怪獣「ガレン」隠れ身怪獣「ワニデンデン」登場
パトロール中に、和崎は道城に自分がかねてから抱いていた疑問を打ち明けた
和崎「隊長はなぜ、ウルトラマンをあんなに警戒するんでしょうかね?ウルトラマンは無償で俺達を助けてくれるのに」
その言葉に、道城は考える
実際は、ウルトラマンは道城なのだから、例えM78星雲のすべてのウルトラマンが地球に牙を向いても戦うが
それを明かすわけにはいかない、今までの経緯から、ガーディアンをはじめとする防衛軍は平気で道城を兵器として利用する可能性があるからだ
道城「信じる事を忘れてはいけない、騙されても騙されても、信じ続ける事を忘れてはいけない」
和崎「ウルトラマンエースの言葉ですね」
道城「ああ、だが、疑う事も忘れてはいけない、特に、一回騙されてやられれば次は無い、俺達防衛軍はな、信じるのは子供の権利だ、疑うのは、守る者の義務だ」
それが、道城の答えだった
沈黙する和崎、道城は無言で、パトロールを続ける
そこに、子供が何人か林の中から駆け出してきて、助けを求めてきた
道城が何事か尋ねると、林の中の沼で、怪獣に遭遇したと言う
道城は子供達が木か何かを怪獣と間違えたのだと考え、相手にしないで出発しようとするが、和崎は子供を信じて沼地に足を踏み入れていく
やむなく道城もそれに続き、子供達に怪獣を見たと言う場所に案内される
道城は熱センサーや赤外線センサー、ソナーを使って生物を探すが、怪獣のかの字も無く
それでも何か居るという子供達と、もう少し調査すると言う和崎を叱って、アイアンタワーに戻っていった

アイアンタワーに戻った和崎は、更に多くの機器を携えて、あの沼に行こうとするが、津上と川浪にまで止められ、行くのを中断する
一方、石野は、再びウルトラマン支援飛行の特訓を行っていた
そこに赤山が現れ、これ以上続けたら、上層部も動くかも知れない、と警告を放つ
石野はそれでもかまわないと言って、飛行訓練を再開した
石野は知っていた、本当は赤山も、ウルトラマンを信じたいという事を
実際は、上層部はウルトラマンを黙認して、ウルトラマン支援を行わない組織など、ガーディアンの中でEARだけだ
岡島総司令官も過去ウルトラマンと遭遇し、彼らをそれなりに信じているし、SGTにしろREDにしろウルトラマンを仲間と認めている
だが、赤山は隊長と言う職務上、どうしてもウルトラマンを疑ってしまうのである
度量が低いと言えばそれまでかもしれないが、それなら、石野や和崎の命令無視をもっときつくとがめるはずである
実際の所、赤山は盲目的に相手を信じるな、そう言いたいだけなのだ
(それにしても、頭が固い・・・)
少しはREDを見習え、あの頭の柔らかさを、そんな事を思いつつ特訓をこなす石野であった
なんだかんだでまたあの沼に向かう和崎と、2人以上で行動すると言う原則(例外あり)に基づきついていく道城
実際道城がついていくのは、和崎が本気で怪獣捜索を始めて、エアロスで沼の中に潜りだしたりしないように監視するためである
ふと、和崎が空を見つめると、そこにはなんとワームホールが発生していた

道城と和崎の連絡で、ワームホールから半径20キロ以内の住民が安保隊の手によって非難を開始し
アイアンタワーから石野、津上、川浪がかるエアーストーム、ハリケーン、タイフーンが飛んできた
道城もエアロスのレールガンを準備し、和崎は対怪獣ランチャーを構えた
全員が見守る前で、怪獣がワームホールの中から出現
それと同時に石野達はビクトリーアタックフォーメーションを使い、怪獣を吹き飛ばした
「あっけなかったな」
などと言う石野達の前で、怪獣、ガレンは再生し、破壊活動を開始した
EARの面々は攻撃を加えるが、ガレンは体の一部が吹き飛んでもすぐさま再生してしまう
倒すには細胞を全て焼き払うしかないのだが、ビクトリーアタックフォーメーション以上の火力は今の状況では存在しない
赤山はRED、SGT、N−BITに支援要請を出すが、各防衛隊が到着するまでにはそれなりに時間がかかる
そんな事をしている間に、怪獣は市街地へと侵入、ビルを口から吐く炎で次々と焼き払っていく
道城は和崎にエアロスを任せ、自分は対怪獣ランチャーを持ってその場から離れると、オーバーに変身し、ガレンと対峙した
ガレンはオーバーの攻撃を甲羅の様な背中で防ぎ、逆にオーバーを口からの火炎で苦しめる
更に火炎で苦しむオーバーを両腕で掴み至近距離からオーバーに火炎を浴びせ、火だるまにした
地面を転がり、苦しむオーバーを、容赦なく蹴りつけるガレン
そこに、和崎がエアロスのレール砲で援護して、オーバーを救った
石野もガレンをミサイル攻撃して、隙を作る
そこに、オーバーはスぺシウムソード光線を放ち、ガレンの首を叩ききった

だが、首はすぐさま本体の元に戻り、活動を再開し、オーバーに再び火炎攻撃をかけてくる
とうとうオーバーのカラータイマーが点滅を開始した
石野は川浪と津上にもウルトラマンを援護するように促すが、「隊長の命令無しではできない」と言って、援護しようとしない
仕方なく石野と和崎だけで攻撃を加えるが、たった2人でどうにかできるほど、ガレンは弱い怪獣ではない
和崎は必死の思いで、赤山にウルトラマンを助ける指示を出すように懇願
石野も、川浪達にオーバーを援護してくれと叫ぶ
赤山は無言でオーバーの顔を見つめたあと、EAR全隊員にウルトラマンを援護せよと指令をだした
実はいつでもウルトラマンを援護できる位置にいた川浪と津上は、嬉々として怪獣を攻撃、ウルトラマンを救う
だが、激しいエネルギーの消耗で、オーバーには次の必殺技を撃つだけの力は残っていなかった
膝から崩れ落ちそうになるオーバーのカラータイマーに、どこからともなく光が飛んできて、彼を回復させた
同時に、応援要請を受けて飛んできたREDのレッドボーグ隊がガレンを攻撃して、EAR戦闘機隊にビクトリーアタックフォーメーションを促す
すぐさまビクトリーアタックフォーメーションの体勢をとる3機、オーバーもオーバーヒートバスターの発射体勢をとる
それに気づいたガレンが甲羅で防御の姿勢をとろうとするが、レッドボーグがワイヤーで怪獣の動きを封じ、それを阻止した
ビクトリーアタックフォーメーションと、オーバーヒートバスターが同時に命中し、ガレンは完全消滅した
全てが終わり、飛び立つオーバーを、REDとEARの面々、そしてエネルギーを分け与えた張本人、宮野奇跡は手を振って見送り、赤山はモニターの向こうからその背中に敬礼するのだった

人間体に戻り、和崎と共にアイアンタワーに戻る道城は、何か忘れてるような気がして天を仰ぐ
しかし、忘れるくらいだから大した事じゃないのだろうと思い、車を飛ばした
一方、怪獣ワニデンデンは沼からでて、大あくびをかいていた、あらゆるセンサーに映らなかったが、確かに存在していたのであった

次回予告
川浪「体長50mの、謎の影?」
津上「何者だお前は!」
暁「マイナスエネルギーが作った怪獣だ、心してかかれ」
道城「ぐはあ、はあ、はあ・・・」
和崎「ウルトラマンが・・・死んだ・・・」
次回「闇から来た魔獣」
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第13話「闇から来た魔獣」暗黒戦闘怪獣「トゥルーサーオ」登場
突如、日本の空を巨大な黒雲が包み込み、太陽を隠した
気象庁は謎の雲の発生原因を探るが、原因は依然として不明のままである
そんな日が何日か続き、作物は太陽光を浴びる事ができずに弱っていき、人々の心も徐々に何か起こるのでは?と言う不安に駆られていった
事態を重く見たガーディアンは謎の雲の正体を探るべく、観測機を黒雲の中に送り、調査を開始した
だが、観測機は雲の中で謎の消失をとげ、最後に送られてきた映像には・・・
川浪「体長50mの謎の影?」
赤山「ああ、観測機がレーダーから消滅する直前に送ってきた画像には、生物のように見える謎の影が映っていたそうだ」
和崎「やはり・・・何者かの侵略なのでしょうか・・・」
石野「じゃなきゃ、またはぐれ怪獣か・・・」
赤山「わからん、だが、すぐに家に調査命令が来るだろう、いつでも出れるようにしておけ」

一方道城と津上はエアロスにて市街地パトロールを行っていた
ハンドルを握る津上は無言で周囲を警戒し、道城は周囲を警戒しながら、黒雲から放たれる、瘴気の様なものに背を震わせていた
道城(何かとんでもない奴があの雲の中にいるような気がする・・・、早く何とかした方がいいのかも知れない)
考えて、道城は懐のオーバーフラッシュチェンジャーに触れた
その時、突然エアロスの前に一人の男性が飛び出し、津上は急ブレーキを踏んだ
道城はエアロスから出て、男を注意しようとするが、男は逆にエアロスに近づいてきて、すぐにあの雲を攻撃するように忠告する
何者かと尋ねる津上に、男は敵の正体がマイナスエネルギーの塊だと言うと、津上の投げた縄を見事に避けてどこかへ去っていった

アイアンタワーに戻った道城と津上に、早速黒雲の調査命令が来た
道城、津上は地上から観測車で、石野、川浪、和崎がいつもの機体で黒雲の調査を開始するEAR
調査の結果、黒雲は俗に言う、「マイナスエネルギー」である事が判明した
それを聞いた赤山が何かしろの対抗策を編み出そうとしたとき
突如黒雲に雷が発生し、EARの戦闘機隊は黒雲の中で制止してしまう
そして徐々に機体のダメージレベルが上昇を開始
このままでは3機とも空中分解してしまう
絶対絶命の石野たちを救うべく、道城は津上と別れてオーバーに変身
黒雲に突入するのだった

黒雲に突入したオーバーはEAR戦闘機隊を発見
バリアで包んで救助して地上に降ろそうとする
しかしその作業に集中していたオーバーを後ろから何者かが切りつけた
苦しみ、集中力が途切れそうになるオーバーだったが、何とか地上に戦闘機を降ろした
しかし、降ろした所で力尽き、オーバーは地上に落下してしまう
地上に落下し、苦しむオーバーの目の前で黒い竜巻の様な物が発生し、やがてその中から全身が黒い鎧の様な怪獣、トゥルーオーサが現れた
何とか立ち上がり、トゥルーオーサに身構えるオーバー
スぺシウムソード光線を放つが、トゥルーオーサはその強固な装甲で弾き、逆に口から黒い火炎を吐いてオーバーを攻撃した
炎を回転して回避し、ジャンプキックをしようとしたオーバーをトゥルーオーサは目からの光線で空中で撃ち落とす
更に落ちたオーバーを激しく踏みつけ、苦しめるトゥルーオーサ
何とか立ち上がったオーバーはトゥルーオーサに激しくパンチを浴びせるが、まるでメタリアームのように固いその装甲の前に歯が立たない
パンチ攻撃を続けるオーバーを爪で切りつけ弾き飛ばすトゥルーオーサ、更に倒れた所を再び黒い炎で攻撃する
火炎攻撃に苦しむオーバーだったが、バリアを展開して攻撃を防ぎ、ハイジャンプして空中に静止し、ハイバスター光線を発射した
が、トゥルーオーサはフィラーウィルグの様にリフレクターを展開して光線を弾き返す
もろにハイバスター光線を喰らったオーバーは地上に落下、立ち上がろうとした所を更にトゥルーオーサが蹴りつける

転がって逃げて、よろよろと立ち上がるオーバー、カラータイマーが点滅を開始した
津上と石野達は合流して、トゥルーオーサに向けてウインドブラスターで攻撃するが、ビクともしない
逆に火炎攻撃を受けて後退を余儀なくされた
再びトゥルーオーサに立ち向かうオーバー、今度は体当たりをかますがビクともしない
トゥルーオーサはオーバーを掴むと、至近距離から火炎放射を加え、オーバーを焼き払おうとしはじめた
和崎はアイアンタワーに応援を要請しようとするが、通信機が使えない
空のマイナスエネルギーの雲の力である
悔しがる和崎
なんとかトゥルーオーサの拘束を逃れたオーバーは、オーバーヒートバスターをリフレクターの展開できないくらい近くで長時間発射して、トゥルーオーサを吹き飛ばした
勝利に沸く一同、しかし、次の瞬間マイナスエネルギーの雲から再び黒い竜巻が発生して、トゥルーオーサの破片がその竜巻の中に集まっていく
妨害しようとするオーバーだったが、近づいただけで弾き飛ばされ、地面に転がった
そして、黒い竜巻が収まった後、そこには完全復活したトゥルーオーサが立っていた
ボロボロの体で、それでもまだ何とか戦おうとするオーバー、しかしとうとう肉体の崩壊が始まってしまい、立つ事さえままならない
そんなオーバーにとどめを刺すようにトゥルーオーサはヴァンヴァリアルの様な光翼を広げ・・・

黒いレーザーが何本も何本もトゥルーオーサの光の翼から容赦なく発射され、オーバーに命中していく

命中した部分がまるで砂のように次々と吹き飛んでいくオーバー

和崎が、石野が、津上が、川浪が見守る前で、ウルトラマンオーバーはトゥルーオーサの攻撃で跡形も無く吹き飛んだ

呆然とする隊員達
和崎「ウルトラマンが・・・死んだ・・・」

次回予告
赤山「今回の作戦は困難を極める」
津上「これで、いいんだ・・・」
和崎「俺は、俺は餓鬼です、でも、でもこの星のために戦いたいと言う気持ちは、ウルトラマンにも負けません!」
石野「やろうぜ、「灼熱の太陽作戦」を!」
イレイズ「君を待っている人がいる!」
次回「闇を越える戦士」


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第14話「闇を超える戦士」 暗黒戦闘怪獣「トゥルーオーサ」
オーバーを倒したトゥルーオーサは前進を開始した
進行方向は東京、侵入すれば東京壊滅は明らかである
EARの面々はとりあえずアイアンタワーに戻り、対策会議を実施
しかしエアーストーム、ハリケーン、タイフーンは既に先の黒雲の力で破壊され、飛行不能
アイアンタワーには他にも戦闘機はあるものの、ビクトリーアタック無しでは間違いなく話にならないだろう
とりあえず足止めだけでもしようとガーディアン工兵隊が地雷を設置する
更に大型火砲を展開し、完全な防衛線を展開、トゥルーオーサを迎え撃つ
しかしトゥルーオーサは突然あの黒い竜巻に乗って雲の中に消え、次の瞬間砲兵隊の陣地の真上から出現
火砲を蹴散らし、進行を再開する
自衛隊の戦闘機隊も出動するが、エアー戦闘機と同様に黒雲に入った途端制止し、あえなく全滅した
空から攻めれば黒雲にやられ、陸で待ち受けても黒雲に逃げられる
新たな攻撃手段が模索されるが、有効と思われる手段は無かった

一方、和崎と津上はエアロスで戦闘中にウルトラマンとトゥルーオーサの戦いに巻き込まれて消えた道城を捜索していた
最初に戦った平野を捜索する津上と和崎、そこで彼らは破壊された道城のEARヘルメットを発見する
立ち尽くす和崎と津上、道城の生存は絶望的、そう、2人とも確信した

その頃、道城はちょうど初代ウルトラマンとハヤタがはじめて会った時のような真っ赤な空間で一人、倒れていた
徐々に意識が戻っていく道城
道城「ここはいったい・・・俺は・・・死んだのか?」
だが、それにしては体の感触はしっかりある
道城が困惑していると、一つの光が道城の前に現れた
光は発光しながら、話し出す
光「道城隊員、君はウルトラマンとしてよく戦ってくれた、だが、君は敗北し、ウルトラマンとしての体を失ってしまった」
道城「な・・・じゃあ、俺は、もうオーバーにはなれないのか?」
光「ああ、プラズマ太陽の光を浴びた後変異した君の体は、先の戦いで崩壊し、消滅した、君はもう、ウルトラマンにはなれない」
道城「そんな・・・」る戦士」

アイアンタワー地下
Gと書かれた巨大な扉の前で、石野が座っている
「まだこれを使うのは早いと思うぞ」
振り返ると、そこには赤山がいた
赤山「確かに、『コレ』を使えば黒雲の影響を受けずに飛行する事も可能だろう、だが」
石野「わかっていますよ、『コレ』は危険すぎる」
言って、石野は廊下を戻っていく
赤山「・・・・石野」
歩みを止め、振り向く石野
赤山「まだ希望はある、確かに奴は強い、ウルトラマンオーバーは散り、そして」
一泊置く赤山
赤山「道城も・・・・、しかし」
決意の篭った瞳で、赤山は石野を見る
赤山「まだ、まだ奴を止める手があるはずだ、ウルトラマンの力を借りず、『コレ』を使わずに、奴を止める方法が」
その言葉に、石野は無言でうなずく
石野「あの黒雲ですよね、問題は」

静「そう、黒雲だ」
会議室にEARの面々を集めて、話し始める静
静「あの黒雲を消滅させない限り、我々に勝算は無い」
隊員達の手元に資料が配られる
静「あの黒雲は強力なマイナスエネルギーでできている、これにより、現在各地で旅客機の爆発や通信網の混乱が相次いでいる、これにより今回は他防衛軍との連携は難しい」
手を上げる川浪
川浪「地上から熱線等で消滅させる事はできないのでしょうか?」
静「できない事は無いが、出力が圧倒的に足りないな、各原発の力を使えばわからないが、基地の動力炉からのレーザーでは一部を消滅させる事はできても、とても全て消滅させる事はできない」
赤山「高出力太陽エネルギーレーザー砲ならわからんが、残念だが太陽光がない状態で発射はできない」
石野「あの雲を抜けて上に砲を持ってきゃ何とかなるんでしょうがね・・・」
静「だが、我々の戦闘機で今残っているのは『アレ』を除けばエアーブリザードとD−ウィング、そしてSJ1改位だからな、突破は無理だろう」
赤山「・・・・静参謀、今我々の保有する戦闘機では、と言いましたね?」
ふと、思い立ったように静を見つめる赤山
静「できると言うのか?確かにブリザードn・・」
赤山「違いますよ、我々の戦闘機を使わなきゃいいんです!」
静「何ぃ!?」

EARの大型トレーラーが山中を走っている
運転席に津上が座り、隣に石野、その後ろに川浪と和崎

赤山「『あそこ』の試作機を拝借するんですよ」
石野「!!あそこのですか」

助手席の石野は頭を抱え、ため息を何度もつく
石野「できる事なら、二度と行きたくなかったが・・・」

静「一応連絡はしておくが・・・俺の管轄化でない以上向こうが聞き入れてくれるとは思えねえ、そう言うところだからな」
赤山「ですがほうっておくと東京が壊滅します、事態は深刻をようするので、今回はわかってもらうしかないでしょうね」

和崎「副隊長、どんな所なんですか?これから行く所は?」
石野「ん?・・・ああ」
力なく返答する石野、歯医者に行く子供の様な顔になっている
石野「初代BIT時代に俺が一緒に戦った仲間が指揮してる部隊だ、まだ試作段階だがな」
川浪「それって・・・前原さんですか?」
石野「いや・・・前原が前線に出る前、本当の意味で初代BIT時代の生き残りだ、俺と同じな」

作戦室をでようとする石野を呼び止める赤山
赤山「古傷をえぐるような事をして、すまないと思ってる」
石野「いえ・・・・逃げ出した俺が悪いんだ・・・」
言って、石野は作戦室を出る
閉じた作戦室の扉をじっと見つめる赤山

石野「見えてきたぞ」
やがて、一同の前に検問が現れた

赤い光の中に、まだ道城はいた
道城「もう、俺は2度と・・・ウルトラマンに変身できない、と言う事なのか?それは」
光「・・・・そうだ」
道城「・・・・・」
光「気に病む事は無い、君は、ウルトラマンとして我々の想像を上回る活躍をしてくれた」
道城「ずっと、見ていたんですね?」
光「そう言う事になる」
道城「万一俺が、あの力の使い方を間違った時のために」
光「・・・そうだ、だが、もうその必要は無いようだ」
道城「俺がもう、ウルトラマンではないから?」
光「いや、君を完全に信じることができるからだ」
道城「俺を・・・・信じる?」
光「君の今までの行動を見てきて、確信できた、君なら、力の使い方を誤らない、いや、例え誤ったとしても、それを償える」
道城「だが、俺はもう・・・」
光「そうだ、確かに変身できなくなった、だが」
道城「?」
光「我々ウルトラマンは過去に何度も君と同じ変身不能に陥った事がある、だが、必ず」
だんだんと、赤い空間が白に包まれていく
光「誰かを救おうと言う強い心があれば、必ず、ウルトラの力は蘇る」
やがて、視界は白に染まった
光「君を待っている人がいる、ウルトラマンオーバーの助けを待っている人が」

気が付くと、道城は最後にトゥルーオーサと戦った場所に倒れていた

その頃、東京では安全保護隊による必死の非難作業が行われていた
しかし老人、子供、けが人もいるため、とてもすべての人間を非難させる事はできない
トゥルーオーサ東京への侵入を妨害すべく、自衛隊の戦闘ヘリが黒雲の影響を受けないように低空飛行して出動し、トゥルーオーサにミサイルを見舞うが、歯が立たず、光の翼からでる黒い光線であっという間に全滅させられる
歩兵隊、砲兵隊も出動するが、対怪獣ランチャーも砲撃も歯が立たず、進行を抑える事はできなかった


EARのトレーラーが検問を突破して走行していく
検問には簀巻きにされた一般隊員達が目を回して転がっている
川浪「腕を上げましたね、津上さん」
トレーラーの後部座席で、川浪がサングラスをはずして言う
津上「いや、お前の援護がよかった、感謝するよ」
運転しながら、津上が答えた
和崎「にしてもたった2人で10人、武器使わないで倒すって・・・」
川浪「こつさえ掴めば和崎隊員にもできますよ」
和崎「いや・・・・、多分無理」
石野「そろそろだ」
フロントガラスの向こうに意識を集中させていた石野が、不意に振り向いて言った
和崎「副隊長、どういう人なんです?その仲間だったって人は」
和崎の問いに石野は苦笑いを浮かべる
石野「美人さ、とびきりの美人」
やがて巨大なアンテナの様な建物がトレーラーの行く手に現れた
警報が鳴り響き、トレーラーを止めようと、一般隊員達がどこからともなくわらわらと現れる

ビルを砕き、前進するトゥルーオーサ
立ち塞がる自衛隊の戦車を踏み潰し、口から暗黒の炎を吐き、周囲を火の海へと変える
やむなく陣地を放棄し、撤退していく自衛官達
隊長「ガーディアンがもうすぐ上空の黒雲をなんとかする!それまで時間を稼ぎ、東京を守るんだ!」
指揮車の上で第4話でギガボリューと戦っていた自衛官が叫ぶ
自衛官A「隊長、第3小隊全滅!これ以上はもちません!」
自衛官B「ミサイル3号車沈黙!」
(ここまでか)
隊長が死を覚悟した、その時だった
激しいスパークがトゥルーオーサの前方に発生し、光が人型へと変わっていく
隊長「ウルトラマンオーバー!!」
そして、ウルトラマンオーバーが再びトゥルーオーサの前に現れた
咆哮するトゥルーオーサ、目から怪光を放つが、オーバーはバリアをはってそれを無力化し、光線がやんだ所にジャンプキックを放つ
とび蹴りで倒されるトゥルーオーサ
そこに飛んでくる生き残った戦闘ヘリ
ヘリ部隊隊員「援護する!!」
倒れた所にすかさずミサイルを見舞うヘリ
トゥルーオーサはそれに耐え、ヘリに目から怪光を再び発射する
ヘリ部隊隊員「うわあああああああ」
しかし、ヘリと光線の間にオーバーが割り込み、バリアでヘリを守った
反撃にオーバーはスペシウムソードを発射する
トゥルーオーサの首を切断するスペシウムソード
また新しい首を生やそうとするが、その前にハイバスター光線を発射してトゥルーオーサをオーバーが吹き飛ばした
だが、トゥルーオーサは再び黒雲からの竜巻の力で復活する
自衛官A「・・・きりが無い」
それでもオーバーは再び構えを取り、トゥルーオーサに立ち向かう

その頃、EARの面々は目的の物の待つ、合金製の扉到達していた
後ろで何十と言う一般隊員達が気絶している
和崎(何者なんだ?この二人・・・・)
恐れと敬意の篭ったまなざしで2人を見つめる和崎
その横で、津上と石野が合金製の扉を鉄の杭の様な物を使ってこじ開けようとしている
しかし、逆に杭の方が曲がり、石野は畜生と扉を蹴りつけた
その時だった
「無駄よ、アイアンキングの攻撃を想定して作られた格納庫だから、いくらあなた達でもこじ開ける事はできないわ」
どこからとも無く冷徹な女性の声が聞こえ、津上と川浪はウィンドブラスターを引き抜き、声のした方に向ける
そこには長い髪の冷たい目をした白衣の女性が立っていた
身構えるEARの面々を片手で制し、無造作に近づいてくる女性
津上が発砲しようとするが、石野がそれを制した
石野「らしいやり方だな、五条、もっとも、昔はこんなこたあしなかったが」
石野の言葉に、五条と呼ばれた女性は答えず、無言で扉の前に立つと、カードキーで扉を開けた
五条「単に、これを使う資格があるかどうか私流に試しただけよ」
言って、去っていく五条
一瞬、川浪と視線を交わしたが、すぐに進行方向に視線を戻し、歩みを進める
津上「・・・・・なんだ?」
和崎「おかしな女性ですね・・・」
石野「ステーションがやられちまった後の地上戦で色々あってな、昔はあんなじゃなかったんだが・・・、川浪?」
五条の背に冷たい目線を送っていた川浪ははっとして、石野に謝った

合金製の扉の向こうでEARの面々を待っていた物
それは彼らの想像を絶する物だった
驚愕する一同を石野が促し、彼らは『それ』を動かしていく


自衛官達の見守る前で、ウルトラマンオーバーはトゥルーオーサによっていたぶられていた
最初こそ善戦したものの、倒されても再生するトゥルーオーサの前に、激しくエネルギーを消費したためである
立ち上がろうとするオーバーを踏みつけるトゥルーオーサ
自衛官A「また負けちまうのか?」
自衛官B「おい頼むよウルトラマン!頑張ってくれ!」
自らの死に直面し、必死にウルトラマンを応援する自衛官達
しかし、トゥルーオーサの圧倒的力の前に、オーバーのからータイマーはついに点滅を始めた

(駄目なのか?俺じゃあ)

トゥルーオーサの攻撃に苦しみながら、道城は思った

(地球人の俺じゃあ、奇跡を起こす事はできないのか?)

虚空に向け、答えを求める道城
その体から、力が抜けていく
(もう駄目だ・・・・・)


君を、待っている人がいる


道城の心が絶望に黒く染まった時、その言葉が彼の脳裏によぎった
待っている、人?

(親父もお袋もシファンセスに殺されちまった、従兄弟はガタストロンにEARの仲間は俺がいなくてもどうにでもなるし、代わりもすぐくるだろ、
それに、地球にはまだ何人もウルトラマンがいる、バーストや、シグマ、ミラクル、俺がここで踏みとどまる理由は無い)
オーバーの瞳から、光が消えた
(待っている人は、いない)
心の闇に、道城の心が飲まれていく
(なら俺に、もう戦う理由は無い)
カラータイマーも点滅を止めた
自衛官達が絶望に打ちひしがれた顔でその光景を見つめる

(そうか、俺がウルトラマンである必要は、無かったんだ)

徐々に、オーバーの体が消滅していく
トゥルーオーサは消え行くオーバーを無視し、再び東京の破壊を再開した
もはや崩壊寸前だった自衛隊の陣地をやすやす突破し、避難中の市民達の前に現れるトゥルーオーサ
「ウルトラマン」
誰かがその名を叫んだ
トゥルーオーサが群集に向け、光翼を展開する
「ウルトラマン」
「ウルトラマン」
「ウルトラマン」
「ウルトラマーーーーーーン」
光翼から光が発射された

「シュワ」
駆けつけたオーバーがバリアでトゥルーオーサの攻撃を防いだ

(俺を待っている人はいない)
激しく点滅するカラータイマー
倒れそうになる自分に鞭打って、トゥルーオーサの攻撃を受け止めるオーバー
その隙に、市民は避難していく
(だが、俺がウルトラマンであることで守れる命がそこにある)
バリアが消滅するが、オーバーは自らの体で光線を受け止める
体が砂のように吹き飛ぼうとするが、気力でそれに耐える
(俺が守れる命がある、俺は、ウルトラマンになってよかった)
肉体が崩壊するのも構わず、トゥルーオーサの攻撃に身を投じるオーバー
光線では倒せないと悟ったトゥルーオーサは、今度は口から炎を吐こうと構えた
その時だった
空の黒雲が、徐々に晴れていったのである

消滅していく黒雲の間から飛んでくる、一機の戦闘機
それこそが山中にて極秘裏に開発されていた試験機
鬼道機関搭載試作戦闘機「ゼロヒュウガ」
石野「ウルトラマン、遅くなってすまねえ、ちょいとばかし上の黒雲を何とかすんのに時間がかかっちまった」
操縦桿を握る石野の横で、汗だくで倒れている川浪、津上、和崎
3人は黒雲を突破する鍵である鬼道機関を発動させるため、著しく体力を消耗したのである
通常、鬼道機関はその能力を存分に引き出せる素質を持った物が1人で発動させるのだが
今回はそんな者がいなかったため、3人がかりで発動させ、黒雲を突破したのである
そして黒雲を突破した後、上空からEAR基地からトレーラーに乗せてきてゼロヒュウガに搭載した「プラスエネルギー粒子散布装置」をマイナスエネルギーを消滅させる力を持つプラスエネルギーを空から日本中にばら撒き、黒雲を晴らしたのである

ゼロヒュウガに向けて火炎を放つトゥルーオーサ
しかし石野は抜群のフライトテクニックでその攻撃をかわし、トゥルーオーサにミサイルを叩き込む
石野「おっし、さあオーバー、後は」
石野がオーバーにとどめを促そうと、オーバーの方を向いた時
オーバーは砂の様な粒子になり、今まさに消滅した瞬間だった
石野「な・・・・・」
一瞬気がそれた瞬間、トゥルーオーサの火炎がかすり、ゼロヒュウガのエンジンが熱に耐えられずにオーバーヒートした
石野「く・・・しまった!!」
必死に操縦棒を操り、不時着耐性をとって飛んでいくゼロヒュウガ

オーバーを倒し、EARを倒したトゥルーオーサは悠然と破壊活動を再開した
ゼロヒュウガから脱出した面々がその光景を遠方から悔しげに見つめる
和崎「糞!」
ウィンドブラスターを引き抜いて、トゥルーオーサに立ち向かおうとする和崎
石野「よせ、お前が行ったところで勝ち目はない」
和崎「だからってあいつを見過ごすんですか?」
石野「行ったところで犠牲を増やすだけだ!行く事は許さんぞ」
普段は見せないような真剣な顔で和崎に叫ぶ石野
その叫びにはどこか必死さがあった
流石に和崎も石野にここまでいわれては引き下がるしかなく、ウィンドブラスターを腰にしまう
和崎「糞」
津上「和崎、俺達だけが地球を守っているわけじゃない」
毒付く和崎に、それまで事態を傍観していた津上が声をかける
和崎「?」
津上「1番重要なEARのメンバーを、お前は忘れているぞ」
和崎「・・・・・隊長」
和崎の言葉が終わった瞬間、トゥルーオーサに遠方から放たれたミサイルが直撃した

ミサイルの放たれた方向から飛んでくる、5機の戦闘機
3機はエアーストーム、ハリケーン、タイフーン
もう一機はヴァルチャー
そしてもう一機は赤山専用の青い機体、エアーブリザード
不意に石野の通信機がなる
赤山『赤山だ、石野、すまない、ご苦労だった、後は任せて非難していてくれ』
石野「了解です、しかしストームやハリケーンには誰が?」
藤堂『我々です石野副隊長』
石野「藤堂隊長!」
石野達が山中の研究所に行っている間、赤山はN−BITに掛け合い、機体を提供して出撃準備をしてもらっていたのである
赤山「藤堂隊長、俺が横から攻撃してリフレクターをそっちにひきつけるので、ビクトリーアタックフォーメーションで奴を」
藤堂「了解、影山、両国、用意はいいな」
影山「準備よし」
両国「まぁかしといてくだせえ!」
藤堂「公平、松野、泉ヴァルチャーで敵をかく乱」
「「「了解」」」
赤山のブリザードと合体ヴァルチャーが同時攻撃をかましてトゥルーオーサの注意を引き、さらにレーザー攻撃を加えてリフレクターを展開させる
その隙をついて、藤堂のストームを中心に多少両国機が横にづれているもののXの字型に展開した3機の戦闘機から高出力のエネルギーが放射され、トゥルーオーサを吹き飛ばした
歓声を上げる隊員達、そして市民、自衛官
黒雲が消え、再び顔をだした太陽の光がそんな隊員たちに照りつけた

N−BITの面々に深い礼の言葉を述べアイアンタワーに戻ってきた隊員達
その顔は悲しみに満ちていた
道城、そしてウルトラマンオーバーの死によるものである
川浪が嗚咽を始めたのに続き、和崎、そして石野までも涙を流し始めた
赤山もうつむき、津上は作戦室を出ていく

光「君を待っている人がいるぞ、ウルトラマンオーバー」
赤い光の光球と、アイアンタワー近くの森の中で会話している道城
道城「ありがとう、その・・・」
光「イレイズでいい、そう呼んでくれ」
道城「ありがとう、ウルトラマンイレイズ、危ない所を助けてくれて」
イレイズ「いや、当然の事をしたまでだ、これからもこんな危険な戦いがある可能性が無いとは言えない、ピンチになったら」
道城「ウルトラサイン・・・・なんか、俺もM78星雲の住人になったみたいだな」
イレイズ「君が望めば、それもできるが?」
道城「ありがとう、でも、俺は、今までどおり地球人として、皆と生きたいんだ」
イレイズ「・・・・なんか合体していたのが分離したような気分だな、台詞だけ聞くと」
道城「言われてみれば・・・」
イレイズ「・・・コホン、えーともかく、無茶はしないことを進める」
言って、イレイズの光は空に昇って行った
後に残った道城は、ため息を一つつくと、アイアンタワーへと歩いていった

アイアンタワーから外に聞こえるほどの喜びの声が響き渡る

次回予告
道城「対宇宙人格闘術?」
津上「完全にマスターすればいかなる宇宙人とも互角に戦う事ができる」
赤山「敵は都心に潜伏し、無差別に人間を襲っている」
川浪「まるで通り魔見たいな宇宙人ね」
津上「見せてやろう、現代に生きる、伊賀の忍の実力を」
次回「闇を狩る影」
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第15話「闇を狩る影」 宇宙獣人「ガガリゲイル」植物怪人「シュルーキン」登場
深夜の東京
トゥルーオーサ他これまでの怪獣の攻撃で壊された町の修復のため、東京のあちこちでビル工事や道路工事が昼夜休まず交代で行われている
仕事を終え、電柱についた明かり以外真っ暗い深夜の町を、仕事帰りの酔っ払った作業員が歩いていく
「ちきしょうガーディアンだ〜ウルトラマンだいったてビルも道路もぶっ壊していきやがる、もっちと真面目にやってくんねーと、こちとら、ひっく、過労で死んじまうざ畜生」
そんな男を、何者かが電柱の上から見下ろしていた
やがて何者かはすばやく電柱から飛び降りると、恐ろしい速度で男に襲い掛かかる
「あ?ひひゃああああああああああああああばけも・・・」

翌日、男は獣に食い殺されたような惨殺体となって発見された
警察は調査の結果、野犬や人間による物ではなく、大型動物にやられた物と判断し、周辺に虎の様な大型動物がいないか探すだ、もちろんそんなものはいず
結局、事件は目撃者も無く、迷宮いりとなってしまう
しかし数日おきに同じような事件が起き、夜間の仕事を行う物を恐怖のどんぞこに突き落とした
ついに警察は深夜パトロール隊を組織、事態の解決に向かう、が・・・・

赤山「それからしばらくして、ライフルや猟銃で武装していたパトロール警官3名が、同じ場所で、やはり獣に食い殺されたような跡を残して、殺されていた」
石野「そして、その時パトカーの監視カメラに映っていたのが」
言って、モニターを動かす石野
メインモニターがパトカーの監視カメラの記録映像に変わる
夜間パトロール中のパトカーの前に何者かが立ち塞がり、急ブレーキで止まるパトカー、ライトに映し出されていたのは
道城「・・・狼男」
川浪「満月でもないのに・・・」
そして狼男は停止したパトカーに飛び掛ってきて、そこで映像は途切れた

和崎「獣人タイプの宇宙人ですね」
赤山「現れた時のスピード、そして瞬発力の面から見て、かなり強力な身体能力を持っている物と予想される」
石野「まあ、狼男相手じゃ俺の出番はねえはな」
道城「ごもっとも」
和崎「同意します」
実は、石野は空での戦いはエースの中のエースだが、陸では平均ぎりぎりだったりする
川浪「まあ、相手が等身大、って事になるとチーム編成は私と道城隊員か和崎隊員、そして・・・」
一人、何も言わずに話を聞いていた津上は、無言でうなずいた

早速エアロスで都内の夜間パトロールを2人一組の交代で行う津上、川浪、和崎、道城
一方、赤山は事件のあった箇所や、時間などの共通性を調べてみたが特に無く
事件現場はてんでバラバラ、線で結んでも行って戻ってどっか関係ないとこ行ってで共通性無し
殺された人間は老若男女問わず、職業や身に着けている装飾品に同じものは無し
被害者達の関係も赤の他人同士で、共通点と言うものが恐ろしいくらい存在しなかった
これは長期戦になる
そう赤山が考えたその夜も、EARと警官隊のパトロール区域外で一人、尊い犠牲者が出てしまった

これ以上犠牲者を出すまいと、必死でパトロールするEAR
しかしそれをあざ笑うかのように、犠牲者は次々と出て行く
やがて、東京の修繕を延期して、夜間の外出禁止令が都より出されてしまった
これでは企業や交通の便が回復せず、日本は経済的危機に陥ってしまう
そんなある夜の事だった
都心の交番に集まっている、EARの4隊員
交番のモニターで赤山と会話している
赤山『敵の情報が少なすぎる、今わかっている事と言えば、敵の姿と、敵は都心に潜伏して、無差別に人間を襲っていると言う事だけだ』
川浪「まるで通り魔みたいな宇宙人ね」
和崎「まったくですよ、それにどこに潜んでるかもわからない、昼間とかどこ隠れてやがるんだ」
道城「あの身体能力だ、隠れようと思えばどこにだって隠れられる、昼間、人が多い内は探すのは無理だろう」
赤山『厄介な相手だが、君達なら何とかできると信じている、頼むぞ』
言って、赤山は通信を切った
ため息を付く道城
ふと、肩を叩かれ、振り向くと、津上が立っていた
時計を見せる津上、定時パトロールへ行こうと言っているのである
道城はうなずくと、エアロスに向かった

深夜の東京を走行するエアロス
途中、何台かのパトカーとすれ違う
道城「津上、お前はどう思う?今回の侵略者を」
ふと、道城は運転しながら、隣の津上に声をかけた
津上「強敵だと思う、気を引き締めておけ」
そっけなくそう答え、すぐにまた黙る津上
道城「ああ」
言って、道城も黙った
普段、道城はエアロスについているプレーヤーで音楽を聴きながらパトロールしているのだが、今回は敵が敵のため、音楽のせいで発見できない可能性もあるため、控えている
しばし無言で車を進める2人
突如、道城は走行中のエアロスからドアを開け、外に転がりだした
津上も同時に転がり出る
そして次の瞬間、上空からの一撃で1tの衝撃に耐えられるエアロスの天井がひしゃげてつぶれた
もし二人が車に残っていたら、この一撃で首の骨が折れるなり頭がつぶれるなりして死んでいただろう
エアロスを潰したのは言うまでも無いだろう、あの獣人だった
つぶれた車体の上にいた獣人はすぐさま飛び上がり、脱出した道城が発射したウィンドブラスターをかわす
しかし、ジャンプした所で津上の発射したウィンドブラスターが背中に命中した、が
何事もないように着地する獣人、着地した瞬間道城が撃ったウィンドブラスターがその腹に命中するも、やはり効果が無い

道城(なんて奴だ)
一瞬うろたえた道城に飛び掛ってくる獣人
道城はバック転してそれをかわすが、獣人はすぐに爪で踏み込んで攻撃する
避けきれず、攻撃を喰らいそうになる道城を救ったのは、いつの間にか道城のさばに来ていて、獣人の腕を掴んだ津上だった
合気道の要領で獣人を近くのビルの壁に投げつける津上
しかし獣人は空中で回転してビルの壁を蹴ってジャンプし、上空から津上に襲い掛かる
津上は身を低くして前転して空中から来る獣人をかわし、後ろ向きにけりを放った
着地した所に津上の蹴りを受ける獣人、ウィンドブラスターが効かない獣人が背中を蹴られてよろめいて数歩たたらを踏んだ
なお、ウィンドブラスターアサルトモードはサブマシンガンほどの威力があるのだが、津上の蹴りはそれをはるかに上回る威力を持つようである
道城もその間何もしなかったわけではない、獣人と距離をとり、通信機を使ってアイアンタワーに早口で報告して応援を要請する
それに気づいた獣人が道城に襲い掛かろうとするが、気がそれた所で津上に横から殴られてよろめく
怒り、津上に向かって唸り声を上げる獣人
津上も懐から短刀を取り出し、構えを取った
道城はウィンドブラスターをボムモードに切り替え、仕掛けるチャンスをうかがう
誰かが仕掛けた瞬間、誰かが死ぬ、そんな緊張に満ちた沈黙が場に流れた
沈黙を破ったのは、遠くから聞こえてきたサイレンの群れだった

流石に不利と悟ったか、跳躍して電信柱の上に飛び乗り、逃げる獣人
津上はすぐさまそれを追撃するが、獣人のすばやさと、パトカーと鉢合わせしてしまった事により、逃げられてしまう

翌日
「EAR、このまま行くと解散だな」
アイアンタワーの参謀室に呼ばれた赤山に、開口一番に静戦闘参謀が言ったのがその台詞だった
静「お前らの努力は認める、しかし、世間が求めているのは結果だけだ」
その言葉に、赤山はうなずく
赤山「確かに、相手を甘く見たところがありました、次回から一般部隊も動員して、捜索に当たらせます」
「相手が悪いのです」などという弱音は、赤山は吐かなかった
そして、一般隊員を動員した所でかなう相手ではないと言う事も
静「赤山」
その報告を聞いて、静の目が細くなる
赤山「は」
静「俺をその辺の常識しか持たない馬鹿共と一緒にするな、そんな上に一応対策を立てましたと言っているような対策は俺には出さなくていい」
静は知っていた、EARが、一般隊員など動員させなくとも、次回遭遇の際は必ずしとめられる事を
静の真意に気づいた赤山は、敬礼する
赤山「申し訳ございませんでした」
わずかに微笑む静
静「俺の力が必要になったら遠慮なく言え」
赤山「では参謀」
静「ん?」
何事か耳打ちする赤山
静「・・・・・わかった、やってみよう」

一方、道城と津上はアイアンタワー内の武道場にいた
道城が津上に無理を言って、稽古をつけてくれと言ったためである
津上「と、言っても1日2日で対宇宙人格闘術全てを理解して実戦で使えるようになってもらうのは不可能でしょうね、それはわかるでしょう?」
道城「対宇宙人格闘術?」
津上「里で教わった完全にマスターすればいかなる宇宙人とも互角に戦う事ができる格闘術です」
道城「どんなって・・・相手が液体や気体でもか?」
津上「いえ、流石にそう言うのと戦うには修行がいりますが」
道城(って事はマスターすれば気体液体とも戦えるのか?)
津上「あのタイプの宇宙人相手にそれは必要ないでしょう」
うなずく道城
津上「それでは」
言って、構えを取る津上
道城もボクシングの様な構えをとり、拳を放つが、受け止められて足払いを喰らい、倒れる
転がって逃げようとするが、津上はジャンプして道城の転がる先を狙って足を広げて着地した
見事に津上の足の間に体が挟まれた状態になる道城、足を閉じたまま落下してきていたら、道城はク○ボーよろしく踏み潰されていただろう
津上「まだ、はじまったばかりですよ」
そう言って津上は道城を足の間から逃がした
道城「こりゃあ俺が本気出しても大丈夫そうだな・・・」
言って、再び構えを取る道城
その構えは変身後、ウルトラマンオーバーになった後、怪獣に向けて構えている構えだった

やはり昨夜と同じ交番で、外に前日壊された奴とは別のエアロスを止め、和崎と川浪は待機しながら警官が入れてくれたお茶を飲んでいた
外の日差しがぽかぽかと照りつけ、のんびりとした雰囲気である
和崎「昼間は流石にでませんねえ、あの狼男」
和崎の言葉に、うんうんとうなずく川浪
川浪「なんで見つけられないんでしょうかね昼間に?確か一般隊員や警察が昼間の間奴を捜索しているはずなんですけど」
和崎「それなんですがね、川浪隊員、科学員の話じゃ、あいつ、動物じゃないみたいなんです」
川浪「え?じゃあ、ロボットなの?」
和崎「いいえ・・・なんか植物らしいんです」
和崎の言葉に、固まる川浪
川浪「植物、ですか?」
和崎「正確に言うと、植物と動物がくっついた、と言うか・・・・、ウィンドブラスターで飛ばされたと思われるあいつの物と思わしき肉片を調べたらなんか動物細胞と植物細胞が二つともあったとか」
和崎の説明に、ふーんとうなずく川浪
川浪「じゃあ昼間は光合成してるってわけですね、・・・もしかすると植物の姿に擬態しているのかも」
和崎「でしょうね、でも見つけ出すのは多分不可能ですよ、東京と言ってもここはその片隅で、樹木なんてやたらいっぱいあるんだ、全部の中から立たった一本の狼の木を見つけるのは不可能だ」
その言葉に、川浪はため息をつくと、お茶をすすった
川浪「結局、夜になるのを待って、出てきたところを叩くしかないというわけね」

道城「・・・・・・・・・参った」
右手を掴まれて左手を足の間に挟まれ、首に手刀を突きつけられた道城が、神妙な表情で言った
体から大粒の汗を流している
押さえつけている津上の方も無傷ではなく、袖が下がって見えている腕には道城のチョップを喰らったためと思われるあざができていた
道城の降伏宣言に、津上は無言で手を離し、股を開けるて彼を解放する
津上「ウルトラマンの動きを真似ましたね」
津上の言葉に、うなずく道城
道城「あの動きは使えると思ってね、そこそこだったろ?」
その言葉に、うなずいた後、津上は自らの腕のあざをさすった
さすられたあざは、じょじょに元に戻っていく
それを見ていた道城は、感心したように口を開く
道城「気、と言う奴か?」
うなずく津上
津上「これをうまく活用する事で、気体、液体の宇宙人とも戦う事ができるようになる、こんな能力が使えるようになりますから」
言って、手を眼前にかざし、唸る津上
その腕から徐々に炎が吹き上がる
思わず驚愕の叫びを上げる道城

道城「これが・・・気?」
最終的に火炎放射器のような炎になった炎を津上はからだの力を抜く事で消し、道城の方に振り向いた
額に汗がにじみ、息が荒くなっている
しかし、どこか自慢げで、誇らしげで、そして嬉しそうな顔だ
津上「ここまで鍛えるのに、15年かかりました」
再び驚愕する道城
津上は23だから、8歳の頃から鍛えてきた事になる
道城「お前の里って・・・どんな所だったんだ?」
その言葉に、苦笑する津上
津上「あんまりいいところではありませんよ」
言って、去っていく津上
ぼおっとそれを見ていた道城は慌てて津上を呼び止める
道城「待ってくれ」
津上「精神集中、それが気を使うコツです、精神集中のコツは人によって違うのでどうにもいえませんよ、それじゃ」
言いながら歩いていく津上
道城「かなわねえなあ・・・あいつにゃあ」
無言で自分の拳を見つめる道城

その夜
ウィンドブラスターより強力な武器、バーニングショットライフルを持ったEAR隊員4名の隊員は、自分達以外完全に無人と化した町(と言っても範囲は直径300m程度)の少々広い駐車場にて、狼男の出現を待っていた
その横には、「臭い散布装置」(まんまかよ)が設置され、広範囲に血の匂い散布している
赤山が静に要請した作戦、それはコレまで敵が出たところから大体の活動範囲を割り出し、その中から適当な場所を選んで決戦の場所にして、獣人を誘い出して殲滅するというしごく単純だが手間のかかるものだった
現に非難した住民の寝泊りの場所やら臭い散布装置の借用、などの手続き書類などの処理で、今頃赤山は静は苦労しているはずである
和崎「言っちゃなんですが、来ますかね?」
道城「来る」
ミもフタも無い和崎の質問に道城は自信満々で答えた
道城「あの獣人植物はイヌ科の生き物の姿に近い造形をしていた、と言う事は今まで臭いで獲物を探していた事になる、これに気づかない方がおかしい」
納得する和崎
しばらくして、ついに狼植物が出現した
狼植物は和崎と道城のバーニングショットライフルを避けるが、川浪が撃った攻撃を肩に喰らい、撤退の姿勢を見せる
しかしそこを津上が後ろからバーニングショットで足を狙い撃ち、さらに鎖を投げつけて動きを封じた
身動きが制限された狼植物に一斉にバーニングショットライフルを発射する隊員達、川浪はいつの間にかヒートガトリングガンに持ち替えていて、狼植物にありったけの弾丸を叩き込む
やがて動かなくなる狼植物
しかし今度は狼植物の腹がゆっくりと割れ、中から全身髪の毛に覆われた様な異様な化け物が現れた
襲い掛かってきた化け物に向けてバーニングショットライフルとヒートガトリングガンを撃ちまくる隊員達
しかし化け物はビクともせず、やがて巨大化を開始した
足元から逃げて川浪と和崎と別れ、巨大化した緑の化け物を津上と共に攻撃する道城
道城はこの怪物は寄生植物の様なものでは無いかと推測して、それを津上に話す
津上は相手が何だろうとどうでもいいという感じでそれに頷くと、どこかへ走っていった
道城は津上がいなくなった後、オーバーへと変身し、寄生植物怪人へと立ち向かう

植物怪人は体から蔓を伸ばしてオーバーを絡めとろうとするがオーバーはスペシウムソードでそれを叩ききり、ハイバスター光線で植物を攻撃する
体の一部が燃えた植物だったが、体から水を噴射してそれを消してしまった
今度はオーバーヒートバスターを発射しようとするオーバーだったが、地面から蔦が伸びてきて、その体を絡め取ってしまう
そしてオーバーからエネルギーを吸収し始める植物
カラータイマーが点滅を始めた時、威力を増したバーニングショットライフルが蔦に命中して、一部を焼き払った
地上から津上が気をたまに込め、発射したのである
そこから片腕を出すオーバー、しかしスペシウムソードを下手に発射すれば自分を傷つけてしまう
しかし津上の言葉を思い出したオーバーは精神を集中させて手から炎を発射して蔦を焼き払い、そのままオーバーヒートバスターで植物怪人を焼き払った
歓声を上げる隊員達

倒れている獣人の死体を人間の目線で足の方から見ているカメラワーク
ナレ「ウルトラマンオーバーとEARの活躍で、東京の夜を恐怖のどん底に叩き落した狼男事件はこうして幕を下ろした、しかし」
腹が裂けているはずの獣人の死体が、むっくりと起き上がる
ナレ「この恐怖さえも、前触れに過ぎないのかもしれません、なぜなら、どんな恐ろしい事がおきても、それ以上の恐怖が無いとは、限らないのだから・・・」
カメラに向かって獣人が飛び掛ってきた所で放送終了

次回予告
川浪「このステーションには、特別思い入れがあって・・・」
道城「なんでレッドフライヤーが基地を!?」
和崎「こんな時に、石野さんがいないなんて」
五条「人間じゃないのよ、彼女」
川浪「私は、私は・・・・」
次回「暖かい、心」
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第16話「暖かい、心」無形暗黒生命体「ケスーガ」登場
真っ暗い闇の中を、川浪が何かから逃げるように必死に走っている
≪戦え≫
彼女の背から、くぐもった声が聞こえてきた
≪お前はそのために生まれてきたのだ≫≪戦いなさい≫≪戦え≫
必死にその言葉から逃げる川浪
「なんで・・・こんな・・・」
立ち止まる川浪
「・・・・了解」
振り向いた彼女の目は、黒いはずの瞳が赤く変色していた
≪それでいいのだ≫≪やはり我々に間違いはなかったのだ≫≪これぞ究極の≫
声達がその川浪を賛美する
≪それが君の本来の姿なのだ≫
呆然とたたずむ川浪
(これが・・・私の本来の姿?戦うのが私の本来の・・・)
「深く考えねえでいいんじゃねえか?」
どこからかそんな声が聞こえた
「やりたいよおにやりゃあいい、人に迷惑かけねえ程度やりたいようにやりゃあ」
「それでいいの?」
川浪の問いに、声は即答する
「知らねえ、だが・・・・」
「だが?」
そこで声は途切れた、そして爆音が響く

目を覚ます川浪
そこはいつものアイアンタワー隊員用個室、川浪の特に何の装飾もない、生活必需品と家具だけの部屋
「はあ・・・」
ため息をつき、立ち上がる川浪、先ほどまで自分が見ていた夢、あんな夢は初めてではなかった
頭を振って、洗面所に入っていこうとした所で枕もとの壁に備え付けてある通信機がなる
通信機の受信ボタンを押す川浪
川浪「川浪です」
和崎『本日7時よりヴァルチャーEのテストを行います、準備しといてください』
川浪「了解」
通信機を切り、時計を確認する川浪、時計の針は6時を刺していた
パジャマではなくスクランブルに備えて黒いボディスーツを着ていた川浪は、手近にかけてあった隊員服を手に取り、手早くズボンと上着を手に取った

アイアンタワー格納庫、青と赤、緑、黄色のEAR使用のカラーリングに変更されたヴァルチャーが整備されている
N−BIDから送られたヴァルチャーをEAR使用に改造した機体、通称「ヴァルチャーE」だ
通常型同様甲、乙、丙(通常機はα、β、γ)への分離能力はもちろん、本当ならやたら色々なオプションを装備できる機底の格納部分を廃してビクトリーアタックフォーメーションシステムが取り付けられていて
更に各機が個々に固定の特殊な兵器を搭載しているて、多目的な作戦、例えば人命救助や物資運搬とかには向かないが、ガチンコで物理法則の通じる敵と戦うには通常機に勝るとも劣らない
早速ヴァルチャーEに乗り込む最初のメンバーを決める隊員達
壮絶なじゃんけん勝負の結果、道城、川浪、そして石野の3人が決まった
和崎「一番に乗りたかったのに・・・」
津上「・・・・・」
和崎の恨めしげな視線と、津上のこれと言った感情の無い目に送られて、発進するヴァルチャーE
α部分、甲に石野、β部分乙に川浪、γ部分丙に道城が乗っている

赤山「当初の予定通り一度BIDステーションに行って一泊して戻って来い」
作戦室の赤山がヴァルチャーEの面々に通信を送る
石野「了解了解、楽しいお泊り会にしてやりますよ」
赤山「・・・・先生方に迷惑かけるなよ」
思わず苦笑する石野
咳払いする道城
道城「後5分で大気圏突入です」
石野「ん、おし、各機異常無いな?」
道城「ありません完璧です」

(BIDステーション・・・)
川浪の耳に、あの爆音が蘇る
(あの人の最後の場所)
川浪の周囲がまたあの暗黒に包まれる

石野「川浪隊員!」
はっとなる川浪
石野「異常無いか?」
計器を高速でチェックする川浪
川浪「ありません、完璧です」
石野「ぼおっとするなんてらしくねえぞ、リラックスするのはいいが、抑えるべき所は抑えようぜ」
特に咎めず、陽気に言葉をかける石野
道城「具合悪いなら無理するなよ」
二人からの言葉に適当に返事をして、神経を飛行に集中させる川浪

大気圏を突破したヴァルチャーE
その乙号の中で、川浪は再び呆然としていた
川浪(なんで今日はこんな事考えるんだろ・・・やっぱり、あそこに行くから?)
なんとなく、俯く川浪、足のポケットに入れてあるサングラスが目についた
道城「こちらヴァルチャーE、大気圏突破、順調にBIDステーションに向かっています」
そんな川浪をよそに、道城が本部に定期交信を行った
和崎『了解、先輩、俺の分まで楽しんできて下せえ』
道城「・・・おうよ」
石野「お、見えた見えた」
石野の能天気な声で、顔を上げる川浪
その視線のはるか先に、地球防衛軍ガーディアンが誇る宇宙要塞、BIDステーションが太陽の光に照らされ、輝いている
じっとステーションを見つめる川浪、その目には悲しみと喜びが合わさっていた
川浪「新しいのに変わっても・・・基本部分は変わってない・・・」
そんな呟きが、彼女の口からこぼれ出た
不意に通信機がなり、道城が回線を開くと、向こうからいかにも元気の塊、といった感じの野太い男性の声が聞こえてきた
『こちらBIDステーション、遠路はるばるよく来たな、第3ハッチから入ってくれ』
石野「了解、歓迎の準備はできてるか?四条」
『・・・・は、迎撃砲火でもしてやろうか?』
石野「当てられるもんなら是非やってくれ」
『・・・・変わったな』
石野「お前もだ、まさかお前の口から冗談が来るとは思わなかったよ」

BIDステーションに降り立った石野達
ステーションにハッチから入り、中でドッキングするヴァルチャーE
石野と道城はすぐにヴァルチャーEから降りるが、川浪はいつまでもヴァルチャーに乗ったまま降りる気配が無い
道城「どうしたんでしょうかねえ?川浪隊員は」
石野「・・・・さあ、な」
石野の言動に、道城は石野が理由に心当たりがある事を見抜いたが、あえて言わなかった

暗闇の中、爆音と、隊員達の叫び声や悲鳴、命令が聞こえてくる
慌しい中で、ひとつの声が彼女の耳にとどく
「他はいい!なんとしてもこれだけは脱出させるんだ!」
「脱出用の船舶を使おう!研究員の員命より、これだ、俺達の研究成果を、これを地球に送るんだ!!」
「嫌だあああああ私は死にたくない!」
パーンパーン
「・・・・・これだけは・・・これだけは・・・」
・・・・・身勝手な奴等
透明な対ショック防壁の向こうで行われている出来事を見ながら、彼女はそう思った
もう死んでしまいたい
その時、本気でそう思った
(・・・思えばあの時、何で私は死ななかったんだろう)
「川浪隊員」
通信機の向こうから聞こえた道城の声で、川浪は我に帰った
道城「ほんとに大丈夫なのか?頼むから無理は・・・」
川浪「あ・・・・そんな、違いますよ、ただ・・・」
道城「ただ?」
川浪「少し、昔の事を思い出しただけです」
その言葉には、悲しい響きが混じっていた事を、道城は聞き逃さなかった

向かい合う石野と四条
四条の横には副官の真理、そしてBIDステーションのクルー達が立っている
四条「本当に久しぶりだな」
石野「ああ」
言って、硬く握手を交わす2人
四条「お前とはこうして再会を喜べる事が、俺は嬉しいよ」
石野「・・・そうだな」
頷く石野、その表情はずっと会っていなかった親友に再会したような、そんな嬉しさと悲しさが入り混じったような、そんな顔だった
四条の方も似たような表情である
四条「・・・よし、感動の再開はこの位にして、仕事に戻r」
言いかけて、四条の言葉は止まった
その視線の先には・・・・川浪
川浪の方も四条に視線を送っている
見詰め合う2人
石野「・・・四条」
先ほどまでとはうって変わって、警告を発するような口調の石野の言葉に、四条は我に返った
四条「すまん、それでこれからだが・・・」
これからの予定を説明する四条の言葉は、道城には届かなかった
道城(やはりおかしい・・・一体・・・)
川浪と四条、そして石野を交互に見つめる道城
途中、その視線に気づいた、川浪がこちらを向いて微笑んだ
思わず赤くなる道城
道城(・・・・本当に、一体)
道城が自分の疑問を復唱した時、BIDステーション内に緊急警報が鳴り響いた

鳴り響く緊急警報に、ステーション隊員達の顔色が変わる
無言で戦闘機に向けてかけていくステーション隊員達
宇宙ステーション乗組員の戦いはスピードが命だ
敵は1秒で1光年飛ぶ事も容易な技術を持つインベーダーもしくは弾道ミサイル
コンマ1秒動作が遅くなって全滅しても、なんらおかしくはない
緊急サイレン同時にダッシュがステーション内での鉄則である
もっとも、このサイレン&ダッシュでも歯が立たなかった敵も存在したのだが・・・
走っていく隊員達を敬礼で見送る石野達EAR
ヴァルチャーEの扱いをまだ隊員達が完全にマスターしていないため、今回は彼らは参戦しない

スペースジェットに乗り込む四条
OP「未確認飛行物体は現在ポイント089999を進行中、進行目的地地球、到達予想時刻・・・・」
四条「フォーメーション3、ミサイルで目標を殲滅、バックアップは4,5号機」
コックピッドの中で敵の詳細を聞き、フォーメーション指示を行う四条
通信機の向こうから隊員達の応答が一斉に返る
ステーション発進口から一斉発進するスペースジェット2、総勢5機
加速して一気に目的地に向けて飛行していく

出撃したスペースジェット2隊
宇宙空間を超スピードで飛行する戦闘機体の前に、ついに標的が姿を現した
形の無い、黒い半透明のアメーバの様なそれは、中心核らしい部分を不気味に光らせながら地球に向けて直進している
四条「見たこと無い奴だな・・・、攻撃!」
四条の指示で一斉攻撃を開始するスペースジェット編隊
強力な熱戦砲が機首から一斉発射されてアメーバに命中する
熱を吸収したらしい体皮が真っ赤に変色し、ボロボロと崩れていく
反撃に核から黒い怪光線が発射されたが、スペースジェットは見事な旋回でそれをかわす

ステーションの観測ルームで戦況を見ているEAR一同
石野「腕は落ちてないみたいだな」
怪光を難なくかわし、熱線を発射するスペースジェットを見ながら、満足げに石野が言う
その横で、ただじっと、戦闘を見つめる川浪
わずかに、瞳の色が赤みを帯びた
道城「・・・川浪」
川浪「え?」
横にいた道城にヒジでつつかれ、我に返る川浪
道城「本当に大丈夫なのか?具合悪いんなら無理するなって、お前俺に言ってただろ?」
真剣な表情で言う道城に、川浪は本当に申しわけなさそうな顔で謝罪した
しかし本当に川浪が疲れていると思った道城は、彼女を休息させるべく、仮眠室に向かわせる
それを視線で追っていた石野は、一瞬川浪の目が完全に赤くなったように見え、首を横にふった

海矢『隊長駄目です、火力が足りません、撃ったところがすぐに再生して熱線砲だけでは殲滅不能です』
SJU隊のひとりで、真理と共に四条の片腕的存在であるSJ隊のナンバー3、海矢 ハジメが攻撃を続けながら四条に叫ぶ
真理『目標速度、2%上昇』
四条「攻撃を続けろ!なるべく一点に集中するように攻撃するんだ!」
熱線が連続命中するが、先ほどより回復速度が増している
海矢「・・・糞、パワーアップしやがった」
再攻撃しようとした海矢の動きが、一瞬止まった
海矢「笑った?」
次の瞬間、黒い光線が命中して、海矢のSJUは爆発した
四条「海矢!!」
思わず叫ぶ四条、しかし、すぐに我に返る
四条「フォーメーション攻撃続行!なんとしても地球への侵入を阻止しろ!」

仮眠室のベッドに横たわる川浪
顔に少し元気が無い
それを心配げに見下ろす道城
しかし、彼女が大人しく寝ているらしい事を確認すると、すぐに仮眠室を出た

観測室に戻った道城に、石野が悲痛な表情で顔を向けた
石野「・・・・一機やられた」
それは、さっき自分達が見送ったうちの一人が、二度と戻ってこないという意味の言葉である
名も無き隊員に心中で黙祷をささげると、道城は石野の目を真っ向から見据えた
道城「ヴァルチャーEを出しましょう、川浪隊員がいなくても甲と丙がある」
≪駄目だ!万一我々までやられたら、誰が地球を守る?≫
石野「よし!いっちょやるかああ」
味方が目の前でやられるという事態に直面して、石野の口から防衛軍模範解答が出ることは無かった

「助けてくれえええええ」
「敵はどこだ?どこから現れたんだ!?」
「駄目です!攻撃が当たりません!!」
断末魔が耳の奥で蘇る
「脱出用意!」
一瞬、モニターに姿を見せる「それ」
「それ」を鬼の様な形相でにらみつける、その人
「てめえら、全員脱出しろ!急げ!!こいつは・・・」
そこで、後ろから誰かに後ろに引っ張られる
抗う事さえ忘れ、その人の最後の後ろ姿を目に焼き付ける
鬼の様な、勇者の様な、王者の様な・・・ただの隊員
その姿が隔壁の向こうに消え、最後の台詞はその耳には届かなかった

かっと目を見開く川浪
その目は、真紅で、雰囲気も常人を逸していた
無言ですばやく立ち上がると、迷うことなく走る

格納庫まで走ってきた道城と石野だったが、そこで思わぬ待ったをくらった
警備隊員「フライト許可の無い機体を発進させるわけには行きません」
サブマシンガンを構え、石野達を威嚇する警備の隊員達
石野「そこをどけ、命令だ」
警備「官制網に支障をきたします、キャプテンの許可が取れなければ、絶対駄目です!」
道城「目の前で味方がやられているんですよ!」
警備「現在スペースファルコンの一個小隊が向かっています」
石野「SGTスペースの管轄化からどれだけ離れてると思ってんだ!地球に侵入されるぞ!」
警備「しかし下手に出れば味方ミサイルの標的になりますよ、それに私の一存では・・・」
石野「責任者出せ責任者!!」
警備「ステーション責任者のリーブ参謀は今休暇中で・・・」
石野「じゃあ責任は俺がとる!どけ!!」
警備「無理です!」
激しい口論を始めた石野と警備兵にイラつきながら、ふと、廊下に目をやった道城は、見覚えのある長い髪が見えたような気がして、目をこすった

川浪は走った
途中すれ違う隊員が、何事かといぶかしげな顔をしたが、それに構わず、ただ無言で、格納庫入り口近くのある場所に向けて
やがて薄暗い区画にやってきた川浪の前に、あまり手入れの行き届いていないひとつの重そうな特殊合金製の扉が現れた
扉の前にいた警備兵が何事かと身構えた次の瞬間、川浪は加速をかける
一瞬、警備兵の視界から川浪が消え・・・
そして次の瞬間、警備兵のみぞおちに重い一撃が見舞われ、警備兵は悶絶し、倒れた
警備兵を倒した川浪は、平然とした顔で扉の横の端末に恐ろしい勢いでパスワードを入力する
やがて扉は開き、彼女の眼前に、真紅の戦闘機が姿を現した

石野「・・・・」
無言で警備兵から間合いを取る石野
道城「副隊長!」
危険を感じた道城が叫び、警備兵がサブマシンガンを一斉に石野に向ける
道城「暴力h」
石野「頼む、この通りだ!そこを通してくれ!!」
石野は土下座して、頭を地に擦り付けた
あまりの光景に、警備兵も一瞬たじろぐ
しかし、その場を退こうという者はいない
石野「・・・・・頼む」
涙まで流して懇願する石野、道城もそれに続いて土下座する
道城「お願いします!」
流石に困りはてたという顔で、警備兵が何か言おうとしたそのとき、ステーションを衝撃が襲った

四条「・・・・くそう、化け物め」
既にアメーバは四条達のSJの攻撃を弾き返すまでに進化していた
真理「攻撃に対する抗生が高いんだわ・・・どうすれば」
四条「やむおうえん、いったんステーションに戻って体制を」
言いかけた時、四条の通信機が激しく鳴り響いた
四条「こちら四条、どうした?」
ステーションクルー『予備区画に保管してあったレッドフライヤーが強奪されました!』
四条「何?状況は?何が奪った?」
クルー『レッドフライヤーは地球に向けて降下中、強奪者については現在調査t・・・へ?』
四条「わかったか?」
クルー『川浪隊員です、石野副隊長の部下の川浪 生(かわなみ せい)隊員が・・・』
あまりの事に、四条は声を失い、クルーの言葉の後半は耳に届かなかった

レッドフライヤーを強奪した川浪は、まっすぐに地球を目指した
アイアンタワーでもその姿を捉え、すぐに戦闘態勢が敷かれる
石野不在という悪状況をぼやいていた和崎だったが、赤山からレッドフライヤーの搭乗者が川浪である事を知らされ、愕然としてしまう
それは、あの冷静な津上でさえも同じことで、表向きはいつもの冷静な表情を装っているが、その体が不可思議に震えている事から彼の動揺が伺える
赤山「・・・川浪は裏切るような人間じゃ無い、まして狂うような隊員でもない、何か原因があるはずだ、俺がそれを調べる、二人は川浪を足止めしてくれ」
言って、出動指示を出す赤山
敬礼して走る和崎と津上
それぞれエアーハリケーンとタイフーンで出撃する
津上「・・・和崎、いざとなったら」
和崎「わかってます、どうしても川浪隊員を止められない・・・ようなら」
瞬間、目をつぶり、決意をする和崎
和崎「撃墜します」
和崎にとって、EARの面々は第2の家族である
それは、津上にとっても同じことだ
だが、だからこそ隊員達はためらわない
いや、ためらえない
ためらえば、ためらうだけ、隙が生まれる
隙が生まれれば、結果はどんどん悪くなっていく
川浪の命も、世界の平和も守らねばならない
だからこそ、少しでもよい結果を残すために、迷うわけにはいかないのだ
津上「来たな」
二人の眼前はるか彼方から、真紅の機体が接近してくる
ロックオンされる事を防ぐために回避運動を連続しながら、2機のEAR戦闘機はレッドフライヤーに挑んでいった


BIDステーション内
警備兵との口論を中断し、旧格納庫に来た石野
かつて自分がすごしたそこと変わらない作りになっているそこを見ても、石野は別に何も感じなかった
性格に言うとそんなもの気に止めている余裕など無かった
ゲート付近には強行発進したためと思われる焼ききれや、無惨な姿となったストッパーの姿があり、確かに彼女が出て行ったことを物語っている
石野(なぜ・・・あいつは・・・)
過去にあった事を、彼女が苦に思ったとは、石野は思わなかった
なぜなら彼は、彼女が過去と別離している事を、誰よりも知っているから

一方、道城は誰もいない区画にいた
道城「川浪・・・・」
その名を言って、目をつぶった後、かっと目を見開き、オーバーフラッシュチェンジャーを掲げる
激しい光がその体を包んだ

後退するスペースジェット隊を、アメーバが追撃している
光線をその核から発射した
四条「くっそお」
何とかそれをかわすSJU
そこに、はるか彼方から光と共にウルトラマンオーバーが飛んできた
四条「ウルトラマン!」
両腕をクロスさせ、エネルギーをこめて打ち出すオーバー
しかし、アメーバはそれをかわして、オーバーを包むように広がる
オーバー「ルウァ」
危機を察知したオーバーだったが、あっという間にアメーバに包まれてしまう

和崎「川浪さん・・・ほんとに」
レッドフライヤーから発射されたサンダーボルトレーザー砲がすぐ横をかすめて行った
避けなければ、間違いなく当たっていただろう
コンマ何秒か呆然とした和崎だったが、すぐに反撃の構えを取る
和崎「津上隊員!冷凍弾!」
津上「御意、準備よろし」
それだけの会話で、意味を察した津上が、和崎の後ろにつく
同時に、レッドフライヤーをロックオンする和崎
そして和崎はためらい無く、引き金を引いた
2本の光線がエアーハリケーンから発射される
それを難なくかわすレッドフライヤー
そこでハリケーンが急上昇して後ろから現れたタイフーンが冷凍弾を発射した
見事なフォーメーションヤマトである、が、レッドフライヤーは不意ついて放たれたミサイルを加速して自らの後ろで爆発させる
そのまま、タイフーンにレーザーを見舞った
被弾し、炎をあげるエアータイフーン
和崎「川浪さん、ほんとに津上隊員を眼下で炎を上げて高度を落していくエアータイフーンを見ながら、和崎はもはや川浪を止めるには、彼女を倒すしかないと悟った
そのまま、急降下を始める

アイアンタワー作戦室で川浪暴走の原因を探っていた赤山は、ついにその原因を突き止めていた
そのまま格納庫に向かう

アメーバに取り込まれたオーバーを蜘蛛のような形状に変身した核が襲った
アメーバに拘束され動けないオーバーに吸い付き、エネルギーを吸う蜘蛛
苦しむオーバーだが、なす術が無い

一方大気圏内では和崎と川浪の激しい一騎打ちが続いていた
真っ向からの撃ちあい、急旋回し、急減速、急加速・・・
やがて、激しい戦いの勝利を掴んだのは相手より高い性能の機体を駆り、石野の下激しい技術訓練に耐えていた和崎だった
相手の後ろを取り、ロックオンする和崎

・・・・だが、彼には引き金は引けなかった
和崎「EAR失格だな・・・俺」
落ちていく機内で、和崎は飛び去っていくレッドフライヤーに目を向ける
その時、突如、レッドフライヤーが光に包まれ、ゆっくり降下していく
和崎「!!」
???「聞こえる?EARさん」
仰天する和崎の耳に、通信機から女性の声が聞こえてきた
どこか気の強そうな、声のその女性は、勝ち誇ったように言う
???「空中戦のエースが聞いて呆れるわ、後は私に任せて、不時着して昼寝でもしてるのね」
和崎「待て!彼女は」
???「殺すつもりなんてはなから無いから安心しなさい、・・・あなた名前は」
突然の質問に、混乱する和崎
和崎「わ・・・和崎文次」
???「帰ったら辞表を提出する事ね、死にたくなかったら」
和崎「・・・貴様」
何か言い返そうとした和崎だったが、もうすぐ不時着のため余裕がなくなり、口をふさぐ
???「・・・ほんとに、やめた方がいいわよ、あなたは」
最後の声は、どこか今までと違う、温かみが篭っていた様な気がしたが、和崎にはそれを気にしている余裕は無かった

アメーバの中で蜘蛛状の生物に捕らえられ、身動きが取れないオーバー
エネルギーがどんどん奪われていく
カラータイマーが赤に変わる
絶対絶命のウルトラマンオーバーを救ったのは、彼方から現れたD−ウイングを引き連れたエアーブリザードだった
強化ミサイル弾頭を発射しながら、突進するエアー戦闘機編隊
赤山「ウルトラマンオーバー、そいつを倒してくれ!川浪はそいつに操られているんだ!」
空気の無い宇宙空間では声が届かない事も忘れて、オーバーに向かって言う赤山
敵の拘束が一瞬緩んだところで全身にエネルギーを貯め、発射して脱出するオーバー
エネルギーの爆発でアメーバ部分が吹き飛び、核だけになった敵は逃走しようとするが、オーバーのはなったオーバーヒートバスターで粉砕された

着陸しているレッドフライヤーの周囲に、黒いヘルメットに黒いボディスーツという数名の人員が取り囲んでいる
その指揮を執っているのは、五条火華
五条「拘束と回収を急げ」
五条の言葉に応じ、レッドフライヤーのコックピッドに取り付くボディスーツ達
和崎「待て!」
遠くから和崎が走ってきて、それを制止した
手が止まるボディスーツ達
和崎「なんのつもりだ!川浪さんは侵略者に操られていただけだったじゃ無いか!」
感情の篭っていない瞳で、和崎を見る五条
五条「今後のために、彼女が必要なのよ」
和崎「なんで川浪さんなんだ!だいたいなんであんな達が」
そこで和崎は、自分が取り囲まれている事に気づいた
ウィンドブラスターに手をかける和崎
和崎「何のつもりだ!」
五条「川浪隊員・・・人間じゃないのよ、彼女」
突然の台詞に怯む和崎、その隙にどこからか呪文の様な言語が聞こえ、体が動かなくなる
そして和崎の目の前で、コックピッドから引きずりだされた意識を失った川浪が黒ずくめ達にさらわれていく
和崎の脳裏に蘇る、異次元に吸い込まれていく道城

和崎「待て、待ってくれ、どういうことなんだ、川浪隊員が人間じゃないって」
五条「彼女はね」
何か五条が言おうとしたとき、黒ずくめ達が身構え、彼女の言葉を止めた
和崎「?」
突如地面から生えた手が、川浪を連れて行こうとした男の一人の足を取り、転ばせる
もう一人が何か対処しようとする前にその腹にけりが加えられ、悶絶するもうひとり
地中から現れたのは、我等が津上
川浪を抱え、何か対応しようとしている一同の間を走りぬけ、和崎の横まで走り、止まった
津上「なんのつもりですか?」
言って、振り向く津上
川浪は小脇に抱えている
その津上に対し、身構える黒ずくめの面々
五条「・・・時間が無いのよ、すぐに、彼女を覚醒させなければ、人類の存続が危うくなる」
強い調子で言う五条に、津上は厳しい視線を向ける
津上「彼女は人間だ、覚醒もしなければ、人間として戦う以外の事もしない」
突然、地鳴りが聞こえてくる
五条「綺麗ごとを・・・」
そう吐き捨てて、五条は黒ずくめ達を引き連れて早々にその場を去っていった
徐々に強くなる地鳴り
呆然とただ見つめている和崎の肩に、何者かがポンッと手を置く
「辞表、忘れないように」
あの女の声が聞こえた後、体の自由が戻り、振り向くが、既にそこに人の姿は無かった
それからすぐに津上が応援として呼んだN−BIDの面々がジオライザーで到着し、彼らと共に和崎達はアイアンタワーへと戻る
公平(まだ地球在住)「しかしまさかいつの間にか侵略者が地球に侵入していたなんてねえ」
影山「物騒な世の中になったもんだ」
何も知らないN−BIDの面々はどうやら津上から侵略者に襲われていると説明を受けたらしい
和崎はもしかしたら津上も何か知ってるかもしれないと思い彼に聞こうとしたが、聞いたところで津上が答える事は無いと思い、ため息をついた
和崎(あなたは一体何者なんだ・・・)
川浪の寝顔を見つめる和崎
しかし、すぐにその考えを打ち消す
和崎「何者でもいい、あなたはあなただ」
一瞬自分に言われたのかと思った公平が物凄いビビッたが、和崎はそれにきづかづ、ただ川浪の寝顔に見入った

BIDステーションでは、生き残ったステーション隊員達とステーションに立ち寄った赤山、石野、道城、そして応援に駆けつけたSGTスペースの面々による、海矢の葬儀が行われていた
四条「・・・いい奴だった」
横で手を合わせている石野に声をかける四条
石野「ああ」
四条「石野」
石野「・・・・」
四条「お前は部下を・・・死なせるんじゃないぞ」
そう言う四条の目には、涙が流れていた
じっと目を瞑り、黙祷する道城
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第17話「選ばれた戦士」 宇宙怪獣「ゾル」腐敗怪獣「リヴィゾル」
未確認飛行物体地球侵入の連絡を受けたEARはただちにヴァルチャーE、エアーストーム、エアーハリケーンという陣容で迎撃に向かっていた
ヴァルチャー甲に道城、乙に川浪、丙に津上、エアーストームに石野、ハリケーンには和崎が乗っている
やがて姿を現した巨大な宇宙船は、怪獣4、5体は入るだろうという程の大きさで、長距離から熱線を放ってEAR戦闘機隊を攻撃してきた
道城「分離!!!」
川浪・津上「「了解!」」
分離してそれをかわすヴァルチャーE
その後ろからストームとハリケーンがミサイルを発射して宇宙船を攻撃するが、直撃したミサイルは効果なく、巨大円盤は熱線を連射する
熱線をかわして巨大円盤に接近するヴァルチャー甲
ヴァルチャーの翼から最新鋭攻撃ミサイル、「FB−77ミサイル」が4機発射される
ミサイルは高速回転しながら巨大円盤に命中し、その装甲にめり込んだ後、爆発した
炎を吹き上げながら高度を落していく円盤にさらに攻撃をしかけるEAR戦闘機隊
やがて炎に包まれた巨大円盤は山中に不時着して動かなくなる
道城「やったか?」

しかし円盤の屋根部分が開き、今度は中から怪獣が5体も出現した
口から紫色の怪光を放ち、暴れる怪獣達
和崎「な・・・」
石野「団体さんのおでましってわけだ」
言って、ミサイルを放つエアーストーム
攻撃を受けて怯む怪獣
さらにヴァルチャー乙が強力な光線砲「ブレイクウィンドレーザー」を浴びせ、怪獣は倒れ付した
道城「残り4体」
ヴァルチャー甲が再びFB−77ミサイルを放ち、さらに一体撃破する
津上「3体・・・」
ヴァルチャー丙が急降下して怪獣を翼で斬撃し、また一体倒れた
石野「2体」
怪獣の真上から頭部にミサイルを叩き込むエアーストーム、苦しむ怪獣にさらに背後からミサイルを連射する
なすすべなく倒れ付す怪獣
和崎「ラスト一匹」
レーザー光線で怪獣を攻撃するハリケーン
しかし有効打にはならず、逆に怪獣の熱線で撃墜される
和崎「・・・・くっそおおおおおおおおおお」
煙を吹きながらも意地になって戦闘を続けるエアーハリケーン
その光景をじっと見つめる道城

道城「・・・津上、川浪隊員、サークルフォーメーションを使おう」
川浪「了解」
津上「了解」
怪獣の上空に来て、高速で旋回を始めるヴァルチャー3機
道城「和崎、後退して不時着しろ」
和崎「そんな・・・この怪獣はお」
道城「攻撃の邪魔だ、下がれ」
道城の一括で、戦場を離れていくエアーハリケーン
やがて円を書くように旋回していたヴァルチャー各機の円の中心に巨大な火球が生まれて落下し、怪獣を吹き飛ばした

不時着したハリケーンの中でうずくまる和崎
その脳裏に先日の戦いでのあの言葉が蘇る
???『帰ったら辞表を提出する事ね、死にたくなかったら』
救助に来た川浪達に連れられてアイアンタワーに戻った後も、和崎の表情は冴えなかった

アイアンタワーでなぜあそこで怪獣と無理に戦闘をしたのか赤山に咎められる和崎
和崎は自分の正直な気持ちをそこで述べる
自分はEARに本当に必要なメンバーなのか?と
確かに和崎には津上の様な格闘能力も、川浪の様なずば抜けた運動能力も、道城の様な精神力も、ないし、雄一他のメンバーより高い操縦技術も石野にははるかに及ばない
そんな自分が本当にここにいる意味があるのかと、弱音を吐く和崎
赤山はしばらく無言でいた後、和崎にそれならなぜお前はここにいるかと尋ねた
言葉に詰まる和崎、そんな和崎に、赤山は謹慎を命じる
驚く和崎、講義の視線を赤山に向ける石野、心配そうに和崎を見つめる川浪、目を瞑り、黙する津上、そして、じっと静観する道城

アイアンタワーの通路で、赤山になぜ和崎にEARに和崎がいる理由を教えないのかと問う道城
赤山「和崎自身がそれを見つけねば、意味は無いだろう?」
そう言って、去っていく赤山、その背中を、道城は通路の奥に赤山が消えるまで見守っていた

謹慎を喰らった和崎は自室にいた
和崎の自室にはウルティメットマンやウルトラマンフレンズ、ハンターライダー、銃撃戦隊ガンナーファイブと言った特撮ヒーローや、鬼道狂戦士リュウガンを主とするロボットアニメ
はたまたビートルやウルトラホーク、アイアンキングと言ったミリタリーのプラモ、フィギア、ゲーム、ポスターに玩具が所狭しと並んでいる
過去に地球に来たウルトラマン達のフィギアも例外ではなく、最近地球を去っていったシグマや、ミラクル
今も現役で活躍しているバーストと深部まで再現されたフィギアが歴代ウルトラマン達のフィギアの横に並んでいるのは言うまでも無いだろう
ちなみに凶悪宇宙人達を模した商品は世界の地球外侵略者カード以外は縁起が悪いとの理由であまり商品化されていない

他にもスペースジェットの1/144スケールプラモデルや、RED隊員のアクションフィギア(女性隊員バージョンあり)、スペースガンのガスガン(オプションパーツ付き)などが飾られていたりするのだがきりがないのでこれ以上は省く事にする
それらのコレクションに囲まれたベッドの上で、和崎はあおむけに寝そべっていた
その視線の先、天井には、ウルトラマンイレイズのポスターが貼られている
和崎(思えばいつもみんなの足をひっぱているのは俺だったな・・・)
じっと、イレイズを見つめる和崎
実は、過去和崎を救ったウルトラマンとは、ウルトラマンイレイズだったのである
和崎の家系は代々地球防衛軍の家系で
祖父は超獣ベロクロンに数十のファントム戦闘機を率いて戦いを挑んで命を散らし
父はかのUGMの一般部隊で幾多の怪獣と激戦を繰り広げ、サラマンドラとの戦いでビルに突っ込んで重症を負って退役している
そんな父や祖父を和崎や彼の姉弟は尊敬し、幸せな生活を歩んでいた
しかし、和崎がまだ中学生だった頃、彼の両親はガタストロンに殺されてしまう
尊敬していた父を殺した殺したガタストロンを、和崎は激しく憎み、復讐を誓った
だが、ただの人間で、しかも何の能力も無い和崎が何かできるわけではなく、ただただ、涙に暮れるしかない

その後和崎は既に独立していた姉の下に預けられた
元々姉とは仲が良かったため、姉や周囲の人、そう、近所に住んでいた同じ待遇の少年のおかげで心の傷もだいぶ癒えた頃
今度はブラン星人の怪獣、ボルカノンの攻撃で姉は下半身をつぶれた家の屋根にはさまれ、姉を助けようとしていた和崎は逃げ遅れ
イレイズを倒すためにブラン星人が張ったバリアの中に閉じ込められてしまったのだ
そして、ウルトラマンイレイズとボルカノンの戦いが始まり、和崎は絶望した
どちらが勝っても、和崎はイレイズなりボルカノンなりの攻撃の際、とばっちり喰って死ぬ位置にいるのである
かと言って、残された最後の肉親である姉を見捨てるわけには行かない
イレイズにチョップを喰らわせられたボルカノンが和崎の方によろめいてきて、和崎が死を覚悟した時だった
慌ててイレイズはふらつくボルカノンを押さえつけ、その動きを止めたのである
イレイズは出現の際、周囲の人間の位置を既に把握していたのだ
結局、イレイズの周囲に最深の注意をはらっての戦いのおかげで姉も自分も助かり、その戦いで死者が出ることは無かった
自分の事だけでなく、周囲の、言い訳をすれば見捨てる事ができる人間のために、ウルトラマンは命を懸けて労力を削ったのである
それがどれだけの愛の行為かは、はかりしれない

その事件から、和崎は地球防衛軍に入ることを決意した
尊敬している父や、顔も見たことが無い、祖母の話の中に出てきた味方の戦闘機が次々やられていく中、撤退命令に背き、町を守るため戦って死んだ祖父、そしてあのウルトラマンイレイズの用に、無償で人を助けよう、そう思っての決意である
その憧れのイレイズが、ガタストロンを倒してくれた時、和崎は感涙で空に向かって「ありがとうイレイズ」と叫び続けた
(俺はウルトラマンイレイズのように、誰かを助け、皆をひっぱて行く様な人間になる)
18歳になって、地球防衛軍隊員訓練所に入隊した和崎は教官や視察に来てくれた当時の特別チーム、SGTの谷村隊員が驚くほどの活躍をし、訓練生仲間から「お前実はウルトラマンだろ?」と言われるほどの成績を打ち出した
実戦でも和崎は他の一般隊員より頭ひとつ上の活躍を見せ、佐々木参謀長殿から「次期特別チームEARの隊員候補に任命する」と言われえた時の喜びようは、飛び上がって喜んだ物である
和崎には自信があった、EARに入っても自分以上の隊員はいないと思っていた

自分の他に隊員に選ばれたのは皆、超人的な能力を持つ、者ばかりで、和崎の自信は、一気に崩壊した
EARに入ってから、和崎に活躍の場は無く、むしろ足をひっぱてさえいる
それでも他の隊員達は和崎を攻めたり、邪魔者扱いする事は一切無く、和崎がミスをすれば必ず石野や道城がカバーし、今まで勝利してきた
しかしそれではいけないと彼なりに考えていた矢先に、あの謎の女性からの警告があった、だから、和崎があの怪獣軍団との戦いで焦ったのたのだ
このままでは、ベロクロンと戦って死んだ祖父や、サラマンドラに叩き落された父に顔向けできない
和崎は思った
次の戦いこそは、どんな手を使っても怪獣を倒そう、と

一方巨大円盤に乗ってやってきた怪獣達の死骸を処理すべく、ガーディアン指揮下の怪獣死骸処理班により、科学分析が行われていた
分析の結果怪獣の細胞には未知の部分が多く
有害な物質が出る危険性があるためその場で焼却作業を行う事ができない事がわかる
そのため怪獣の死骸は防衛軍特殊有害物質処分場にまわされ、そこで特殊な処分を行う事が決まった
飛び散った肉片を回収していく防護服をつけた隊員達
ふと、作業中の隊員がある事に気がついた
怪獣の死骸が物凄い勢いで腐っていくのだ
奇妙に思い、凝視する隊員達
と、突然怪獣の肉片が原型をとどめている一体の死骸に群がり始める
慌ててアイアンタワーに連絡する隊員達
死体だったはずの一体の怪獣は、ゆっくりと立ち上がり、破壊活動を開始した
処理隊を支援していたヘリコプターがミサイルで攻撃を仕掛け、武装していた隊員がレーザーガンで応戦するが、物ともしない

非常サイレンが鳴り響くアイアンタワー
EAR隊員が走り、バックアップのD−ストーム隊がスタンバイし、医療班はオペの準備を始め、整備班は機体の最終チェックを開始する
作戦室で怪獣の進行速度などから、今後の作戦を立てていた赤山の元に、和崎が駆け込んできた
和崎「隊長、俺を出動させてください!」
赤山「謹慎中のはずだ」
和崎「しかし」
赤山「今のお前が来ても、足を引っ張るだけだ、戻れ!」
和崎「・・・・じゃあ・・・せめて作戦室に」
赤山はため息をつくと、仕方なさげに頷いた

ヴァルチャーEとエアーストームで現場に急行したEAR隊員達
全身ぐちゃぐちゃでところどころ溶けている怪獣は、体から液体を吹きながら前進を続ける
石野「攻撃!」
他EARメンバー「了解」
ヴァルチャーEがヴィクトリーアタックと同威力の破壊光線を機首から発射する
怪獣は半身が吹き飛ぶが、すぐに再生してしまった
今度はエアーストームがミサイル弾を浴びせる
旋回したヴァルチャーEもFB−77ミサイルを発射してそれに続く
しかし、怪獣は爆発で体のほとんどが吹き飛んでも飛び散った肉片が合体してすぐ再生した
全身から怪光線を発射する怪獣
ストームは避け、ヴァルチャーEはバリアでそれを弾く
反転して再度攻撃を加えるが、やはりすぐに再生してしまう

作戦室で赤山と共に戦況を見ていた和崎は、味方が苦戦しているのに、何もできない自分に歯噛みした
和崎「隊長、なぜ俺を行かせてくれないんですか?このままじゃ怪獣は市街地に侵入してしまいますよ!」
赤山「和崎、私はここに残れと命令した」
和崎「しかし!」
赤山「この命令がわからんのなら、お前はEARをやめろ、無駄な屍は増やしたくない」
ショックを受ける和崎だが、赤山の言葉が耳に残る
オペレーターディスクに座る和崎
怪獣の細胞データを検出し始める
赤山はそれを見て微笑むと、自らもその隣で怪獣のデータを処理し始めた
和崎(俺は間違っていた)
モニターに向かう和崎の瞳は輝いている
和崎(どこにいようと自分のできる事を確実に行い、決して自分のために欲張らない、それが)「隊長、わかりました!」
椅子から立ち上がる和崎
和崎(EAR隊員だ!)「あの怪獣は体細胞に微生物が大量に寄生しているんです!ナパームや火炎放射器なら通用します!」
満足気に微笑む赤山
赤山「よし!和崎!エアーハリケーンにナパーム弾と火炎弾搭載!直ちに現地に出動しろ!」
和崎「了解!!」
走り去る和崎の背に視線を送る赤山
赤山(和崎よ、お前は自分で思っているより、ずっと強いパイロットだ、確かに他の隊員よりは能力が劣るが、いくらでも努力で乗り越える事ができる。自信を持って、進め!)

市街地では安全保護隊による避難誘導が行われていた
しかし年寄りや子供もいれば、頑として逃げない人間もいるため、決してスムーズに進んでいるわけではない
避難誘導をする隊員達の中には、竹下の姿もあった
男性隊員と組んで非難誘導する竹下
EAR戦闘機と怪獣の戦闘音が徐々に徐々に近づいてくる
竹下(・・・・道城君)
倒れた少年に駆け寄りながら、竹下は一瞬、道城の心配をしたが、すぐに振り払う
竹下(大丈夫よね、彼なら)
少年を立ち上がらせる竹下
その頭上をエアータイフーンが飛んでいく
少年「頑張れええええエアアアアアアアアアアアア」
少年の叫びに、竹下は微笑えむ

戦列に加わるエアーハリケーン
石野「おお、遅かったな」
相手の光線を難なくかわしながら陽気に言ってのける石野
和崎「この怪獣の攻略方法がわかりました!副隊長、先輩達、援護してください」
ヴァルチャー甲のコックピッドで、和崎の復活に微笑む道城
道城「了解、分離!」
津上・川浪「了解!」
分離したヴァルチャーEが3方向から攻撃をかけ、リヴィゾルを怯ませる
さらにミサイルを叩き込むエアーストーム
苦しむリヴィゾル
そこにエアーハリケーンが火炎弾を連射する
体に火がつき、苦しみもがくリヴィゾル
が、次の瞬間体から白いガスが吹き出し、体の炎を消化した
和崎「な!」
石野「あんな能力隠しもってやがったのか!?」
自棄になったように光線を乱射するリヴィゾル
必死にかわす各機だが、このままでは怪獣は市街地に到達してしまう
市街地からも怪獣は既に目視でき、竹下達安保隊員が固唾を呑んで戦況を見守る

リヴィゾルの光弾が市街地に命中しようとしたその時、激しい光と共にウルトラマンオーバーが現れ、その光弾を弾き返した
和崎「ウルトラマンオーバー・・・」
ハリケーンからオーバーを見下ろす和崎に、オーバーは頷いてみせる
和崎「・・・・なるほどそう言う事か、副隊長、津上隊員、川浪隊員、強化ナパーム弾を使います!」
石野「市街地まで焼けちまうぞ!?」
和崎「オーバーが何のために来てくれたと思います?」
なるほどと頷く石野
石野「川浪津上道城、俺につづけ!」
リヴィゾルはさらに光線を連射するが、石野達の戦闘機はどうにかかわしてミサイルを発射する
ミサイルに怯むリヴィゾル
オーバーは市街地に向かってくる光線を素手で弾きながら、必死に念力でヴァルチャー甲を動かす
自動操縦では複雑な飛行はできないのだ
徹底攻撃に、ついにリヴィゾルは光線発射をやめた
和崎「未だ!!」
強化ナパーム弾がハリケーンから発射され、次々とリヴィゾルに直撃し、その全身を炎に包む
炎はそのまま市街地にも届きそうになるが、それはオーバーがバリアで守る
あっという間に、リヴィゾルは燃え尽きた
感激に満ちた表情でそれを見つめる和崎
和崎「じいちゃん父ちゃん母ちゃん、見ててくれたか?俺は・・・俺はとうとう怪獣をやっつけたんだ、やった、やったぞおおおおおおおおお」

アイアンタワー
通路を歩いていく和崎を、通路の壁にもたれかかって待っていた道城
和崎の姿を見つけて、にやっと笑う道城
道城「わかったか?お前がEARに入ってる理由」
道城の言葉に、力強く頷く和崎
和崎「焦らなくても、ちゃんと俺は成長できる、そう思えましたよ」
2人は微笑みあって、仲間の待つ作戦室へと向かった
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第18話「平和が燃える」黒炎凶獣「ヴァンフレイム」白炎凶獣「リートバーナー」
住宅街を、エアロスが走っている
和崎「平和ですねえ、先輩」
助手席の和崎が、周囲に目を配りながら言う
運転席の道城はプレーヤーから流れてくるUMOの音楽を聞きながら、頷く
道城「ああ、こうやって平和な時を知っているから、意地でも地球を守ろうと思えるんだろうな」
和崎「先輩、隊長じゃないんだからそんなお堅い事言わないでくださいよ、せっかくお天等様がいい天気なのに」
道城「一応勤務中だぞ、ったく」
そう言う道城も、まんざらではない
エアロスの横の歩道を、赤ん坊を乗せた乳母車が通っているのを見つけ、微笑む道城
つい先日ウルトラマンバーストがガゴス星人を倒した事で、地球は平和なのである
ガゴス星人が来た時、アイアンタワーはガゴス星人の工兵によって電子系を麻痺させられていた
アイアンタワーに監視カメラつきエレベーターに閉じ込められた道城は変身して助けに行く事ができず、津上が敵工作兵をたおしたのは、ウルトラマンバーストは地球を去った後だった
和崎「そういえば、こうやってのんびりするの久しぶりですね」
道城「そうだな・・・そういえばUMOの新曲発売されたんだって?」
和崎「先輩知らなかったんですか?もう数週間前に出てますよ」
和崎の言葉に、苦笑する道城
道城(ああ、そうか・・・ここんとこずうっとタワーの中だったからなあ)
そんな事を考え、道城は改めて、自分と周りの人間との隔たりを思い知らされた

和崎「かく言う俺もこの前警備の武田さんに教えてもらって始めて知ったんですけどね」
笑いながら言う和崎を見て、道城は怪訝な表情になるのを押し殺す
REDなら入隊さえ断られるような年齢で、普通の青年が感じるような幸せを捨てて戦う和崎を思うと、道城は痛ましくてならなかった
しかし当の本人は好きでやっているので何の苦でもないが、そんな事は道城にはわからない
道城「・・・そろそろ飯にするか、何か奢ってやるよ」
和崎「何ですか急に・・・気持ち悪い」
道城「懐が暖かいんでね、後輩に先輩としての威厳を見せてやろうと思ったんだよ」
和崎「・・・マジでなんかあったんですか?」
道城(・・・後何回、こうやってうまい物が食えるかわからないからな)
とは言わず、道城は、ただ苦笑して頷くだけだった
明日死ぬか、下手をすれば次の瞬間死ぬかもしれない
だから、わずかな平和な時間だけでも、楽しくすごしたい
それが、今の道城の思いだった

和崎の提案で最近うまいと評判の定食屋に立ち寄る道城達
和崎「ここの看板娘、宇宙人と料理勝負して勝ったって、えらい評判でしてね」
道城「宇宙人と料理勝負ねえ・・・。屋根に穴開いてたみたいだな、塞いだ後がある」
和崎「宇宙人が登場する時に空けた穴らしいです」
道城「どんな宇宙人だよ」
などと言いながら、定食屋に道城が入ろうとした、まさにその時だった
突然次元に裂け目ができたかと思うと、黒い光球が中から飛んで行き、町のはずれに命中する
さらに白い光球も現れ、反対側の町のはずれに落下した
すぐに本部に連絡を入れる和崎
道城は付近住民を避難させ始める
道城(休みなしか・・・)
ふたつの光球はそれぞれ黒いと白の火柱になったかと思うと、炎の中から黒と白で、炎をまとった人間の様な姿の巨大な怪獣が出現した

などなど、わからない筒所がありましたらぜひお聞きください

地球に出現した二大怪獣を迎え撃つべく緊急出動するEARの戦闘機隊
その中にN−BID隊員達の姿もあった
別に所属組織を変えたわけではなく、自衛隊基地よりはまともなアイアンタワーにいた方が、各種事件に即座に対応できるという配慮からである
今回の編成は、ヴァルチャー甲に影山、乙に野崎、丙に津上、エアーストームに石野、ハリケーンに沢村、タイフーンに川浪、さらにグランドライザーが参戦して、オペレーターと技術者がいるという超豪華版だ
石野「作戦指揮は一応階級的に俺が取る、問題ないな」
影山「まったくありません」
両国「遠慮はいりゃーせんよ石野副隊長、自分の部下だと思って指揮を執ってくだせえ」
石野「感謝する、目的地到着と共にグランドライザー降下、その後ヴィクトリーアタックとヴィクトリービーム(ヴァルチャーのビーム砲)で一気にかたをつける」
全隊員『了解』

2大怪獣が出現した町で避難誘導する道城と和崎
怪獣は町の対岸でしばらくじっとしていたが、突然全身からナパームの様に火炎を発射し始めた
町中で爆発が起こり、建物が、車が、大人が、子供が、老人が、一瞬にして炎に包まれていく
安全保護隊が現地に駆けつけたが、怪獣の激しい爆撃のため避難誘導は思うように進まず、逆に隊員たちまで炎に巻き込まれ、犠牲になってしまう
つい数十分まえまで平和だった町は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図と化した
道城と和崎は炎の中であきらめずに人々を救助し、避難誘導し続ける
和崎「先輩、こうなったらエアロスで戦いましょう!応援が来るのを待ってたら被害が増える一方です!!」
和崎がそう言った次の瞬間、近くの民家が火炎の直撃を受けて爆発した
子供の泣き声が周囲に響き渡る
道城は迷わず炎に包まれた民家の中に飛び込んでいくと、中から大火傷を負った赤ん坊を救出してきた
和崎は自分の言った意見も忘れ、道城の連れてきた赤ん坊に応急手当てを施すと、近くを走っていた警官を呼び止めて赤ん坊を託し、一心不乱に避難誘導を行う
町の大半が炎に包まれたころ、ようやっと、合同防衛隊の戦闘機隊が現れた。いや、いつもどおり怪獣が現れてほとんどすぐに飛び立ち、いつもより早くついたのだが、それでも、町の犠牲はすさまじい物と化している

沢村「・・・酷い」
松野「まるで・・・地獄や・・・」
町のありさまに思わず息を呑む隊員達
石野「グランドライザー降下!全機攻撃開始!」
石野の指示でヴァルチャーEからグランドライザーが降下する、それと同時に、ヴィクトリーアタックが黒い怪獣に、ヴィクトリービームが白い怪獣に発射された
が、黒い怪獣と白い怪獣はそれよりも強力な光線を発射してそれを相殺した!
川浪「!!」
影山「なんつう・・・」
標的を地上の町から上空の合同防衛隊戦闘機体に変更し、火炎弾を連射する黒と白の怪獣、いや、凶獣!
影山「分離!!」
野崎、津上「「了解!!」」
分離、散開して攻撃を回避するヴァルチャーE
エアーストーム、ハリケーン、タイフーンもなんとか攻撃を避ける
石野「各機散開しろ!奴等に死角はなさそうだがこっちが当たる可能性が減る!散開して隙を見て攻撃!」
戦闘機が一斉にバラバラの方向に飛行する
地上のグランドライザーからも攻撃が始まった、ロケット弾を連射するグランドライザー
が、そのロケット弾さえも体からだす光弾で全て撃墜する凶獣
両国「攻撃は最大の防御を・・・地でいくやっちゃのう・・・」
松野「敵攻撃!来るで!」
バックしてふりそそいだ火炎弾を回避するグランドライザー
一瞬にして、今までグランドライザーがいた場所は炎に包まれた
ヴァルチャー乙がブレイクウインドレーザーを発射し、丙がマイクロミサイルを黒い凶獣に向けて連射する
しかし凶獣はレーザーをやはり体から放った強力な光線で押し返し、体から光弾を連射してマイクロミサイルを全て叩き落した
凶獣の注意がそちらに向いている隙に後ろに回ったヴァルチャー甲がFB−77ミサイルを放ったが、まるで背中に目があるかのように的確にミサイルは落され、逆に敵の攻撃が甲をかすめ、慌てて甲は身を翻して距離をとる
ありったけのバルカンとミサイルを別方向から白い凶獣に撃ちまくるエアーハリケーンとタイフーン
が、凶獣は全身から光弾を連射してミサイルとバルカンを全て撃墜する、が、今度は真上からもエアーストームがレーザーを発射した
完全な不意打ちだったにもかかわらず、凶獣は真上に光線を発射して難なくレーザーを相殺し、エアーストームを別の光弾で追い払う

和崎「ば・・・化け物だ・・・とんでもねえ化け物だこいつら・・・」
戦闘の様子を見て、和崎は思わず呟いた
今まで青かった空も、今では町が燃えた黒煙で曇ってしまっている
道城は誰もいない隙に近くの燃え盛るビルに飛び込むと、オーバーフラッシュチェンジャーを掲げた
激しい光と共にウルトラマンオーバーが光の中から参上する
和崎「ウルトラマンオーバー」
両凶獣から斜め横の町の端に着地して2大凶獣に構えを取るオーバー
凶獣はすかさず両腕から火炎弾、光線を連射するが、オーバーはそれを大ジャンプでかわし、スペシウムソードを放った
が、凶獣は難なくそれを撃墜しさらに火炎を発射する
凶獣の攻撃をかわすオーバー、しかしどんなに頑張ってかわしても必ず数発命中してしまう
絶え間ない攻撃を止めるべく、黒い凶獣の懐に飛び込もうとダッシュするオーバー
しかしもう片方向から絶え間なく飛び交う攻撃と、黒い凶獣の攻撃を受け続け、倒れふす
「グァアア」
何とか立ち上がろうとするが、近くにいた黒い凶獣が近づいてきてオーバーを踏みつけ、至近距離から火炎を浴びせて、さらに光線と火炎弾を打ち込んでくる
だがオーバーも負けてはいない
「フン、ゼエア」
至近距離まで近づいた黒い凶獣の足を掴んで転ばせ、至近距離からハイバスター光線を叩き込んだ
苦しむ凶獣の上にのり、パンチの嵐を降らすオーバー
だが白い凶獣の火炎で背中を焼かれ、仕方なく黒い凶獣から転がっており、火炎から逃げるオーバー
そのままスペシウムソードを白い凶獣に発射するが、白い凶獣は弾幕でそれを撃ち落した
黒い凶獣は起き上がって白い凶獣の元まで行き、2匹でオーバーにありったけの火炎と光弾、熱線を体中から撃ちまくる
オーバーはバリアを張ってそれを防ぐ
しかし、凶獣たちの攻撃はより激しさを増していく
このままでは破られるのは時間の問題だろう

その時、空中に待機していた合同防衛隊の戦闘機とグランドライザー、和崎のエアロスが凶獣の後ろからありったけの火力を放った
ビクトリーアタックとビーム、ロケット弾、ミサイルが雨あられ降り注ぐ
だが凶獣はそれに気づき、オーバーへの攻撃を中断して防衛軍の攻撃を迎撃する
攻撃が手薄になった一瞬
「ハアアアアアアアアア、ディアアアアアアアアアアアアア」
オーバーはありったけのエネルギーを込めてオーバーヒートバスターを発射した
それに対して白い凶獣が黒い凶獣に防衛軍への弾幕を任せ、同じく強力な光線を発射してヒートバスターを迎え撃つ
激しい爆発が連続で発生し、大音量が響き渡り・・・
2大凶獣は半身を吹き飛ばされ、倒れた
周囲から歓声が沸きあがる
オーバーも道城の姿へと戻り、全てが終わった
かに思えたが・・・

エアーストーム
石野は本部に勝利報告を入れようとしていた
石野「こちら石野、ターゲット殲滅完了、これより本部へ帰還します」
赤山『了解した、よくやってくれたな、すぐに戻って・・・』
っと、通信機の向こうでなにやら通信士が慌てた様子で赤山に何か言っているのが聞こえる
赤山『・・・石野、たった今ガーディアン上層部から緊急命令が入った』
改まって言う赤山に、首をかしげる石野
赤山『回線を全隊員に回してくれ』

地上で、戦闘機内で、赤山からの命令を待つ隊員達
赤山『緊急命令』
変身を解き、ビルから出てきた道城も通信機に耳を傾ける
赤山『現時刻を持って地球完全防衛連隊、EARの川浪 生隊員に、・・・ガーディアン、特殊生命エネルギー研究班への転属を命ずる』
どよつく一同
そして、顔面蒼白になる川浪

松野「突然そない事言われても意味がわかりまへんなあ・・・」
沢村「確かに、転属なんか戻ってから言ってもいいわけだし」
事態がつかめず、困惑するN−BIDの一同
っと、突如川浪機が急速にバーニアをふかしてその場から逃げようとし始めた
影山「な、なんだあ?」
しかし、突如機体は空中で制止する
そして、何も無い空間から黒い戦闘機が現れた
和崎「あれは・・・」
石野「どうやら覚悟決めなきゃならねえ見たいだな」
現れた黒い機体、それはかつてトゥルーオーサを倒すため、山中深くの謎の研究所で、EARの面々が遭遇した機体、ゼロヒュウガ・・・
そのゼロヒュウガに酷似した強化機、オーヒュウギである

司令室らしい広い部屋の中でオーヒュウギがエアータイフーンを拘束している映像を映しているモニターを五条、火華が無感情な目で見つめている
五条「あきらめなさい、時が来たの」
必死に抵抗しているらしいエアータイフーンに向かって、五条は言った

同時刻、ウルトラマンバーンは冥王星にてかつて無い数の宇宙船団と相対していた
100以上はいるだろう、球体型の円盤が冥王星の空を無数に飛び交っている
「くそ・・・ついに宇宙警備隊が恐れていた事が来ちまったか・・・」
バーンめがけ一斉に光線を発射する円盤郡
光線はとてもかわしきれるような数ではなく、防御を固めるバーン
激しい爆発がバーンを包む
「ガアア」
踏ん張りきれずに吹き飛ぶバーンに、容赦なく光線を連射する円盤群
さらにラグビーボール型の円盤が現れ、バーンめがけ爆弾を投下し始める
バーンは懇親の力を込めてジャンプすると、全身に熱線と怪光線を受けるのも構わず、無理矢理円盤郡の間を突破した
そしてウルトラサインを宇宙の彼方に向けて発射するバーン
緊急事態を示すウルトラサインが宇宙に出現した
しかし兄弟達が応援に駆けつけるにしても、それなりに時間がかかるだろう
「・・・絶対に・・・絶対に地球にだけは行かせはしないぞおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
そう叫ぶと、バーンはすべての力をこめて球体群にタイマーフラッシャーを発射した
フラッシャーの激しい光が、冥王星を包み込む・・・

次回予告
川浪「・・・・・・・さようなら」
道城「うああああああああああああああああああああああああああ」
赤山「最新鋭恒星間弾道破壊ミサイル、メテオマリア」
石野「全人類と自分の命・・・どっちが大事なんだろうな・・・」
敷越「現時点をもって、地球完全防衛連隊EARを、解散する!」
次回「滅びの火」
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第19話「滅びの火」全自動宇宙戦闘母艦「ザガーリース」小型戦闘艇「アーラ」滅炎凶獣「ヴァンリート」
             重甲凶獣「グルルガルム」暗針凶獣「ビルシガー」豪剣凶獣「ムザーラ」

冥王星
カラータイマーの点滅が停止し、目からも光が消えているバーンを傷だらけの2匹の怪獣が運んでいる
改心し、バーンのカプセル怪獣となったラムパルスとドビドーグだ
冥王星を襲撃した円盤群と、彼らもバーンと共に戦ったのである
既に周囲に円盤群の姿はない
ラムパルス「旦那!旦那しっかりしてくだせえ!」
ドビドーグ「旦那〜!」
2体の必死の呼びかけにも、バーンはぴくりとも反応しない
ドビドーグ「旦那…まさか…まさか死んじまってたりしねえよな…」
ラムパルス「縁起でもねえこと言うな!ウルトラマンが自分を必要としてくれる人が一人でもいる限り死ぬわけねえだろ!」
ドビドーグ「でもよお…旦那…」
出会ってまだそれほどたっていないとはいえ、バーンはドビドーグとラムパルスにとっていい主人だった
「外にでていてやましいことなんざねえんだから堂々とカプセルの外にいろ」
とか言って常時カプセルの外に出していてくれたし
しっかりと自分たちの戦力を見定め、勝てるぎりぎりの敵の時に自分を後ろ盾にして存分に戦わせてもくれ
そして暇さえあれば、めさくさ嫌がるイレイズをシグマと無理やりディアナのところへ送って告白させたとか、ミラクルが地球に行くときに自分がミラクルパズル拾って再度地球防衛の任につくために後ろからこっそりついていこうとしてハイパワーマンにとめられたとか、訓練生時代シグマとウルトラの谷で無断で決闘して結局決着がつかづに見つかってウルトラマンタロウに小一時間説教されたとかそういう話をしてくれた
2大カプセル怪獣にとって今まで食うか食われるかでやってきた時と比べると、バーンといた時間は間違いなく最高だった、が
そのバーンは今まさに死のうとしている
ラムパルス「旦那〜〜〜〜〜〜」
ドビドーグ「旦那死ぬな〜〜〜〜〜」
2大怪獣が号泣しはじめそうになった、その時
宇宙の星が光り輝いたかと思うと、2代目ウルトラの兄弟達が現れたではないか
冥王星に降り立つイレイズ、シグマ、ミラクル、そして臨時に救援に来たバーストの4人
シグマ「バーン!」
バースト「兄さん!」
バーンの状態を見たシグマとバーストが彼に駆け寄り、シグマがリクライン光線をバーンに浴びせる
シグマ「だめだ…俺の力じゃとても…、本格的な銀十字軍の隊員でなきゃ…」
ミラクル「何があったんだ?バーンほどの男が、ここまでやられるなんて…」
ラムパルスとドビドーグにたずねるミラクル
イレイズは周囲を警戒しながらこんな事ならディアナを引っ張ってでも連れてくるべきだったと後悔していた
なお、彼女は他所で起きた大規模な自然災害の救援部隊として、現在遠くはなれた場所にいるため、この場に来る事はできない
ラムパルス「あっしらがいつものように旦那と冥王星を守っていたら…突然、ものすごい数の円盤群が現れて…、総攻撃してきたんでさ」
シグマ「円盤ごときにバーンがやられたっていうのか?円盤なんか何千何百万きてもバーンはここまでやられるはずがない!」
ドビドーグ「確かに、旦那は円盤群相手には最初は苦労してましたが、どんどんどんどん逆転していきました…でも…」
ミラクル「奴等が怪獣を出してきたんだね?」
ドビドーグ「ありゃ…怪獣なんてもんじゃありませんよ…、俺たちはこう見えても怪獣の中じゃ上の方なんですが…まったく歯がたたんかったんです」
シグマ「そうとうな奴なんだな…」
ラムパルス「そんで…旦那は最後まで戦おうとして…ですが…俺たちがこれ以上は危ねえと思って…」
ミラクル「わかった、後は我々に任せてくれ」
ドビドーグ「申し訳ねえ…俺たちがふがいねえばっかしに…」
肩を落とし、ぶるぶると震えるドビドーグとラムパルス
イレイズ「いや…よくやってくれた」
それまで黙っていたイレイズがはじめて口を開いた
イレイズ「バースト」
バースト「はい」
イレイズ「ラムパルス達とバーンを光の国に送ってくれ」
バースト「…わかりました」
バーストも地球へ行きたかった、だが、ラムパルス達だけに光の国へのバーン輸送を任せては、敵の再来を受ける可能性があるので、危険だ
赤い光球になったバーストがラムパルス達とバーンを包んで脱出したのを確認すると、3人はそれぞれ身構える

シグマ「俺達を相手に不意打ちができると思ったか、出てきやがれ!いるのはわかってんだ!」
シグマの言葉が終わった瞬間、少し離れた地面が爆発した
「ギュギギギギギギギギギギギ」
地中から腕に青龍刀の様な刃物をを生やした虫のような凶獣、ムザーラが、刃をうちあわせ、セミが狂ったような声で鳴きながら3人をにらみつける
ミラクル「こいつがバーンを?」
っと、気配を感じたミラクルが振り返りざまにブルー光線を発射し、後ろから音もなく飛んできていた針を破壊した
いつの間にかミラクルの後ろに爬虫類のような凶獣、ビルシガーが立っている
おそらくこの凶獣が針を投げたのだろう
イレイズ「なるほど…2対1でバーンを倒したわけか…」
シグマ「イレイズ、俺とミラクルでここはなんとかする、君は地球へ向かってくれ」
金属昆虫のような凶獣に向かって行きながら言うシグマ
ミラクル「ここは任ろ!」
同じくミラクルも爬虫類型の凶獣に向かっていく
イレイズ「頼む」
イレイズが飛び立とうとした時、突然空から黒い光弾が発射され、イレイズを襲った
瞬時にバリアブレスシールドをはってそれを防ぐイレイズ
見ると、空から巨大な岩山のような凶獣、グルルガルムがゆっくりと降下してくる
イレイズ(簡単には行かせてくれないようだな…、そうか、バーンにとどめをささなかったのは我々をここにおびき寄せるための罠!)
地表に降り立った岩石凶獣に構えを取りながら、イレイズはまんまと敵の足止めの罠にかかったなと舌打ちした
地球に一刻も早く応援に行きたいが、目の前の敵を何とかしなければ、行かせてはくれないだろう
それに無理やりに地球に向かえば、この恐ろしい敵を地球に到達させる事になってしまうのだ
イレイズ「お前たちにかまっている暇は無い!!」
そう言うとイレイズも岩石凶獣に向かっていった

アイアンタワー作戦室
アイアンタワーに静戦闘参謀と共に待機しているもう一人の参謀、敷越作戦参謀と、EAR、N−BID全隊員が揃っていて、メインモニターには宇宙空間を飛ぶ物凄い数の球体型円盤が映っている
敷越「現在地球に向かい、数百に及ぶ大円盤群が接近してきている、対策を検討中だが、まともに戦えば大規模な被害をこうむるだろうな」
モニターを見つめていた敷越が隊員達の方を振り向いて言った
敷越「しかも、こいつらはどうやらただの先発隊らしい」
息を呑む隊員達
敷越「これを見たまえ」
モニターが、さらに大規模な数の円盤群と、小惑星ほどの大きさの巨大な宇宙船がかなり遠方に映っている映像に切り替わる
敷越「敵の本隊だ、現在アンドロメダ付近に展開している、先発隊も恐らくここから現れたのだろう」
その言葉に、首をかしげる和崎
和崎「待ってください、アンドロメダ方面にそんな大規模な敵が現れるのに、何故気づかなかったんですか?」
うむっと言って、モニターを調節する敷越
モニターに冥王星で戦うイレイズ達の姿が映る
和崎「ウルトラマンイレイズ!?」
両国「ミラクルにシグマもおる…、こりゃ一体」
敷越「恐らく敵は宇宙警備隊の戦力を冥王星にひきつけてから、本隊を出現させたのだろう、つまり今まで奴等はウルトラ戦士に気づかれないように隠れていた事になる」
困惑する隊員達
野崎「隠れていた…って、だから何にも無い宇宙空間にどうやって!」
敷越「マイナス宇宙だ」
はっとする泉
泉「敵はマイナス宇宙に姿を隠す能力を持っているのか!」
道城「マイナス宇宙は観測が難しい、しかも、そこを自在に行き来できる侵略者がいたなんて…」
影山「しかもマイナス宇宙に隠れられたら、恒星間弾道弾での攻撃はできなくなる、こいつらに地球に来られたら」
松野「冗談やない!先発隊だけでこっちはやられそうなんや、あんな大部隊来られたら地球は全滅や!」
重々しい雰囲気になる一同に、敷越は構わず言葉を続ける
敷越「もう一度言うが、現在ガーディアン上層部で対策を検討中だ、諸君等は具体的な作戦が決まるまで、第1種警戒態勢で待機していてくれたまえ」
和崎「そんな…冥王星のウルトラ戦士に応援を送らなくていいんですか?」
冷然とした敷越の言葉に、驚いて和崎が叫ぶように言った
敷越の顔が不快げに歪む
敷越「私は待機を命令したんだ、いつ敵の伏兵が現れてもいいように、戦力を地球に集結させねばならない」
和崎「しかし……」
納得できないといった感じの和崎の肩に、赤山が手を乗せる
赤山「和崎、ウルトラ戦士だって、それを望んでいるはずだ」
俯く和崎、それを無視して、敷越は口を開く
敷越「今回の作戦はかなり大規模なものになる、各自、遺書の用意をしておくように、以上」
敬礼する敷越に、礼を返す一同
そのまま、敷越は作戦室を出て行った

「シュアッチ!」
ムザーラに掴みかかるシグマ
が、ムザーラはそれを弾き飛ばし、シグマに両手の刃物で斬撃を浴びせてくる
シグマは右の刃の攻撃を間合いを取ってかわし、左の刃を受け止め、ムザーラに組みついて膝蹴りを見舞う
しかしムザーラはシグマを振り払い、バランスを崩したシグマに鋭い斬撃を放った
シグマの体に火花が散る
苦しむシグマだったが、転がって間合いを取り、再び構えを取る
その後ろでは、ミラクルとビルシガーの戦いが繰り広げられていた
身軽に飛んでビルシガーにジャンプキックを放とうと空中で回転するミラクルに、ビルシガーは肩から人間ほどの大きさを持つ針を生やして発射する
針はミラクルの体に突き刺さり、ミラクルはうつぶせに落下した
さらにとどめを刺すようにビルシガーは腹から小さな針を無数に生やして一斉にミラクル目掛け発射する
何とか飛び上がってそれをかわしたミラクルは刺さった針を引き抜くと、反撃にビルシガー目掛け投げつけた
しかし、ビルシガーは難なくそれをかわして、今度はミラクル目掛けて腕から長い針を生やして突きかかっていく
その横で、イレイズがグルルガルムと組み合っていた
グルルガルムは怪力でイレイズに勝り、イレイズは押しても引いてもびくともしないグルルガルムに投げ技は無効だと悟り、腕を引く
普通ならここで相手はバランスを崩すのだが、グルルガルムは全く動かない
イレイズはそのまま高速でグルルガルムの体に拳を何発も何発も見舞った
が、メタリアームあたりでも大きなダメージを受けそうな拳の連撃にグルルガルムはやはり全く動じず、さらにイレイズの拳を掴んで受け止めてしまう
驚くイレイズの腕を掴んだまま、グルルガルムはイレイズの顔面に強烈なパンチを打ち込んだ
鈍い音と共に吹き飛ぼうとしたイレイズの体がつかまれた腕によって再び引き寄せられるも、イレイズは引き寄せられる力を利用してグルルガルムにとび蹴りを放った
それでもまるで巨大な岩の様にその場から動かないグルルガルム
しかし何とか腕ははずれ、イレイズは間合いを取ってグルルガルムに構えを取った

再びアイアンタワー作戦室
両隊長、両参謀と、N−BIDの面々が出払った室内で、EARの面々がそれぞれ鎮痛な面持ちで椅子に腰掛けている
和崎「川浪さんは…どうしてるんでしょうか」
不意に、和崎が口を開いた
しかし、誰も和崎の方を向いただけで、返事が無い
いや、返す言葉が無いのだ
和崎「…突然、変な辞令で飛ばされて…あの戦闘機は…前に行ったあの変な施設のプロトタイプにそっくりだったし…」
道城「和崎」
まだ何か言いたげな和崎を、道城が冷たい、しかし何か重いものを感じる瞳で見つめながら制する
道城「川浪が、心配なのはわかる、十二分にわかる、だが、今は…忘れよう」
和崎「…すみません」
再び暗くなる場
誰も喋らないまま、基地の低い機動音だけが響いてくる
石野「…川浪は…人間じゃない」
唐突な石野の言葉に、しかし誰も驚かない
石野「あいつは、多発する侵略者に対抗するために作られた…詳しくは知らんが、決戦兵器の一種だ」
一息つく石野
他の隊員は、ただ黙ってその話に耳を傾けている
石野「あいつは…初代BIDステーションで作られたんだ。…全滅の時、ケースごと脱出艇に入れられてな…、その時ケースと一緒に脱出したのが、あの戦闘機に指揮してただろう奴さ…」
再び、石野は一息つく
石野「その時脱出艇を操縦したのが俺だ………。今頃川浪は決戦兵器としての最終チェックをされてんだろう、恐らく次に会う時は…」
先ほどより一掃沈痛な面持ちに変わる一同
和崎「決戦兵器…、使わなきゃいいんですよ」
言って、和崎は立ち上がる
和崎「俺達で…、かたをつけましょうよ、ゴーストファルコンも、R1号も、スパイナーも、核も使わずに…、俺達はそのためのEARなんだから、そうすりゃ川浪さんも…川浪さんも人間のままで…」
その言葉に、道城が何か答えようとした時、作戦室の扉が開いて、赤山が室内に入ってきた
赤山「作戦が…、決まったぞ」
全員の表情が強ばる

ブルー光線を放つミラクル
しかしビルシガーはそれを針を放って相殺した
相手の腕を掴んで投げつけるシグマだったが
ムザーラは見事に着地する
イレイズは懇親の力をこめてウルトラローキックをグルルガルムに喰らわした
だが、並の怪獣なら内臓が吹き飛ぶほどの蹴りを受けても、グルルガルムは怯まない

アイアンタワー地下の巨大サイロ、巨大なロケットブースターに、ロボットの上半身をつけたような物の前にEAR、N−BID全隊員と、敷越、静両参謀が並んでいる
敷越「これが、本作戦の要である、決戦兵器だ」
ロケットを指差して、敷越が言った
赤山がロケットを見ながら、唾を飲み込む
赤山「最新鋭恒星間弾道破壊ミサイル、メテオマリア…、ビッグマリアの改良型は完成していたのか…だが…」
敷越「そうだ、このメテオマリアはかのゴルゴダ攻撃作戦で使われた弾道ミサイルと同じく、光の速さを越えてマイナス宇宙に突入する事ができる、これをあの大宇宙船団に発射、敵艦隊中心部で大爆発を起こさせ敵を全滅させる」
どこからか、感嘆の声が漏れた
しかし、赤山は沈痛な面持ちで、被りをふる
赤山「参謀長、しかし…、このミサイルは……」
敷越「ああ、…………このミサイルは有人兵器だ」
一瞬、その場にいた全隊員の表情が凍りついた
そうだ
自律破壊兵器であるビッグマリアの最大の欠点、現時点での人類科学の作り上げたAIが簡単に侵略者に屈してしまう
その欠点を補うために、このミサイルは有人なのだ
だが、隊員達はメテオマリアが有人であるなどと言う事実は知らされていない
悪魔でAI制御であると思っていた隊員達の間に激しい動揺が走る
しかし、敷越は鉄面皮を崩さない
敷越「パイロットは…この場にいるメンバーから、選抜する」
沈黙する一同
っと、道城が一歩前に歩み出た
道城「俺が行きます」
ざわめく場にかまわず、道城の言葉は続く
道城「いえ、行かせてください」
敷越は、しかしまっすぐ道城の目を見つめて、首を横に振る
敷越「君では無理だ」
言って、横を向く敷越
敷越「メテオマリアであの円盤群の攻撃をかいくぐり、敵の中心まで到達できるパイロット、私はそれができる人間を、一人しかしらない」
全員の視線が、その視線の先にいる人物に注がれ…
その人物、石野は微笑んだ
石野「わかりました、…行きます」
穏やかに、しかし力強く、石野は言った

ムザーラが剣をシグマに向かって容赦なく振るう
シグマはそれを素早くかわすが、その体を相手の剣がかすめ、火花が散る
後ろに飛んで距離を取るシグマ
「素手では厳しいか…なら!!」
言って、両腕にエネルギーを貯めると、シグマはシグマブレードを作り出した
「ウルトラ一刀流免許皆伝!!シグマ、参る!!」
シグマの放つ雰囲気に、ムザーラが構えを取り直す
そして構えを取ったまま、じりじり近づく両者
制空権が重なり、刃がぶつかりあった!
ギリギリとつばぜりあう二つの刃
しかし、パワーはムザーラの方が上!
徐々にシグマの刃が押されていく…
ビルシガーの全身から、無数の小さな針がミラクル目掛け飛んだ
ミラクルは何とかかわそうとするがとても避けきれず、雨のように降り注ぐ針が何本も体に刺さってしまう
しかしミラクルはひるまず、体を高速回転させて針を吹き飛ばし、そのまま回転しながらビルシガーに迫って回し蹴りを見舞おうとする
が、ビルシガーの体から突如無数の巨大な針が生えたため、慌てて蹴りを中止した
そこに、まるでトゲつき棍棒のような腕を振り下ろすビルシガー
もろに喰らって崩れ落ちるミラクルだったが、素早く転がって間合いを取りつつ、スパイラル光線を発射した
しかしビルシガーは巨大な針を腹から生やして発射、それを相殺する!
それならばと今度はミラクルはウルトラ念力でビルシガーの体を一回転させて地面に叩きつけようとしたが
ビルシガーは一本の長い針を生やして地面に突き刺し落下を防ぎ、さらに口から細長い針を連射した
ミラクルの体に無数の小さな針が突き刺さる
物凄い勢いでグルルガルムの腕がイレイズ目掛けて振り下ろされた
イレイズはそれを身をそらしてかわすが、風圧だけでよろめいてしまう
さらにラリアートの様に腕を振りかざすグルルガルムの攻撃をイレイズはかわして、その体に掴みかかってイレイズアーツを使った
怪力で装甲を引き剥がそうとするイレイズだったが、グルルガルムの装甲はびくともしない
逆に振り払われ、物凄い勢いで平手がイレイズに迫ってきた
イレイズは避けきれないと悟ってガードを固めるが、それでも衝撃で吹き飛んでしまう!
吹き飛んだイレイズ目掛け、グルルガルムは目から強力なビームを連射した
イレイズは何とか転がってかわすが、直撃は無いもののかすって、その体にいくつもの火花が散る
「くそ…こうしている間に円盤群の先発隊は…」
悔しげに呟くイレイズ

アイアンタワーの周辺に無数の対空戦車が展開し、空にはD−ウィングの編隊がいくつも飛び
さらに普段道路などに偽装されている迎撃火砲も全て地上に露出し、樹海のあちこちに対空歩兵陣地が構築され、来るべき敵を待っていた
その数十キロ上空ではBIDステーションが所属する全てのスペースジェットを発進させ、宇宙機雷をばら撒き、アンアンタワーから発進した数十機のカスタムSJ2と協力し鉄壁の守りを敷いている
そこへさらにSGTのファルコン1、2号、スペースファルコン隊が加わった
宇宙空間を旋回し、警戒する戦闘機隊
それらの映像を、敷越がアイアンタワーの作戦室で見つめている
敷越「これでできる限り戦力は集めた…、後…まだやれる事は…」
呟きながら、その手はせわしなくキーボードやマウスを動かし、計算を作成を行っていく
静「ここは弾が飛んでくる場所になるぜぇ敷越作戦参謀殿」
不意に後ろから声がかかって静が部屋に入ってきたが、敷越は動じる気配がない
敷越「私は作戦を立てるのにもっとも適した環境は前線だと判断したまでだ…、それに実際弾の標的になるのも、爆発で焼かれるのも…人間爆弾になるのも私じゃない、それに万一飛んできても私は守られているし、私の所にまで弾が飛んできたらそれこそおしまいだ」
敷越の言葉に、静の顔に笑みが浮かんだ
静「格好つけの本部の馬鹿共とは違うんだな、あんたは」
手を止める敷越
そのまま静の方を振り向く
敷越「馬鹿でない人間は、有人ミサイルなんか作るはずはない…」
静は被りをふると、悪かったなと言って部屋を出て行った

メテオマリアの搭乗口に、防護服を着た石野が立ち、その後ろにEAR、N−BID全隊員が並んでいる
石野「これでお前等の顔も見納めかも知れんと思うと……正直残念だな」
普段冗談言ってるのと変わらない笑みを浮かべて、石野が言った
しかし誰もそれに答えられない
これから石野は文字通り死にに行くのだ
そんな男をどうやって見送ったらいいのかなど、EAR隊員も、N−BID隊員も知ってなどいない
不意に、和崎が泣き出した
和崎「副隊長、本当に…行っちまうんですか?死ぬんですよ!副隊長いつか言ってたじゃないですか!俺が弾に当たらないのは、死にたくないからだって!死にたくないから弾に当たらないように頑張って、楽しく生きるために他の奴守ってきたって…、なのに……」
その横面を、影山が容赦なく殴りつける
吹き飛んで転がる和崎
影山「貴様…貴様は石野副隊長の事を考えて、よくもそんな事がほざけるな!こ……こう言う時は…こう言う時は笑って見送るしかないんだよ!」
そう言う影山も、泣いている
いや、赤山も泣いている、藤堂も津上も、両国も松野も野崎も沢村も、泉も朝香も道城も…目に涙をあふれさせ、声を出さずに泣いている
石野「あっはっはっはっはっはっはっは」
突如素っ頓狂な声で、石野が笑った
呆然とする隊員達に、石野は人差し指を立てて振ってみせる
石野「お前等はわかってないな、俺は並のエースじゃないんだぞ…」
言って石野は和崎に近づくと、強制的に立ち上がらせた
呆然とする和崎に、石野はふんっと笑ってみせる
石野「おい和崎、俺は確かにその時そー言った、弾に当たりたくないから、エースになったんだ、とな」
黙って話を聞く面々
石野「じゃあ俺は全人類と自分の命…どっちが大事なんだろうな…」
思考能力の停止した和崎は、答える事ができない
それを察したのか、石野はにやっと不敵に笑うと、言った
石野「俺は自分の命の方が大事だ!」
呆ける一同
石野「俺は俺の命が大事で、だがお前等の犠牲の上に生きる何て寝覚めの悪い思いしたかねえ、それにお前等じゃ間違いなくしくじって俺までくたばっちまう、だから、このミサイルを確実に奴等に打ち込んでやれるパイロット、世界最強のエースである俺をこのミサイルに乗せるんだ」
和崎の肩をぼんっと叩く石野
石野「そして、………………………必ずどうにかして生きて帰って来る!それが真のエース、この俺だ。俺が帰った時、帰ってきて良かったって思える地球にしててくれよ、明日のエース!」
軽く、まるで野球の試合にでも向かうようにそう言って、石野は笑顔で手を振ってメテオマリアに乗り込んでいった
石野をぶちのめして無理にパイロットを交代しようと思っていた道城は余りの事に、石野が必ず帰って来ると信じてしまい、石野を止める事ができなかった
メテオマリア搭乗口のゲートが閉じていく、ゲートの向こうで石野は、普段どおりの不敵な笑顔で、涙にぬれた顔で呆然としている隊員達に見送られる
和崎「わかりました!ストームエース副隊長!世界一の…最強の偉大なエース石野さん!地球は……地球は俺が…俺達が…」
ゲートがあと少しで閉まるという時に、和崎が声を限りに叫んだ
和崎「必ずあなたが帰って来るまで守り抜きます!」
石野「おうよ、また会おう」
和崎「はい!絶対に!」
赤山「………勇敢な石野良正副隊長に敬礼」
藤堂「敬礼!」
二人の隊長の声に、一斉に敬礼する隊員達
ゲートが閉じた
最早外の声は中に通じない

耳障りなサイレンが鳴り響いた
「敵宇宙艦隊先発隊BIDステーション防衛線に到達!戦闘配置!急げ!」
アナウンスの声に隊員達の闘士が燃え上がる
赤山・藤堂「出動!」
「「「「「了解!」」」」」
叫んで格納庫に飛び込んで行き、それぞれ戦闘機に乗り込んでいく隊員達
その後ろから藤堂、赤山も続き、それぞれヴァルチャー甲とエアーブリザードに乗り込んでいく
津上「和崎、ストームにはお前が乗れ」
ハリケーンに乗り込みながら、津上が言った、次の瞬間には既に乗り込んでいる
和崎「はい!!」
石野のストームに飛び乗る和崎
乗り込んで、ほんの一瞬涙がわきかけたが、噛み殺してエンジンを始動させた

四条「一機でも多く撃墜しろ!地上のアイアンタワーに近寄らせるな!!」
猛攻と、味方の流れ弾を紙一重同然でかわしながら、ミサイルで、熱線で、片っ端から敵円盤を叩き落し落としながら四条が無線に怒鳴った
しかし味方はそれに答える余裕が無い
スーパーファルコンのメタリウム砲が一線し、何機もの敵機が一気に吹き飛ぶ
見事なスペースジェットのフォーメーション飛行の猛攻が片っ端から敵機を撃墜する
宇宙機雷に引っかかった敵機の爆発が輝く
BIDステーションから放たれる迎撃のレーザーが数機の敵円盤を一気に焼ききる
それでもまったく敵機は減らない
逆に味方機は徐々に包囲されては宇宙の藻屑になっていく
さらに防衛隊を無視して地球に直行する円盤群も現れるが、防衛隊機を相手にする敵の数も尋常ではないので味方機はとてもそれを撃ち落としに向かう余裕は無い
歯噛みする四条

不気味なほど沈黙したアイアンタワー、メテオマリア発射用サイロ
無言で目を瞑り、瞑想していた石野は、軽い地響きが響いた事で、目を開けた
石野「……頼むぞ…、俺も必ず、………死んでたまるか」
そう呟いて深呼吸をする

耳がおかしくなるほどのミサイルの発射音、銃声、砲声、爆音、電子音が響きわたり、火達磨になったD−ウイングや敵円盤が次々富士山周辺に墜落しては爆発する
閃光、熱、悲鳴、怒声、土煙に黒煙が空間を支配し、泥にまみれた隊員が地上を駆けめぐって空を戦闘機に円盤が飛び交う、空が見えないほどに
敷越「後数分でメテオマリアの発射準備が整う!なんとしても本部施設を死守せよ!」
敷越の通信に励まされた防衛隊機の士気が高まり、弾幕が次々インベーダーを撃ち落す
さらに彼方からレッドボーグの編隊が数十機、応援に駆けつけてきた
両国「おお!RED隊の援軍じゃ!」
炎に包まれたグランドライザーから脱出した両国が天を仰いで叫ぶ
その声に励まされた松野の対空機銃が円盤に炸裂する
レッドボーグの編隊が一斉にミサイル攻撃を開始し、敵円盤が数十機、一気に火の玉に変わった

敵弾の命中に揺れ、通信隊員達の状況報告があわただしく飛び交うアイアンタワー作戦室内で敷越、静が真剣な表情で戦術画面に見入っている
っと、そこで一人の通信員が飛び込んできた通信の内容に目を見開いて驚いた
すぐさま振り向く隊員
「作戦参謀!先日殲滅した2大凶獣が合体して復活したとの連絡が入りました!」
敷越「なにぃ!」
流石に驚愕する敷越

シマウマの模様の様なモノトーンの凶獣が、全身から強力な光線やナパームをスコールの様に周囲の町に降り注がせて暴れている
その光景はまるで火山が噴火したかのような有様だ
ビルと言うビルは燃え、悲鳴が、絶叫が、あちこちから絶え間なく響き渡って火柱と火炎竜巻があちこちで立ち込める
応戦すべく自衛隊の戦闘機隊が飛んでくるが、なすすべなく火の玉へと変わってしまう

作戦室で、静と敷越がモニターで町の被害状況を見ている
静「メテオマリアが最優先だ…、戦力は割けれねぇ。………前線の連中にゃぁ……黙っていましょう」
静の言葉に、表情を渋らせる敷越
敷越「……うむ…止む終えん」
敷越が俯いた、その時だった
「メテオマリア、発射準備完了!」
聞こえてきた放送に、その場にいた全員が唾を飲み込んだ

「デァ!」
ムザーラの刃を弾き飛ばし、シグマのキックがムザーラに炸裂した
怯むムザーラに、シグマは腕をL字に組んでアスシウム光線を発射する

全身が真っ白に発光し、ミラクルの体から針が全て吹き飛んだ
そのままビルシガー目掛けハイパワー光線を発射するミラクル

前進するグルルガルムに上空から筒状のバリアが落ちてきた
身動きの取れないグルルガルムをイレイズミキサーが切り刻む


ムザーラは両の刃を前に出し、アスシウム光線を受け止め
ビルシガーは全身から無数の針を出して針の玉と化し、高速回転してハイパワー光線を弾き
グルルガルムはその重装甲で光の刃に耐えながら、超怪力でイレイズミキサーを破壊して脱出した
驚愕するカラータイマーの点滅が始まったウルトラ戦士達に、3大凶獣は再び向かっていく

メテオマリアの中で深呼吸する石野
石野「……さぁて」
視界の先のミサイルサイロの扉が、ゆっくりと開いていく
石野「行くぞ」
低い声で、石野は言った

ミサイルサイロに近づく円盤にミサイル弾を浴びせて撃墜した和崎の眼前で、サイロのハッチが開いていき、中から巨大な人型兵器の上半身が浮かび上がっていく
和崎「石野さん…」
その上昇するメテオマリアの姿に和崎が目を奪われる間も無く、円盤群は現れたメテオマリア目掛けありったけの集中砲火を開始した
防衛隊の迎撃設備が応戦するが、いくつもの熱線がそれを突破し、メテオマリアに命中…しようとした時、メテオマリアの上半身がすばやく動き、盾のようなピンポイントのバリアを出しつつ着弾するビームの順番を一瞬で見切って的確に防ぎ、その全身からすさまじい数のスペシウム弾頭を発射して円盤群を逆に蹴散らす
余りの技量に、思わず和崎は見惚れ…不意をつかれ、被弾した
和崎「あ……石野さんのストーム…」
コントロールを失ったストームは、樹海に墜落してしまう
和崎「………石野さん」
樹海に墜落し、煙を上げるストームの中で見つめる和崎の前で、メテオマリアはゆっくりと空へと上っていく

大気圏内の敵を蹴散らし、メテオマリアはあっという間に大気圏外へと到達する
「石野…」
BIDステーション近辺で激しい戦いを続けていた四条は現れたメテオマリアに視線を向けるが、それでも戦闘から意識を外さず、次々と敵機を撃墜していく
石野と四条は和崎と石野以上の長い期間一緒にいた親友だ
だが、四条は戦闘中に注意を移したりはしない、和崎とは戦歴が違う
メテオマリアは四条達のSJ隊のおかげで楽勝で敵円盤軍を突破すると、一気に加速を開始し…
…マイナス宇宙へと侵入していった
もう、地球からメテオマリアを捉える事はできない

「メテオマリア、マイナス宇宙へ突入確認」
オペレーターの声に、敷越はマイクへ向かう
敷越「EAR、N−BID各隊員に告ぐ!すぐにY市に急行、出現した怪獣の迎撃にあたれ!」
沢村『しかし、アイアンタワーは?』
敷越「行け!」
敷越の有無を言わせない言葉に、津上のハリケーンと道城のタイフーン、赤山のブリザードと、藤堂、野崎、影山が乗るヴァルチャーEが戦列を離れていく
静「…いいのかい?アイアンタワーだって守りきれるかどうか」
敷越「メテオマリアが飛び立ち、地球の危機が去った今、アイアンタワーを放棄したところで、地球防衛軍の拠点などいくらでもある、それよりも、もっとやるべき事はあるはずだ」
そういうと、敷越は再び通信機を手に取った

ボロボロのシグマがムザーラの斬撃を喰らわされ、倒れ付しかけるが、踏ん張って次の斬撃をシグマソードで受け止める
あちこちに大小の針が突き刺さったミラクルが飛んできたビルシガーの針に刺されて苦しむが、歯を食いしばって第二波をかわす
グルルガルムの巨大な腕に首を絞められるイレイズの力が抜けかけ、意識が飛びそうになるが、それでも精一杯抵抗し、首絞めから脱する
攻撃が通じず、必殺技を破られ、ウルトラ戦士達に最早戦う力は残されていないはずだ
そして凶獣達は恐ろしく強く、アレだけの攻撃を受けたにも関わらず、まだ甚大なダメージを受けたとはいいがたい
しかし彼等は諦めない、最後まで諦めず、強大な敵に挑み続ける、それがウルトラマンなのだから
シグマ「例え…この身が砕け散っても」
ミラクル「お前達侵略者の好き勝手には……」
イレイズ「絶対にさせん!!」
最早体力も尽きていたはずのシグマのシグマソードがムザーラの剣を弾き、その体に斬撃を見舞う
体中に大きなダメージを受け、全身を激痛に苛まれているはずのミラクルが俊敏な動きでビルシガーの針をかわし、エネルギーを込めた拳をビルシガーに叩き込む
力という力を使い、限界など等に迎えているはずのイレイズが、巨大なグルルガルムを持ち上げ、放り投げて地面に叩きつけた
それで何か不具合を起こしたのだろうか、凶獣達は黒い霧に姿を変えると、ウルトラ戦士達の前からふっと姿を消してしまう
ウルトラ戦士達はそれを追撃する事もままならず、その場で全員が、ゆっくりと膝をつき、半透明になっていって、やがては消えてしまった

火炎地獄と化し、凶獣が暴れ狂う町に、合同防衛隊の戦闘機が空の彼方から駆けつけた
炎の中で暴れ狂うヴァンリートはその姿を認めると、2大凶獣の同時攻撃よりも激しい火炎攻撃を防衛隊機目掛け連射する
赤山「己…」
攻撃を何とかかわす戦闘機隊だったが、相手の激しい攻撃に、こちらから反撃する隙が無い
その間にも凶獣は移動し、更に別の町へも進撃せんとする
赤山「津上、道城!空からだけでは駄目だ!地上から攻撃しろ!」
「「了解!」」
赤山の言葉にハリケーンとタイフーンが戦列を離れ、着陸した
津上「何とか気をひこう」
道城「ああ、上空の部隊に攻撃のチャンスを作るんだ」
頷きあい、バーニングショットライフルをもって散開する二人
道城は周囲に誰もいなくなったのを確認すると、オーバーフラッシュチェンジャーを掲げた

アンドロメダ銀河
空を埋め尽くす大円盤群と、巨大な円盤が、今しもワープを行おうとエネルギーをチャージし始める
周囲に青い火花が散り、空間が歪み始めた、その瞬間、円盤群のはるか前方で無数の大爆発が起きた
石野「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
石野の雄たけびと共に現れたメテオマリアが全身からすさまじい量の熱線とミサイルを連発し、群がる円盤を片っ端から叩き落しながら一直線に敵の母艦に突っ込んでいく
巨大母艦はそれを察するとメテオマリアめがけ強力な熱線を放った
それに続いて小型戦闘艇も一斉に熱線を発射する
石野「俺は!」
近くの円盤を巻き込んで無理やり回避運動を取って熱線の大部分をかわし、ピンポイントのバリアで致命的な部分を狙う光線を防ぐメテオマリア
その技量はすさまじい
石野「俺は!」
しかし敵の攻撃はすさまじく、メテオマリアにも次々と攻撃が命中し始める
石野「俺は!」
メテオマリアの片腕が吹き飛び、あちこちから炎が噴出す
石野「俺はぁあああああああああああああああああああああ」
火達磨になるメテオマリア、その拳が敵の巨大母艦に延びていき…

アイアンタワーに数発の敵の光線が直撃し、激しい爆発が発生した
悲鳴と警報が鳴り響き、照明が赤に変わる
敷越「糞…諦めるな!すぐにEARとN−BIDが敵を倒して戻ってくる!!」
混乱する司令室の人員に叫ぶ敷越、しかしそうしている間にも攻撃は続き、振動はより一層激しくなっていく

ヴァルチャーEとエアーブリザードから、隊員達が戦うウルトラマンオーバーを見つめている
オーバーは凶獣の放つ光線の連打に成すすべなく吹き飛ばされ、起き上がる事もできずに光弾の連打を食らわされていた
戦闘機隊も苦しむオーバーを助けたいのだが、石野でもない限り凶獣の弾幕を突破する事はできないだろう
ヴァルチャーEでバリアをはった状態であれば近寄れるかもしれないが、バリアを展開している間は攻撃を行う事はできないため、やはり打つ手は無い
悔しげに見守るしかできない隊員達の前でオーバーは無理矢理立ち上がると、防御を固めて無理矢理凶獣へ突っ込んで行った
しかし凶獣の弾幕はすさまじく、拳の射程に入る前に、オーバーは足を取られて転倒してしまう
懇親の力を込めてハイバスター光線を放つが、凶獣はそれをたやすく光線で押し返してみせた
苦しむオーバー
赤山「……赤山より藤堂」
不意に、戦況を見守っていた赤山が藤堂に通信を送ってきた
藤堂「こちら藤堂」
赤山「私が突っ込んで隙を作る、そこをヴィクトリービームで奴を倒してくれ」
藤堂「!!赤山隊長!」
影山「よせぇ!!」
たんたんと述べる赤山に、藤堂が叫ぶが、既にブリザードは突入体制をとっている
赤山「お前に時間を…取らせはせん!!」
今しもブリザードが特攻しようとした、その時だった
どこからか鋭い槍のような光線が飛んできて、光弾を蹴散らして凶獣に炸裂する
驚いて突入をやめ、光線が飛んできた方向を見る赤山
藤堂達とオーバーも視線を向けると、そこには空中からゆっくりと降下してくる…真っ赤なシファンセス星人の姿があった

アイアンタワーを襲う円盤が、次々謎のエネルギーによって拘束され数機のオーヒュウギに叩き落されていく
司令室でその光景を見つめている静が息を呑む
静「…遂に連中が動き出したか」

膝をつき、息を荒げるオーバーの正面に凶獣のほうを向いてゆっくりと降り立つ赤いシファンセス星人
星人は敵意のまなざしで自分を見つめているオーバーの方を振り返る
見つめあい、オーバーが何かに気づいてはっとなった
川浪「………さようなら」
道城の心の中に、川浪の声が響き、シファンセス星人は再び凶獣の方を振り返る
凶獣が再び弾幕を展開しはじめるが、シファンセス星人はものともせずにそれに向かって突っ込んでいく

次回に続く


次回予告
五条「最早ウルトラマンは必要ありません」
和崎「俺…もう…駄目ですよ…」
道城「ウルトラマンって…こんなに弱いものだったのか?」
川浪「私が地球を守るの……」
暁「男は外に出て戦わねばならん!! 何の為だ!!
 後ろで女の子が優しく花を摘んでいられるようにしてやる為じゃないのか!!」
道城「俺はぁああああああああああああ」

次回「絶望を超える者」
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