第十一章 「伊勢神宮防衛指令」猛火邪仙カガチ 分裂邪仙キオイ 発現
 まず理解しておいて頂きたい事がある。地球という星は「神壁」と呼ばれるバリアに守られている。
この神壁によって虚ろの者の侵攻は最小限に留められている。この神壁を形成しているのが数多くの
神社
である。つまり大きな神社が破壊された場合神壁は弱まり、虚ろの者が入って来やすくなってしまう。
だが神社も、自らを小型の神壁で守っている。神社を守る神壁を形成しているのは
「岩笛」
と呼ばれるアイテム。岩笛は神社の異次元に設置され、そこから神社を守る神壁を発しているのだ。
つまり春日大社には春日大社専用の岩笛があり、春日大社専用の異次元が展開している。
他の神社も同様に、専用の岩笛と各々が独立した異次元を持っているのだ。
つまり、神社を破壊するには先ず次元を越え岩笛を破壊しなければならない。
しかし、唯一の突破口がある。
「ヨガエシノタマ」
大陸のとある仙人(二千五百歳)が創りだしたといわれる伝説的な神具だ。
現世と幽世を繋ぐことができるらしいが、所在は不明。仙人も実在するのかどうか不明。
だが、この神具が手に入れば次元を越え、岩笛を破壊できる可能性がある。

要は

「ヨガエシノタマ」を持った悪い奴が、それを利用し「岩笛」を壊すと神社の防御力は無くなる。
大きな神社が壊されるとバリアが弱まり邪仙が地球に入ってきやすくなる。

ということだ。

伊勢。日本有数の神域。そこで二人の女が超越的な力を駆使し闘っている。
一人はクラマ ミウ。もう一人は…?
もう一人の女が言う
「貴女の目的は何?」「アンタをじゃまする事。」
「でも、両方とも同じ奴を殺そうと思ってるはずよ」
「カンナ」
「協力しない?」「死んでもやだ」

 軍日本基地。ヒスイとヘキは話し合っていた。
あそこは本当に高天原だったのか?クニノイシズエ、神話の舞台という割には沙子泉以外何もなかった。
ただカンナが新たな刀、レイキザンを手に入れただけだ。そんな二人を気にも留めず
「赤福食べたい」と、無口な小娘が口走る。
これは伊勢に何かが起こる事を悟ったが故の発言である。ハズだ。
と、突如、軍上層部からレイハ全員出動の命令が下った。
伊勢に邪仙と思しき生物が目撃されたのだ。神宮に狙いをつけたか…
しかし、通常の邪仙ならもっと人目を忍ぶはずだが…
上層部より、岩笛の重要性を解説されたレイハ。

理解したゴジョウとユリノ
大体理解したヘキ
半分だけ理解したフナト
あまり理解していないヒスイ
理解したのかどうなのかよくわからないカンナ

の六人はレイヒュウゴ、レイキザンを前線基地として伊勢に飛び立った。
早速レイハの前に大型の邪仙「キオイ」が複数体出現。レイキザンで一匹を倒すが、残りは眼前より姿を消す。
一方、神宮には高熱火炎を吐く邪仙「カガチ」が現れるが、神宮の神壁に足を止められ、
レイヒュウゴの飛宙槍で退散した。

敵の狙いは間違いなく伊勢神宮の岩笛。その上、キオイの体には「ヨガエシノタマ」が装着されていた。つまり、
ヨガエシノタマで次元を融和し、分裂で増殖する低級邪仙のキオイが岩笛のある次元に攻撃をかける。
百匹ほどに分裂すれば三、四匹程度は岩笛に辿り着くであろう。そしてそのキオイが岩笛を破壊し、カガチが神宮を破壊する。それが敵の狙いだ。
だが勝機はある。そもそもここは伊勢。ヨガエシノタマを破壊すれば、次元は修復され、全てのキオイはこちらの世界に吹き飛ばされて来る。
しかし、再び現れたカガチは、自分の周囲を三十匹程度のキオイで包囲している。肉の壁、ということか…
レイハはレイヒュウゴでキオイを誘導、その隙にカンナのレイキザンがカガチに襲い掛かる!
妨害するキオイを翼の刃「ミウツシノヤイバ」でまとめて叩き切り、そのままカガチの持つヨガエシノタマを砕いた!
次元は修復され、こちらの世界に五十を越えるキオイが現れた。
だが岩笛は無事。邪仙どもの攻撃も神宮には通用しない。あとはこいつらを殲滅するのみ。

ヒスイは言霊を放つ!
「君が宿主、マミヤヒスイの名において命ずる、龍、明、和合すべし。出でよ、リュウラ!」

伊勢神宮にウルトラマンリュウラが現れた!だが、問題は敵の数であり、場所でもある。
これほどの数の敵にゲキの力を使えばヒスイの体にはかなりの負荷がかかる。
それに、伊勢の神威が龍に対抗しようとして多量の力を放ち、ヒスイを傷付ける…
ヒスイ自身は心配していないが、龍の方がヒスイに待ったをかけるのだ。
だが、ジンの状態では勝機は薄い…
敵の数に次第に追い詰められるリュウラ。

 刹那、天空に業火が立ち昇った。その最上部に炎が結集、人型となり舞い降りる。
地上に降臨するまでの僅かな間に、その炎は明確な「形」となっていた。

降臨したのは  「巨人」

体はリュウラの蒼に対して紅。
顔はシンプルなリュウラに対して非常に複雑。機械的でさえある。
頭部の刃は後退しているリュウラに対して前傾。
体の装甲はリュウラ以上の数。その装甲にはどこか暗黒闘士ゼオに似た意匠が見られる。

紅の巨人は、左腕の一撃で次々とキオイを薙ぎ払っていく。
左腕の装甲が直接光の刃を帯びている。この刃を裏拳で振るっているのだ。
さらにその光の刃を「剣」として引き抜き、尚もキオイを薙いでいく。
野獣の如く獰猛に敵を裂く姿、しかし…どこか流麗なところもある。リュウラは思った
「…女か?」
さらに紅の巨人はカガチに切りかかる。キオイももはや多くない。この数なら短時間で一掃すれば問題ない。
リュウラはゲキに変身。ショットスパークル、シャイニングヴァイパー、ドラゴンカムイがキオイを屠っていく。
レイハもレイヒュウゴの飛宙槍、焔弾砲、レイキザンの刃が敵を粉砕する。
そしてカガチは紅の巨人の剣に両断、残ったキオイもシャイニングボムで一掃され、消滅した。

任務完了。紅の巨人はリュウラと同じくタイマーを点滅させながら空へ消える。
その直後、カンナはにらみ合うミウともう一人の女を発見した。

十二章へ続く。
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第十二章「エビじゃねぇ!」 猛火邪仙カガチ 紅の巨人 発現

 まず理解していただきたいことがある。赤福。伊勢名物。餅にアンコを塗ったというより、アンコで固めた感じの菓子。
当然甘いのだが、上質な材料を使っているため嫌味な甘さでは決してない。
その伊勢で、ミウと謎の女は睨み合っていた。が、カンナに気付くと掌から光球を発射、カンナを攻撃する。
カンナが体勢を立て直すと、既に二人は姿を消していた。
「ミウちゃんも…普通の人間じゃないの?」
レイハは、その夜も伊勢にいた。カガチもキオイも死んだハズだが、街で人間大のカガチが暴れているらしいのだ。
その被害者たちを検分していたユリノは呟いた
「カンナ、アンタ狙われてる」
確かに、被害者達は全員どこかの外見的特長がカンナと一致している。
紅の巨人に粉砕されたカガチだが、完全に死滅したわけでは無く、不完全に再生、本能のままにカンナを探しているようだ。
で、カンナが狙われているとなると放っては置けないのがマミヤ ヒスイである。
そのヒスイの前に突如謎の女が現れた。
「カンナを狙っているのは邪仙だけじゃないわ、覚えておきなさい。」
「何故カンナを狙う、彼女は何者なんだ!?」
「彼女は、神々を殺す者。恐ろしい存在。だからね」
「お前は…誰だ。」
「ジョウガ」
それだけ言い残すと、女は虚空に消えた。
 一方ゴジョウは、ミウの訪問を受けていた。それも気心の知れたイメージで。
ゴジョウは言う
「今のカンナちゃんに力は無いはずよ、あの娘を狙うのは筋違いじゃないかしら?」
だがミウは返す
「カンナを殺すことは旧暦の段階で決まってたことだよ。それにリュウラが現れた事もアタシらにはヤバイし」
「今のリュウラは…そうね、先代と殆ど同等の力量を持ってるわ。そろそろ神々も恐れだすころかしら?」
「ゴジョウさん、カンナを引き渡して。」
「嫌。あの娘可愛いから。」
「…後悔しますよ」

夜が明けた。ミウの言葉通り、街中のカガチは結集、以前よりも強化した姿に融合巨大化を果たす。
ゴジョウは言う。
「奴は神宮にもう用は無い。レイハ自体を滅ぼすつもりよ。」
カガチの攻撃に苦戦するレイハ、それを見ながら笑むミウ。そこに謎の女、ジョウガも現れる。
二人の放つエネルギーにより、カガチはいくらでも強化していく。
リュウラも(ジンの状態では)苦戦を強いられる。
と、龍がヒスイの意識に命じた。「あの二人の女を撃て」
リュウラはためらうが、地上にいたカンナはなんと二人を狙撃した!二人は間一髪で逃れる。
しかしそれがきっかけで力の供給の拮抗が崩れ、カガチは暴走を開始した。
その火炎に吹き飛ばされる二人。

刹那、空間に光の炎が拡がりそれが結集、紅の巨人が姿を現した!
紅の巨人を見、ゴジョウは呟く

「ラセツ」

紅の巨人は左腕から引き抜いた光の剣でカガチの火炎を薙ぎ、角を切断する。
そして全身から炎を絞り出し、それを右腕に結集、突き出された右拳から光の奔流が放たれる!
カガチはこの一撃で、今度こそ完全に燃え尽きたのだった。

伊勢。レイハはこの地をあとにする。関東省の軍日本基地に帰り、また新たな敵に立ち向かうのだ。
そして伊勢は、ヒスイに大量の新たな疑問を突きつけた。
その中核を握っているであろう少女、カンナは悲しい目をして呟いた。

「…赤福、食べてない」
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 第十三章 二大戦神帝都を死守! 地溶獣ビソウ 食武獣グデラ ウルトラマンラセツ 発現
以前、自立飛行破壊器クウボウが覚醒した際、レイハは地下道を利用して民を救った事があった。
この地下道という文化は関東省では比較的普通に存在している。そんな或る日のことだった…
 ここは帝都東京、赤坂。新たな小塾の建設現場で奇妙な岩が発掘された。そこに旧暦のものと思しき弾痕がある。
レイハは調査に出動するが、その周囲には謎の女ジョウガがうろついていた。
一方カンナは、ミウの働く甘味処に話を聴きに行く。が、いない。
学舎に行っているという。
省によって異なるが、基本的に関東省では十四歳までが義務教育。ただ、その期間を過ぎても
裕福な家の子だったり勉強に熱心だったりすれば、もっと上の学舎で勉強していることもある。
ミウは十六歳。無理はない。
 そのミウは、銀座の地下街で学舎の友人数人と服を選んでいた。その地下街に隣接する形で、赤坂の物と同形の岩が存在していたのだ…
赤坂の岩は、レイハの調査中突如脈動を始める。それを見てほくそ笑むジョウガ。
そして、肥大化した岩の内部から巨大生物が姿を現した!
何と形容すればいいのか、海老が逆立ちして頭で歩いているといえばいいだろうか。
更に銀座の岩も、赤坂の怪獣と呼応するかのように爆発、同型の怪獣と化す。
二体同時に現れた上、銀座では地下道に多くの民が閉じ込められた!
それを見て尚も笑うジョウガ。彼女は赤坂から銀座に瞬間移動、銀座に更なる別種の怪獣を召喚する!
赤坂の一匹だけでも苦戦するレイハ。そこに軍上層部から連絡が入る。
「銀座地下街周辺を、空戦部隊で爆撃することが決定した」

 無論反対するレイハ。しかし既に空戦部隊は銀座へ向かっている。
だが、ゴジョウはレイハに指令を下す。
「皆は銀座に向かって!ヒスイ君は地下道の民を救助、カンナちゃんは空戦部隊を牽制!」
更に赤坂にはゴジョウの乗った(また)新型機が到着した。フナト以下の五人は銀座へ向かう。
そう、上層部の命令に反抗して。
 一方、銀座地下街からはミウがかろうじて脱出、しかしほとんどの民がまだ瓦礫の下だ…
そこにヒスイが到着、救助活動を開始する。空では大規模な空戦部隊をカンナが一人で混乱させている。
何故そこまで?と訝しがるミウだが、ヒスイは言う
「民を守るのが仕事だ!」
ヘキによると、逆立ちしている怪獣は旧暦の対地生物兵器、ビソウ。
新たに現れた怪獣は、ビソウを捕食するために開発された生物兵器、グデラ。
フナトとヘキはレイヒュウゴの大火力で二匹を食い止める。しかし、それを喜ばぬものがいた。ジョウガ。
何とかヒスイの手で全員が救助された。が、ミウは複雑な表情をしている。
一方のジョウガは突如全身をエネルギーで取り巻き、巨大生物へと変貌した!
「翼と女性的なフォルムを持つ美しいガマガエル」といえばいいのか?
ともかく、三匹目の怪獣はレイヒュウゴを襲う。ヒスイは変身するが、救助された民をかばって戦わなければいけない…

レイヒュウゴをビソウ、リュウラをグデラに任せ、ジョウガは救助された民に狙いを定めた。
そのときリュウラは、そしてカンナは感じた。ミウの右手に光が集まっていくのを。
結集した光は輝く剣、鬼炎剣バーニングヴァジュラと化す。
その剣を構え、ミウは言霊を紡ぐ。
「君が宿主、クラマ ミウの名において命ずる。鬼、炎、和合すべし。出でよ、ラセツ!」
その剣を左腕に添えるや彼女の体を炎が包み込む。その炎が結集、
紅の巨人、ウルトラマンラセツの姿を現した!

ラセツは左腕からの裏拳でジョウガを圧倒、さらにその力を剣として引き抜く。
冥光剣「ハデスヴァジュラ」だ。
不利と見たジョウガは退却、ラセツはそのままビソウに襲い掛かる!更にリュウラもゲキに変身、形勢は逆転した。
グデラをリュウラの脚技が、ビソウをラセツの剣舞が追い詰める。
そして、ラセツは全身から立ち昇る炎を右腕に結集、拳から放射した!
これぞラセツ最強の必殺技、「裁邪冥光炎ハデスフレア」だ。
一撃の下焼き尽くされるビソウ、そしてグデラも、裁邪龍光弾シャイニングボムの下に消滅した。
一方、赤坂のビソウはゴジョウ一人に倒されていた。
銀座、対面する二人の巨人。と、突如ラセツがリュウラに斬りかかった!
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第十四章「いよっ少年」高位女神仙(にょしんせん)ジョウガ ウルトラマンラセツ発現
 斬りかかるラセツを間一髪避けるリュウラ。既にゲキからジンの姿に戻っている。
「龍よ、再度ゲキに変わればどうなる?」
「お前が己の命を大事にしているなら、ゲキにはならぬ方が良い」
ならば、と。リュウラはラセツの斬撃を再び避けるや掌から気を叩き込み、何とかラセツを眠らせる。
ラセツはミウの姿に戻り、ヒスイに毒づきながら姿を消す。
(奴は…何が狙いだ?あの力…何処から授かった)

軍上層部からレイハに通達が来た。それは、一週間の出動停止。昨日の命令無視が引っかかったのだ。
フナト、ユリノ、ヒスイの「非のほほん組」が強く抗議するが聞き入れてはもらえない。
当のゴジョウは「まぁ一週間何も起こらないことを祈りましょ★」である。
フナト以下の非のほほん組は、のほほん組からヘキとカンナを強引に引っ張ってきて食事に列席させる。
で、ただいま食房で愚痴を展開しているレイハだ。その様子に、他部署の面子からせせら笑いが聞こえる。
そこに一人の少年が現れた。
「ヘキさん!ご無沙汰です。ちょっとヤバい感じになってますね。」
彼の名は、ロクドウ トキツグ。十八歳。軍空戦部隊の訓練生ではあるが、
セキズとの一戦以来レイハに、というよりヘキゼンジロウに心酔してしまっている。
だから今からでもレイハの訓練生に鞍替えしようか考えているのだ。
ヘキはフナトとユリノの愚痴を無視し、トキツグと話し始めた。
そこにトキツグの鬼教官 スガが出現。トキツグ、怒られた。
訓練場に引っ張っていかれるトキツグに、カンナは言った。
「…ヘキさんが目標なんですか?    変です。」
ザル蕎麦三杯、ヘキが号泣しながら完食したことは言うまでも無い。
その様子を見ていた他部署の女性職員は呟いた
「あの泣いてる人、何て名前だっけ」

基地格納庫には、第三のレイハ専用の機翼が納入された。先日ビソウを殲滅した中型機、レイカイオウ。
「今納入してもらってもね…」ヘキは一人愚痴る。そこにスガ教官が現れる。彼に言わせれば、
トキツグは技術的には殆ど完成されている。だが、若干落ち着きに欠ける。
今レイハに入れば逆にレイハが危ない。だから甘い顔はしないでほしい。と。

書簡の整理以外何もすることがなく、レイハは暇を持て余してる。フラストレーション。布袋。
その夜、銀座に巨大生物が出現!だがレイハは出動停止…しかし、ゴジョウは良い事思い出した。
今現在、トキツグが飛行訓練の真っ最中なのだ。ならば、彼を臨時隊員とするほか無い。
ユリノは管制機器に侵入、書簡を書き換え、トキツグがレイカイオウに乗る手続きを不正に行う。
カンナは精神感応で(秘密裏に)操縦法を伝える。更に、ヒスイを私服に着替えさせ現地に向かわせる。
「街でぶらついていたところ偶然怪獣に遭遇した」という設定で、残された民の救助活動を行うのだ。
現地の銀座にいたのは、翼を持つ美しいガマガエル=ジョウガ!
攻撃をかけるトキツグ。しかし一切の効果が無い…ジョウガの皮膚は、攻撃を受け流しているようだ。
ヒスイは久々に私服でリュウラに転身する。が、彼のショットスパークルも一切通用しないのだ!
カンナはトキツグに伝える。眼を狙え、と。だがジョウガの光線は眼から撃ち出されるのだ。
そこにレイカイオウで突っ込めというのか…

決断のつかないトキツグ。だがカンナは言う
「ヘキさんが目標ですよね?ヘキさんは、それくらい出来る人です。」
その言葉に意を決し、トキツグはジョウガの両眼を貫いた!
と思われたが、すぐに両眼は再生してしまう。
一瞬の判断だった。リュウラはその新たな眼が馴染まない内に、シャイニングヴァイパーを放った!
さすがにこの一撃は深い傷を刻み込んだ。リュウラは続いてゲキに変身しようとする。
だが、突如月から発せられた光がジョウガを包む。そのままジョウガは姿を消した…

それ以降は何事もなく一週間が過ぎ、レイハは活動再開を許された。そのレイハ司令房に、当然の如くトキツグがいる。
「さすがに正式には入隊させてあげられないけど、司令房に出入りする分には良いんじゃない?」
ゴジョウの即断過ぎる英断によって、「出入り権」が与えられたのだ。
だがそこにズカズカとスガ教官が入ってきて、容赦なくトキツグを連行する。
ゴジョウはフナトに問う
「ね、トキツグ君はのほほん組かしら?非のほほん組かしらね?」
「何でそれ知ってるんですか」
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第十五章「道(タオ)」高位女神仙ジョウガ ウルトラマンラセツ 発現
 暗い。どこまでも暗い。ここはどこだ?濃厚な匂いが漂ってくる。香が焚かれているようだ。
炎に照らされ異形の影が複数蠢いている。一体は翼を持つ美しいガマ、ジョウガ。
「やられたなジョウガ、ニンゲンの幼体に眼を潰されるとは」
「ラゴウ!ジョウガの代わりにお前が降りてはみぬか?」
「俺が降りればニンゲンはまた戦を始めるぜ?そうなれば龍が覚醒する。本末転倒だ。
俺はカルラを待つ。それからだ。」
「分かったわ。このジョウガ、もう一度降りましょう。今度はラセツと契約してみる。」

 軍 日本基地。カンナは夢を見ていた。霞に包まれ周囲の山や木々が鏡のように写る湖。
その水面から龍が現れ、問う。
「{道(タオ)}を知っているか?」
「道」とは何かであり、また何者でもない。世界は総て「道」の中に収まっている。
「道」という名の箱に全宇宙がスッポリ入っている、とイメージしていただければ良い。
世界に存在する総ては「道」の中にある「気」のカタマリに過ぎない。
その「気」は「意思」によっていくらでも変形する。
「故にあの日、ニンゲンは滅びを回避した。」「あの日?」
「君の母親の命日。」「わたし…分からない。自分のこと」
「時が満ちれば思い出す…すまぬ」

龍が水底へ消えると同時に、カンナはレイハ招集の笛を聞き、飛び起きた。
渋谷に巨大化したジョウガが現れたのだ。朝の通勤混雑を狙ったか?
ジョウガは毒霧を吐き民を襲っている。出撃するレイヒュウゴだが、既にラセツが先回りしていた。
冥光剣ハデスヴァジュラを振るいジョウガを追い詰めるラセツだが、あと一歩で取り逃がす。

地上では毒霧の被害者達がのた打ち回っていた。この霧は神経に影響を与え、地獄の痛みを与えるらしい。
霧の洗浄は難しく、医院は悲鳴で溢れかえる。その医院に女…人間体のジョウガが来訪した。
彼女の持つ薬は、患者の一人を痛みから瞬時に解放する。
他の患者たちはその薬に殺到するが、ジョウガは条件をつける。
「今私が持っている薬は治療薬じゃない、痛みを暫く和らげるだけなの。完治に必要な
{不老不死の薬}
も私は持っている。それを渡す代わりに、私が指示する女の子を連れて来なさい」
その女の子、とはカンナ。人間を疑うことの出来ない彼女は、患者たちによって
いとも簡単に連れ去られてしまう。

ジョウガのアジト。そこにはミウもいる。ミウは…ラセツはカンナを殺すためジョウガと手を組んだのだ。
「ヤなやり方…」そう毒づきつつ、ミウはカンナにヴァジュラを構える。
だが当のカンナは冷静に問う
「ミウさん、何でわたしは狙われてるのかな」
ミウは何故か動揺し、答える。
「アンタは一人でも神々を殺す力を秘めてる。それに、アンタと龍が{合えば}
総てを超越する絶対無敵の力が発揮される。」
「その力を消すのが神々の行動原理?だからミウさんは、ラセツは龍とわたしを殺そうとしてるの?」
「神々に原理なんてない、彼らはただアンタと龍が怖いだけ。あたしは神々に味方することが決まってんの。」
その会話をジョウガは遮った。そしてカンナを殺すようミウに言う…

 レイハでは、既にジョウガのアジトが突きとめられていた。だが突入は難しい…
一歩踏み込めば、ジョウガが吐いた物と同種の毒霧が建物から噴出するからだ。
ヘキは再度霧の性質を説明する。この霧を吸った者は地獄の痛みにあえぐ事になる。
だが、ヒスイは不敵に笑った。
「ただ痛いだけだろ?」

 剣を突き刺そうとするミウ。だがカンナは何かを思い出し、ミウの眼を正面から見つめ、言う
「やめなさい、『ミウ』!」
それを聞き、思わず剣を取り落とすミウ。 刹那、アジトの扉が吹き飛んだ。
毒霧の中に、ヒスイが立っている。
「マミヤさん!何で?…霧を…!」
「大したことはない。君が殺されるほうが、よほど痛い。」
そう言って虚勢を張るヒスイ。だが、霧を吸ったヒスイのヒザは笑っている。両手の動きも不自然だ。
「マミヤさん、わたし、普通の人じゃないです。だからわたしのためにムリなんて…」
「守るために、ムリしたくなることはある。」
ヒスイは震える手でジョウガに銃を向ける。
そこに毒霧の患者たちが立ちふさがる。そう、不老不死の薬を持つジョウガに死なれてはならないからだ。
「…そうかよ」
突如周囲の壁を破り、フナト、ヘキ、ユリノが現れた!
「排毒の法陣、描き終わったわよ。もう毒霧は力を失ったわ。」
「マミヤ君、法陣描き終わるの待たずに突入するんだもんな」
「さ、患者さんがた、貴方達の体内の毒も消えましたよ。じゃ、カンナっていう
ウチの一服の清涼剤を閉じ込めた件、詳しくお聞きしましょ(はぁと)」
だが患者たちはフナトに組みかかった!
彼らは「痛みを逃れたい」願望がいつの間にか「不老不死の薬」を求める欲望に変わっていたのだ。
更にミウがラセツに転身!レイハに(リュウラのものと同じ)ショットスパークルを撃ってきた。
散開しつつ、ヒスイは怒りの言霊を放つ!
「龍、明、和合すべし。出でよリュウラぁ!」

 満月の下、またもやリュウラとラセツの闘いが始まる。
一方、患者達はジョウガに組み付く。カンナを連れてくる目的は果たしたのだから、
早く不老不死の薬を渡せ、と。
ジョウガは笑う。「その欲望、狂気、面白いわね。腹の足しにはなるでしょう。」
ジョウガは真の姿を現し、患者達を喰らう。そして巨大化、リュウラと対峙した。
カンナは言う「満月の下ではジョウガの力は増します…」
その通り、ジョウガの眼から放たれる光線は以前の数倍の威力を持っている。
リュウラ対ラセツ、ジョウガ。
毒霧を浴び、光線を撃たれ、ハデスヴァジュラに切りさいなまれる…発狂寸前の激痛。
それでも、リュウラは退かない。自分の背後には仲間達が、カンナがいるから。
遂にジョウガは増幅した強化光線を発射、ラセツも最強技ハデスフレアを放った!
だが、その爆炎からもリュウラは立ち上がる。怒りの姿、ゲキに転じ。
二発目のハデスフレアをキックの一撃で止め、ジョウガの光線をシャイニングヴァイパーで押し返す。
限界に近づくカラータイマー、龍は危険を告げるが、ヒスイは拒む。
「限界だから何だと言うんだ!」

 その上空に機翼が、レイキザンが現れた!「…大宰」
ゴジョウの乗ってきたレイキザンに搭乗するカンナは、ラセツを軽くかく乱させ、
翼で敵を斬滅する大技「ミウツシノヤイバ」でジョウガを貫く!

リュウラはこの一瞬を見逃さなかった。シャイニングヴァイパーをラセツに叩き付け、
続けてジョウガにシャイニングボムを決める!
ラセツは退却、そしてジョウガは龍神の光の前に遂に消滅していった。リュウラは消え行くジョウガに言う
「人間の命は限りあるものだ。だから弱い。しかし、だから強く美しい。」

体力のほとんどを使いきり、倒れたヒスイはここ三日ほど日本基地で看病を受けている。
カンナが見舞いに来るのはいいんだが、見舞いの品というのが毎日
梅昆布茶
だけだったりする。
「甘いモンの付け合わせばかり毎日もらってもな…」
「お店でタダでくれるんですけど、わたしキライなので…」
「ゼータクだ」
だが、贅沢だからこそ普通の人間であるという証明だ。それに気づき、ヒスイは一人クスリと笑む。
その唐突な笑みを見たカンナは言う。
「マミヤさん、キモいです。」
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十六章 スガ、棚、記帳、戦車(すがたなきちょうせんしゃ)宇宙超怪獣デュリグラス発現!

「そもそもこの程度の腕で軍なんざ入るもんじゃねぇ!」
スガ教官。軍航空訓練班教育主任。この人の指導には妥協など一切ない。
出来なければ何十回でも同じことやらせる。出来の悪い生徒には特別朝練を科す。
無論「愛故に」である。
このおっさんは常に手帳を携帯している。生徒たちの癖や弱点を思い出したとき
いつでも書き上げ、次回の訓練に活かすためだ。だがある日、その手帳を地面の穴に落としてしまう。

ヒスイはやっと復調し、レイハ指令房にいた。しかし見回してみたところ、一人足りない。
ゴジョウ、フナト、ユリノ、カンナ、俺。ちゃんといる。…あぁ、ゼンジロウだ。
現在レイハには三つの機翼が配備されている。
レイヒュウゴ、レイキザン、レイカイオウ。
「この三つ組み合わせたらすごいと思います。」
とのカンナの言にヒントを得、ヘキゼンジロウは三機各々に改造を加えているのだ。
その指令房にスガが血相変えて飛び込んできた。「見えねえ怪獣に襲われた」らしい。
ジョウガが死んで間もないのに今度は不可視の邪仙か…しかし、スガをなぜ襲う?
と、突如基地の無人警戒器が作動した。基地へ迫る巨大な質量も観測された。
透明邪仙は基地に宣戦布告した!
 かと思われたが、破壊されるポイントはスガの居るところだけである。
カンナの霊視とユリノの呪縛で、何とか撤退させることには成功する。
 奴は宇宙の別の惑星から飛来した生物。邪仙とは細胞構造が異なる。
地球は神社から発せられる神壁によってシールドされてはいるが、必ずどこかに弱化している箇所がある。
奴はそこから侵入したのか。しかも、あの怪獣の体表にはスガの落とした手帳がくっ付いていた。
奴は視覚、聴覚よりも嗅覚が発達している生物。カンナは言う。
「あの…スガさん、あの怪獣、スガさんが好きみたいです」

刹那の沈黙、一瞬の「はぁ!?」

ユリノの分析でも同じ結果が出ていた。
「奴がスガ教官に接近した際、異常な興奮状態と体温上昇が観測されています。
スガ教官の手帳に触れたことでどえりゃー親近感を覚えたようですね。」

    怪獣とおっさんの恋

「あたし仲人やろうかしら」
「をい、オカマ」
「何言ってるの小宰、まだ怪獣の片思いよ」
「『まだ』って何ですか」
ヒスイが軽く上下関係を無視していることは忘れてくれたまえ。
怪獣は地下に逃げただけである。だから地上に引きずり出し勝負を決する必要がある。
しかし奴は透明だ。地下の透明怪獣をどう叩けと言うのだ?
 そこへ、ヘキ ゼンジロウとかいう男が現れた。大げさな手振りで言う
「淑女たちーそしてー紳士たち」
西洋風になった理由は不明。彼の持つ図面にはレイキザンとレイカイオウの合体形態が描かれている。
 カイオウザン
レイキザンの翼を刃、レイカイオウをエンジンとして地底を掘り進む戦車である。
作戦は決まった。カイオウザンで潜り、怪獣を噴霧器で着色するのだ。何て単純な。
さて、カイオウザンに搭乗するのはオカ…フナト。だがフナトが一人で潜ったところで敵は接近すまい。
エサが必要だ。つまりスガが必要だ。
カイオウザンはオカマとおっさんを乗せ、暑苦しく地底に潜行していった」。
「ね、教官」「何だオカマ」
「独身?」「独身」
「幸運ね」「消すぞオカマ」

突如、地下のカイオウザンに接近する巨大な質量が計測された!カイオウザン、噴霧器作動!
敵に着色すると同時に全速力で後退。地上まであとわずか。だが敵のツメは速い…
ゴジョウは地表をレイヒュウゴで爆撃、強引にカイオウザンを地上に露出させた。
「大宰、殺す気ですか?」「いえ、オカマとおっさんじゃお互い…ねぇ?」

             何だよ。
地上に現れた怪獣はなおもスガをつかみあげようとする。ヒスイは言霊を放つが…
「出でよリュウラ!」「断る!痴話ゲンカに何ゆえ我の力が必要か!」
「痴話ゲンカじゃないから力貸せ!」
何とか転身に成功したが龍の意思が「下らん…下らん…」とうるさい。
スガを救出したリュウラを見、怪獣は闘争心をむき出しにする。
「恋敵出現」である。
そこら中の物を投げつけ、腕の長いツメを(荒い息遣いで)リュウラに向ける。
その時、ヘキって男が乗り込んだカイオウザンが怪獣の足元の土を貫いた。
下半身が土中に刺さり身動きの取れない怪獣。この隙に、
スガはゴジョウに抱きついた!そして二人で「にやっ」て笑う。
衝撃を受ける怪獣。リュウラは怪獣をそのまま大気圏外まで運び、怪獣の故郷の星に向けて
              蹴り飛ばす
のだった。

 一応追記しておくが、ゴジョウとスガには何もない。怪獣を諦めさせるための作戦である。
と何度説明しても分かってくれないオカマ…フナト小宰であった。
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第十七章 踊り、嫌い 使鬼ダイトウリ発現
 レイハの一員、ユリノ。彼女はいつでもイラついてらっしゃった。特に浅草の私服警備なんて命じられた日にゃ…
二日後の盆踊り大会に向け、今日は街中てんやわんやである。ただでさえ四六時中祭りみたいな街なのに、
本格的に祭りを始めれば一体どんな暑苦しい状況を呈するのか…
 ユリノは盆踊りの意味は知っている。そもそも精霊を慰める儀式であって、死んだ先祖へ感謝する儀式ではない。
だが大多数の民はその事を知らないだろう。それに、ユリノは先祖への感謝という気持ちをイマイチ理解できない。
死んだ人間が還ってくる事がなぜ喜ばしいのか…大体、鬼道機関の研究の一環としての調査ならば、盆踊り当日に自分を向かわせるべきである。
 そのイラついてらっしゃるユリノを逐一チェックしているレイハ指令房。この任の意味を問うフナトにゴジョウは返す。
「今、『使鬼の法』を実戦に導入するか否か上層部が検討してるの。」
使鬼。召鬼とも呼ばれる。
その名の通り、鬼を呼び出し自分の意のままに操る法。しかしこの法は、過去、多くの犠牲者を出してきた。道士が鬼を操りきれず、
逆に道士が殺される例がほとんどだったのだ。
レイハには正式な道士はユリノしかいない。彼女を失うわけにはいかない。故にレイハは、即座に全員「使鬼の法反対」で一致した。
直後フナトはゴジョウに問う。
「でもぉ、その事と浅草警備が関係あるんですか?」
「いえ、あんまり。」
 そろそろイライラが限界に来ていたユリノ。ふと街角の焼き鳥屋を見る。店主の隙をつき、一人の少女が酒ビンを盗んだ。
盗みなら…つまり…
「つまりあのコをボコれってことよねぇ!!」
ユリノ、壊れた。傍目から見れば異常な光景だ。一升瓶抱えた小さな娘を黒髪の女が物凄い形相で全速力で追撃してゆく。
盆踊りの準備で忙しい浅草を駆け抜ける二つの疾風。
小さな疾風の名はタチカワ ナユ。十三歳。
酒を盗んだのは理由があるという。が、ユリノは理由のりの字も聞かず、軍の浅草派出所に引っ張って行こうとする。
その時、突然ナユの足元の「影」が揺らめいた。そこからユリノの身長の三倍はあろうかという「鬼」が現れる。

ユリノに襲い掛かる鬼、だがナユが酒をぶつけると雲散霧消した。
しかしこれは倒したわけではない、ただ力を弱めて影の中に追い戻しただけだ、とナユは言う。
 ナユの父親は、二年前使鬼の研究中に殉職した道士、タチカワマサトであった。
タチカワは鬼を完全に御することに成功した唯一の人物だった。
だが、それにはタチカワ自身の命を捨てなければならなかった…タチカワは今わの際に、御した鬼に「娘を守れ」と命じたらしいのだ。
だがナユ自身は道士ではないため、鬼を御する方法を知らない。鬼は次第に本能のままに動き始め、「ナユを守るために」
殺人まで犯すようになった。ただ、この鬼は酒を嫌う。だから常に酒を携帯する必要があったのだ。
「酒ぐらい買えばいいじゃない、わざわざ盗まなくたって。」
「お金無い。母さん、鬼を怖がって出てっちゃったから。」
それでは学舎にも行っていないのか、と聞こうとしてやめた。一応十四歳までは最低限の義務教育。
それさえ鬼のせいで受けられていないのか…
 このままではナユは、鬼のせいでマトモな生活を営めない。ユリノはナユの家を物色し始めた。
「道士なら自分が呼び出した鬼を祓う(はらう)法を何処かに書き残してあるハズ…」
しかし、当のナユは鬼を祓うことに、あまり乗り気ではないようだ。父が死んでから、
自分の側には鬼しかいなかった。鬼に対して恐怖と親しみの入り混じった複雑な感情を持っているらしい。
確かに、鬼の「ナユを守る」方法はあまりに危険で残虐だ。だが一方で、
一生懸命ナユを守ろうとしているのも伝わってくる。だからといって放っておくわけにもいくまい…
そこに、フナト、ヒスイ、カンナとトキツグが現れた。連絡の無いユリノを探しにきたのだ。
彼らの手助けでようやく鬼祓いの法が書かれた書簡が見つかった。それによると、
鬼を呼んだ道士あるいはその血縁者が、酒六本と榊の枝を用意し「カミゴリョウの歌」を笛で奏でること。
だがもし失敗したら?
そりゃあ俺達レイハが鬼をぶっ潰すさとレイハに入っていないトキツグが言おうとしたのでヒスイが殴って黙らせた。
ユリノはナユに言う。
「失敗が前提じゃ、前進できない」と。

ナユはカミゴリョウの歌は知っているし、奏でることも出来る。
だが、鬼と正面から睨み合ったままで奏でなければ効果は無い。だがユリノはナユを勇気付ける。
儀の間は側にいてあげる、と。

儀の準備は整った。だがそれを察知したのか、鬼が姿を現した。力を全開し、ユリノを襲った際の五、六倍の体躯となって。
その鬼の姿に恐怖するナユをユリノは叱咤する。
「アンタの手で鬼を祓わないと、アンタ一生そのままよ?」
ヒスイはドサクサに紛れてリュウラに転化。しかしリュウラはひたすらカウンターを繰り返し、
自ら攻めようとはしない。そう、この鬼はナユ自身で倒されなくてはいけない。
 ユリノとリュウラの心を知ったナユは、カミゴリョウの歌を奏で始めた。
それまで自分を苦しめ続け、守り続けた鬼に、満身の怒りと感謝を込めて。
 その儀を見守るレイハの上空にウルトラマンラセツがいた。この隙にレイハを、カンナを滅するつもりか?
それともこの鬼を倒しに来たか…
リュウラはそーっと上空に飛んだ。ラセツの額、第三の眼からショットスパークルが放たれる…
だがリュウラは全身に龍の形態の光を纏わせ、スパークルを止めた。
自分の周囲に龍型の防御エネルギーを展開する「龍光壁ドラゴンフィールド」だ。
「邪魔するな。一人の少女が自らの過去と決別する重要な儀なんだ。」

歌は奏で終わり、鬼の体は燃え始めた。
その炎を見、やはり重く複雑な表情を浮かべるナユ。その時指令房のゴジョウから連絡が入った。
二年前からある医院に入院している記憶喪失の男が突如記憶を取り戻したというのだ。
男の名はタチカワマサト。自分のせいで娘が鬼にとりつかれてしまっているから、
一刻も早く鬼を祓いに行かせろ、と言っているらしい。
送信されてきた男の顔は、間違いなくナユの父。
「生きてたんだ…」
鬼が燃え始めたその瞬間、突如記憶が蘇ったらしい。
「アンタが?…ありがと…」
鬼は柔和な表情を一瞬だけ見せ、完全に消滅した。
だがユリノは叫ぶ。
「ナユを守るって言っときながら散々バカやって、いきなり一つだけ良い事してはいさよなら?
そんなの卑怯よ!遅すぎんのよナユを守るって意味を理解すんのが!」

 男は完全にタチカワであることが確認された。タチカワはナユとともに帝都を離れ、
地方に移り住むことにしたという。この事件により、使鬼の法の危険性が再認識され、実戦導入は見送られた。
その夜、浅草で盛大に祭りが始まった。
ナユは死んだ(と思っていた)父親を思い、奇跡にめぐり合った。その光景を見た後なら、
自分も少しくらい死者に思いをはせても良いのかもしれない。ユリノは、祭りに参加した。


数分後、結局イラついてらっしゃった。
「何なのこの人混みはぁ!」

リュウラ学 本日の講師 ゴジョウホノカ&カンナ
「裁邪龍光弾シャイニングボムは敵を原子まで粉砕する上にその敵の魂までも破壊して
完全に消滅させてしまう超大技なんだけど…」
「大宰、なんにも考えずに書き込みしないで下さい」
「てへ」

次回予告
邪悪を頭脳で追い詰める者たち。だが彼らの目的は別にあった。
少女はまたも命を狙われ、レイハは砦の陥落を前にする。
次回ウルトラマンリュウラ
第十八章「お返ししません」
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第十八章 お返ししません 水棲邪仙フウガク発現
「どこから来たの?」
「出雲(いずも)」
「出雲から東京まで歩いてきたの?」
「うん」
「お名前、わかるかな」
「カンナ」
カンナと、彼女の以前の職場である孤児院の院長との最初の会話である。
八年前、浅草駅に座り込んでいた彼女は東京のとある孤児院に保護され、
そのまま住み込みで働くようになった。
そしてあの日、吸怨邪仙ギアロの出現に際し、無意識に己の身内に眠る龍を覚醒、
マミヤヒスイに与えたのだ。だがそのショックで、今度は保護されてから龍を与えるまでの全ての記憶を失った。
戸籍上の名はイズモ カンナ。戸籍上の年齢は十八歳。

 ヒスイはたまに、カンナに聞かれることがある。
「なんか、かくしてないですか?」
隠してます、とは言えないじゃないですか。自分がリュウラだ、なんて。
しかし、ヒスイもなぜ自分に龍が融合したのかを知らない。
龍を与えたカンナもその事をを忘れている。全てを知っているのは龍だけなのだ。

 その日、軍日本基地に帝国審議会より客人があった。
クロサキ ゴウジ。六十歳男性。
鬼道や神壁について多くの論文を発表している高名な神学者である。
歓迎の準備中、東京港に巨大生物が出現。敵は水中から骨の破片のような弾丸を吐いてくる。
その攻撃に苦戦するレイハだが、基地に到着したクロサキ ゴウジの指示を受け、
辛うじて撃滅した。

クロサキはその生物の破片を分析、「邪仙である」との結論を下す。彼によれば
邪仙とは幽世(かくりよ)に棲む超存在であり、それは明確な悪意を持っている。
それ以上の生態、いや、そもそも生物なのかどうかすら不明だという。
邪仙の体細胞には常に「ウツロ」があり、分析中直ぐにその「ウツロ」が拡大、細胞を消滅させてしまうからだ。

 その邪仙に対し、毎回超人的な能力を見せ、勝利に多大な貢献を見せるカンナ。クロサキは研究の一環として彼女に協力を要請する。心中穏やかでないヒスイ。
だが、これはカンナが決めることだ。しかし、カンナはその要請を断る。泣きながら。
ヒスイは驚きながらもクロサキの表情の変化を捉えた。
断られた瞬間、柔和な学者の顔から一瞬だけ邪悪な、人をのろう形相となっていた。
 指令房を退出するクロサキと彼の助手たちを見送りつつ、カンナは誤り続ける。泣きながら何度も。
「すごい懐かしい感じがしたんです…あの人たち。」
 クロサキを怪しんだヒスイは彼のあとを追う。彼の入った客室。だが、その部屋にはゴジョウもいた。
「ここまで深入りなさるとは思いませんでしたわ。クロサキ様、いえ、老子。」
ゴジョウの声だ。旧知なのか?…その前に「深入り」とは?「老子」とは?
「あの娘を何故渡さぬ、アレが龍と呼応すればどうなるか存じておろう?」
「アレではございません。カンナとお呼びください。」
「そのカンナを我らに引き渡すのがゴジョウ、お前の役目ぞ!」
「何!?」
と言いかけてヒスイは危うく口を閉じた。
では…カンナのレイハ入隊も最初から仕組まれていたことなのか?彼らにカンナを引き渡すためゴジョウはレイハの大宰に就任したのか?そもそもカンナを狙うクロサキとは何者だ?
「とにかくカンナを渡せ…いや、我らのもとに返せ!」
「お返しするわけには参りませんわ。」
返せ…ということは、カンナは元々クロサキの仲間なのか!?

 一方、ヘキは資料保管庫で先刻の水棲生物を調査していた。同じ姿の未確認生物が遥か昔、つまり旧暦で目撃されていたのだ。それを手伝うユリノは様々なデータをチラ見しつつ呟く。
「やっぱり旧暦の文明は戦争で滅んだのね。」

「開戦の理由が不明だけどね。そして、戦争の最後に太陽が肥大化し、地球を飲み込もうとした。」
「赤色巨星って奴になったのよね?太陽を含め、自分で光と熱を発する星『恒星』は、老年期を迎えると巨大化するってやつ。」
「そして、その赤色巨星を、地球から現れた一匹の龍が元の太陽に戻した。」
「太陽の肥大化という絶対的な破滅から救われた人類は希望を取り戻し、自ら停戦した。それから永い時が過ぎ、人類の文明はようやくここまで復興した。」
「そう。」
「ところで、太陽を鎮めた龍は地球のどこから現れたの?」
「今で言う…日本の出雲あたりだな」
出雲といえば、伊勢にも匹敵する神壁の中心地だ。その出雲で八年ほど前、時間の歪みが観測され危惧されたことがあったな…
その時、血相を変えたヒスイが資料保管庫に飛び込んできた。そしてクロサキとゴジョウの密談を二人に教える。

「だから大宰の…ゴジョウホノカの正体がハッキリするまでは彼女の指揮下に入るわけにはいかんぞ…」
「小宰(フナト)は大宰に忠実だからバラすなら頃合いを見計らわないとね。」
「まってよ、カンナはどうすんの?あのクロサキって学者の狙いがカンナで、そのクロサキが大宰と通じてるならカンナを基地に置いとくわけにはいかないでしょ?」
「小宰にもバラすか…心苦しいが、ゴジョウホノカの身辺調査が必要だな…」
だが、調査開始寸前、基地各所から断末魔の絶叫が響いた。
先刻撃破した邪仙、フウガクが人間大でそこら中の水道から出現し続けているのだ。そして敵共はレイハ指令房へ向かっていく…
ユリノは指令房を鬼道機関の方陣でシールド、ヘキは全ての水道を停止、ヒスイは全職員を非難壕へ移す。

指令房に閉じ込められたゴジョウ、フナト、カンナ。方陣も長くはもたない…ユリノは切り札を使った。
「マミヤ、カンナの持ち物って持ってない?」
…ジョウガの時の…梅昆布茶!
「式神(シキガミ)を使ってみるわ。」

ユリノは人型に切った紙によりによって梅昆布茶のパックを貼り付け、そこにカンナの戸籍上の名「出雲 カンナ」を書き付ける。
「これを空中に飛ばせば人形がカンナの身代わりになる。奴らの狙いがカンナなら、基地の外に誘導できる。」
作戦は成功、フウガクは全て基地から排除された。が、再び一匹に合体した敵は空中に擬似的な空間を形成、その中の湖に身を隠す。

 基地から逃走するクロサキ、そこに噂のゴジョウが立ち塞がった。
「奴を基地内部で繁殖させる呪を施すために、死体を分析するフリをなさっていたのですね。」
「ゴジョウ、奴らを使ってお前を殺すつもりだった。だがやはり邪仙は本能的にカンナを殺そうとするな…邪仙の性質を読みきれなかった私のミスだ。」
「神々にご報告を?」
「当然だ!ミカヅチやラゴウがお前たちを、カンナを叩き潰して下さるだろう!」
言い残して逃走するクロサキを狙撃するゴジョウ、しかし彼の部下が身代わりとなって倒れる。その屍は一瞬人外の怪物と化して消え去る。
ゴジョウとクロサキは敵対関係なのだろうか?それはまだ誰にもわからない。

 空中の湖に潜むフウガクを撃滅するため、ヒスイ、ヘキ、ユリノの三人だけの作戦が始まった。ゴジョウが怪しい今、彼女に忠実なフナトとクロサキに狙われているカンナを作戦には参加させられないからだ。故にスガ教官に頼み込んで訓練生総出で足止めを食らわせている。
敵の潜む空中湖上空に待機する、ヘキのレイヒュウゴとユリノのレイカイオウ。
湖面に急降下しつつ二機は合体、水中に飛び込んだ!
これがレイヒュウゴとレイカイオウの合体形態、特殊潜航艇ヒュウカイオウだ。
そして湖の上空にはもう一機、ヒスイの搭乗したレイカイオウが滞空している。この機体は当初から支援機として設計されていたため、量産が容易なのだ。
作戦は水中のフウガクをヒュウカイオウで牽制し、水面に頭を出したところをヒスイのレイカイオウで叩くというシンプルなもの。
「よし、超人作戦第壱号、攻撃開始!」

ヒュウカイオウは予想以上の威力を見せた。そもそもこの湖はフウガクの占有する不連続時空間なのだ。
にも関わらず、ヒュウカイオウは敵の動きを確実に避け対水光線砲を直撃させていく。

作戦は成功するかと思われた。が、ヒスイの脳裏に何者かの思念が伝えられた。
「あたしはアンタとは違う、自分の意思で鬼神と融合し、ラセツになった。なのに何でアンタだけ…アンタはカンナのおかげで力を得ただけのくせに!」
ラセツ?クラマ ミウか?…それに気を取られたヒスイはフウガクの弾丸に被弾、墜落する!
「ちぃ…龍 明 和合すべし。出でよリュウラ!」

水面から顔を出したフウガク、だがリュウラはミウの思念が気になり戦闘に集中できない。
(彼女は俺を妬んでいる…何故だ?それに、何故彼女は自分の意思で力を得ることができたんだ…)
そこにフウガクの弾丸が炸裂、リュウラは湖面に没してしまう。
だが、大陸では龍は水の神としても信仰されている。

「水底で、我に勝てるとでも思うたか?」

リュウラは湖全ての水を操り、一点に集束するやフウガクに叩きつける。
さらに龍光刃シャイニングヴァイパーを振るい、フウガクを両断した!
同時に湖周囲の疑似空間も消滅、ヘキとユリノは脱出し、ヒスイの待つ地上に戻るのだった。

その二人に手を振りつつ、ヒスイは龍に問うた。
「俺が力を得たのはカンナのおかげ…どういう意味だ?教えろ。」
「時が満ちたか…そうだ、マミヤヒスイ、お前に我を、龍を与えたのは、カンナだ。」
「…何…?」
一方、事態を飲み込めないフナトを尻目にゴジョウは厳しい表情で一人呟いた。
「神々が怒る…カルラが来るわね…」
カンナはカンナで呟いた。
「ウルトラマンリュウラ…昔もそんなムチャしてた…」

ヘキとユリノが散らかしたままの資料保管庫。一冊の本があるページで開きっ放しになっている。
そのページには「写真」が貼り付けられている。写っているのは…巨人…リュウラだ。
そして、旧暦の言語「英語」でこう書かれていた。

「ULTRAMAN」
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 第十九章 かみをなくす
高位星神仙(せいしんせん)ミカヅチ 高位闘神仙(とうしんせん)ラゴウ発現
暗い。どこまでも暗い。炎に照らされた複数の異形が言い争っている。
「もはや一刻の猶予もならぬ!龍を殺さねば…」
「落ち着けよミカヅチ、本格的な攻撃はカルラが来てからだ。何度も言わせるな。」
「…ラゴウ、地球を飲み込めばニンゲンは死に絶えると思わぬか?」
「お前、マジでバカだろ?前に同じような発想して太陽を肥大化させたから龍が覚醒したんじゃないか!」
「愚は繰り返さぬ、見ておれ。」
そう言い残し、ミカヅチと呼ばれた異形は宇宙に消えた。
 ヒスイ達はレイハ指令房にいた…いるしかなかった。フナトにゴジョウのことを教えるタイミングがつかめないし、
カンナを怪しいゴジョウと二人きりにするわけにもいかない。ゴジョウは自分を妨害した件については何も聞いてこない。
さらにヒスイは、自分に龍を与えたのはカンナだと言う話も気になっていた。その深刻な空気をヘキの驚きの声が遮った。次いで彼は顔面蒼白で報告する。
「北斗七星が…消えました…」
恒星は多かれ少なかれ神力を放っている。今、突然北斗七星からの神力が観測されなくなったのだ。つまり、この瞬間、北斗七星が消滅した、ということだ。
直後、消滅した北斗七星方面から、新たに別の邪悪な神力が観測された。その神力をビジュアルで示すなら、黒い惑星そのものといった趣。
黒い惑星「ミカヅチ」が放つ神力はザラギ天やジョウガに酷似している。…つまり…
「星を養分とするとてつもない生物…いえ、神が現れた、ということです。」
ミカヅチの内部からは僅かに北斗七星の神力が観測されている。北斗七星の神々は生物の運命を操る強大な存在だ。
彼らを一瞬で吸収したミカヅチは、神々の中でも高位の存在なのではないか?だがゴジョウは、あくまで冷静に問う。
「ミカヅチの進路は?」
「このままいけば、一週間で地球に到達します…」
「対抗策は?」
「…敵は北斗七星の神力を糧としました。なら、北斗に相反する南斗六星の神力を叩き付ければ,
敵は不安定になります。そこを攻めれば太陽系到達前に破壊できます。」
「方法は?」
「南斗の神力を地球に誘導し発射、次に大量の鬼道機関で呪殺するしかありません!」

かくして、軍日本基地に世界中の全鬼道機関のエネルギーを集中する前代未聞の作戦が始まった。
エネルギーがすべて蓄積されるまで二日、南斗の神力を誘導完了するまで三日。
ミカヅチ呪殺用大型砲台の作業を手伝いつつヒスイは龍に問う。
「龍よ、カンナが俺にアンタを与えた、という話だが…」
「我は元々カンナの身内に眠っていた。お前の危機を目の当たりにし、無意識に我を揺り起こし、お前に与えたのだ。
だが魂の一部であった我が離れたことで、カンナは再び記憶を失った。…見るがよい。」
瞬間、ヒスイの意識は別の場所へ飛ぶ。一面焦土と化した石造りの都市郡…強烈な死臭も漂っている。
これははるか昔、旧暦の最終戦争の光景か?わずかな生存者たちを爆撃機が狙っている。もはや彼らに逃れるすべは無かろう。
爆撃機から投下された「何か」は、空間に巨大なキノコ状の雲を拡げた…が、その雲は一瞬で消滅。生存者たちも全員が無傷である。
そこに立っていたのは、蒼き巨人…
「あれは…リュウラ…」
生存者たちはリュウラを「ウルトラマン」と呼び声援を送っている。
その「ウルトラマン」は民を守るため、爆撃機を破壊する。だが何故この時代にリュウラがいる?龍は教える。
「あれは我と融合し転化した『先代の』ウルトラマンリュウラ。そして、カンナの母親だ。」
「マミヤ君、ちょっとこれ手伝ってくれる?」
ヘキの自然体な呼び声で我に返ったヒスイ。だが、旧暦とは具体的に何年前、と数えられないほどの古代なのだ。
その時代に何故カンナの母親が?しかも、龍と融合して。
カンナはカンナで、自分を連れ行こうとしたクロサキの事を気にかけていた。
「あの人たち自体がなつかしいわけじゃない…昔、わたしのそばにいた人たちと同じ感じがしてたんだ…」
ユリノはカンナと作業しつつ、自分に届いた手紙を迷惑そうに読む。カンナが「誰からですか?」と聞いてくるので答えづらいが、
答えぬわけにもいくまい。
「実家の母親。新聞見たけど大丈夫なのかって。」
「やっぱ、お母さんってなつかしいですか?」
母親の顔を知らないカンナに対しては答えづらいが、答えぬわけにもいくまい。
「正直、懐かしい。」
「そうですか。」
カンナは黙々と作業に戻る。

作業の合間を縫ってヒスイ、ヘキ、ユリノは密談を続けていた。ゴジョウの件、フナトにバラすべきか否か。
だが、その間もミカヅチは地球に迫っている。蟹座の恒星を吸収し、わずかに速度を増している。一刻の猶予も無い。
三人はフナトにゴジョウとクロサキの件を話す。が…
「あらやだ。わかった、じゃ作業続けて?」
このオカマ、事態を呑み込めているのか?
そのころ、異形達の蠢く暗闇にクラマ ミウがいた。
「地球を吸収するなんて方法、あたしは反対です。」
彼女に対し、甲冑に身を包んだ異形…ラゴウは言う。
「なぁラセツ…鞍馬水映姫(クラマノミウツシヒメ)、ミカヅチを止めるのはめんどくさい。それより、
ニンゲンがミカヅチを吹っ飛ばす武器を造ってるらしいな。ソイツを壊せば、リュウラは来るかな。」
「ラゴウ、あたしは、ミカヅチ破壊用兵器を守ります。」
数日後、ミカヅチを呪殺する大型砲台が完成した。弾数は二発。一発目は南斗から拝借した神力。
これでミカヅチを不安定にする。そこに二発目、全鬼道機関のエネルギーを発射する最強の呪法、「コウテイノヒ」で完全に粉砕する。
そして太陽系にミカヅチが接近。
「今よ、南斗神力、発し…待った!」
砲台の前に甲冑に身を包んだ巨大生物が現れたのだ!今砲台を破壊されるわけにはいかない!
フナト、ヒスイ、カンナが迎撃するも、敵の甲冑はあらゆる攻撃を跳ね返してしまう。
反射された光線砲で、ヒスイとカンナの乗ったレイカイオウが墜落。二人は地上から散開して攻撃を続行、
カンナから離れたところでヒスイはリュウラに転じようとする…そこにミウが現れた。

「どけ、奴を止めなければ地球が飲み込まれる。」
「あたしは、アンタが嫌い。でも砲台を守らなきゃ、とは思ってる。」
「…意外だな…地球に守りたいものがあるのか?」
「あたし、カンナを殺すことが定められてる。けど、カンナに生きてほしい、とは思う。」
「だから高天原でカンナに沙子泉の事を教えたのか…」
「あいつは…ラゴウは強い。力貸してくれる?」
「当然だ。行くぞ、この星は誰にも食わせん!」
「君が宿主、マミヤヒスイの名において命ずる。龍、明、和合すべし!」
「君が宿主、クラマ ミウの名において命ずる。鬼、炎、和合すべし!」
「出でよ」「リュウラ!」「ラセツ!」
龍水玉アクアアイを胸に添えるやヒスイを光の龍が取り巻く。
鬼炎剣バーニングヴァジュラを左腕に添えるやミウを光の炎が包む。
龍が転じてリュウラとなり、炎からラセツが立ち上がる!
甲冑を持つ生物、ラゴウは肩の角から雷撃を放つ。
リュウラとラセツは星型の防御壁「霊光星盾ペンタクルフィールド」を放ち、これを打ち消す。
更に額からショットスパークルを発射、反撃開始する!リュウラの脚技、ラセツの剣がラゴウを追い詰める!
と思われたが、ラゴウは全く怯まず、肩角から雷撃を連発する。この角を破壊しなければ砲台が危ない…
ラセツは距離をとり、剣を構える。ラセツの持つ冥光剣ハデスヴァジュラの切っ先が光る。
剣を振るうと同時に半円型の光の刃が発射され、右肩の角を切り飛ばした!「霊光閃ソードスパークル」である。
剣を振るう度にソードスパークルが飛び、左肩の角も折る。胸に深い傷を刻み込む!
が…次の瞬間全ての傷が消えた。リュウラはジンからゲキに変身。
ラセツのソードスパークルと同時にシャイニングヴァイパーを放ち、胸の一点を攻撃する。
そして、最強のシャイニングボムをその一点に叩き込んだ!ラゴウは凄まじい光の奔流に飲み込まれる。
そして、爆発!

…爆発?

爆風がおさまり、ラゴウは、生きていた。
何、シャイニングボムが効かない?

リュウラは更にシャイニングボムを連射する。二発目は右腕に払われるものの、三発目は体に直撃した!
が、直撃を受けてなおラゴウは倒れない。倒れさえしないのだ。焦るリュウラを雷撃で襲うラゴウ。
この余波で砲台の管制システムに異常が発生する。急ぎ復旧に当たる全職員。だが、間に合うのか?
カンナは太陽系に進入しつつあるミカヅチを霊視する。地球最大の危機。その時カンナの脳裏に未知の記憶が現れた。
湖、村の老人、出雲、破壊され尽くした摩天楼、虚空、そして龍。

「消えろ」

そう口にしたカンナの指先から突如として無限の光が放たれた!宇宙へ伸びたその光は、接近するミカヅチを直撃。そして邪悪なる星、ミカヅチは…直後、完全に粉砕された。
いや、これは、消滅したのだ。次いで手をひとつ振るカンナ。
砲台の管制基地は静寂に包まれた。「何者か」が放った光線が、
北斗七星を食したミカヅチをいとも簡単に消し去った…そして…北斗七星は…元のままの位置、元のままの姿で輝いていた。
「何者か」は一瞬のうちにミカヅチを消滅させ、ミカヅチに食われた北斗七星を含む全ての星を蘇らせたのだ。
喜ぶよりも、それほどの力を持った存在に戦慄せざるを得ないレイハ…
そして、その存在、カンナは我に返り、己の持つ力の大きさに恐怖を覚える…
だが、まだ終わってはいない。シャイニングボム三連射が通じない強敵、ラゴウが残っているのだ。
ゴジョウは砲台をラゴウに向ける。そしてラゴウに最強の呪法「コウテイノヒ」が炸裂、
そこにラセツのハデスフレア、リュウラのシャイニングボムが撃ち込まれる!
この同時攻撃の前に、ついにラゴウは…ヒザをつく。ただヒザをつく、に留まった。
そしてラゴウは、空間に扉を作りリュウラ達の前から消えていった。
ラセツは、ミカヅチを破壊したカンナを一瞥し、空へ消える。リュウラは、倒れ込んだ。
ゲキであまりに長く闘い過ぎたのだ。それだけの力を使ってなお倒れないラゴウ…
今後の闘いを危惧しつつ、ヒスイの姿へ戻る。

ラセツは一足先にミウに戻り、カンナに近づく。
「ミウさん、わたしの力って…」
「ねぇカンナ、アンタの名前、どーゆー意味だと思う?」
「…カンナ…」
「アンタはカンナ。神を無くす存在…『神無』。分かるでしょ?
アンタの力は凄まじい。恐るべき存在、許されない存在。
そんな意味の込められたイヤな名前。
『カンナ』ってのは、コイツは神々を殺してしまう『化け物だ』ってこと!」
言い残し、ミウは姿を消した。自分が神を殺す恐るべき存在である。という事は聞かされた。
だが、当然、実感などなかった。自分の力がこれほどのものだったとは…
ヒスイはカンナを見つけ、駆け寄るが、彼女の雰囲気に足を止める。カンナは泣きながらヒスイに言う。
「マミヤさん、わたしは、マミヤさんのこと、好きです。」
「…!…?…」
「だからマミヤさんは、わたしのこと、キライになってください…わたし、人間じゃ、ないですから…」
走り去るカンナ、黙って見ているしか出来ないヒスイ。砲台の管制基地から、
南斗から拝借していた神力を南斗に返還した、との連絡を受けてもヒスイは動かない。
その日、カンナはレイハから姿を消した。

そして、炎に照らされ蠢く異形…高位の神々。そこに黒き巨人が現れる。
「貴方が、高位闘神仙ラゴウですね?」
「待ってたよ。ミカヅチが死んだしおたくだけが頼りだ。龍殺しの存在、カルラ。」

続く
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第二十章 霊鳥、強襲!
高位闘神仙ラゴウ、猛火邪仙カガチ、ウルトラマンカルラ 発現
関西省古都郷、奈良県。日本帝国人民の信仰の総本山。そこに、神が手を伸ばし始めていた。その神の姿を見た者達は次々と暴れ始める…
神は、ラゴウはほくそ笑む。
(見ろ、白虎、朱雀、玄武。お前達は俺には勝てない。残念だな?青龍がいなくて。)
カンナがレイハから姿を消し、既に三日。ゴジョウは他部署にカンナ捜索の要請を出したというが、ゴジョウの正体が分からない今、彼女にカンナを任せるのは余りに危険だ。
そのカンナは、日本帝国鉄道の京都駅にいた。そこから汽車を乗り換え、自分が生まれたと思しき出雲に向かおうとしていたのだ。売店で買ったミカンをぶら下げ汽車を待つカンナに一人の青年が話しかけてきた。
「出雲に行くの?」
そりゃ出雲行きの乗り場で待ってますから。
青年ではあるが、顔立ちは幼い。また一挙一動が上品である。十代後半にも、二十代後半にも見える。凛々しい顔立ちながら未成年でおつむ六歳児並のカンナとは対照的である。
「僕はアサギ。良かったら出雲までご一緒させてくれない?」
「アサギさんですね。じゃアサギさん、今ここでわたしを殺した方が手っ取り早くなくないですか?」
カンナは瞬時に気付いた。彼の邪悪な本性に。彼の美しい笑顔は作り物。その心中はカンナへの殺意に満ちている。そこに、
「よく分かったわねカンナちゃん、あとでいいこいいこしてあげるわ」
突如出現、異常な宣言を行う女…私服だが…
「大宰!何でココに?」
ゴジョウは笑顔でレイバンガ(銃)をぶっ放し、駅をパニック状態にするやカンナを奪い返す。そしてドサクサに紛れ、別の列車に乗り込む。
「出雲に行きたかったんですけど…」
「出雲には出雲大社があるでしょ?その内宮は高位の神々が棲む地と霊的に繋がっているの。だから出雲では、神々が罠を仕掛けやすい。貴女を殺すための罠を、ね。」
「でも、今からドコ行くんですか?」
「奈良」

レイハは大混乱であった。カンナはおろかゴジョウも
「ちょっと遠出してくるわ」
の一言だけ残し、レイハを去ってしまったのだ。フナトが臨時指揮官となるが、部下もヒスイ、ユリノ、ヘキだけである。その時、軍日本基地関西省支部より支援要請があった。
奈良で多くの民が暴力、窃盗、殺人を繰り返しているという。古都、奈良は東大寺と春日大社によって二重に保護された平和な土地である。これまで大きな事件が発生したという報告は一度もない。
その奈良で、民が血に飢えているというのか…
レイハは全員…と言っても四人で…調査に向かう。地上から調査活動を行うレイハ。だがそこに、伊勢で粉砕された猛火邪仙カガチが現れた!急ぎヒスイはリュウラに転化。
カガチは春日大社の神力、東大寺の仏気に邪魔され、思うように動けないようだ。これならジンのままで倒せる。シャイニングヴァイパーを伸ばすリュウラ、そのリュウラを何者かの光線が狙撃した!
そこに立っていたのは、黒い巨人。
「貴様…ウルトラマンか?」
「邪仙、僕の邪魔をしないでよ。」
黒い巨人は右腰に手をやる。と、その手に光が集束、両刃の短剣と化す。高速でこの短剣を振るい、カガチを切る、突く、薙ぐ!更にその切っ先から半円状の光の刃が発射される。
ラセツがハデスヴァジュラから放つものと同じ、霊光閃ソードスパークルだ。この直撃にダウンしたカガチ。
黒い巨人は短剣に力を込める…と、その両端が伸び、巨人の身長をも上回る光の長ヤリとなった。これを高速で回転させる黒い巨人。その体から発せられる雷がヤリに集中してゆく。
巨人の手から投げられた雷のヤリはカガチを貫き、体内から一気に放電、これを粉砕するのだった。
黒い巨人に近寄るリュウラ、だが龍がヒスイの意識に警告を発する。
「すぐ逃げろ」と。
黒い巨人は両手にエネルギーを蓄積し、リュウラを待ち受けている…危険を感じたリュウラはショットスパークルで黒い巨人を牽制、その隙にヒスイの姿に戻り、巨人をやり過ごす。
「龍よ、どういうことだ?あの黒い巨人は…」
「ウルトラマンカルラ。鳥神ガルーダの力を持つウルトラマン。そして、先代のリュウラ…カンナの母親の仇でもある。」

一方、炎に高位の神々が照らし出される暗闇。そこにラセツ、クラマ ミウがいた。彼女と対峙しているのは甲冑を持つ神、ラゴウ。
「困るんだよマジで。君は俺達神々に仕える立場。その君に俺達の邪魔されるとさ…」
「…」
「とにかくさ、俺の奈良での計画、手出ししないで欲しいんだ。君はウルトラマンで、俺達にはカルラがいる。
お母さんみたいな死に方、嫌だろ?何のために自分が鬼神と融合し、ラセツになったか。よく考えてみ。」
レイハは黒い巨人、カルラを気にしつつも調査を再開する。傷害事件を起こした男の記憶を調べるユリノ。
その記憶にあったのは、夜の平城に立つ巨大生物…ラゴウ!
事件を起こした者は全員ラゴウを見ていた。奴から、凶暴化する呪いをかけられたようだ。
そしてヘキは、基地から携えてきた旧暦の資料をあたる。
…あった。旧暦の遺した写真にラゴウが写っていたのだ。
しかもそれは、最終戦争の開戦直前に撮られたものである。
では…旧暦の最終戦争はラゴウの呪いによって引き起こされたものなのか?
今回の民の凶暴化はその再現…再び人類を自滅させるつもりか…
(ラゴウを倒すのは構わんが)
龍が言う。
(カルラの放つ光だけは浴びるでないぞ。奴の光はウルトラマン…つまり神とニンゲンの融合した姿…に影響を与える。ウルトラマンの中の『神』と『ニンゲン』の繋がりを遮断してしまうのだ。)
(だからカンナの母親は力を発揮できなくなり、カルラに殺されたのか…なあ龍よ、俺達はカルラと、ラゴウを倒せるのか?)
(力を生むは、意思と絆だ。)

そのころ、ゴジョウとカンナは春日大社に向かっていた。
「春日大社に、何があるんですか?」
「リュウラに真の力を発揮させるカギ。カンナちゃんも、ラゴウの強さを見たでしょ?
今のリュウラはまだ、龍の力を完全に発揮できてるわけじゃないの。だから、龍の力を全解放させるために…」
「ホントの目的は何なんですか?ゴジョウホノカ。」
カンナはいつの間にか奪ったゴジョウのレイバンガを彼女に向ける。
「クロサキって人に引き渡すために、私を部下にしたんですよね?」
「ねぇカンナちゃん、貴女の誕生日はね、旧暦の最終戦争の真っ只中なの」
驚くカンナ、そこにあの美しい青年、アサギが現れた。
「ゴジョウさん、あまり刺激するものではない。こんな忌み子…化け物に殺されては死んでも死に切れませんからね。」
「化け物とは、言ってくれるな。」
アサギの後頭部にレイエンキュウが突きつけられた。ヒスイだ!
「貴様、ラゴウの人間体か?」
「ラゴウは忙しいのです。君達のように下等なニンゲンを滅ぼすためにね。君の相手は、僕がしましょう。」
アサギはヒスイを振りほどくと、右手を高く掲げ、言霊を紡ぐ!
「君が宿主、鞍馬浅黄尊(クラマノアサギノミコト)の名において命ずる。翼、雷、和合すべし。出でよ、カルラ!」
アサギの手に集束した光が、ハンドガード部に鏡を備えた両刃の短剣「翼雷鏡サンダーボルトクロー」へ変る。
鏡に一瞬己の姿を映し、即座に右腰に添える。アサギの全身を光の稲妻が包み、彼は鳥神ガルーダへ転化、
さらに空中で、黒き巨人、ウルトラマンカルラの姿を現した!

カルラは右腰から、光で形成された両刃の短剣「翼光牙セントラルクロー」を発生させ、
切っ先からソードスパークルを放ちゴジョウ、ヒスイ、カンナを襲う。
このままでは春日大社が…ヒスイはカルラに突進しようとするが…
「勝ち目は無いわよ」
ゴジョウが制止する。ヒスイはゴジョウを振り向き…言う。
「やはり知っていたんですね。」
カンナは何のことだかよく分からない。が、ヒスイが自分を守るために無理しようとしていることだけは分かる。
「マミヤさん…わたしはだいじょぶです…ミカヅチのとき見ましたよね?わたしは神を無くすもの…人間じゃないですから。」
「どうも自分が人間じゃないことが苦痛らしいが。」
ヒスイは、カンナに硬い微笑を向ける。
「泣くな。君と同じだ。俺も、普通じゃない。」
カンナはその言葉の意味をすぐには理解し得なかった。だがヒスイは、既に決意を固めていた。
今すぐカルラを止めなければ春日大社とその神壁が危うい。自分が物陰に身を隠す暇もない。
ならば、今ここで転化する他ない。人間を、カンナを守るために。
「大宰、クロサキの件は別の機会にお聞きします。…カンナ…見ていろ…
君が宿主、マミヤヒスイの名において命ずる。龍、明、和合すべし。出でよ、リュウラ!」
カンナにとってそれは余りに予想外の事態であった。ヒスイが、龍、そしてウルトラマンリュウラへ変ったのだ!
「マミヤさんが…リュウラ?」
目撃者がゴジョウとカンナの二人だけだったのは幸いだったかもしれない。

セントラルクローを振るい、リュウラに飛びかかるカルラ。リュウラは空中戦を挑む!
両者のショットスパークルが激突、カルラのパンチ、リュウラのキックが交差、
放たれるソードスパークルをシャイニングヴァイパーが払う。ここまでは互角。だが、リュウラにはまだ奥の手がある。
空中で対峙するリュウラに対し、カルラはセントラルクローの両端を伸ばし光の長ヤリへ変化、それを回転させ、雷の気を集束、投げつける。
これがカルラの必殺技「裁邪翼光槍セントラルスティンガー」である。これに対し、リュウラはゲキに変身、裁邪龍光弾シャイニングボムを発射する。
激突するシャイニングボムとセントラルスティンガー。
だが、威力はシャイニングボムの方が勝っている。セントラルスティンガーを相殺した余波でもカルラに深手を負わせるには十分な威力なのだ。
あっさり墜落するカルラ。と、そこに邪悪な神気が現れた。
ラゴウだ。
「貴様…貴様が旧暦の文明を滅ぼしたのか…」
「勘違いするな、俺はキッカケを作っただけ。争い合い、滅びたのは、ニンゲン自身だ。」
「神が言い訳をするな…」
リュウラはシャイニングボムを放つ、放つ!五発に及ぶ光弾がラゴウを襲う。
それらを防いでいる間にリュウラは龍光壁ドラゴンフィールドを展開、そこから突撃龍光牙ドラゴンシャイニングヴァイパーを繰り出す。
この一太刀でラゴウの胸に深手を負わせ、振り向きざまシャイニングボムをもう三発叩きつける!
が…その攻撃さえ決定打にはなり得なかった。最後の一発はラゴウに投げ返される。
こにカルラの裁邪翼光槍セントラルスティンガーも炸裂、リュウラのカラータイマーが激しく明滅する!
ラゴウは更に雷撃でリュウラを攻める。限界に達するリュウラ…
そこにカルラが両手を交差し、光線を浴びせる!
ついにリュウラはヒスイの姿に戻ってしまう。その上、アクアアイも輝かない!
「カルラの…光…俺は…龍の力を…封じられたのか…」
意識を失うヒスイ。ゴジョウ、カンナの呼びかけにも答えない。そこにレイヒュウゴ、レイカイオウが到着、攻撃を開始する。
しかし、敵の一体はウルトラマン、もう一体はシャイニングボム八連射に耐える強敵である。全くダメージを与えられない…
が、ラゴウはカンナの覚醒を恐れ、カルラを連れて一旦引き揚げる。

医院で眠るヒスイを見守るゴジョウとカンナ。ゴジョウはカンナに話し始める。
「私やクロサキ、さっきのアサギ、クラマミウ、そして貴女は『光の一族』の人間。
私達は次元の狭間に存在する『神山』に住み、古来から宇宙の摂理を司る高位の神々に仕えて生きてきた。
だから旧暦の戦火がどんなに拡がっても、『神山』で神に仕えている限り安全だった。
でも…その山を降りた女がいた。それがカンナちゃん、貴女のお母様。」
舞台は変る。
周囲の木々が鏡のように映る湖。老人が、一人の女性を引きとめている。が、女性はそれを振りほどく。
「待て!お前は龍神の意を測る重要な存在ではないか!」
「私は山を降ります。行かせて下さい。戦火から、一人でも多くの民を救いたいのです。
娘は、カンナたちは私が連れてゆきます。一族に、龍神のご加護を…」
ここは旧暦。カンナの母親、天龍雅姫(アマタツノミヤビヒメ)は戦火にあえぐ民を見過ごせず、山を降りた。
民を襲う兵器、人間を滅ぼそうとする邪仙、そして神々を倒すため、彼女はたった一人、言霊をつむいでいた。
「君が宿主、天龍雅姫(アマタツノミヤビヒメ)の名において命ずる。龍、明、和合すべし。出でよ、リュウラ!」
ヒスイは医院で眼を覚まし、何度も何度もアクアアイを召喚する。だが、全く輝こうとしない…
「龍よ、もう変れないのか?」
「変れぬ」
「何故アンタはいつも力を全開しないんだ?アンタの力が大きすぎて俺の体が崩壊するんだったか…俺は構わんと言っているのに。」
「我は、かつてミヤビを救えなかった…故に、な。」
隣の部屋から、ずっとカンナの嗚咽が聞こえてくる。やはり隠しているべきではなかったか…
「「龍よ、アンタ、ガンロンの時に言ってたよな…カンナは俺にとってどんな存在なんだって…俺は、どうすればいい?」
ゴジョウは春日大社の内宮の更に奥深くにいた。そこには、奇妙な空間が拡がっている。構わず歩みを進めるゴジョウ。その暗闇に浮かび上がったのは、白虎、朱雀、玄武…

続く
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